第114.5話 魔女の誘惑
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は半子さんと伝子さんを交互に眺めた。
うーん、利子さんも半子さんもだめだった。
私はうまくお菓子を貰えるかな…。
もし貰えたとして、三人に「命令」とやらができるなら何をお願いしよう。
…やっぱりあれかな、普段はできないような…そう、みんなで…伝子さんと半子さんと利子さんと4人で、可愛い女の子の格好してお団子を食べに行くとか!
ん~想像しただけで楽しそう…!
顔がにやけてしまう。
そんなことを考えながら待っていると、しばらくしてまた一人食堂に入ってきた。
「ん?こんなところで何してるんだ?」
「あ、大木先生…!」
「たまみ、久しぶりだな。」
大木先生が片手を上げながら食堂に入ってきた。
その頭には茶色い獣耳、お尻には大きな尻尾、狼のような手と足。
「大木先生は…狼人間の仮装ですか?」
「ああ、なかなか似合うだろう。…たまみも随分可愛らしい格好をしてるじゃないか。」
マントを元の向きに戻していたので、大木先生が私の胸元をじっと眺めた。
すかさず土井先生が後ろから抱きしめるようにマントの前をグイッと閉じ、大木先生を睨み付けた。
「じろじろ見ないでください。」
「土井先生、そんな大胆な衣装よく許したな。」
「許してません!」
大木先生は土井先生に目線を移すとぱちくりと瞬きし、次いで後ろの伝子さんを見た。
「伝子さんに半子さん…これはこれは…お揃いで…くくっ、いや楽しそうでなにより!」
大木先生は色々と察したのかハハハと大声で笑って食堂の奥を覗いた。
「さて、ちょっと水を貰いに来たのだが…」
「あ、ちょうどお湯を沸かしてるのでお茶いれましょうか?」
「じゃあ頼もう。」
大木先生が椅子に座り狼の手袋を外し、私は食堂の奥にお茶をいれに行った。
「ではお茶の礼に…一緒に食べるか?さっきお菓子を貰ってな。」
大木先生が懐から取り出したのはまさに今私達が狙っているお菓子の包みだった。
私はパッと顔を輝かせてお茶を運んだ。
「えっ!いいんですか!?」
「たしか甘いものが好きだろう。」
「はい!ありがとうございま……」
そのとき。
お茶を出そうと少しかがんだ瞬間、地面についていたマントを自ら踏んでしまった。
前のめりにバランスを崩す。
座っている大木先生にお茶をかけないよう反射的に腕を遠ざけると、大きく体勢を崩して大木先生の上に倒れこむようにつんのめった。
さらに、踏んだ勢いで首元の紐が取れてハラリと落ちるマント。
「わっ!!」
「ぅおっ!?」
咄嗟に抱き止める大木先生。
「すっ、すみませ…っ!」
慌てて離れて立ち上がろうとした。
が、大木先生が私の腰に腕を回してぐっと抱き寄せた。
「…本当の狼というやつを…教えてやろうか。」
耳元で囁く色を含んだ低く鋭い声。
驚き固まると、大木先生は私の胸元に顔を埋めて更に抱き寄せ…
バシャッ
「あっっつ…ッ!!!?」
何事かと見上げると。
私にも分かる殺気をまとった半子さんが、逆さまに持った湯呑みからポタポタと雫を落とし立っていた。
熱いお茶を頭から背中にかけられて怒る大木先生。
「なっ、なにを…っ!!!」
「あたま冷やしてください、大木せんせ?」
冷たい声音。
半子さんの瞳がスゥッと冷ややかに細められた。
うわっ…その表情…ちょっとドキドキするんですけど…!?
「はあぁっ!?冷やすどころか熱いだろうがぁっ!!」
半子さんに見惚れる私と違い、大木先生は本気で怒っていた。
お茶はすぐに飲めるよう冷ましておいたから火傷はしないと思うけれど、それでもかなり熱いはず。
大木先生は額から流れるお茶をぐっと腕で拭い立ち上がった。
半子さんがぐいっと私の腕を引いて引き寄せる。
床に落ちたマントを拾うと、ぐるりと私に巻き付けた。
「さがって。」
一言。
けれど本気で怒っていることは明白で。
有無を言わさぬ口調に私はただ頷いた。
どうしよう…。
私が転んだせいでえらいことになってきた…!
