第123話 実
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どれくらい歩いたのだろう。
どことも知れぬ暗い森の中。
巻物を埋める場所を探し、私はたまみの手をひいて何かに導かれるかのようにひたすら歩いていた。
繋いだたまみの手の感触。
土を踏む二人の足音。
それだけが確かだった。
「…たまみ」
彼女の手が冷たくなってきた。
私は足を止め、たまみの顔を覗き込んだ。
「大丈夫?」
彼女は緊張した表情で私の目をみて頷いた。
「だいじょうぶです。」
「……………。」
私は彼女をそっと抱き寄せ包み込んだ。
頭に口づけ、その髪の冷たさに気温が下がってきたことに気づく。
「…こわい?」
暗い森を歩くだけでも恐いだろうし、立て続けにあまりにも色んなことが起きた。
平静でいられるわけがない。
聞くと、たまみは腕のなかでコクリと頷き、きつく私を抱きしめた。
「でも…土井先生が…半助さんが、一緒に居てくれたら、大丈夫です。」
「たまみ…」
先ほど彼女が現れたときに言っていた言葉を思い出した。
『もう会えないかと思った』と…。
私は抱きしめる腕に力を込めて、力強く言った。
「ずっと一緒だ。離さない。」
彼女を…自分自身を安心させるかのように、きつくきつく抱きしめた。
冷たく暗い森のなか。
腕の中のたまみの温もりに、彼女がいま確かにここに存在していることを感じた。
その心臓の鼓動に、いまここに彼女が生きているのだと安心した。
「…もう少しだ。この巻物を埋めてしまえば…これさえなければ、きみがタソガレドキから狙われることもなくなる。」
「はい…」
「きっと…突然元の世界に戻るかもしれないと怯えることもなくなる。今より安心して暮らせるはずだ。」
これでもう、この世界の人間として安心して生きていけるようになるはずだ。
それは、私がずっと考えていたこと。
たまみが不安なくこの世界で暮らせるようになるまではと…彼女と将来を約束することもしなかった。
結果として曖昧な態度を続けてしまったが…でもこれで…誰かが巻物を持ち出して突然たまみを元の世界へ飛ばしてしまうような不安はなくなるはずだ。
だから……
「……っ…!」
「!」
たまみが泣いている。
腕のなかで、ぽろぽろと涙を溢している。
「…たまみ……」
その華奢な背中をゆっくりと撫でた。
落ち着かせるように静かに話す。
「…不安だったよな……ここまでくるのに、時間がかかってしまってすまなかった…。」
「…っ…こ、こわかった…!」
たまみが私の腕をきつく握った。
「この、巻物を見たときから…ずっと……!いつか、急に…どこかに飛ばされてしまうかもしれないと……!二度と、会えなくなるかも、しれないと………!それに、半助さんたちにもしものことがあればどうしようと……!!でも、でも、話せば、本当にそうなってしまいそうで…言えなかった……!」
「たまみ……」
どれほどの不安だったろう。
きっと、私よりもたまみの方が不安だったに違いない。
堰を切ったように泣き出した彼女に、今まで隠してきた苦悩が見えた。
「たまみ…。もう、大丈夫だ。誰も取り出せないように深く埋めてしまおう。」
嗚咽に震える背中をゆっくり撫でた。
しがみつくように抱きついてくるたまみを安心させたくて、私は静かに言葉を重ねた。
「巻物は燃やさずに埋めよう。巻物が最初に言っていたように、いつか…この世界で寿命をまっとうしたとき、たまみがきちんと元居た場所に戻れるように…。魂というものがあるのかは分からないが、次の世界でも迷わないように…。」
「………半助さん…」
たまみは涙で頬を濡らしながら悲しげに私を見上げた。
「…私のせいで…危険な目にあわせて…迷惑ばかりかけて……」
「きみのせいじゃないし、迷惑でもない。それに……」
私は彼女の頬を手のひらで包んだ。
涙で冷えた頬は柔らかく、潤んだその瞳は月明かりに微かに煌めいた。
「私は、私たちの未来のためにやっているんだ…」
「私たちの…未来……」
「ああ。」
私はたまみの頭をぎゅっと抱きしめた。
私の想いが…気持ちが伝わるように。
「ここで…きみと共に、生きていくために。」
そのとき。
暗闇のなかに一筋の月光がスッと射し込んだ。
その光の先を見ると、まだ若そうな木が1本生えていた。
「…この木の根本に埋めようか。」
不思議と、そこが一番いいような気がした。
肥沃な土。
樹木が育てば、いつか根が伸びその下に埋めたものを掘り起こすことが難しくなるはずだ。
私は苦無で土を深く掘り、懐から巻物を取り出した。
たまみと二人、目を見合わせ頷き合う。
そして、掘った穴に巻物を入れようとした瞬間。
ボボボッ!!
