第114.5話 魔女の誘惑
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「どうして私が魔女なんだ!?」
ハロウィンという異国の収穫祭を真似て仮装することになった忍術学園一同。
乱太郎達は異国のお化けを模した姿に扮装し楽しそうにしている。
そして私の隣にも楽しそうな人物が一人…。
「あらん半子さん、私達はニコイチなんですから。私が魔女ならあなたも当然…」
「ニコイチって何ですか!?色々つっこみどころが多すぎますが、なんで我々だけ女装したうえで変装を…!」
「可愛いんだからいいじゃない。お祭りだし楽しまなくちゃ?」
「こんな格好で楽しいわけないでしょうっ!だいたい山田先生は…っ!」
言いかけた瞬間、ヒュッと魔女の杖が喉元に突きつけられた。
黒い帽子の陰から覗く鋭い眼光。
「伝子よ、で、ん、こ。」
「あ…ハイ。」
…何だかどうでもよくなってきた。
私は持たされたホウキを床にトンとつき、大きくため息をついた。
しばし目を閉じ、己の姿をもう一度確かめる。
異国風の派手な柄の着物に、「魔女」の帽子と短い黒マント。
…素朴な疑問だが、この魔法を使うというお化け(なのか?)には、男はいないのだろうか。
なぜわざわざ女装の必要が……
「………。」
いや、分かっている。
これはただの山田先生の趣味だ…。
「ほらほらそんな顔しないで?あっちも楽しそうにしてるわよ。」
指差す方を見てみると、そこには同じく魔女の格好をしたたまみが一年は組の生徒に囲まれていた。
黒い帽子に黒いマント。
しかしそれは私と山田先生のものとは違い足首まで届きそうな長いマントだった。
「あ、土井先生!」
たまみが私に気づきクルリと振り返る。
その愛らしい笑みに、こちらも口元が緩みそうになった。
…が、しかし。
その姿をよく見ると…
「…なっ…!」
彼女は同じ魔女でも我々とは全く違う服装をしていた。
黒地の着物は大きく襟が開いていて、上から覗けば谷間の見えそうなふくよかな胸元。
裾も非常に短く、柔らかそうな白い太ももが見えて。
黒く長い履き物が膝上まで隠している…が、逆に少しだけ露出する太ももが目をひいた。
細い腰には藍色の帯が可愛らしく結ばれていて。
背面は長い黒マントで足首まで隠れているものの、正面からちらりと見える胸元と脚がかえっていやらしく扇情的で…
文字通り目を奪われて固まってしまった。
「…たまみ……そ、その格好は………」
「えへへ、どうですか?」
たまみは少し照れたように、しかし可愛く蠱惑的に小首を傾げた。
いや…まぁ、可愛いけれども…っ!
他の奴らに見せるのは…!
生徒達の前で正直に言うこともできず、咄嗟にうまい言葉も出てこなくてまごついてしまった。
そんな私をじっと見つめるたまみ。
その表情に楽しげな笑みが浮かぶ。
「半子さん!可愛いですねっ!!」
「えっ!?ちょっ…ッ!」
たまみが嬉々として目を輝かせ私に駆け寄り抱きつこうとした。
柔らかそうに揺れながら近づいてくる胸と太ももに気をとられ、一瞬腕のなかに受け入れそうになってしまった。
が、すんでのところで我に返り、彼女のおでこを片手で押さえて動きを止めさせた。
たまみが不満そうに私を見上げる。
「今は女同士だから抱きついてもいいんじゃないんですか?」
「そ、そんなわけないだろう!これは忍務で変装してるわけでもないし女性扱いしないでくれ…!」
「えー、でも伝子さんはいつだって女性として接しないと怒りますよ?」
「あれは特殊だから…」
すかさず伝子さんの杖が飛んできたので、たまみを庇いながらサッと身をかわす。
「それより…」
私はそう言いながら彼女のマントを前側にぐいっと引っ張った。
「ここ、ぜんぶ縫ってしまおうか。」
露出が多すぎる。
マントの前を閉じてしまえば…。
すると予想外にも一年は組の生徒達から反対の声が上がった。
「えー!そのままの方が可愛いですよ!」
「そうですよー!黒いてるてる坊主みたいになっちゃう!」
「黒傘お化けかも…!」
「そんなのかわいそう!」
白いお化けに仮装した子ども達がやいのやいのと文句をつけてくる。
えーい、大人には大人の事情があるんだ…!
