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第2章「ハイハイ・イン・ザ・ハイ」

久しぶりの再会だった為、フェニックスとイルルヤンカシュは、
長時間、話し込んでいた。
ラリイは、すっかりイルルヤンカシュに懐いて、背中の上で寝ているほどだ。
イルルヤンカシュも、自分の子が、戻って来たような気分がして、
悪い気はしない。
互いの近況報告も済み、話も佳境に入る時、フェニックスは、
フレンの話や、リヴァイアサンに聞いた話を、イルルヤンカシュにもした。
それを聞いた、イルルヤンカシュも、実感することがあるようで、
考え事をしながら、フェニックスの話を真剣に聞いていた。

「近頃、俺にも、実力のある魔物が、挑んでくることがあったりしたが、
そういう状況だったわけか。てっきり、魔界では俺を倒すことが
流行っていたのか思ったが、そうではないらしいな。」
「最近、そんな状態だったのですか?!」

イルルヤンカシュから、そんな話を聞いて、フェニックスも
少しだけ、びっくりする。

「俺からすれば、脅威ではないが、人間達から、すれば脅威になりかねないな。
俺ですら、ヒヤッとさせられることもなくはない。
が、負けることはないがな。」

イルルヤンカシュは、フェニックスにそう言い、静かに笑った。
こんな場所にいるとは言え、イルルヤンカシュの力が、まだまだ
健在なのは、フェニックスもすぐにわかる。
流石に魔界と言えど、幻獣と互角の力を持つものは、そうそうにはいない。
魔王クラスでもなければ。

「イルルヤンカシュ。よければでいいのですが、
人間の脅威になりそうな、魔物ことなど、わかりますか?」
「ああ、大体わかるぞ?」
「良ければ、私に教えてくれませんか?」
「何を遠慮する?他ならぬ、友のお前に、教えないことなどない。」
「有り難うございます。イルルヤンカシュ。」

フェニックスは、イルルヤンカシュから、数体の人間達の脅威に
なりそうな、危険な魔物の存在を教えて貰った。
これは今度フレンに会ったら、教えておかねばなるまい。

「魔界が活発化してるのは間違いない。魔界でも覇権争いが起きている。
その為に、人間界にも積極的に乗り込もうとしているのだろう。
魔物にとって、人間は色々と便利だろうからな。」
「そうですね。特に人間の負の部分なんかは。」

フェニックスは、苦い気持ちになりながら、イルルヤンカシュの話を聞いた。
結局、他の幻獣達は言うだろう。人間達の自業自得であると。
自然のバランスを大きく崩しかけ、人間達の戦によって、
多くの負の感情が魔界に流れれば、魔界からすれば、最高の環境になる。
人間達は、自分で自分の首を絞めたのだ。

「でも、その過ちに気づき、立ち上がった人間がいる。
私は、そんな彼等に期待しているのです。」
「それは、面白い話だな。俺も、どうなるか気になる。」
「イルルヤンカシュ。また、何かあった時は、情報くれますか?」
「ああ、お前への協力なら、俺は惜しまない。」
「助かります。イルルヤンカシュ。」
「何も礼などいらぬ。俺は俺の好きにしてるだけだ、友よ。」
「そうですか。」

フェニックスは、やっぱり、イルルヤンカシュのそうしたところが、
自分は気に入ってるのだなと実感した。何より頼もしさをも感じる。

「バハムートもイルルヤンカシュのようであってくれたらと、いつも思います。」
「あはは。それは無理だな。あの性格は、あいつの性分だ。
それは嫌なら、長い時をかけて、お前が調教していくしかない。」
「それでは、母親ではありませんか。」
「諦めろ。お前も、ある程度は覚悟してたのだろう?」
「はぁ・・・」
「息子が1人増えたとでも、思えば良いではないか?」
「あんなデカい愚息なんて、結構です。私は、愛しのラリイだけで、
手一杯ですから!」
「あはははは!!!それはいい!バハムートは大泣きだな!!!」