あぁでも冷たく怒った半子さんも素敵…!
半助さんとはまた違う魅力が…!
…って、今はそんなことを言っている場合じゃなかった!
臨戦態勢に入った二人にどうしたら良いか分からずオロオロする。
と、そのとき…
「雅之助ー!!ここに居たか!!」
吸血鬼姿の野村先生が勢いよく入ってきた。
「見て分からんか、取り込み中だ。あとにしろ。」
「ふざけるな!貴様だろう、私の部屋をラッキョウだらけにしたのは!!」
「吸血鬼に仮装したと聞いてな。吸血鬼はラッキョウが嫌いなんだろう?大人しく成仏しろ。」
「馬鹿を言え!それはラッキョウじゃなくてニンニクだっ……!」
その瞬間。
なんの前触れもなく、伝子さんが野村先生に口付けそうな勢いでヌッと詰め寄った。
突然の大顔面に驚きと恐怖で尻餅をつきそうになる野村先生。
「なっ、南無三ーっ!」
妖怪と思ったのか。
怯みながら反射的に手裏剣やら色々なものを投げて飛び退く野村先生。
伝子さんは手裏剣をササッと避けたと思ったけれど、カッと目を見開くとぴたりと止まり飛来物を手でつかんだ。
「あらん、野村先生。こちらはありがたぁく頂戴しますわよ。」
ニヤリと笑う伝子さんの手中には。
例のお菓子の包みが入っていた…。
「うふふ、私の勝ちね。」
飄々と勝ち誇る伝子さん。
愕然として目を合わせる私と半子さん。
状況が飲み込めず頭の上にはてなマークを浮かべる大木先生と野村先生。
……………。
かくして、一言も発することなく伝子さんが優勝となったのだった。
うーん、利子さんも半子さんもだめだった。
私はうまくお菓子を貰えるかな…。
もし貰えたとして、三人に「命令」とやらができるなら何をお願いしよう。
…やっぱりあれかな、普段はできないような…そう、みんなで…伝子さんと半子さんと利子さんと4人で、可愛い女の子の格好してお団子を食べに行くとか!
ん~想像しただけで楽しそう…!
顔がにやけてしまう。
そんなことを考えながら待っていると、しばらくしてまた一人食堂に入ってきた。
「ん?こんなところで何してるんだ?」
「あ、大木先生…!」
「たまみ、久しぶりだな。」
大木先生が片手を上げながら食堂に入ってきた。
その頭には茶色い獣耳、お尻には大きな尻尾、狼のような手と足。
「大木先生は…狼人間の仮装ですか?」
「ああ、なかなか似合うだろう。…たまみも随分可愛らしい格好をしてるじゃないか。」
マントを元の向きに戻していたので、大木先生が私の胸元をじっと眺めた。
すかさず土井先生が後ろから抱きしめるようにマントの前をグイッと閉じ、大木先生を睨み付けた。
「じろじろ見ないでください。」
「土井先生、そんな大胆な衣装よく許したな。」
「許してません!」
大木先生は土井先生に目線を移すとぱちくりと瞬きし、次いで後ろの伝子さんを見た。
「伝子さんに半子さん…これはこれは…お揃いで…くくっ、いや楽しそうでなにより!」
大木先生は色々と察したのかハハハと大声で笑って食堂の奥を覗いた。
「さて、ちょっと水を貰いに来たのだが…」
「あ、ちょうどお湯を沸かしてるのでお茶いれましょうか?」
「じゃあ頼もう。」
大木先生が椅子に座り狼の手袋を外し、私は食堂の奥にお茶をいれに行った。
「ではお茶の礼に…一緒に食べるか?さっきお菓子を貰ってな。」
大木先生が懐から取り出したのはまさに今私達が狙っているお菓子の包みだった。
私はパッと顔を輝かせてお茶を運んだ。