「「!!!」」
巻物が突然青く燃えだした。
また飛ばされる…ッ!?
反射的に巻物から手を離して、たまみを庇うように抱きしめた、その瞬間。
「「!!?」」
巻物が宙に浮いて止まった。
青い炎に燃える端から、サラサラと白い灰になって風に流されていく。
「あっ…!?」
止める間もなく巻物は全て灰となり、それは若木の根本に舞い落ちた。
すると、次の瞬間。
パキッ…、メキメキ……!
若木が音をたてながら上へと大きく育ち、見る間に大木となった。
「「…!?」」
呆然と固まってその光景を眺める私とたまみ。
気づけば大木に葉が生い茂り、あっという間に大きな白い花が咲き乱れた。
一体何の花かと思った瞬間、突風とともに白い花びらが一気に舞い散った。
「わぁ……!」
それは一瞬の幻想的な光景だった。
闇の中、月光に照された白い花吹雪。
月の欠片が舞い散っているかのようだった。
音もなく、ただたまみと二人だけの、閉ざされたような空間…。
パシッ!
突然たまみの頭上に何かが落ちてきて、私は咄嗟にそれを手に取った。
「………木の実…?」
それは赤く艶やかな丸い木の実だった。
とても美味しそうな色艶と甘い香りのする果実。
「…これは………」
…食べたい……!
何故か、この不思議すぎる木の実を食べたいという逆らいがたい衝動にかられた。
こ、これは、普通ではない…!
理性では分かっている。
こんな不可思議なものを口にすべきではないと。
しかし強烈に惹き付けられるこの感覚は何だ…!?
これは全てあの巻物…灰となってなくなった巻物の仕業だろうか。
もしそうなら、この欲求には逆らわない方がいいのか…食べろということなのか…
「!たまみ…!?」
ふと我にかえると、たまみが木の実を食べようとしていた。
慌てて手を上にあげて避ける。
「…ッ、待った!それなら…私が先に……!」
食べなければならないのなら、たまみより先に私が毒見を…!
シャリッ!
