第126話 あさがお
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少しずつ空が明るみはじめる早朝。
鳥のさえずりとともに目が覚めると、私は隣の彼女の肩に布団を被せた。
こんなに可愛い奥さん…たまみと毎日共に過ごせることが嬉しくて、未だに信じられない。
この私が所帯をもち、あまつさえ忍術学園の一室で新婚生活を…甘過ぎる日々を送っている。
夫婦とはいえ職場での同室を許してくれた学園長先生には感謝しかない。
仕事も今まで通りで、夫婦だからと担当を変えられることもなくよかった。
巻物関連としてドクタケやタソガレドキに不穏な動きもない。
忍術学園のみんなが祝ってくれた祝言の日、あれは対外的に「忍術学園の一員で土井半助の妻となるたまみに手をだせば、学園全体を敵に回す」と示す意図もあったように思う。
彼女も巻物が消えたことでやっとノビノビと安心して暮らしているように見え、私も嬉しかった。
私にくっつくように腕と足を絡ませながら、スヤスヤと眠るたまみ。
あーもう本当に可愛くてしょうがない。
朝起きてから眠るまでずっと愛しいというか寝ている間も寝顔が可愛い。
深夜まで仕事をしていても、先に布団で眠りに落ちている彼女の寝姿を見ると癒される。
つい甘い誘惑に負けて欲望のままにそのまま…そして朝焦る…なんて日もあるのだが。
いや、だって仕方ないだろう。
「半助さん好き…」なんて誘うような声でくっついてこられたら当然触れたくなる。
潤んだ瞳で可愛い声を漏らすものだから、私も抑えられず抱きしめてそのまま…。
うん、しょうがない。
蠱惑的で可愛いすぎる甘えん坊の新妻を目の前に我慢できるはずもなく、最早多少の睡眠不足も幸せなことだと感じる。
いくら愛し愛されても飽きることがない。
そんな伴侶を得られたことを本当に幸せだと思った。
ただ、ひとつ気になることはある。
公にたまみは私のものだと宣言できるようになったのはいいが、それでも彼女に近づく輩がいる。
夫婦になればやきもちを焼くこともなくなるかと思っていたのに。
食堂に出入りする業者には「うちの妻がいつもお世話になっています。」といった挨拶…もとい牽制を一通りしておいたのでひとまず大丈夫だろう。
しかし厄介なのはあれだ。
定期的に山田先生の洗濯物を受け取りに来たりする利吉くんとか。
いつぞや、もうちょっかいを出さないとか言っていたのに、食堂で食べながら楽しげにたまみと話しているのを見かけた。
利吉くんは「普通に世間話をしていただけです。」などとシレッと言っていたが……。
たまみのことは信じているが、利吉くん相手だとどうしても身構えてしまって……
「んん…」
たまみが寝返りをうち、コロンと仰向けになった。
ふと周りを見ると、明るくなってきてそろそろ起床時間だと気づく。
それでももう少し寝顔を見ていたくて、起こさないようにそっと頭を撫でてみた。
サラリと指先を通る髪が艶やかで気持ちいい。
このまま一緒に二度寝したいなと思いつつ、スヤスヤ眠る頬に口づけた。
「……たまみ、朝だよ。」
「………」
…うん。やはり起きない。
私は彼女の頬をムニムニとつついてみた。
「んんん…」
嫌がる彼女。
面白くてそのまま続けると、たまみが眠そうに身をよじりながら目をあけた。
「…んぅ……」
「おはよう。さ、起きて…。」
寝起きのよくない彼女を毎朝起こすのが私の一日の始まりだった。
「半助さん、いってらっしゃい。」
「うん、またあとで。」
強く抱きしめていってらっしゃいの口づけを交わす。
生徒にはとても見せられない、そんな甘い甘い新婚生活がとても幸せで。
毎日おやすみもおはようも隣で言えることに本当に幸せだと噛みしめた。
おつかいに行くときも、当然のように二人一緒に出かけられる。
彼女が出門票に「土井たまみ」と書くたびに、夫婦であることを改めて実感した。
そして、誰に見られても問題がなくなったからと、たまみは甘えて手を繋ぎ寄り添ってくる。
さすがに町中では人目が気になりちょっとどうかと思わないでもなかったが、道行く男達の視線がたまみに向けられる度に彼女の手を強く握り返して私のものだと主張している自分がいた。
そんなある日のこと。
「アサガオの花が咲きました!」
