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第1章「イクメン見習い」

「きゃう!ふぇんに!きゃっきゃ!うーうー!」
「んん?ラリイ?」

朝の眩しい光が窓から入り、フェニックスの身体を照らしていた。
それから、ラリイは、笑顔でフェニックスの顔をぺしぺしと、
楽しそうに可愛い手で叩いていた。
どうやら、ラリイはフェニックスを起こしたかったらしい。
フェニックスもそれに気づき、笑顔になり、息子を抱きしめる。

「ああーラリイ♥おはようございます♥
まさか、ラリイが私を起こそうとして、こんなことするなんて♥
もう天才すぎます!♥ラリイは本当にいい子ですねー♥うりうり♥」

フェニックスは、ラリイの朝のこの行動から、親馬鹿が大炸裂であった。
毎度のラリイの頬を自分の頬でスリスリする。
ラリイもきゃっきゃと嬉しそうである。

「さて、いつもの挨拶はしましたから、ラリイも起きて、
朝ごはんを貰いに行きましょうか?」
「あうあう♪」
「うふふ、いい返事ですね♪」

フェニックスはラリイを抱っこして、グリフィン達の所に向かった。

「フェニックス様、おはようございます。」

フェニックス達を最初に出迎えてくれたのはルリであった。
昨日、夕食を食べさせて貰ったテーブルには、すでに朝食が
きちんと用意されていた。
きっとグリフィンが、頼んでおいてくれたのだろう。

「おはようございます。ところで、グリフィンは?」
「はい。長は里の男達を連れだって、里の周りの様子を見に行きました。
フェニックス様には、先に朝食を召し上がって頂くようにと、仰せつかっております。」
「そうですか・・・朝の挨拶と昨日のお礼を言わねばと思ったのですが、
そうなら仕方がないですね。」
「申し訳ありません、フェニックス様。」
「いえいえ!ルリ、貴女はよくやってくれていますよ。
だから、謝罪なんてしないで下さい。」

申し訳なさそうな顔をするルリに、フェニックスは、笑顔で
安心させるように言った。
ルリもフェニックスにそう言って貰えて安堵したようだ。

「ラリイ様は、フェニックス様がお食事が済むまで、私が
お世話致しましょうか?」
「いいえ。ラリイは私が面倒を見ながら、いつも一緒に
食事していますので、大丈夫ですよ。」
「そ、そうだったのですか!承知致しました!
では、私は奥に下がっておりますので、何かありましたら、すぐにお呼び下さい。」
「はい。お心遣い有難うございます。」
「いえ!そんな!で、では、失礼します。」

ルリは、緊張しっぱなしで、何とか無礼なことはしないようにと、
必死になりながら、フェニックスに対応して、奥に下がった。

「ラリイ・・・私って、そんな緊張する存在ですかね?」
「あう?」

フェニックスはルリの対応に、悪気はないのはわかっているが、苦笑いしてしまった。
そして、ついラリイに聞いてしまう。ラリイは、毎度の事ながら、
何もわからずに、ただフェニックスの真似をするだけであった。

「ラリイは、この味が好きなのかな?じゃあ、これはどうかな?」
「あうーうーぅーもぐもぐ」

数分後、フェニックスは用意して貰った、ラリイのごはんの
離乳食をラリイに食べさせていた。
すると・・・

「おお!これはお野菜っぽいのにラリイが、喜んで食べてる!
ラリイ!これ好きなんですか?!」
「あう♪」
「ああーなんて笑顔なんですかーラリイは♥♥♥
ではでは!こちらは?!」
「きゃう♪」
「なんと!こっちの野菜ベースっぽいのも好きと?!
恐るべし、古代鳥人族の方々!これには私も感服しました!」

フェニックスはラリイに食事を食べさせる度に、この反応である。
奥で待機していた、ルリもこの声が聞こえて、最初はビビッて、
ソワソワしていたが、だんだんと、このフェニックスの会話に
慣れてきて、最後は大声で笑いそうになるのを必死に堪えていた。

(フェニックス様って、本当に自分のお子のラリイ様が可愛いんだわ。
あんな偉大な幻獣界の三大重臣様も、自分の子には弱いのね。)

ルリは心の中で、フェニックス対して抱いていた、畏怖の念が和らぐのを感じた。
これなら、さっきのような、緊張からくる失敗は今後はなさそうだと思った。
フェニックスも裏でルリがこう考えていたことなど、知りもしない。
ただ、ラリイと少し騒がしく楽しく朝食をとっていた。
フェニックス達が朝食を食べ終わり、少し落ち着いた頃に、
グリフィンは、戻ってきたのだが、険しい顔をして戻ってきていた。

「おはようございます、グリフィン。里の見回りご苦労様です。」

フェニックスは、爽やかにグリフィンに挨拶をし、労った。
グリフィンは険しかった顔をすぐにやめて、笑顔でフェニックスに返事をする。

「おはようございます、フェニックス様。昨日はよく寝られましたかな?」
「はい。昨日から、今日の朝食まで、何から何までお世話になりっぱなしで、
本当に有り難うございます、グリフィン。」
「なんのこれしきのこと、どうでもありませんぞ!
フェニックス様に喜んで貰えれば、何よりです!」
「グリフィンの優しさに甘えばかりですね、私は。」
「そんなことありませんぞ!ははは。」

グリフィンは、何かを紛らわせるように陽気に、フェニックスに笑ってみせた。
フェニックスは、どうしても気になってしまい、グリフィンが、
本当は隠したがっているのを承知で、聞く。

「ところで、見回りで何があったんですか?グリフィン?」
「そ、それは・・・」
「私に隠し事はなしですよ?グリフィン。私はこんなにも世話になったのです。
何かの役に立てずとも、相談くらいには乗せてくれても、いいんじゃないですか?」

フェニックスは穏やかな顔で、グリフィンに言った。
こう言われてしまえば、グリフィンの方が折れるしかない。

「いやはや、フェニックス様には本当に敵いませんな。」
「何を言うのです。こんなに良くしてくれた、グリフィンが、
困っているのなら、助けたいと思うのは当然でしょう。
素直に私に頼ってくれない、グリフィンが悪いんですよ?」
「ははは。フェニックス様は本当にお優しい。」

グリフィンは笑顔でありながらも、気まずそうにしていた。
迷惑をかけたくなかったので、隠そうとしたのだが、逆にバレて、
ここまで言わせてしまった事を申し訳なく思ったのだろう。
でも、フェニックスは、久しぶりにあった、同志に遠慮なんて
して欲しくなかったのだ。こんなにも自分には良くしてくれたのだから。

「実はですな・・・つい最近、里の近くの森に、悪しきキノコの化け物が
棲みついてしまいまして。それで、我々の生活に必要な草木を
腐らせ、枯らしているのです。」
「ほう?そんなモンスターが?」
「はい。最近まで、見かけたことがありませんでした。なので、
我々もただのキノコのモンスターだと油断してしまい、
気づいた時には、結構深刻な状況で。」
「そうですか・・・なら、話は早い。私も、そこに連れて行って下さい。」
「え?」

フェニックスはグリフィンから話を聞いて、すぐさま、そう告げた。
グリフィンも一瞬驚いたが、フェニックスが何かを思いついたのだと知り、
頼ることにした。
グリフィンは、フェニックスを例の森に案内することなった。
ラリイは、一時的にまたルリに預かって貰う。
そして、護衛役にイーグルも行くことになった。

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