イルルヤンカシュは、フェニックスの言葉に大爆笑する。
フェニックスは、大爆笑する、友に苦笑いであった。
ラリイは、2人の会話を良い子守唄にして、起きもせずに、
スヤスヤとイルルヤンカシュの背中の上で寝ていた。

「もう、そろそろ行くのか?」
「ええ、すっかりと長居してしまいましたが。」
「構わない。どうせ、いつも俺だけか、望まぬ来客だけだ。」
「今度は、大きくなったラリイが訪ねるかもしれませんよ?」
「ほう?なら、楽しみにさせて貰おう。」
「では、また逢いましょう、イルルヤンカシュ。」
「ああ、またな。フェニックス。そしてラリイよ。」

ラリイは、起きてていて、フェニックスの腕の中で、ぐずっていた。
ラリイだけは、自分の感情の素直なままに、別れを悲しんでいたのだ。
フェニックスは、そんなラリイをあやしながら、イルルヤンカシュの元を去った。

「やはり、子とは良いものだな。しかし、驚いたものだ。
あのフェニックスが、人間の親友を持ち、その親友を転生させ、
自分の子にまでしてしまうとは。
余程、その人間は変わり者だったと見える。」

フェニックスからラリイの出生を聞き、驚きが隠せなかった。
イルルヤンカシュも、そんな人間だったのなら、前世のラリイに
逢ってみたかったと、残念に思った。

「それにしても、人間の脅威に成りえる魔物か・・・
俺の息子も、幻獣と魔物の血を引く子だ。人間界に興味を示したのなら、
人間達の脅威に十分に成りえるだろうな・・・」

イルルヤンカシュは、もし自分の子が、人間界や幻獣界に敵対し、
攻めようとしているのなら、自分が止めようと、前々から覚悟していた。
だから、こんな場所に棲みついていたのだ。いざと言う時の為に。
人間にしろ、他の幻獣にしろ、自分の子が他者に殺されるくらいなら、
自分がするべきだと、思っていたのだ。父らしいことをしてやれなかった、
自分への罰として。
けれど、そんな思いも、フェニックスは気づいていたかもしれないと、
何となくイルルヤンカシュは思った。
イルルヤンカシュが、そんな悲しい決意をしてる時、
フェニックスは、なかなか泣き止まないラリイに苦労させられていた。
山里深くにある、人間の村の宿屋に、人間として泊まったフェニックスは、
ベッドに座り、ラリイをあやし続ける。

「いやぁ!いやぁ!いるるぅううう!いるるぅうう!!」
「ラリイ、そんなに私の友のイルルヤンカシュが、好きになったんですか?」
「ふぇんにぃ!いるるぅうう!あうあうー!」
「私の次に覚えた名前が、イルルヤンカシュとは、バハムートが
知ったら嫉妬しそうですね。うふふ。」

ラリイをあやしながら、フェニックスはそんなラリイが、
ますます可愛く思えた。
きっと寝てる間に何度も聞いた言葉だから、覚えてしまったのかもしれない。

「ラリイ。また逢えますよ。ラリイが、もっと大きくなったら、
何度でも逢いに行ってあげて下さい。私の代わりにね?」
「ふぇんに・・・ふぇに・・・あうぅう」
「おや?泣き疲れて眠くなったのかな?いいですよ。寝てしまって・・・ラリイ。」

フェニックスの温かく、優しい手に頭を撫でられ続けたラリイは、
最後はフェニックスの優しい言葉に誘われ、寝てしまった。

「うふふ。こんなに気持ち良さそうに寝てしまって。ラリイは、
本当に私の愛しの存在です。どうかラリイ・・・
何かを憎むような子だけには・・・ならないで下さいね・・・」

フェニックスは何かの願掛けでもするように、我が子にそう言いながら、
我が子と夜と過ごした。

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