第125話 祝祭
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今日は休日。
そして、待ちに待った約束の日。
…今日はたまみと金楽寺で紫陽花を見る約束をしていた。
実は、石川が去り際に教えてくれたのだが、南蛮かどこかの伝説では六月の花嫁は神の加護を受けて幸せになれるらしい。
偶然にもちょうどいまは六月。
異国の神の加護がここまで届くのか分からないが、その話を聞いたとき私は今月たまみと金楽寺で誓いを立ててみようと思った。
仏と神の違いはあれど、要するに六月に夫婦として誓いをたてればよいのかと勝手に解釈することにした。
家柄も親族もない我々には形式的な式は必要ない。
だから、たまみの好きな花のなかを二人で散策しながら、互いに将来を想い誓い合う…。
紫陽花のなかのんびり佇むたまみと私…。
…石川のアドバイスが発端とはいえ、たまみの喜びそうな光景だと思った。
そして案の定、この話を聞いた彼女は嬉しそうにワクワクと目を輝かせていた。
今日この1日をあけるために、補習がないよう授業にも熱をいれ、仕事も頑張って調整した。
さて、そろそろたまみに声をかけて出かけようかなと思ったとき。
「「「「「土井先生~!」」」」」」
ギクッ!!
一年は組のよい子たちがわらわらと職員室に入ってきた。
「ど…どうした。何かあったのか…?」
まさかこのタイミングで何か…?!
恐る恐る尋ねると、庄左ヱ門が前に出て私に何かを差し出した。
「土井先生!」
「な、なんだ…?」
「ご結婚おめでとうございます!!これは、僕たち一年は組からのお祝いです!」
「えっ!?」
驚いて生徒達を見ると、全員満面の笑みで嬉しそうにこちらを見ていた。
庄左ヱ門の手には緑色の布があった。
「こ…これは…!?」
広げてみるとそれは着物と帯だった。
青みがかった優しい色合いの緑色。
大きさも私に丁度合うよう作られている。
「僕たち、みんなで紫陽花をたくさん採ってきて染めたんです!」
「伊助に染めかたを教えてもらって!」
「山田先生から土井先生の着物を借りて寸法をはかって!」
「あ、たまみさんの分も作ったので、さっき渡してきました!」
「今日、金楽寺に行くんですよね?俺、たまみさんからそれを聞いて、みんなで考えて…!」
「あんまり日にちがなかったから、間に合わせるのに頑張りました~!」
「お…お前たち…!」
私とたまみの着物を、染めるところから縫い仕立てるまで自分たちで頑張ったというのか!?
少し歪になっている端々からみんなの頑張る姿を想像して胸が熱くなった。
これだけ染め抜くにはたくさん紫陽花を採ってこなければならなかっただろう。
不慣れな針仕事はさぞ大変だったろう。
「みんな、ありがとう…ッ!!」
涙ぐんでそう言うと、一年は組のよい子達はとても満足にエヘヘと笑った。
ああ、なんていい生徒達に恵まれたのだろう…!
「さぁみんな!土井先生にも渡せたし、僕たちも出かける用意をしよう!」
庄左ヱ門が意気揚々と笑顔で話す。
「ん?お前たちどこへ行くんだ?」
「どこって、決まってるじゃないですか!土井先生とたまみさんが金楽寺で式をあげるなら僕たちももちろん行きますよ!」
「えぇっ!?」
式をあげる!?
私はただ、たまみと二人で紫陽花を見ながら神仏の前で将来を誓うくらいにしか考えていなかったのだが!?
「土井先生、たまみさんもそろそろ準備できてると思いますよ。早くそれを着て、見に行ってみたらどうですか?」
きり丸が嬉しそうに促してくる。
これは…もはや流れに身を任せるしかなさそうだ。
「土井先生、門のところで集合しましょうねー!」
バタバタと自室へ戻っていく生徒達。
なんだか予想外におおごとになってきた。
式?式ってあいつら何を期待しているんだろう。
いやしかし、こんなに頑張って着物まで作ってくれたんだ…ただ二人でデートのように散策するだけのつもりでしたでは済まされないのでは…。
山田先生はどこにいるんだ…どういうおつもりで…?
