第55話 紫陽花とかたつむり
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
とある雨上がりの午後。
廊下を歩いていると、中庭にたまみさんがしゃがんでいるのを見つけた。
周りには誰もおらず、一人のようだ。
私はひょいと隣に跳んだ。
「たまみさん、どうしたんですか?」
「あ、土井先生!」
たまみさんの目の前には青紫色の紫陽花が綺麗に咲いていた。
「大きなカタツムリがいるんですよ!」
たまみさんが子どものように嬉しそうに指を指す。
そこには確かに大きめのカタツムリがいた。
「こういうの嫌いじゃなかったですか?」
不思議に思って聞くと、彼女は苦笑いした。
「カタツムリは近づいてこないし、見てる分には気持ち悪くないです。…足が生えてる虫とかは…アリも嫌ですけど。」
彼女はまたカタツムリに視線を戻して面白そうに観察しはじめた。
私はそんな彼女が面白くてその横顔を眺めた。
「この、小さい触覚が動いている感じ。面白いですよねぇ。」
「たまみさんの方が面白いですけど…」
「え?」
「いえいえ、何も。」
「カタツムリの殻をとったらナメクジになるのかなぁ…。」
「カタツムリとナメクジは別の生き物ですよ。殻は体の一部だから取ると死んでしまいます。」
「えっ、ヤドカリみたいに殻を替えたりしないんですか?」
「しませんよ。自分で殻の小さな傷とかも治せますし。」
「そうなんですかぁ。よく似てるけど違うんですね。この、動いたところにきらきらした跡がつくのも同じなのに…。」
「どっちも乾燥が苦手だから、体をぬるぬるさせて乾燥してしまわないようにしてるんですよ。」
「へ~。土井先生ってほんと物知りですね」
たまみさんが微笑んでこちらを見た。
こんな知識がこんなところで役に立つとは。
何だか照れくさくてはははと頭をかいた。
「ナメクジと似てるから、喜三太くんにあげたら喜ぶかなぁと思ったんですけど、違う生き物ならやめとこうかなぁ。」
たまみさんが腰を叩きながら立ち上がった。
「紫陽花も綺麗ですねぇ。雨上がりできらきらしてます。」
その言葉通り、紫陽花の花や葉の上にはまだ雫が残っていて、太陽の光を反射して煌めいていた。
「…たまみさんは花が好きですね。」
彼女はにこりと頷いて意味ありげに私を見上げた。
「はい、花とか綺麗な景色をのんびり見るのが好きなんです。」
「…それは、また連れてってほしいってことかな?」
「連れてってくれるんですか?」
彼女が期待に頬を染めて聞いてくる。
嬉しそうな彼女に私も嬉しくなって、その頭をぽんと撫でた。
「じゃあ、また補習が入らないように頑張ります。」
「私も頑張ります!」
二人で笑いあい、ふと足元を見て驚いた。
「たまみさん、何で裸足なんですか?」
彼女は裸足で足元が泥だらけになっていた。
「あ、これは…地面が泥々だったから、足袋と草履が泥まみれになると洗うの大変だなぁと思って脱いだんです。」
悪戯を見つかった子どものようにえへへと笑う彼女に私はため息をついた。
「地面にまきびしでも落ちてたらどうするんですか。踏んだら怪我するでしょう。」
「す、すみません…。」
たまみさんはしゅんとして私の足元を見た。
私は廊下からここまで歩かずに跳んできたうえに、草の上に着地していたので泥はほとんどついていない。
「しょうがないなぁ…。」
私はたまみさんを横抱きに抱えた。
「ど、土井先生!?」
「つかまって。」
たまみさんがギュッと私の首に腕を回すと、私は廊下まで跳躍して戻った。
廊下には、たまみさんの足袋と水をはった桶と手拭いが置いてあった。
「ありがとうございます。手拭いとかは先に用意していたので…あとは大丈夫です。」
私はゆっくりと彼女を廊下に座らせた。
「じっとして。」
「え?」
私は桶の水をゆっくり彼女の足にかけた。
水で泥が流れ落ちていく。
ひんやりとした水が彼女の足を伝った。
白く華奢な足首が目に入る。
…綺麗な足だな…。
「あ、ありがとうございます…。」
彼女が恥ずかしそうに俯いた。
水をかけながら、泥が落ちにくいところを指でこすると、彼女の体がくすぐったそうにぴくりと動く。
…可愛い。
その表情に悪戯心が刺激された。
手拭いをとって、水を拭き取ろうとするとたまみさんに止められた。
「ど、土井先生!あとは大丈夫なので…。」
顔を赤くして困ったように戸惑う彼女。
私はそれを無視して彼女の柔らかい足を手拭いで拭いていった。
「…………。」
真っ赤になってその様子を見つめる彼女。
水で冷たくなった足。
白い肌。
私は彼女のかかとに手を添えた。
白く細い足を軽く持ち上げる。
そして、私は身を屈めて目を閉じ…
その滑らかな足の甲に、ゆっくり口づけた。
「!!!」
たまみさんが驚いて口元に手を当てた。
私はハッと我にかえり、慌ててその場に立ち上がった。
「…もう、裸足で歩いちゃだめですよ。」
私はそのまま彼女の顔も見ずに歩き去った。
廊下の角を曲がって、徐々に歩く速度が落ち、壁に背をもたれる。
口元を手で隠して、今更ながら顔に熱が集まるのを感じた。
自分でも、なぜあのようなことをしたのか分からない。
愛しくて、半ば衝動的に、気がついたら口づけしていた。
「…昼間っから、私は何をしているんだ…!」
