第114、52話 11月11日
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「えー、今日は11月11日。みんな、何の日か分かるか?」
一年は組の教室で土井先生が質問した。
すると真っ先にしんべヱくんが手を挙げる。
「はい!ポッキーの日です!」
「ぽっきぃ?何だそれは。」
「棒状のお菓子です!」
「そんなお菓子があるのか。だが残念ながらそうじゃない。今日、11月11日は……」
土井先生は得意気に微笑むと、勢いよく手を上げた。
「チョークの日!だっ!!」
「「「「「ええ~っ」」」」」」
土井先生の手には白いチョークがたくさん握られていた。
縦に並ぶ4本のチョーク…
11月11日…
うーん、確かに似ている。
チョークの日。
その響きにイヤな予感がしたのか、生徒のみんなは当惑した顔でざわついた。
「土井先生!チョークの日とは一体なにをするのですか?」
「庄ちゃん、それ聞いちゃだめ…!」
「よくぞ聞いてくれた庄左ヱ門!」
土井先生がにこやかに教壇に手をつく。
「ここに11本のチョークを用意した。今日はこのチョークをきっちり使いきるまで黒板に板書するから、お前たちもちゃあんと書き写して覚えるんだぞ!」
「「「「「ええええ~っ!!」」」」」」」
みんなが青ざめてどよめいた。
11本のチョークを使いきるまでって、結構な量だよね…。
すると、きりちゃんが乱太郎くんに小声で話しかけた。
「おい、居眠りしたら土井先生チョーク投げるだろう?みんなで居眠りしてサッサとチョークを使い果たしてもらおうぜ。」
「きり丸聞こえてるぞ。ちなみに、投げた本数はノーカウントだ。11本分みっちり書くからな!」
土井先生が何だかやる気に満ち溢れている。
なぜかウキウキと板書を始める姿も可愛いすぎるし、教科書を説明する声も知的な表情も仕草もかっこよすぎるし、長時間みっちり授業だとか私としてはむしろご褒美がすぎる…!!
至福の時間でしかない…!!
なんてことを考えながら、私は顔をにやけさせないようにキリリと構えてみんなが脱線したり居眠りしたりしないよう補佐に努めた。
しかし一年生はまだまだ子ども。
やがて集中力も落ちだした、そのとき…。
「土井半助、今日が何の日か知ってるかー!?」
窓から勢いよく諸泉尊奈門さんが入ってきた。
土井先生は困った顔をして出席簿を手にする。
「いま授業中なんだ。後にしてくれないかな。」
「いいからこれを見ろぉっ!!」
「!!!!?」
諸泉さんが取り出したのは、4本のチクワだった。
「11月11日は、チクワの日だーっ!!!」
「ヒッ…!!ひえええぇっ!!」
諸泉さんが隠し持ったお鍋から大量のチクワを投げてきた。
青ざめた土井先生が必死にそれを避ける。
そんな土井先生もまた可愛い…って、そんなバヤイじゃなかった!!
私は土井先生を庇おうと足を踏み出した。
と、そのとき…
「土井先生をいじめるなー!」
しんべヱくんが見事な動きで、投げられたチクワを空中でヒョイヒョイと食べていった。
「しっ、しんべヱ…!!!」
涙目でしんべヱくんを見上げて目を輝かせる土井先生。
「みんな、土井先生を守れー!」
更に庄左ヱ門くんのかけ声で、一年は組のみんなが一斉に諸泉さんに飛びかかった。
「いてててて!!こら、噛みつくな…!!」
「わぁっ!?」
諸泉さんが腕を振り払うと、その勢いで乱太郎くんが壁の方へと飛ばされた。
「乱太郎っ!」
すんでのところで土井先生が乱太郎くんを抱えて庇い、その勢いで背中を壁にぶつけた。
その隙を狙い諸泉さんが苦無を構えて土井先生に飛びかかろうとした、その瞬間。
ズビシッッ!!