お前達も自分の恋人がこんなに肌を出していたらきっと怒るはずだ!
しかもこんな格好してまた変な虫が寄ってきたら…
そう考えた瞬間、生徒達の後ろでドサッという音がした。
目を向けてみるとそこには。
「…たまみさん?!」
利吉くんが床に荷物を落とし、たまみを凝視して固まっていた。
「な…なんとも、…お可愛いらしい、……」
そこで言葉を詰まらせる利吉くん。
ジィッと舐め回すようないやらしい目線に腹が立った。
考えるより早くホウキを彼の目の前に突きだし遮る。
「…利吉くん、悪いけど今日は取り込み中なんだ。それ洗濯物?さっさと渡してお引き取り願…」
「いえ、これは先程私にと渡されたんです。なんでもこれを着るとお祭りに参加できるとか。」
そう言うと私を頭の先から足の先までじろじろと見る利吉くん。
急に目がきつくなる。
「…土井先生、それはたまみさんとおそろいのつもりですか。女装までして一体何を…いやそれより、たまみさんにあんな格好させてどういうおつもりで…いえ私は見れて嬉しいというか、あれですが……」
「私が用意したんじゃない!あれは…」
「ちょっと利吉?あなたわざと私を無視してるんじゃないでしょうね?」
突然ずいっと伝子さんが割って入ってきた。
これまた驚き固まる利吉くん。
「父上…またそのような…。無意識に視界から排除していたようです。」
「ぬぁんですって!?」
「ああ、土井先生はこれに付き合わされたのですね。…たまみさんも、ですか…。」
さすが瞬時に状況を察した利吉くん。
やや哀れみをこめてこちらを見る眼差しに何だか腹が立った。
そしてまたたまみを見つめる利吉くんの顔をぐいっとこちらに向かせる。
「そ、れ、で?利吉くんは何の用事なんだい?」
「痛いですね、離してください。私も呼び出されたのですよ。そしてこれを着ろと…」
利吉くんが風呂敷を上に持ち上げてみせた。
彼も仮装させられるということか…。
「利吉さんはどんな衣装なんですか?」
たまみがひょいと私の横から顔を出した。
利吉くんの目線がまた彼女の胸元に向けられたので、私はたまみの黒マントをくるりと回して前後を逆にさせた。
「土井先生?マント、これじゃ逆ですよ?」
「いいんだ。」
私は彼女の背後に周り、そっとその両肩に手を乗せた。
「こうしておけば、どこからも見えないだろう。」
前後を逆にしたマントの隙間から見える後ろ太ももは、こうして私が彼女の背に立てば隠すことができる。
利吉くんはあからさまに不機嫌そうな顔をしたが、風呂敷の中身が気になったのかすぐに視線を荷物に戻した。
すっと結びをほどくと、そこにはなんと。
「こ、これは…!?」
黒い帽子に黒マント、異国風の派手な柄の着物…それは伝子さんと色違いの衣装だった。
「あらぁ、利吉ったら私とお揃いね。」
「なっ、何で私が父上と…!?今すぐ返してきます!!」
利吉くんが荷をまとめようときたとき、ハラリと一枚の紙が落ちた。
利吉くんはそれを拾い上げると眉を潜めて怪訝そうな顔をした。
「…指示書だ。」
「指示書!?」
「何て書いてあるんだい?」
「…『これを着て魔女4人で勝負すること。食堂で待機し、食堂を訪れた人から一番最初にお菓子(一人に一包みずつ配布済)を貰えた人が勝ち。勝利者は他の3人の魔女に各々ひとつだけ命令が可能となる。』」
な、なんじゃそれは…っ!?