ソワソワしつつ、とりあえず受け取った着物に早速袖を通してみる。
…うん、すごくいい。
着心地も大きさも色合いもいい…そして何より、縫い目の荒いところやギザギザなところにとても健気さを感じた。
…たまみの分も作ったと言っていたな…。
私は隣の部屋の障子ごしに声をかけた。
「…たまみ、用意はできたかい?」
「はぁい」
のんびりと柔らかい返事が返ってきた。
すると、障子がスッと開いてたまみの姿が見えて…
「…!」
青みがかった薄い紫色の着物。
きれいに結い上げた髪には青い紫陽花の花飾りと私の贈った簪が飾られていて。
可愛らしく華やかに結ばれた帯にも花飾りがさされていて。
とても美しく化粧したたまみは、嬉しそうに微笑んでいた。
「……綺麗だ……」
見惚れた。
思わず溢れた言葉にたまみがはにかむ。
「土井先生も素敵です…。きりちゃんたち、みんなでこんな綺麗な着物と髪飾りを作ってくれて…!」
「私達はいい生徒をもったな…。」
「本当に。もう泣きそうです。」
涙ぐむ彼女の頭を撫でかけて、髪が崩れるかと手を止めた。
「この髪、自分で?」
「いえ、先程まで伝子さんが髪結いとお化粧をしてくれて…帯まで結んでくれました。」
「えっ!?伝子さん!?」
「はい。『こうしていると花嫁の母の気分ね』と言ってくれて…ちょっと錯覚しそうになりました。」
「は、はは…そ、そうか。」
山田先生、父ではなく母の気分とは…。
いやまぁ伝子さんだもんな…?
その光景を想像するとちょっとどうかと思ってしまったが、もしかすると送り出す家族のいない彼女の親代わりを演じてくれたと考えられなくもない。
「花嫁の髪型を研究するのも、堂々とお化粧道具を揃えて研究するのも楽しかったって仰ってました。」
「そ、そうか…。」
…やはり趣味の延長線上かもしれない。
しかしいずれにしても、目の前にいる彼女の可愛らしい美しさはこの上なくて…
「さぁ、いこうか。」
手を差し出すと、たまみは嬉しそうに微笑み私の手をとった。
「はい!」
笑顔を交わし、ワクワクと嬉しい気持ちで部屋を出た。
二人だけの散策ではなくなったことにたまみも驚いていたが、「一年は組のお父さんとお母さんの結婚式」だとすれば、皆で式をあげるのも悪くないかもしれない。
門にはすでに一年は組の生徒達と山田先生が待っていた。
「あ、きたきたー!」
「わぁー、たまみさん綺麗ー!!」
「伝子さんみたいにされたらどうしようかと思ったけどよかったねー!」
「二人で並ぶと紫陽花の葉っぱと花って感じだねー!」
「その言い方もうちょっとさぁ…」
「えー、でも二人でひとつって感じでいいじゃない。」
「頑張って作ったかいがありましたー!」
口々に感想を話し出す子ども達。
その胸にはみな、紫陽花の花をつけていた。
「いい天気でよかったな。」
山田先生が楽しそうに笑った。
「はい。山田先生、まさかこんな風に祝ってもらえるとは…ありがとうございます。」
「みんなが驚かせたいと言ってな。半助の段取りは大丈夫だったかな?」
「はい、大したことは計画してなかったので…」
「そうか、ならよかった。」
山田先生はそう言うと嬉しそうに目を細め、私とたまみを交互に見て微笑んだ。
「半助、たまみくん…おめでとう。」
「「ありがとうございます!」」
そうして我々一年は組はみんなで金楽寺へと向かった。
そして、待ちに待った約束の日。
…今日はたまみと金楽寺で紫陽花を見る約束をしていた。
実は、石川が去り際に教えてくれたのだが、南蛮かどこかの伝説では六月の花嫁は神の加護を受けて幸せになれるらしい。
偶然にもちょうどいまは六月。