忍の教師のくせに、赤くなる顔を戻すことができなくて、私は足早に自室へ戻った。
廊下を歩いていると、中庭にたまみさんがしゃがんでいるのを見つけた。
周りには誰もおらず、一人のようだ。
私はひょいと隣に跳んだ。
「たまみさん、どうしたんですか?」
「あ、土井先生!」
たまみさんの目の前には青紫色の紫陽花が綺麗に咲いていた。
「大きなカタツムリがいるんですよ!」
たまみさんが子どものように嬉しそうに指を指す。
そこには確かに大きめのカタツムリがいた。
「こういうの嫌いじゃなかったですか?」
不思議に思って聞くと、彼女は苦笑いした。
「カタツムリは近づいてこないし、見てる分には気持ち悪くないです。…足が生えてる虫とかは…アリも嫌ですけど。」
彼女はまたカタツムリに視線を戻して面白そうに観察しはじめた。
私はそんな彼女が面白くてその横顔を眺めた。
「この、小さい触覚が動いている感じ。面白いですよねぇ。」
「たまみさんの方が面白いですけど…」
「え?」
「いえいえ、何も。」
「カタツムリの殻をとったらナメクジになるのかなぁ…。」
「カタツムリとナメクジは別の生き物ですよ。殻は体の一部だから取ると死んでしまいます。」
「えっ、ヤドカリみたいに殻を替えたりしないんですか?」
「しませんよ。自分で殻の小さな傷とかも治せますし。」
「そうなんですかぁ。よく似てるけど違うんですね。この、動いたところにきらきらした跡がつくのも同じなのに…。」
「どっちも乾燥が苦手だから、体をぬるぬるさせて乾燥してしまわないようにしてるんですよ。」
「へ~。土井先生ってほんと物知りですね」
たまみさんが微笑んでこちらを見た。
こんな知識がこんなところで役に立つとは。
何だか照れくさくてはははと頭をかいた。
「ナメクジと似てるから、喜三太くんにあげたら喜ぶかなぁと思ったんですけど、違う生き物ならやめとこうかなぁ。」
たまみさんが腰を叩きながら立ち上がった。
「紫陽花も綺麗ですねぇ。雨上がりできらきらしてます。」
その言葉通り、紫陽花の花や葉の上にはまだ雫が残っていて、太陽の光を反射して煌めいていた。
「…たまみさんは花が好きですね。」
彼女はにこりと頷いて意味ありげに私を見上げた。
「はい、花とか綺麗な景色をのんびり見るのが好きなんです。」
「…それは、また連れてってほしいってことかな?」
「連れてってくれるんですか?」
彼女が期待に頬を染めて聞いてくる。
嬉しそうな彼女に私も嬉しくなって、その頭をぽんと撫でた。
「じゃあ、また補習が入らないように頑張ります。」
「私も頑張ります!」
二人で笑いあい、ふと足元を見て驚いた。
「たまみさん、何で裸足なんですか?」
彼女は裸足で足元が泥だらけになっていた。
「あ、これは…地面が泥々だったから、足袋と草履が泥まみれになると洗うの大変だなぁと思って脱いだんです。」
悪戯を見つかった子どものようにえへへと笑う彼女に私はため息をついた。
「地面にまきびしでも落ちてたらどうするんですか。踏んだら怪我するでしょう。」
「す、すみません…。」
たまみさんはしゅんとして私の足元を見た。
私は廊下からここまで歩かずに跳んできたうえに、草の上に着地していたので泥はほとんどついていない。
「しょうがないなぁ…。」
私はたまみさんを横抱きに抱えた。
「ど、土井先生!?」
「つかまって。」
たまみさんがギュッと私の首に腕を回すと、私は廊下まで跳躍して戻った。
廊下には、たまみさんの足袋と水をはった桶と手拭いが置いてあった。
「ありがとうございます。手拭いとかは先に用意していたので…あとは大丈夫です。」
私はゆっくりと彼女を廊下に座らせた。
「じっとして。」
「え?」
私は桶の水をゆっくり彼女の足にかけた。
水で泥が流れ落ちていく。
ひんやりとした水が彼女の足を伝った。
白く華奢な足首が目に入る。
…綺麗な足だな…。
「あ、ありがとうございます…。」
彼女が恥ずかしそうに俯いた。
水をかけながら、泥が落ちにくいところを指でこすると、彼女の体がくすぐったそうにぴくりと動く。
…可愛い。
その表情に悪戯心が刺激された。
手拭いをとって、水を拭き取ろうとするとたまみさんに止められた。
「ど、土井先生!あとは大丈夫なので…。」
顔を赤くして困ったように戸惑う彼女。
私はそれを無視して彼女の柔らかい足を手拭いで拭いていった。
「…………。」
真っ赤になってその様子を見つめる彼女。
水で冷たくなった足。
白い肌。
私は彼女のかかとに手を添えた。
白く細い足を軽く持ち上げる。
そして、私は身を屈めて目を閉じ…
その滑らかな足の甲に、ゆっくり口づけた。
「!!!」
たまみさんが驚いて口元に手を当てた。
私はハッと我にかえり、慌ててその場に立ち上がった。
「…もう、裸足で歩いちゃだめですよ。」
私はそのまま彼女の顔も見ずに歩き去った。
廊下の角を曲がって、徐々に歩く速度が落ち、壁に背をもたれる。
口元を手で隠して、今更ながら顔に熱が集まるのを感じた。
自分でも、なぜあのようなことをしたのか分からない。
愛しくて、半ば衝動的に、気がついたら口づけしていた。
「…昼間っから、私は何をしているんだ…!」
忍の教師のくせに、赤くなる顔を戻すことができなくて、私は足早に自室へ戻った。