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第1章「イクメン見習い」

「リヴァイアサン。フレンから聞いた話なのですが、確認したいことがあります。」
「ん?なんだ?」
「今後、我々、幻獣達を人間の争いに関わらせたくないと言う話ですが、
それは人間界の人間達は納得しているのですか?」

フェニックスは一番確認しなければならない部分を直接、リヴァイアサンに聞いた。
幻獣同士での会話なら、遠回しに聞く必要などない。
嘘などついても、何のメリットもないからだ。
実はフレンにも同じ質問はしたが、どうも、しっくりとくる返答が
貰えなかったので、フェニックスは、どうしても、そこが気がかりだった。

「フレンの奴め・・・ちゃんと説明出来なかったのだな。」

リヴァイアサンはフェニックスから、こう聞かれて、苦い顔をした。
だが、すぐに迷いもなく、フェニックスに答えた。

「人間界にいる、王達は大体承諾している。フェニックス。
今の人間達は、互いに争っている場合ではないのだ。」
「どういう事ですか?」

リヴァイアサンの意外な答えに、フェニックスは不思議がる。

「過去に散々、強力な魔法や、我ら幻獣を使った大戦が多く、
しかも長く続いた所為で、この人間界は現在、自然のバランスを崩しかけている。
その所為で、魔族どもが活発化してな、最近では、人間達は、
同種争いよりも、魔界のモノどもと戦う方が忙しいのよ。」
「そう・・・だったのですね。」

フェニックスはリヴァイアサンの言葉を聞いて、やっと納得出来た。
魔族が活発化して、人間を襲う頻度が増えたのなら、確かに
同種争いしてる場合ではないだろう。

「だから、私達の力は今後、使えないわけだったんですね。」
「そうだ。そんな事をし続ければ、もっと自然のバランスは
崩れ、最悪、人間界は崩壊するだろう。人間達が人間界を失えば、
それこそ死ぬしかない。魔界で生き残るなど不可能だろう。」
「かと言って、幻獣界や他界で引き取るのも無理ですしね。」
「そういうことだ。」

フェニックスとリヴァイアサンはお互いに納得した顔をした。
話が通じ合ったとわかったからだ。
にしても、今の人間界がそこまでの危機に瀕していたとは、
フェニックスも知らなかった。
これでは、人間界が平和になるどころの話ではないではないか。

「だから、フレンも言いづらそうにしてたんですね。」
「フェニックス・・・フレンを責めないでやって欲しい。」
「責めるだなんて、むしろ褒めるべきでしょ。そんな人間界を
平和にする為に、彼は立ち上がったのでしょ?」
「まぁ、そうだな。あいつは、祖母に似て、言い出したら聞かない性分でな。」
「うふふ、そうなんですね。」

少し困った顔をするリヴァイアサンに、フェニックスは笑った。

「人間達の起こした大戦の所為で、自然のバランスは崩れかけ、負の感情も高まり、
魔族達を活発にさせてしまった。自業自得だと言うのは簡単だが、見捨てるのは忍びない。
フレンのような人間もいるのでな。」
「そうですね。リヴァイアサン。私も、もし親友が、
まだこの世界に居たのなら、全力で協力してたと思いますよ。」

フェニックスは、リヴァイアサンの言葉に同意だった。
全ての人間が悪いわけではない。
一部には、真面目に、善良に生きてる人間だっているのだ。

「フレンは、近いうちに世界会議を行う予定だ。そこで、人間達の代表を集め、
幻獣界で取り決めた事を話し、最終的な事を決めるだろう。
その時なんだが、フェニックス。お前も同席してくれないだろうか?
もちろん、私も参加する。人間の振りをしてだがな。」
「私は構いませんが、それはいつ行うのですか?」
「明後日にはするはずだ。」
「わかりました。では、明後日の明朝に、ここに来れば良いですか?」
「ああ、そうしてくれ。フェニックスも人間の振りをして、私と参加すればいい。
そこで、人間達の動向を見て、もし、それでも信じられないと
感じたのなら、そこまでだ。バハムート達とも相談し、
幻獣界を閉じるべきかもしれんな。」

リヴァイアサンはそう言いながらも、少し悲しい表情になっていた。
きっと、内心はそうなって欲しくないのだ。そうでなければ、
あの友である、フレンを信じ切れなかったと言う事になるから。

「わかりました。でも、そうならないように、私も協力したいと
思います。リヴァイアサン。」
「フェニックス・・・有り難う。やっぱり、お前が来てくれて良かった。
感謝する。同志よ。」

リヴァイアサンは、穏やかな顔に戻って、フェニックスに感謝した。
フェニックスも、微笑んでいた。
聞きたい事が聞けたフェニックスは、他の幻獣仲間を探しに、
リヴァイアサンの元から、去ろうとしていたが、あるお願いも、
していくことにした。

「リヴァイアサン、実は1つお願いがあるのですが・・・」
「願い?なんだ?」
「バハムートに、手紙を書いてあげてくれませんか?」
「手紙?どんな内容だ?さっきの話か?」
「いえ、リヴァイアサンの最近の日常と言うか、様子ですかね。」
「うぬ?そんな内容でいいのか?」
「はい。バハムートは、リヴァイアサンが最近、人間の音楽に、
ハマっている話を聞きたがっていたので、そういうのとかを、
手紙に書いてあげて欲しいのです。」
「ふっ・・・義兄貴らしいな。わかった。それくらいなら、お安い御用だ。」
「有り難うございます。リヴァイアサン。」
「いやいや、フェニックスも苦労が絶えないだろう。義兄貴は、
あんな図体の割に、甘えたがる癖があるからな。」
「あはは、リヴァイアサンも苦労した口ですね?」
「そうだな。」

フェニックスとリヴァイアサンは、お互いに苦い顔をしつつも、
笑い合った。
まさか、リヴァイアサンもバハムートの扱いで、そんな苦労を
していたとは。
リヴァイアサンが人間界に留まるのも、本当は、それも
理由の1つにあるのではないかと、フェニックスは思ってしまった。
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