「命令…」
利吉くんがぽつりと呟く。
その瞳の奥が暗くギラついたのを、私は見逃さなかった。
ハロウィンという異国の収穫祭を真似て仮装することになった忍術学園一同。
乱太郎達は異国のお化けを模した姿に扮装し楽しそうにしている。
そして私の隣にも楽しそうな人物が一人…。
「あらん半子さん、私達はニコイチなんですから。私が魔女ならあなたも当然…」
「ニコイチって何ですか!?色々つっこみどころが多すぎますが、なんで我々だけ女装したうえで変装を…!」
「可愛いんだからいいじゃない。お祭りだし楽しまなくちゃ?」
「こんな格好で楽しいわけないでしょうっ!だいたい山田先生は…っ!」
言いかけた瞬間、ヒュッと魔女の杖が喉元に突きつけられた。
黒い帽子の陰から覗く鋭い眼光。
「伝子よ、で、ん、こ。」
「あ…ハイ。」
…何だかどうでもよくなってきた。
私は持たされたホウキを床にトンとつき、大きくため息をついた。
しばし目を閉じ、己の姿をもう一度確かめる。
異国風の派手な柄の着物に、「魔女」の帽子と短い黒マント。
…素朴な疑問だが、この魔法を使うというお化け(なのか?)には、男はいないのだろうか。
なぜわざわざ女装の必要が……
「………。」
いや、分かっている。
これはただの山田先生の趣味だ…。
「ほらほらそんな顔しないで?あっちも楽しそうにしてるわよ。」
指差す方を見てみると、そこには同じく魔女の格好をしたたまみが一年は組の生徒に囲まれていた。
黒い帽子に黒いマント。
しかしそれは私と山田先生のものとは違い足首まで届きそうな長いマントだった。
「あ、土井先生!」
たまみが私に気づきクルリと振り返る。
その愛らしい笑みに、こちらも口元が緩みそうになった。
…が、しかし。
その姿をよく見ると…
「…なっ…!」
彼女は同じ魔女でも我々とは全く違う服装をしていた。
黒地の着物は大きく襟が開いていて、上から覗けば谷間の見えそうなふくよかな胸元。
裾も非常に短く、柔らかそうな白い太ももが見えて。
黒く長い履き物が膝上まで隠している…が、逆に少しだけ露出する太ももが目をひいた。
細い腰には藍色の帯が可愛らしく結ばれていて。
背面は長い黒マントで足首まで隠れているものの、正面からちらりと見える胸元と脚がかえっていやらしく扇情的で…
文字通り目を奪われて固まってしまった。
「…たまみ……そ、その格好は………」
「えへへ、どうですか?」
たまみは少し照れたように、しかし可愛く蠱惑的に小首を傾げた。
いや…まぁ、可愛いけれども…っ!
他の奴らに見せるのは…!
生徒達の前で正直に言うこともできず、咄嗟にうまい言葉も出てこなくてまごついてしまった。
そんな私をじっと見つめるたまみ。
その表情に楽しげな笑みが浮かぶ。
「半子さん!可愛いですねっ!!」
「えっ!?ちょっ…ッ!」
たまみが嬉々として目を輝かせ私に駆け寄り抱きつこうとした。
柔らかそうに揺れながら近づいてくる胸と太ももに気をとられ、一瞬腕のなかに受け入れそうになってしまった。
が、すんでのところで我に返り、彼女のおでこを片手で押さえて動きを止めさせた。
たまみが不満そうに私を見上げる。
「今は女同士だから抱きついてもいいんじゃないんですか?」
「そ、そんなわけないだろう!これは忍務で変装してるわけでもないし女性扱いしないでくれ…!」
「えー、でも伝子さんはいつだって女性として接しないと怒りますよ?」
「あれは特殊だから…」
すかさず伝子さんの杖が飛んできたので、たまみを庇いながらサッと身をかわす。
「それより…」
私はそう言いながら彼女のマントを前側にぐいっと引っ張った。
「ここ、ぜんぶ縫ってしまおうか。」
露出が多すぎる。
マントの前を閉じてしまえば…。
すると予想外にも一年は組の生徒達から反対の声が上がった。
「えー!そのままの方が可愛いですよ!」
「そうですよー!黒いてるてる坊主みたいになっちゃう!」
「黒傘お化けかも…!」
「そんなのかわいそう!」
白いお化けに仮装した子ども達がやいのやいのと文句をつけてくる。
えーい、大人には大人の事情があるんだ…!