勢いで口にした木の実は、とても甘く甘露のようだった。
飲み込むと、心なしか体が温かくなった気がした。
「………食べても、何ともないな…って、あ!」
木の実を観察している私の手を引っ張り、たまみがシャクッと一口かじりついた。
「甘い!」
「ああ…。」
一口食べると抵抗感もなくなり、二人で交互に木の実を食べた。
やがて不思議なことに、食べ終わると先ほどの大木は消えてなくなっていた。
灰となった巻物も見当たらない。
言葉通り、跡形もなく消えていた。
「………どういうことでしょうか…。」
不思議すぎて夢か幻かと疑うような一連の出来事。
しかし、たまみも同じものを目の当たりにしたのだから幻ではないのだろう。
「…とりあえず、目的は達成した…ということだろうか…?」
「……そう…ですね……?」
たまみは首を傾げながらお腹を擦った。
「…巻物…なくなっちゃいましたけど…何かこう…巻物を少し食べちゃったような感覚というか…」
「身体、何ともない?」
「はい。半助さんは?」
「今のところ何もない…。」
「…不思議な力で胃炎が治ればいいですね。」
「ははは、胃炎って…。……でも、そうだな、ずっと気がかりだった事は一つ減ったかな。」
「…それは………巻物のことが神経性胃炎の原因のひとつだったということですか…?」
申し訳なさそうにする彼女に、私は慌てて手を振った。
「えっ!あ、いや、そうじゃなくて…!!」
たまみが私を見上げ、二人の視線が交わった。
「…たまみ………」
彼女の瞳が私を真っ直ぐに見つめ返す。
いつの間にか雲が無くなり月光が二人を明るく照らしていた。
「…その……この件が片付いたら言おうと思っていたんだけど……」
「……?」
ずっと、言おうとして言えなかった言葉。
巻物をきちんと処してから返事を聞こうと思っていた言葉。
やっと…やっと、言えるときがきた。
「…私と………」
自分の鼓動が早鐘を打つ。
あんなに考えていたはずなのに、咄嗟に気のきいた台詞が出てこない。
「私と、その………」
一瞬、ほんの少しだけ言葉を飲み込みかけた。
が、しかし私は大きく息を吸い込むと、意を決してたまみの目を真っ直ぐに見つめた。
「私と……生涯を、共にしてくれるかい…?」
「!!」
たまみの目にみるみる涙が溢れた。
濡れた睫毛が長い影を落とし、瞬きとともに溢れ落ちた涙の雫が月光に煌めいた。
彼女の細い腕が私をきつく抱きしめる。
「…はい…っ!」
彼女の幸せそうな涙に、心が嬉しさで震えた。
胸がいっぱいになって、思わず思いきり抱きしめた。
「たまみ…」
彼女の涙に、私まで視界が滲んできた。
頬を伝う涙を指で拭ってやり、ゆっくりと唇を重ねた。
再び彼女の頭を優しく抱きしめ、耳元で囁く。
「たまみ……愛してる……。」
「私も…私も、愛してます…!」
たまみが私にしがみつくようにきつく抱きしめ返してきた。
温かくなったその小さな手に手を重ね…誓いあうように何度も優しく唇を重ねた…。
どことも知れぬ暗い森の中。
巻物を埋める場所を探し、私はたまみの手をひいて何かに導かれるかのようにひたすら歩いていた。
繋いだたまみの手の感触。
土を踏む二人の足音。
それだけが確かだった。
「…たまみ」
彼女の手が冷たくなってきた。
私は足を止め、たまみの顔を覗き込んだ。
「大丈夫?」
彼女は緊張した表情で私の目をみて頷いた。
「だいじょうぶです。」
「……………。」
私は彼女をそっと抱き寄せ包み込んだ。
頭に口づけ、その髪の冷たさに気温が下がってきたことに気づく。
「…こわい?」
暗い森を歩くだけでも恐いだろうし、立て続けにあまりにも色んなことが起きた。
平静でいられるわけがない。
聞くと、たまみは腕のなかでコクリと頷き、きつく私を抱きしめた。
「でも…土井先生が…半助さんが、一緒に居てくれたら、大丈夫です。」
「たまみ…」
先ほど彼女が現れたときに言っていた言葉を思い出した。
『もう会えないかと思った』と…。
私は抱きしめる腕に力を込めて、力強く言った。
「ずっと一緒だ。離さない。」
彼女を…自分自身を安心させるかのように、きつくきつく抱きしめた。
冷たく暗い森のなか。
腕の中のたまみの温もりに、彼女がいま確かにここに存在していることを感じた。
その心臓の鼓動に、いまここに彼女が生きているのだと安心した。
