第51話 自然のなかで
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みんなで手を繋いで暗闇のなかをそろりそろりと歩く。
一人が転ぶと全員が転びそうになったり危うい足取りのなか、私はみんなの最後尾を歩く土井先生の袖をつかんでいた。
つまづきそうになって思わず強く袖をひっぱってしまう。
すると、土井先生は何も言わず、誰にも見えないように隠しながら私の手をぎゅっと握ってくれた。
温かくて大きな手。
大好きなその手を頼りに私は暗闇のなか歩を進めた。
暫くすると、みんなの歩みが止まって山田先生の声がした。
「みんな、よく目をこらして見てみなさい。」
立ち止まってじっと闇に目をこらしていると、小さな光が揺らめいた。
「これは…!」
ひとつ、またひとつと、その小さな光があちらこちらで揺らめく。
「蛍…!」
近くで川の流れる微かな音がして、その水面や草のまわり、空にも、よく見るとたくさんの蛍が飛んでいた。
「すごい…!」
幻想的にふわふわと煌めく小さな光達。
光っては消え、消えてはまた光り、みんなで蛍の飛ぶ方向を目で追った。
「こんなにたくさん…!」
私が感動していると、みんなが列を崩して思い思いの方に動いていく音がした。
「こっちの方にいっぱいいるよー!」
「え、どこどこ~?」
「あっ、こらしんべヱ、喜三太!川の近くに行きすぎると落ちるぞ!」
土井先生が慌てて前の方に飛んでいった。
私はその場にじっとしたまま、みんなの楽しそうな声と幻想的な光を楽しんだ。
いつにもまして無邪気に蛍を追いかけるみんなが可愛かった。
「この辺りは、この時期になると蛍が飛ぶ。」
いつの間にか隣に来ていた大木先生が静かに言った。
「…こうして、自然のなかで作物を育てて、こういう四季を感じながら暮らしていくのも悪くないぞ。」
「…そうですね。」
「手を出してみろ。」
「?」
言われるがままに両の手のひらを前に出すと、その上に大木先生の手が乗せられた。
その手がそっと離れると、中から綺麗に光る蛍の姿が見えた。
「わぁ…」
手の上で淡く光る蛍に見惚れた次の瞬間。
手のひらに蛍の手足が動く感触がした。
「ひやっ!!」
慌てて手をひっこめると、蛍はふわふわと空へ飛んでいった。
「どうした?」
「あ、その、蛍の光はすごく綺麗なんですけど…私、虫は苦手でして…。」
あははと苦笑すると、土井先生が慌ててやってきた。
「たまみさん、何かありましたか?」
「いえ、手に蛍を乗せてもらって驚いただけです…。」
「あぁ…たまみさん、虫苦手ですもんね。」
「虫が苦手か。そんなことでは農家の嫁は厳しいぞ。」
「ならないから大丈夫です。」
「まぁ、たまみは環境適応能力がありそうだからそのうち慣れるだろうが。」
「だから、なりませんって!」
大木先生は人の話も聞かずにはははと笑っていた。
「さぁ、みんなそろそろ帰るぞー!」
山田先生の号令で、みんながまた一列に並ぶ。
大木先生が山田先生の前に進み頭を下げた。
「では私はここで。」
「おお、大木先生またラッキョウ漬けができたらよろしくお願いします。」
「はい。野村に食わせる為にも大量に持っていくので、楽しみにしといてください。」
「大木先生、今日はありがとうございました。」
「ああ、土井先生も帰りの道中、引率気をつけてな。」
土井先生の挨拶がやけにあっさりしてるなと思ったとき、大木先生に呼び止められた。
「たまみ。」
「はい?」
「これで杭瀬村がどういうところか分かったな。いつでも遠慮せず来ていいから…なんならこのまま学園に行かずここに残っても」
「大丈夫です。私の居場所は学園にあるので…お気持ちだけありがとうございます。」
きっぱりと言いきると、大木先生は気にする風でもなく「そうか、また気が変わったらいつでも来い。」と笑っていた。
またみんなで一列になって歩きだす。
私は土井先生の手を握りながら遅れないように頑張った。
ふと、土井先生が歩を緩める。
前を歩く乱太郎くん達と距離があいた。
「…たまみさんの居場所は、ここにありますから。…学園じゃなくて。」
土井先生は手を強く握った。
私はその手を握り返して頬を染めた。