職員室で仕事をしていると、たまみがひしゃくと水桶を手に嬉しそうに走ってきた。
忍術学園の敷地内には薬草になる草花が植えられていて、アサガオもそのひとつだ。
「青紫色の色味がすごく綺麗なんです。薬草にもなるし草木染にも…頑張って育てて種が沢山とれたら売ることもできるかも…!」
きり丸の影響か、たまみも小銭稼ぎを楽しそうに頑張っている。
「そうか、毎日水やりを頑張っていたかいがあったね。」
「生徒のみんなも水汲みを手伝ってくれたり、ちょっとした交流の場にもなってるんですよ。」
「交流の場?」
「はい、いろんな虫がやって来るので生物委員会の子達が採集に来たり、保健委員会の子達が薬草の資料作りに来たり、体育委員会の子達が重い水の桶を担いで溢さず走って競争していたら桶を壊してしまって用具委員の子達ともめたりとか…」
「ははは、賑やかだなぁ。」
「そうなんです。あ、そういえば昨日、大木先生もアサガオの土をみてくれて。」
「大木先生が?」
「はい、ネギとラッキョウが豊作らしくてお裾分けに持ってきてくれたんです。アサガオの話をしたら葉に害虫がついてるのを見つけてくれて、また害虫対策になるものと肥料を持ってくるって…」
「杭瀬村から、アサガオのためにわざわざ?」
「いえ、食堂のおばちゃんにラッキョウ漬けの美味しいレシピを教えてもらうらしくて。作ったらまた持ってくるからそのついでと仰ってました。」
「…ふぅん。」
「遠慮したんですけど、土のことは俺に任せろって言いきられてしまって…。」
「…へぇ~。」
私は彼女の手からひょいと水桶を取り上げた。
きょとんとするたまみの肩に手を置き、耳元で囁く。
「…私もアサガオの花、見に行こうかな。」
たまみは私の瞳をじっと見つめて嬉しそうに微笑んだ。
「一緒に水やりしてくれますか?」
「ああ。これからは、たまみがアサガオのところに行くときは声をかけてくれ。一緒に観察しよう。」
そう告げると、たまみは嬉しそうに笑ってひしゃくを私の持つ水桶に入れて抱きついてきた。
「嬉しいです。そういえばさっき、こんなに大きなミミズがいて…!」
無邪気にそんな話をするたまみ。
そんな彼女を微笑ましく見ながら、寄り付く虫は早々に退治しなければと心に強く思った。
鳥のさえずりとともに目が覚めると、私は隣の彼女の肩に布団を被せた。
こんなに可愛い奥さん…たまみと毎日共に過ごせることが嬉しくて、未だに信じられない。
この私が所帯をもち、あまつさえ忍術学園の一室で新婚生活を…甘過ぎる日々を送っている。
夫婦とはいえ職場での同室を許してくれた学園長先生には感謝しかない。
仕事も今まで通りで、夫婦だからと担当を変えられることもなくよかった。
巻物関連としてドクタケやタソガレドキに不穏な動きもない。
忍術学園のみんなが祝ってくれた祝言の日、あれは対外的に「忍術学園の一員で土井半助の妻となるたまみに手をだせば、学園全体を敵に回す」と示す意図もあったように思う。
彼女も巻物が消えたことでやっとノビノビと安心して暮らしているように見え、私も嬉しかった。
私にくっつくように腕と足を絡ませながら、スヤスヤと眠るたまみ。
あーもう本当に可愛くてしょうがない。
朝起きてから眠るまでずっと愛しいというか寝ている間も寝顔が可愛い。
深夜まで仕事をしていても、先に布団で眠りに落ちている彼女の寝姿を見ると癒される。
つい甘い誘惑に負けて欲望のままにそのまま…そして朝焦る…なんて日もあるのだが。
いや、だって仕方ないだろう。
「半助さん好き…」なんて誘うような声でくっついてこられたら当然触れたくなる。
潤んだ瞳で可愛い声を漏らすものだから、私も抑えられず抱きしめてそのまま…。
うん、しょうがない。
蠱惑的で可愛いすぎる甘えん坊の新妻を目の前に我慢できるはずもなく、最早多少の睡眠不足も幸せなことだと感じる。
いくら愛し愛されても飽きることがない。
そんな伴侶を得られたことを本当に幸せだと思った。
ただ、ひとつ気になることはある。
公にたまみは私のものだと宣言できるようになったのはいいが、それでも彼女に近づく輩がいる。
夫婦になればやきもちを焼くこともなくなるかと思っていたのに。
食堂に出入りする業者には「うちの妻がいつもお世話になっています。」といった挨拶…もとい牽制を一通りしておいたのでひとまず大丈夫だろう。