「…もう少しだ。この巻物を埋めてしまえば…これさえなければ、きみがタソガレドキから狙われることもなくなる。」
「はい…」
「きっと…突然元の世界に戻るかもしれないと怯えることもなくなる。今より安心して暮らせるはずだ。」
これでもう、この世界の人間として安心して生きていけるようになるはずだ。
それは、私がずっと考えていたこと。
たまみが不安なくこの世界で暮らせるようになるまではと…彼女と将来を約束することもしなかった。
結果として曖昧な態度を続けてしまったが…でもこれで…誰かが巻物を持ち出して突然たまみを元の世界へ飛ばしてしまうような不安はなくなるはずだ。
だから……
「……っ…!」
「!」
たまみが泣いている。
腕のなかで、ぽろぽろと涙を溢している。
「…たまみ……」
その華奢な背中をゆっくりと撫でた。
落ち着かせるように静かに話す。
「…不安だったよな……ここまでくるのに、時間がかかってしまってすまなかった…。」
「…っ…こ、こわかった…!」
たまみが私の腕をきつく握った。
「この、巻物を見たときから…ずっと……!いつか、急に…どこかに飛ばされてしまうかもしれないと……!二度と、会えなくなるかも、しれないと………!それに、半助さんたちにもしものことがあればどうしようと……!!でも、でも、話せば、本当にそうなってしまいそうで…言えなかった……!」
「たまみ……」
どれほどの不安だったろう。
きっと、私よりもたまみの方が不安だったに違いない。
堰を切ったように泣き出した彼女に、今まで隠してきた苦悩が見えた。
「たまみ…。もう、大丈夫だ。誰も取り出せないように深く埋めてしまおう。」
嗚咽に震える背中をゆっくり撫でた。
しがみつくように抱きついてくるたまみを安心させたくて、私は静かに言葉を重ねた。
「巻物は燃やさずに埋めよう。巻物が最初に言っていたように、いつか…この世界で寿命をまっとうしたとき、たまみがきちんと元居た場所に戻れるように…。魂というものがあるのかは分からないが、次の世界でも迷わないように…。」
「………半助さん…」
たまみは涙で頬を濡らしながら悲しげに私を見上げた。
「…私のせいで…危険な目にあわせて…迷惑ばかりかけて……」
「きみのせいじゃないし、迷惑でもない。それに……」
私は彼女の頬を手のひらで包んだ。
涙で冷えた頬は柔らかく、潤んだその瞳は月明かりに微かに煌めいた。
「私は、私たちの未来のためにやっているんだ…」
「私たちの…未来……」
「ああ。」
私はたまみの頭をぎゅっと抱きしめた。
私の想いが…気持ちが伝わるように。
「ここで…きみと共に、生きていくために。」
そのとき。
暗闇のなかに一筋の月光がスッと射し込んだ。
その光の先を見ると、まだ若そうな木が1本生えていた。
「…この木の根本に埋めようか。」
不思議と、そこが一番いいような気がした。
肥沃な土。
樹木が育てば、いつか根が伸びその下に埋めたものを掘り起こすことが難しくなるはずだ。
私は苦無で土を深く掘り、懐から巻物を取り出した。
たまみと二人、目を見合わせ頷き合う。
そして、掘った穴に巻物を入れようとした瞬間。
ボボボッ!!
「「!!!」」
巻物が突然青く燃えだした。
また飛ばされる…ッ!?
反射的に巻物から手を離して、たまみを庇うように抱きしめた、その瞬間。
「「!!?」」
巻物が宙に浮いて止まった。
青い炎に燃える端から、サラサラと白い灰になって風に流されていく。
「あっ…!?」
止める間もなく巻物は全て灰となり、それは若木の根本に舞い落ちた。
すると、次の瞬間。
パキッ…、メキメキ……!
若木が音をたてながら上へと大きく育ち、見る間に大木となった。
「「…!?」」
呆然と固まってその光景を眺める私とたまみ。
気づけば大木に葉が生い茂り、あっという間に大きな白い花が咲き乱れた。
一体何の花かと思った瞬間、突風とともに白い花びらが一気に舞い散った。
「わぁ……!」
それは一瞬の幻想的な光景だった。
闇の中、月光に照された白い花吹雪。
月の欠片が舞い散っているかのようだった。
音もなく、ただたまみと二人だけの、閉ざされたような空間…。
パシッ!
突然たまみの頭上に何かが落ちてきて、私は咄嗟にそれを手に取った。
「………木の実…?」
それは赤く艶やかな丸い木の実だった。
とても美味しそうな色艶と甘い香りのする果実。
「…これは………」
…食べたい……!