諸泉さんの動きより先に、チョークがその額めがけて撃たれていた。
おでこを強打された諸泉さんが手で額を押さえ、たたらを踏んでよろめく。
「生徒に、手を出すな…ッ!!」
土井先生の目が細く鋭く光った。
低い声にピリッと空気が固まる。
静かに、けれど威圧感をもって、土井先生が更にチョークを飛ばそうと構えた。
そしてその手が微かに動いた瞬間、諸泉さんは素早く窓へと飛び退いた。
「くそっ…、今日はこの辺で勘弁してやる…!!」
チクワ作戦の失敗を悟った諸泉さんは戦況不利とみたのか素早く窓から外へと逃げていった。
「土井先生、大丈夫ですか!?」
心配そうに見上げる乱太郎くんの頭を、土井先生は優しい眼差しで撫でた。
「ああ、みんなありがとう…!」
土井先生を守ろうとした1年は組のみんな。
その優しさと勇気に感動する土井先生。
土井先生は微笑んでみんなの頭を撫でた。
嬉しそうなよいこ達の笑顔。
土井先生も満面の笑みで嬉しそうにしながら「よし!」と背筋を伸ばして立ち上がった。
「ではお前たちの為に、私も頑張って黒板に書いて教えるからな!みんな席につきなさい!」
「「「「「え~っ!!?」」」」」」
こうして、さんざん板書してくたくたになったみんな。
夜、いつもより早く眠りについたようだった。
私は夜中、肩が疲れたと言う土井先生の肩と背中を揉んであげた。
「あんなに書いたらそりゃ腕も疲れますよ、大丈夫ですか?」
「うん、すまない…気持ちいいよ。」
逞しい体だなぁなんて惚れ惚れしながら肩を揉んでいると、土井先生が不意に私を振り返った。
「そういえばチョークの日…たまみのためにまだ何も書いてなかったな。」
私はフフフと笑ってその頬をぷにぷに指でつついた。
「じゃあ…、私の好きなところを書いてくれますか?」
「ええ…?それは…んー、まいったなぁ…。」
「書けないですか?」
「……うん」
彼が私の手に手を重ねた。
「黒板に書ききれないよ。」
そんな言葉に二人で微笑みあい、おでこをコツンと付き合わせて笑ったのだった。
一年は組の教室で土井先生が質問した。
すると真っ先にしんべヱくんが手を挙げる。
「はい!ポッキーの日です!」
「ぽっきぃ?何だそれは。」
「棒状のお菓子です!」
「そんなお菓子があるのか。だが残念ながらそうじゃない。今日、11月11日は……」
土井先生は得意気に微笑むと、勢いよく手を上げた。
「チョークの日!だっ!!」
「「「「「ええ~っ」」」」」」
土井先生の手には白いチョークがたくさん握られていた。
縦に並ぶ4本のチョーク…
11月11日…
うーん、確かに似ている。
チョークの日。
その響きにイヤな予感がしたのか、生徒のみんなは当惑した顔でざわついた。
「土井先生!チョークの日とは一体なにをするのですか?」
「庄ちゃん、それ聞いちゃだめ…!」
「よくぞ聞いてくれた庄左ヱ門!」
土井先生がにこやかに教壇に手をつく。
「ここに11本のチョークを用意した。今日はこのチョークをきっちり使いきるまで黒板に板書するから、お前たちもちゃあんと書き写して覚えるんだぞ!」
「「「「「ええええ~っ!!」」」」」」」
みんなが青ざめてどよめいた。
11本のチョークを使いきるまでって、結構な量だよね…。
すると、きりちゃんが乱太郎くんに小声で話しかけた。
「おい、居眠りしたら土井先生チョーク投げるだろう?みんなで居眠りしてサッサとチョークを使い果たしてもらおうぜ。」
「きり丸聞こえてるぞ。ちなみに、投げた本数はノーカウントだ。11本分みっちり書くからな!」
土井先生が何だかやる気に満ち溢れている。
なぜかウキウキと板書を始める姿も可愛いすぎるし、教科書を説明する声も知的な表情も仕草もかっこよすぎるし、長時間みっちり授業だとか私としてはむしろご褒美がすぎる…!!
至福の時間でしかない…!!