異国の神の加護がここまで届くのか分からないが、その話を聞いたとき私は今月たまみと金楽寺で誓いを立ててみようと思った。
仏と神の違いはあれど、要するに六月に夫婦として誓いをたてればよいのかと勝手に解釈することにした。
家柄も親族もない我々には形式的な式は必要ない。
だから、たまみの好きな花のなかを二人で散策しながら、互いに将来を想い誓い合う…。
紫陽花のなかのんびり佇むたまみと私…。
…石川のアドバイスが発端とはいえ、たまみの喜びそうな光景だと思った。
そして案の定、この話を聞いた彼女は嬉しそうにワクワクと目を輝かせていた。
今日この1日をあけるために、補習がないよう授業にも熱をいれ、仕事も頑張って調整した。
さて、そろそろたまみに声をかけて出かけようかなと思ったとき。
「「「「「土井先生~!」」」」」」
ギクッ!!
一年は組のよい子たちがわらわらと職員室に入ってきた。
「ど…どうした。何かあったのか…?」
まさかこのタイミングで何か…?!
恐る恐る尋ねると、庄左ヱ門が前に出て私に何かを差し出した。
「土井先生!」
「な、なんだ…?」
「ご結婚おめでとうございます!!これは、僕たち一年は組からのお祝いです!」
「えっ!?」
驚いて生徒達を見ると、全員満面の笑みで嬉しそうにこちらを見ていた。
庄左ヱ門の手には緑色の布があった。
「こ…これは…!?」
広げてみるとそれは着物と帯だった。
青みがかった優しい色合いの緑色。
大きさも私に丁度合うよう作られている。
「僕たち、みんなで紫陽花をたくさん採ってきて染めたんです!」
「伊助に染めかたを教えてもらって!」
「山田先生から土井先生の着物を借りて寸法をはかって!」
「あ、たまみさんの分も作ったので、さっき渡してきました!」
「今日、金楽寺に行くんですよね?俺、たまみさんからそれを聞いて、みんなで考えて…!」
「あんまり日にちがなかったから、間に合わせるのに頑張りました~!」
「お…お前たち…!」
私とたまみの着物を、染めるところから縫い仕立てるまで自分たちで頑張ったというのか!?
少し歪になっている端々からみんなの頑張る姿を想像して胸が熱くなった。
これだけ染め抜くにはたくさん紫陽花を採ってこなければならなかっただろう。
不慣れな針仕事はさぞ大変だったろう。
「みんな、ありがとう…ッ!!」
涙ぐんでそう言うと、一年は組のよい子達はとても満足にエヘヘと笑った。
ああ、なんていい生徒達に恵まれたのだろう…!
「さぁみんな!土井先生にも渡せたし、僕たちも出かける用意をしよう!」
庄左ヱ門が意気揚々と笑顔で話す。
「ん?お前たちどこへ行くんだ?」
「どこって、決まってるじゃないですか!土井先生とたまみさんが金楽寺で式をあげるなら僕たちももちろん行きますよ!」
「えぇっ!?」
式をあげる!?
私はただ、たまみと二人で紫陽花を見ながら神仏の前で将来を誓うくらいにしか考えていなかったのだが!?
「土井先生、たまみさんもそろそろ準備できてると思いますよ。早くそれを着て、見に行ってみたらどうですか?」
きり丸が嬉しそうに促してくる。
これは…もはや流れに身を任せるしかなさそうだ。
「土井先生、門のところで集合しましょうねー!」
バタバタと自室へ戻っていく生徒達。
なんだか予想外におおごとになってきた。
式?式ってあいつら何を期待しているんだろう。
いやしかし、こんなに頑張って着物まで作ってくれたんだ…ただ二人でデートのように散策するだけのつもりでしたでは済まされないのでは…。
山田先生はどこにいるんだ…どういうおつもりで…?