何故か、この不思議すぎる木の実を食べたいという逆らいがたい衝動にかられた。
こ、これは、普通ではない…!
理性では分かっている。
こんな不可思議なものを口にすべきではないと。
しかし強烈に惹き付けられるこの感覚は何だ…!?
これは全てあの巻物…灰となってなくなった巻物の仕業だろうか。
もしそうなら、この欲求には逆らわない方がいいのか…食べろということなのか…
「!たまみ…!?」
ふと我にかえると、たまみが木の実を食べようとしていた。
慌てて手を上にあげて避ける。
「…ッ、待った!それなら…私が先に……!」
食べなければならないのなら、たまみより先に私が毒見を…!
シャリッ!
勢いで口にした木の実は、とても甘く甘露のようだった。
飲み込むと、心なしか体が温かくなった気がした。
「………食べても、何ともないな…って、あ!」
木の実を観察している私の手を引っ張り、たまみがシャクッと一口かじりついた。
「甘い!」
「ああ…。」
一口食べると抵抗感もなくなり、二人で交互に木の実を食べた。
やがて不思議なことに、食べ終わると先ほどの大木は消えてなくなっていた。
灰となった巻物も見当たらない。
言葉通り、跡形もなく消えていた。
「………どういうことでしょうか…。」
不思議すぎて夢か幻かと疑うような一連の出来事。
しかし、たまみも同じものを目の当たりにしたのだから幻ではないのだろう。
「…とりあえず、目的は達成した…ということだろうか…?」
「……そう…ですね……?」
たまみは首を傾げながらお腹を擦った。
「…巻物…なくなっちゃいましたけど…何かこう…巻物を少し食べちゃったような感覚というか…」
「身体、何ともない?」
「はい。半助さんは?」
「今のところ何もない…。」
「…不思議な力で胃炎が治ればいいですね。」
「ははは、胃炎って…。……でも、そうだな、ずっと気がかりだった事は一つ減ったかな。」
「…それは………巻物のことが神経性胃炎の原因のひとつだったということですか…?」
申し訳なさそうにする彼女に、私は慌てて手を振った。
「えっ!あ、いや、そうじゃなくて…!!」
たまみが私を見上げ、二人の視線が交わった。
「…たまみ………」
彼女の瞳が私を真っ直ぐに見つめ返す。
いつの間にか雲が無くなり月光が二人を明るく照らしていた。
「…その……この件が片付いたら言おうと思っていたんだけど……」
「……?」
ずっと、言おうとして言えなかった言葉。
巻物をきちんと処してから返事を聞こうと思っていた言葉。
やっと…やっと、言えるときがきた。
「…私と………」
自分の鼓動が早鐘を打つ。
あんなに考えていたはずなのに、咄嗟に気のきいた台詞が出てこない。
「私と、その………」
一瞬、ほんの少しだけ言葉を飲み込みかけた。
が、しかし私は大きく息を吸い込むと、意を決してたまみの目を真っ直ぐに見つめた。
「私と……生涯を、共にしてくれるかい…?」
「!!」
たまみの目にみるみる涙が溢れた。
濡れた睫毛が長い影を落とし、瞬きとともに溢れ落ちた涙の雫が月光に煌めいた。
彼女の細い腕が私をきつく抱きしめる。
「…はい…っ!」
彼女の幸せそうな涙に、心が嬉しさで震えた。
胸がいっぱいになって、思わず思いきり抱きしめた。
「たまみ…」
彼女の涙に、私まで視界が滲んできた。
頬を伝う涙を指で拭ってやり、ゆっくりと唇を重ねた。
再び彼女の頭を優しく抱きしめ、耳元で囁く。
「たまみ……愛してる……。」
「私も…私も、愛してます…!」
たまみが私にしがみつくようにきつく抱きしめ返してきた。
温かくなったその小さな手に手を重ね…誓いあうように何度も優しく唇を重ねた…。