しかし厄介なのはあれだ。
定期的に山田先生の洗濯物を受け取りに来たりする利吉くんとか。
いつぞや、もうちょっかいを出さないとか言っていたのに、食堂で食べながら楽しげにたまみと話しているのを見かけた。
利吉くんは「普通に世間話をしていただけです。」などとシレッと言っていたが……。
たまみのことは信じているが、利吉くん相手だとどうしても身構えてしまって……
「んん…」
たまみが寝返りをうち、コロンと仰向けになった。
ふと周りを見ると、明るくなってきてそろそろ起床時間だと気づく。
それでももう少し寝顔を見ていたくて、起こさないようにそっと頭を撫でてみた。
サラリと指先を通る髪が艶やかで気持ちいい。
このまま一緒に二度寝したいなと思いつつ、スヤスヤ眠る頬に口づけた。
「……たまみ、朝だよ。」
「………」
…うん。やはり起きない。
私は彼女の頬をムニムニとつついてみた。
「んんん…」
嫌がる彼女。
面白くてそのまま続けると、たまみが眠そうに身をよじりながら目をあけた。
「…んぅ……」
「おはよう。さ、起きて…。」
寝起きのよくない彼女を毎朝起こすのが私の一日の始まりだった。
「半助さん、いってらっしゃい。」
「うん、またあとで。」
強く抱きしめていってらっしゃいの口づけを交わす。
生徒にはとても見せられない、そんな甘い甘い新婚生活がとても幸せで。
毎日おやすみもおはようも隣で言えることに本当に幸せだと噛みしめた。
おつかいに行くときも、当然のように二人一緒に出かけられる。
彼女が出門票に「土井たまみ」と書くたびに、夫婦であることを改めて実感した。
そして、誰に見られても問題がなくなったからと、たまみは甘えて手を繋ぎ寄り添ってくる。
さすがに町中では人目が気になりちょっとどうかと思わないでもなかったが、道行く男達の視線がたまみに向けられる度に彼女の手を強く握り返して私のものだと主張している自分がいた。
そんなある日のこと。
「アサガオの花が咲きました!」
職員室で仕事をしていると、たまみがひしゃくと水桶を手に嬉しそうに走ってきた。
忍術学園の敷地内には薬草になる草花が植えられていて、アサガオもそのひとつだ。
「青紫色の色味がすごく綺麗なんです。薬草にもなるし草木染にも…頑張って育てて種が沢山とれたら売ることもできるかも…!」
きり丸の影響か、たまみも小銭稼ぎを楽しそうに頑張っている。
「そうか、毎日水やりを頑張っていたかいがあったね。」
「生徒のみんなも水汲みを手伝ってくれたり、ちょっとした交流の場にもなってるんですよ。」
「交流の場?」
「はい、いろんな虫がやって来るので生物委員会の子達が採集に来たり、保健委員会の子達が薬草の資料作りに来たり、体育委員会の子達が重い水の桶を担いで溢さず走って競争していたら桶を壊してしまって用具委員の子達ともめたりとか…」
「ははは、賑やかだなぁ。」
「そうなんです。あ、そういえば昨日、大木先生もアサガオの土をみてくれて。」
「大木先生が?」
「はい、ネギとラッキョウが豊作らしくてお裾分けに持ってきてくれたんです。アサガオの話をしたら葉に害虫がついてるのを見つけてくれて、また害虫対策になるものと肥料を持ってくるって…」
「杭瀬村から、アサガオのためにわざわざ?」
「いえ、食堂のおばちゃんにラッキョウ漬けの美味しいレシピを教えてもらうらしくて。作ったらまた持ってくるからそのついでと仰ってました。」
「…ふぅん。」
「遠慮したんですけど、土のことは俺に任せろって言いきられてしまって…。」
「…へぇ~。」
私は彼女の手からひょいと水桶を取り上げた。
きょとんとするたまみの肩に手を置き、耳元で囁く。
「…私もアサガオの花、見に行こうかな。」
たまみは私の瞳をじっと見つめて嬉しそうに微笑んだ。
「一緒に水やりしてくれますか?」
「ああ。これからは、たまみがアサガオのところに行くときは声をかけてくれ。一緒に観察しよう。」
そう告げると、たまみは嬉しそうに笑ってひしゃくを私の持つ水桶に入れて抱きついてきた。
「嬉しいです。そういえばさっき、こんなに大きなミミズがいて…!」
無邪気にそんな話をするたまみ。
そんな彼女を微笑ましく見ながら、寄り付く虫は早々に退治しなければと心に強く思った。