指を噛む
MS研究所から昴流を連れ帰った夜。星史郎は昴流を部屋へ送り届け、パジャマに着替えさせようと昴流の服を脱がせた。
気付かずベッドの上で眠る昴流。下着だけの姿に不似合いな黒手袋。星史郎は手袋の指先を噛んだ。引き抜こうとすれば封じの術が発動してバチッと火花が散る。
星史郎はくすりと楽しげに笑って、今度は昴流の薬指を手袋ごとくわえた。舌の上で転がして感触を楽しむ。
(……細い指ですね)
昴流はそれでも眠っている。星史郎がそのように術をかけたのだから当然だ。暗い瞳で笑みを消して、星史郎は昴流の指を噛む。
(噛みちぎってしまいたくなる……。賭けの最終期日を延期にしたのは、やはり少し残念だ)
少し顔を歪めた昴流に小さく笑って、星史郎は口を離す。しばし昴流の姿を見つめて、ふいと身を翻した。
「さて、昴流くんにパジャマを着せてあげなくてはいけませんね」
皇昴流は今日も桜塚護の姿を探す。目処をつけた場所にたどり着いて、一旦足を止めて煙草に火をつけた。
煙草をくわえ、大きく息を吸い込んで、紫煙を吐き出す。煙草をくわえ直したところで、背後から煙草に手が伸びた。
「マイルドセブンですか。お揃いですね」
「……他に銘柄を知らなかっただけです」
背を桜塚護――星史郎に抱きしめられるような姿勢で交わされる会話。煙草を取り去ろうとする星史郎の指を、昴流は煙草ごと噛んだ。
星史郎はくすりと笑う。
「積極的ですね、昴流くん」
「…………」
昴流は口をゆるめて煙草を地面に落とす。足先で火をすり潰すと、昴流の歯列や唇をなぞって楽しんでいるらしい星史郎から身をよじって逃れた。
「僕を殺さないんですか」
「昴流くんこそ。僕を殺さないんですか?」
「…………」
昴流は黙って指で印を形作る。星史郎も口元に笑みを浮かべて印を結んだ。
気付かずベッドの上で眠る昴流。下着だけの姿に不似合いな黒手袋。星史郎は手袋の指先を噛んだ。引き抜こうとすれば封じの術が発動してバチッと火花が散る。
星史郎はくすりと楽しげに笑って、今度は昴流の薬指を手袋ごとくわえた。舌の上で転がして感触を楽しむ。
(……細い指ですね)
昴流はそれでも眠っている。星史郎がそのように術をかけたのだから当然だ。暗い瞳で笑みを消して、星史郎は昴流の指を噛む。
(噛みちぎってしまいたくなる……。賭けの最終期日を延期にしたのは、やはり少し残念だ)
少し顔を歪めた昴流に小さく笑って、星史郎は口を離す。しばし昴流の姿を見つめて、ふいと身を翻した。
「さて、昴流くんにパジャマを着せてあげなくてはいけませんね」
皇昴流は今日も桜塚護の姿を探す。目処をつけた場所にたどり着いて、一旦足を止めて煙草に火をつけた。
煙草をくわえ、大きく息を吸い込んで、紫煙を吐き出す。煙草をくわえ直したところで、背後から煙草に手が伸びた。
「マイルドセブンですか。お揃いですね」
「……他に銘柄を知らなかっただけです」
背を桜塚護――星史郎に抱きしめられるような姿勢で交わされる会話。煙草を取り去ろうとする星史郎の指を、昴流は煙草ごと噛んだ。
星史郎はくすりと笑う。
「積極的ですね、昴流くん」
「…………」
昴流は口をゆるめて煙草を地面に落とす。足先で火をすり潰すと、昴流の歯列や唇をなぞって楽しんでいるらしい星史郎から身をよじって逃れた。
「僕を殺さないんですか」
「昴流くんこそ。僕を殺さないんですか?」
「…………」
昴流は黙って指で印を形作る。星史郎も口元に笑みを浮かべて印を結んだ。
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