なんてことを考えながら、私は顔をにやけさせないようにキリリと構えてみんなが脱線したり居眠りしたりしないよう補佐に努めた。
しかし一年生はまだまだ子ども。
やがて集中力も落ちだした、そのとき…。
「土井半助、今日が何の日か知ってるかー!?」
窓から勢いよく諸泉尊奈門さんが入ってきた。
土井先生は困った顔をして出席簿を手にする。
「いま授業中なんだ。後にしてくれないかな。」
「いいからこれを見ろぉっ!!」
「!!!!?」
諸泉さんが取り出したのは、4本のチクワだった。
「11月11日は、チクワの日だーっ!!!」
「ヒッ…!!ひえええぇっ!!」
諸泉さんが隠し持ったお鍋から大量のチクワを投げてきた。
青ざめた土井先生が必死にそれを避ける。
そんな土井先生もまた可愛い…って、そんなバヤイじゃなかった!!
私は土井先生を庇おうと足を踏み出した。
と、そのとき…
「土井先生をいじめるなー!」
しんべヱくんが見事な動きで、投げられたチクワを空中でヒョイヒョイと食べていった。
「しっ、しんべヱ…!!!」
涙目でしんべヱくんを見上げて目を輝かせる土井先生。
「みんな、土井先生を守れー!」
更に庄左ヱ門くんのかけ声で、一年は組のみんなが一斉に諸泉さんに飛びかかった。
「いてててて!!こら、噛みつくな…!!」
「わぁっ!?」
諸泉さんが腕を振り払うと、その勢いで乱太郎くんが壁の方へと飛ばされた。
「乱太郎っ!」
すんでのところで土井先生が乱太郎くんを抱えて庇い、その勢いで背中を壁にぶつけた。
その隙を狙い諸泉さんが苦無を構えて土井先生に飛びかかろうとした、その瞬間。
ズビシッッ!!
諸泉さんの動きより先に、チョークがその額めがけて撃たれていた。
おでこを強打された諸泉さんが手で額を押さえ、たたらを踏んでよろめく。
「生徒に、手を出すな…ッ!!」
土井先生の目が細く鋭く光った。
低い声にピリッと空気が固まる。
静かに、けれど威圧感をもって、土井先生が更にチョークを飛ばそうと構えた。
そしてその手が微かに動いた瞬間、諸泉さんは素早く窓へと飛び退いた。
「くそっ…、今日はこの辺で勘弁してやる…!!」
チクワ作戦の失敗を悟った諸泉さんは戦況不利とみたのか素早く窓から外へと逃げていった。
「土井先生、大丈夫ですか!?」
心配そうに見上げる乱太郎くんの頭を、土井先生は優しい眼差しで撫でた。
「ああ、みんなありがとう…!」
土井先生を守ろうとした1年は組のみんな。
その優しさと勇気に感動する土井先生。
土井先生は微笑んでみんなの頭を撫でた。
嬉しそうなよいこ達の笑顔。
土井先生も満面の笑みで嬉しそうにしながら「よし!」と背筋を伸ばして立ち上がった。
「ではお前たちの為に、私も頑張って黒板に書いて教えるからな!みんな席につきなさい!」
「「「「「え~っ!!?」」」」」」
こうして、さんざん板書してくたくたになったみんな。
夜、いつもより早く眠りについたようだった。
私は夜中、肩が疲れたと言う土井先生の肩と背中を揉んであげた。
「あんなに書いたらそりゃ腕も疲れますよ、大丈夫ですか?」
「うん、すまない…気持ちいいよ。」
逞しい体だなぁなんて惚れ惚れしながら肩を揉んでいると、土井先生が不意に私を振り返った。
「そういえばチョークの日…たまみのためにまだ何も書いてなかったな。」
私はフフフと笑ってその頬をぷにぷに指でつついた。
「じゃあ…、私の好きなところを書いてくれますか?」
「ええ…?それは…んー、まいったなぁ…。」
「書けないですか?」
「……うん」
彼が私の手に手を重ねた。
「黒板に書ききれないよ。」
そんな言葉に二人で微笑みあい、おでこをコツンと付き合わせて笑ったのだった。