お前達も自分の恋人がこんなに肌を出していたらきっと怒るはずだ!
しかもこんな格好してまた変な虫が寄ってきたら…
そう考えた瞬間、生徒達の後ろでドサッという音がした。
目を向けてみるとそこには。
「…たまみさん?!」
利吉くんが床に荷物を落とし、たまみを凝視して固まっていた。
「な…なんとも、…お可愛いらしい、……」
そこで言葉を詰まらせる利吉くん。
ジィッと舐め回すようないやらしい目線に腹が立った。
考えるより早くホウキを彼の目の前に突きだし遮る。
「…利吉くん、悪いけど今日は取り込み中なんだ。それ洗濯物?さっさと渡してお引き取り願…」
「いえ、これは先程私にと渡されたんです。なんでもこれを着るとお祭りに参加できるとか。」
そう言うと私を頭の先から足の先までじろじろと見る利吉くん。
急に目がきつくなる。
「…土井先生、それはたまみさんとおそろいのつもりですか。女装までして一体何を…いやそれより、たまみさんにあんな格好させてどういうおつもりで…いえ私は見れて嬉しいというか、あれですが……」
「私が用意したんじゃない!あれは…」
「ちょっと利吉?あなたわざと私を無視してるんじゃないでしょうね?」
突然ずいっと伝子さんが割って入ってきた。
これまた驚き固まる利吉くん。
「父上…またそのような…。無意識に視界から排除していたようです。」
「ぬぁんですって!?」
「ああ、土井先生はこれに付き合わされたのですね。…たまみさんも、ですか…。」
さすが瞬時に状況を察した利吉くん。
やや哀れみをこめてこちらを見る眼差しに何だか腹が立った。
そしてまたたまみを見つめる利吉くんの顔をぐいっとこちらに向かせる。
「そ、れ、で?利吉くんは何の用事なんだい?」
「痛いですね、離してください。私も呼び出されたのですよ。そしてこれを着ろと…」
利吉くんが風呂敷を上に持ち上げてみせた。
彼も仮装させられるということか…。
「利吉さんはどんな衣装なんですか?」
たまみがひょいと私の横から顔を出した。
利吉くんの目線がまた彼女の胸元に向けられたので、私はたまみの黒マントをくるりと回して前後を逆にさせた。
「土井先生?マント、これじゃ逆ですよ?」
「いいんだ。」
私は彼女の背後に周り、そっとその両肩に手を乗せた。
「こうしておけば、どこからも見えないだろう。」
前後を逆にしたマントの隙間から見える後ろ太ももは、こうして私が彼女の背に立てば隠すことができる。
利吉くんはあからさまに不機嫌そうな顔をしたが、風呂敷の中身が気になったのかすぐに視線を荷物に戻した。
すっと結びをほどくと、そこにはなんと。
「こ、これは…!?」
黒い帽子に黒マント、異国風の派手な柄の着物…それは伝子さんと色違いの衣装だった。
「あらぁ、利吉ったら私とお揃いね。」
「なっ、何で私が父上と…!?今すぐ返してきます!!」
利吉くんが荷をまとめようときたとき、ハラリと一枚の紙が落ちた。
利吉くんはそれを拾い上げると眉を潜めて怪訝そうな顔をした。
「…指示書だ。」
「指示書!?」
「何て書いてあるんだい?」
「…『これを着て魔女4人で勝負すること。食堂で待機し、食堂を訪れた人から一番最初にお菓子(一人に一包みずつ配布済)を貰えた人が勝ち。勝利者は他の3人の魔女に各々ひとつだけ命令が可能となる。』」
な、なんじゃそれは…っ!?
「命令…」
利吉くんがぽつりと呟く。
その瞳の奥が暗くギラついたのを、私は見逃さなかった。