第56話 花椀
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翌日。
朝から忍術学園を出て三人で我が家に向かった。
いつもきり丸と歩く帰路に、たまみさんも一緒にいることが嬉しかった。
きり丸もまたいつもより饒舌だった。
「きり丸、たまみさんもいるからってアルバイト入れすぎるんじゃないぞ。」
「わかってますって!」
「本当に分かってるんだろうな…。」
「今日は初日だから、洗濯と子守りと犬の散歩と…」
「どれか一つにしなさい一つに!家の掃除とか買い出しもあるんだからな。」
「お掃除なら私がやりますよ。」
「たまみさん、甘やかしたら休みの間中ずっとバイト三昧で大変な目にあいますよ!」
「ふふ、それも楽しみですね。」
たまみさんは面白そうにクスクス笑っていた。
それを見てきり丸もニシシと笑う。
そして、そんな二人を見て私も自然と笑みがこぼれたのだった。
そんなやり取りをしているうちに、あっという間に家に着いてしまった。
戸を開けて空気を入れ替え、布団を日に干す。
私が家賃を払いに行く間に、きり丸はバイトを引き受けに行き、たまみさんには掃除をお願いした。
家賃を払いに行くと、大家さんが私の背後をチラチラと覗き見た。
「どうかしましたか?」
「いや。噂の彼女はいないのかなと。」
「噂の彼女?」
「隣のおばちゃんに聞いたんだが…このまえ可愛らしい女の子を連れてきていたらしいじゃないか?」
そういえば隣のおばちゃんはたまみさんと話したことがあったな。
初めて雑炊を作ってもらったときのことだ。
「あはは、もうご存じでしたか。はい、遠い親戚なのですが…休暇の間、一緒に過ごすことに…」
言いかけると、大家さんは嬉しそうに手を叩いて笑った。
「そうかそうか!で、祝言はいつなんだ?」
「は?」
「隠すことないだろう。」
「いえ、あの、まだそんなあれじゃないので…!」
「なに、そうなのか?うーん、まぁ、あれだ。男は押しが肝心だからな、頑張れよ!」
大家さんが私の背をばんばんと叩く。
何と返してよいか分からず私は苦笑した。
微妙な顔のまま家に戻ると、きり丸はまだ戻っておらずたまみさんが掃除をしていた。
さっきの大家さんの言葉が脳裏によみがえり変に意識してしまう自分がいた。
「…たまみさん、掃除してもらってありがとうございます。それくらいで大丈夫なので、食材とか買いに行きましょうか。」
「あ、わかりました。」
たまみさんが手を止めてこちらに歩み寄る。
「…土井先生」
彼女が急に私の裾を引っ張って、遠慮がちに…甘えた声で聞いた。
「ここでは…たまみと呼んではくれないのですか…?」
「!」
かっ、可愛すぎる…!
咄嗟に声が出ず、上目使いに見つめてくる彼女の瞳をじっと見つめ返した。
「たまみって呼んだらいいじゃないですか。」
驚いて振り返ると、きり丸が大量の洗濯物を持って帰って来ていた。
「きり丸!」
またしても彼女に気をとられて気配に気づかなかった。
三禁とはよくいったものだ…。
心のなかで反省しつつ、次のきり丸の言葉に更に驚いた。
「このまえ寝ぼけた神崎先輩が、寝てる僕を土井先生の布団に連れてって寝かせたことがあったでしょう?あのとき、土井先生寝言で『たまみ…』って言ってましたよ。普段はそう呼んでるんじゃないんですか?」
「なっ…!?」
「ここには僕達以外誰もいないし、僕も誰にも言わないんで!」
きり丸は平然とした顔でそう言うと、赤くなって固まっている私の手に大量の洗濯物を押しつけた。
「じゃっ、土井先生!僕はたまみさんと買い物に行ってくるんで、それよろしくお願いしまっす!」
「へ?」
「さ、たまみさん!食材の値切り交渉の仕方をお教えしますよ!」
「う、うん。……あ、ちょっと待って…あのっ…」
きり丸に手を引かれるたまみさんが立ち止まってこちらを見た。
「…い、いってきます……半助さん…」
「!」
私はぐっとためらった後、諦めて大きく息を吐いた。
そして、頭をかいて笑った。
「気をつけて行くんだぞ。…たまみ、きり丸。」
彼女が頬を染めて嬉しそうに笑い、きり丸が満足そうな顔をした。
そうして二人が買い物に行った後、私の手元には大量の洗濯物。