「えっ!いいんですか!?」
「たしか甘いものが好きだろう。」
「はい!ありがとうございま……」
そのとき。
お茶を出そうと少しかがんだ瞬間、地面についていたマントを自ら踏んでしまった。
前のめりにバランスを崩す。
座っている大木先生にお茶をかけないよう反射的に腕を遠ざけると、大きく体勢を崩して大木先生の上に倒れこむようにつんのめった。
さらに、踏んだ勢いで首元の紐が取れてハラリと落ちるマント。
「わっ!!」
「ぅおっ!?」
咄嗟に抱き止める大木先生。
「すっ、すみませ…っ!」
慌てて離れて立ち上がろうとした。
が、大木先生が私の腰に腕を回してぐっと抱き寄せた。
「…本当の狼というやつを…教えてやろうか。」
耳元で囁く色を含んだ低く鋭い声。
驚き固まると、大木先生は私の胸元に顔を埋めて更に抱き寄せ…
バシャッ
「あっっつ…ッ!!!?」
何事かと見上げると。
私にも分かる殺気をまとった半子さんが、逆さまに持った湯呑みからポタポタと雫を落とし立っていた。
熱いお茶を頭から背中にかけられて怒る大木先生。
「なっ、なにを…っ!!!」
「あたま冷やしてください、大木せんせ?」
冷たい声音。
半子さんの瞳がスゥッと冷ややかに細められた。
うわっ…その表情…ちょっとドキドキするんですけど…!?
「はあぁっ!?冷やすどころか熱いだろうがぁっ!!」
半子さんに見惚れる私と違い、大木先生は本気で怒っていた。
お茶はすぐに飲めるよう冷ましておいたから火傷はしないと思うけれど、それでもかなり熱いはず。
大木先生は額から流れるお茶をぐっと腕で拭い立ち上がった。
半子さんがぐいっと私の腕を引いて引き寄せる。
床に落ちたマントを拾うと、ぐるりと私に巻き付けた。
「さがって。」
一言。
けれど本気で怒っていることは明白で。
有無を言わさぬ口調に私はただ頷いた。
どうしよう…。
私が転んだせいでえらいことになってきた…!
あぁでも冷たく怒った半子さんも素敵…!
半助さんとはまた違う魅力が…!
…って、今はそんなことを言っている場合じゃなかった!
臨戦態勢に入った二人にどうしたら良いか分からずオロオロする。
と、そのとき…
「雅之助ー!!ここに居たか!!」
吸血鬼姿の野村先生が勢いよく入ってきた。
「見て分からんか、取り込み中だ。あとにしろ。」
「ふざけるな!貴様だろう、私の部屋をラッキョウだらけにしたのは!!」
「吸血鬼に仮装したと聞いてな。吸血鬼はラッキョウが嫌いなんだろう?大人しく成仏しろ。」
「馬鹿を言え!それはラッキョウじゃなくてニンニクだっ……!」
その瞬間。
なんの前触れもなく、伝子さんが野村先生に口付けそうな勢いでヌッと詰め寄った。
突然の大顔面に驚きと恐怖で尻餅をつきそうになる野村先生。
「なっ、南無三ーっ!」
妖怪と思ったのか。
怯みながら反射的に手裏剣やら色々なものを投げて飛び退く野村先生。
伝子さんは手裏剣をササッと避けたと思ったけれど、カッと目を見開くとぴたりと止まり飛来物を手でつかんだ。
「あらん、野村先生。こちらはありがたぁく頂戴しますわよ。」
ニヤリと笑う伝子さんの手中には。
例のお菓子の包みが入っていた…。
「うふふ、私の勝ちね。」
飄々と勝ち誇る伝子さん。
愕然として目を合わせる私と半子さん。
状況が飲み込めず頭の上にはてなマークを浮かべる大木先生と野村先生。
……………。
かくして、一言も発することなく伝子さんが優勝となったのだった。