ソワソワしつつ、とりあえず受け取った着物に早速袖を通してみる。
…うん、すごくいい。
着心地も大きさも色合いもいい…そして何より、縫い目の荒いところやギザギザなところにとても健気さを感じた。
…たまみの分も作ったと言っていたな…。
私は隣の部屋の障子ごしに声をかけた。
「…たまみ、用意はできたかい?」
「はぁい」
のんびりと柔らかい返事が返ってきた。
すると、障子がスッと開いてたまみの姿が見えて…
「…!」
青みがかった薄い紫色の着物。
きれいに結い上げた髪には青い紫陽花の花飾りと私の贈った簪が飾られていて。
可愛らしく華やかに結ばれた帯にも花飾りがさされていて。
とても美しく化粧したたまみは、嬉しそうに微笑んでいた。
「……綺麗だ……」
見惚れた。
思わず溢れた言葉にたまみがはにかむ。
「土井先生も素敵です…。きりちゃんたち、みんなでこんな綺麗な着物と髪飾りを作ってくれて…!」
「私達はいい生徒をもったな…。」
「本当に。もう泣きそうです。」
涙ぐむ彼女の頭を撫でかけて、髪が崩れるかと手を止めた。
「この髪、自分で?」
「いえ、先程まで伝子さんが髪結いとお化粧をしてくれて…帯まで結んでくれました。」
「えっ!?伝子さん!?」
「はい。『こうしていると花嫁の母の気分ね』と言ってくれて…ちょっと錯覚しそうになりました。」
「は、はは…そ、そうか。」
山田先生、父ではなく母の気分とは…。
いやまぁ伝子さんだもんな…?
その光景を想像するとちょっとどうかと思ってしまったが、もしかすると送り出す家族のいない彼女の親代わりを演じてくれたと考えられなくもない。
「花嫁の髪型を研究するのも、堂々とお化粧道具を揃えて研究するのも楽しかったって仰ってました。」
「そ、そうか…。」
…やはり趣味の延長線上かもしれない。
しかしいずれにしても、目の前にいる彼女の可愛らしい美しさはこの上なくて…
「さぁ、いこうか。」
手を差し出すと、たまみは嬉しそうに微笑み私の手をとった。
「はい!」
笑顔を交わし、ワクワクと嬉しい気持ちで部屋を出た。
二人だけの散策ではなくなったことにたまみも驚いていたが、「一年は組のお父さんとお母さんの結婚式」だとすれば、皆で式をあげるのも悪くないかもしれない。
門にはすでに一年は組の生徒達と山田先生が待っていた。
「あ、きたきたー!」
「わぁー、たまみさん綺麗ー!!」
「伝子さんみたいにされたらどうしようかと思ったけどよかったねー!」
「二人で並ぶと紫陽花の葉っぱと花って感じだねー!」
「その言い方もうちょっとさぁ…」
「えー、でも二人でひとつって感じでいいじゃない。」
「頑張って作ったかいがありましたー!」
口々に感想を話し出す子ども達。
その胸にはみな、紫陽花の花をつけていた。
「いい天気でよかったな。」
山田先生が楽しそうに笑った。
「はい。山田先生、まさかこんな風に祝ってもらえるとは…ありがとうございます。」
「みんなが驚かせたいと言ってな。半助の段取りは大丈夫だったかな?」
「はい、大したことは計画してなかったので…」
「そうか、ならよかった。」
山田先生はそう言うと嬉しそうに目を細め、私とたまみを交互に見て微笑んだ。
「半助、たまみくん…おめでとう。」
「「ありがとうございます!」」
そうして我々一年は組はみんなで金楽寺へと向かった。