きり丸にやられたな…。
私は苦笑しながら井戸に向かった。
朝から忍術学園を出て三人で我が家に向かった。
いつもきり丸と歩く帰路に、たまみさんも一緒にいることが嬉しかった。
きり丸もまたいつもより饒舌だった。
「きり丸、たまみさんもいるからってアルバイト入れすぎるんじゃないぞ。」
「わかってますって!」
「本当に分かってるんだろうな…。」
「今日は初日だから、洗濯と子守りと犬の散歩と…」
「どれか一つにしなさい一つに!家の掃除とか買い出しもあるんだからな。」
「お掃除なら私がやりますよ。」
「たまみさん、甘やかしたら休みの間中ずっとバイト三昧で大変な目にあいますよ!」
「ふふ、それも楽しみですね。」
たまみさんは面白そうにクスクス笑っていた。
それを見てきり丸もニシシと笑う。
そして、そんな二人を見て私も自然と笑みがこぼれたのだった。
そんなやり取りをしているうちに、あっという間に家に着いてしまった。
戸を開けて空気を入れ替え、布団を日に干す。
私が家賃を払いに行く間に、きり丸はバイトを引き受けに行き、たまみさんには掃除をお願いした。
家賃を払いに行くと、大家さんが私の背後をチラチラと覗き見た。
「どうかしましたか?」
「いや。噂の彼女はいないのかなと。」
「噂の彼女?」
「隣のおばちゃんに聞いたんだが…このまえ可愛らしい女の子を連れてきていたらしいじゃないか?」
そういえば隣のおばちゃんはたまみさんと話したことがあったな。
初めて雑炊を作ってもらったときのことだ。
「あはは、もうご存じでしたか。はい、遠い親戚なのですが…休暇の間、一緒に過ごすことに…」
言いかけると、大家さんは嬉しそうに手を叩いて笑った。
「そうかそうか!で、祝言はいつなんだ?」
「は?」
「隠すことないだろう。」
「いえ、あの、まだそんなあれじゃないので…!」
「なに、そうなのか?うーん、まぁ、あれだ。男は押しが肝心だからな、頑張れよ!」
大家さんが私の背をばんばんと叩く。
何と返してよいか分からず私は苦笑した。
微妙な顔のまま家に戻ると、きり丸はまだ戻っておらずたまみさんが掃除をしていた。
さっきの大家さんの言葉が脳裏によみがえり変に意識してしまう自分がいた。
「…たまみさん、掃除してもらってありがとうございます。それくらいで大丈夫なので、食材とか買いに行きましょうか。」
「あ、わかりました。」
たまみさんが手を止めてこちらに歩み寄る。
「…土井先生」
彼女が急に私の裾を引っ張って、遠慮がちに…甘えた声で聞いた。
「ここでは…たまみと呼んではくれないのですか…?」
「!」
かっ、可愛すぎる…!
咄嗟に声が出ず、上目使いに見つめてくる彼女の瞳をじっと見つめ返した。
「たまみって呼んだらいいじゃないですか。」
驚いて振り返ると、きり丸が大量の洗濯物を持って帰って来ていた。
「きり丸!」
またしても彼女に気をとられて気配に気づかなかった。
三禁とはよくいったものだ…。
心のなかで反省しつつ、次のきり丸の言葉に更に驚いた。
「このまえ寝ぼけた神崎先輩が、寝てる僕を土井先生の布団に連れてって寝かせたことがあったでしょう?あのとき、土井先生寝言で『たまみ…』って言ってましたよ。普段はそう呼んでるんじゃないんですか?」
「なっ…!?」
「ここには僕達以外誰もいないし、僕も誰にも言わないんで!」
きり丸は平然とした顔でそう言うと、赤くなって固まっている私の手に大量の洗濯物を押しつけた。
「じゃっ、土井先生!僕はたまみさんと買い物に行ってくるんで、それよろしくお願いしまっす!」
「へ?」
「さ、たまみさん!食材の値切り交渉の仕方をお教えしますよ!」
「う、うん。……あ、ちょっと待って…あのっ…」
きり丸に手を引かれるたまみさんが立ち止まってこちらを見た。
「…い、いってきます……半助さん…」
「!」
私はぐっとためらった後、諦めて大きく息を吐いた。
そして、頭をかいて笑った。
「気をつけて行くんだぞ。…たまみ、きり丸。」
彼女が頬を染めて嬉しそうに笑い、きり丸が満足そうな顔をした。
そうして二人が買い物に行った後、私の手元には大量の洗濯物。
きり丸にやられたな…。
私は苦笑しながら井戸に向かった。