「…来年は、二人で、蛍を見に来ましょう。」
「…はい。」
私は土井先生の腕に寄り添って微笑んだ。
一人が転ぶと全員が転びそうになったり危うい足取りのなか、私はみんなの最後尾を歩く土井先生の袖をつかんでいた。
つまづきそうになって思わず強く袖をひっぱってしまう。
すると、土井先生は何も言わず、誰にも見えないように隠しながら私の手をぎゅっと握ってくれた。
温かくて大きな手。
大好きなその手を頼りに私は暗闇のなか歩を進めた。
暫くすると、みんなの歩みが止まって山田先生の声がした。
「みんな、よく目をこらして見てみなさい。」
立ち止まってじっと闇に目をこらしていると、小さな光が揺らめいた。
「これは…!」
ひとつ、またひとつと、その小さな光があちらこちらで揺らめく。
「蛍…!」
近くで川の流れる微かな音がして、その水面や草のまわり、空にも、よく見るとたくさんの蛍が飛んでいた。
「すごい…!」
幻想的にふわふわと煌めく小さな光達。
光っては消え、消えてはまた光り、みんなで蛍の飛ぶ方向を目で追った。
「こんなにたくさん…!」
私が感動していると、みんなが列を崩して思い思いの方に動いていく音がした。
「こっちの方にいっぱいいるよー!」
「え、どこどこ~?」
「あっ、こらしんべヱ、喜三太!川の近くに行きすぎると落ちるぞ!」
土井先生が慌てて前の方に飛んでいった。
私はその場にじっとしたまま、みんなの楽しそうな声と幻想的な光を楽しんだ。
いつにもまして無邪気に蛍を追いかけるみんなが可愛かった。
「この辺りは、この時期になると蛍が飛ぶ。」
いつの間にか隣に来ていた大木先生が静かに言った。
「…こうして、自然のなかで作物を育てて、こういう四季を感じながら暮らしていくのも悪くないぞ。」
「…そうですね。」
「手を出してみろ。」
「?」
言われるがままに両の手のひらを前に出すと、その上に大木先生の手が乗せられた。
その手がそっと離れると、中から綺麗に光る蛍の姿が見えた。
「わぁ…」
手の上で淡く光る蛍に見惚れた次の瞬間。
手のひらに蛍の手足が動く感触がした。
「ひやっ!!」
慌てて手をひっこめると、蛍はふわふわと空へ飛んでいった。
「どうした?」
「あ、その、蛍の光はすごく綺麗なんですけど…私、虫は苦手でして…。」
あははと苦笑すると、土井先生が慌ててやってきた。
「たまみさん、何かありましたか?」
「いえ、手に蛍を乗せてもらって驚いただけです…。」
「あぁ…たまみさん、虫苦手ですもんね。」
「虫が苦手か。そんなことでは農家の嫁は厳しいぞ。」
「ならないから大丈夫です。」
「まぁ、たまみは環境適応能力がありそうだからそのうち慣れるだろうが。」
「だから、なりませんって!」
大木先生は人の話も聞かずにはははと笑っていた。
「さぁ、みんなそろそろ帰るぞー!」
山田先生の号令で、みんながまた一列に並ぶ。
大木先生が山田先生の前に進み頭を下げた。
「では私はここで。」
「おお、大木先生またラッキョウ漬けができたらよろしくお願いします。」
「はい。野村に食わせる為にも大量に持っていくので、楽しみにしといてください。」
「大木先生、今日はありがとうございました。」
「ああ、土井先生も帰りの道中、引率気をつけてな。」
土井先生の挨拶がやけにあっさりしてるなと思ったとき、大木先生に呼び止められた。
「たまみ。」
「はい?」
「これで杭瀬村がどういうところか分かったな。いつでも遠慮せず来ていいから…なんならこのまま学園に行かずここに残っても」
「大丈夫です。私の居場所は学園にあるので…お気持ちだけありがとうございます。」
きっぱりと言いきると、大木先生は気にする風でもなく「そうか、また気が変わったらいつでも来い。」と笑っていた。
またみんなで一列になって歩きだす。
私は土井先生の手を握りながら遅れないように頑張った。
ふと、土井先生が歩を緩める。
前を歩く乱太郎くん達と距離があいた。
「…たまみさんの居場所は、ここにありますから。…学園じゃなくて。」
土井先生は手を強く握った。
私はその手を握り返して頬を染めた。
「…来年は、二人で、蛍を見に来ましょう。」
「…はい。」
私は土井先生の腕に寄り添って微笑んだ。