第41話 おでん事件
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しんべヱと伏木蔵の探偵ごっこに付き合いながらやっと食堂に辿り着いた頃には、おでんのお鍋にちゃんと練り物が入っていた。
結局何だったのかよく分からないまま、とりあえず自室へ戻ってきた。
障子を開けようとしたとき、中からたまみさん以外の気配を感じた。
気配を消して様子を伺うと、尊奈門くんが嬉しそうな顔をしてたまみさんと何やら食べている。
また性懲りもなく…!
私は気配を消したまま天井裏へ回り込んで、すばやく尊奈門くんの背後に降りて後ろから出席簿の角を彼の頭に落とした。
「痛っ!!」
「…何をしてるんだ。」
「土井先生!!」
尊奈門くんは涙目で私を睨めあげたが、ふいに不敵に笑うと手に持っていたどんぶりを前に出した。
「ははは、土井半助!今日こそこの練り物でお前を倒す!」
「な、なにぃっ!?」
青ざめてどんぶりの中を見る。
「…ん?何も入っていないぞ?」
「なっ!?」
尊奈門くんが慌ててどんぶりの中を見て、次にたまみさんを見た。
彼女の口には食べきれていない竹輪が1本くわえられていた。
「し、しまった!!」
尊奈門くんは一瞬うろたえたが、やけくそになったのかそのまま私に苦無を向けて飛びかかった。
出席簿で払い避けようとしたが、予想外に尊奈門くんの動きが鈍くて出席簿が顔面に思いきり直撃してしまった。
「ぐっ…!」
尊奈門くんがタタラを踏んでよろめく。
「…くそっ、つい満腹になって動きが…!……今日のところは帰ってやる!」
と言い残して姿を消した。
「何だったんだ…。」
たまみさんを見ると、一気に竹輪を食べようとしたのか咳き込んでむせていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ん…んん…!」
「落ち着いて。お水要りますか?」
背中をさすってやると、たまみさんはやっと飲み込んだようで、咳き込みながら今迄の経緯を話してくれた。
「…つまり、私のために尊奈門くんの持っていた練り物を無くしてくれたと…?」
「はい…余計なお世話かなとも思ったんですけど…。最後にチクワ1本だけ残ってて、慌てて取って食べたらむせました…すみません。」
「いや、助かったよ。ありがとう…!」
私はたまみさんをぎゅっと抱きしめた。
たまみさんが嬉しそうに笑う。
「しかし、今日の夕食はおでんなのか。……外のうどん屋にでも行ってこようかな…。」
つい正直にそうこぼしてしまうと、たまみさんはとても悲しそうな顔をした。
「昨日から味を染みさせて一生懸命作ったおでん、土井先生にも食べてほしいです…。」
「いやぁ、いくらたまみさんのお願いでも練り物はちょっと…。」
「私の手作りおでん、尊奈門さんは美味しいって食べてくれたんだけどなぁー…。」
「………。」
確かに、嬉しそうに食べていた尊奈門くんの姿を思い出した。
私のためにしてくれたこととはいえ、胸にモヤモヤしたものがひっかかった。
「………ひ…ひときれ。」
「え?」
「一切れだけ。あとは大根とか他のを入れてください………。」
たまみさんはぱぁっと嬉しそうな顔をして、私の首に抱きついた。
「約束ですよ!」
たまみさんは可愛らしい声で「指きりです!」と言い、私は彼女の小さい小指と指を絡めた。
…しまった、見栄をはりすぎた…。
私は早速激しい後悔に襲われたが、彼女の笑顔を前にやっぱりやめておきますと言うこともできず、ひきつった笑顔で固まっていた。
結局何だったのかよく分からないまま、とりあえず自室へ戻ってきた。
障子を開けようとしたとき、中からたまみさん以外の気配を感じた。
気配を消して様子を伺うと、尊奈門くんが嬉しそうな顔をしてたまみさんと何やら食べている。
また性懲りもなく…!
私は気配を消したまま天井裏へ回り込んで、すばやく尊奈門くんの背後に降りて後ろから出席簿の角を彼の頭に落とした。
「痛っ!!」
「…何をしてるんだ。」
「土井先生!!」
尊奈門くんは涙目で私を睨めあげたが、ふいに不敵に笑うと手に持っていたどんぶりを前に出した。
「ははは、土井半助!今日こそこの練り物でお前を倒す!」
「な、なにぃっ!?」
青ざめてどんぶりの中を見る。
「…ん?何も入っていないぞ?」
「なっ!?」
尊奈門くんが慌ててどんぶりの中を見て、次にたまみさんを見た。
彼女の口には食べきれていない竹輪が1本くわえられていた。
「し、しまった!!」
尊奈門くんは一瞬うろたえたが、やけくそになったのかそのまま私に苦無を向けて飛びかかった。
出席簿で払い避けようとしたが、予想外に尊奈門くんの動きが鈍くて出席簿が顔面に思いきり直撃してしまった。
「ぐっ…!」
尊奈門くんがタタラを踏んでよろめく。
「…くそっ、つい満腹になって動きが…!……今日のところは帰ってやる!」
と言い残して姿を消した。
「何だったんだ…。」
たまみさんを見ると、一気に竹輪を食べようとしたのか咳き込んでむせていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ん…んん…!」
「落ち着いて。お水要りますか?」
背中をさすってやると、たまみさんはやっと飲み込んだようで、咳き込みながら今迄の経緯を話してくれた。
「…つまり、私のために尊奈門くんの持っていた練り物を無くしてくれたと…?」
「はい…余計なお世話かなとも思ったんですけど…。最後にチクワ1本だけ残ってて、慌てて取って食べたらむせました…すみません。」
「いや、助かったよ。ありがとう…!」
私はたまみさんをぎゅっと抱きしめた。
たまみさんが嬉しそうに笑う。
「しかし、今日の夕食はおでんなのか。……外のうどん屋にでも行ってこようかな…。」
つい正直にそうこぼしてしまうと、たまみさんはとても悲しそうな顔をした。
「昨日から味を染みさせて一生懸命作ったおでん、土井先生にも食べてほしいです…。」
「いやぁ、いくらたまみさんのお願いでも練り物はちょっと…。」
「私の手作りおでん、尊奈門さんは美味しいって食べてくれたんだけどなぁー…。」
「………。」
確かに、嬉しそうに食べていた尊奈門くんの姿を思い出した。
私のためにしてくれたこととはいえ、胸にモヤモヤしたものがひっかかった。
「………ひ…ひときれ。」
「え?」
「一切れだけ。あとは大根とか他のを入れてください………。」
たまみさんはぱぁっと嬉しそうな顔をして、私の首に抱きついた。
「約束ですよ!」
たまみさんは可愛らしい声で「指きりです!」と言い、私は彼女の小さい小指と指を絡めた。
…しまった、見栄をはりすぎた…。
私は早速激しい後悔に襲われたが、彼女の笑顔を前にやっぱりやめておきますと言うこともできず、ひきつった笑顔で固まっていた。