第120話 それぞれの覚悟
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石川さんが訪ねてきた夜。
「たまみ、一緒に寝てもいいかな?」
「えっ?」
土井先生…もとい、この時間は先生じゃなくて私の半助さん…が、私の部屋に来るなり急にそう言った。
「一緒に…って、私は嬉しいというか大歓迎ですけど…?」
小首を傾げて何かあったのか尋ねてみると、彼は苦笑して頭をかいた。
「いや、石川を泊めることになったんだけど、あいてる部屋と布団がなくて。私の分を貸すことになったんだ。」
「じゃあ、石川さんは山田先生と寝るんですか?」
「ああ、隣の部屋に居るよ。」
「…じゃあ、半助さんは朝までここに?」
「うん」
嬉しい!と喜びかけた瞬間、頷く半助さんの表情がどこか固いことに気づいた。
よく考えると、お客さんが山田先生と寝るのも不思議だし…。
半助さんがこうして朝まで一緒に居ようと言ってくれるのは…私が危険な目にあった晩のようだと思った。
私の不安な眼差しに気づいたのか、彼は私をぎゅっと抱き寄せそのまま布団に横たわった。
大きくて温かくて安心できる腕の中。
私はぎゅっと抱きしめ返して小さく聞いた。
「…何か、あったのですか?」
「………たまみ……」
半助さんは私の額にゆっくり口づけた。
「………」
静かな部屋に、虫の鳴き声が遠く響く。
…なんだろう。
どうしたのだろう。
問いたい気持ちを抑えて次の言葉を待つと、やがて彼がゆっくり言った。
「……近いうちに…」
「はい」
「タソガレドキ城に、あの巻物を奪いに行こうと思う。」
「………え?」
タソガレドキ?
巻物?
突然の言葉に動揺した。
半助さんは私の頭をぎゅっと抱きながら落ち着いた声で話した。
「前にたまみがタソガレドキ城で見た巻物。…あれがある限り、またきみが狙われるかもしれない。」
「えっ、でも…奪いに行くって…え、何でそんな、急に…!?」
「ずっと考えていた。…そして今日、石川から聞いた話で…決心したんだ。」
彼は真っ直ぐに私を見つめ、私の頬にかかる髪を指ですくった。
「いつかはそうしなければと…ずっと機をうかがっていた。」
静かで落ち着いた声。
それは確固たる響きをもっていて…私は逆に不安にかられた。
「でも、そんなこと…今まで何も…」
「たまみを心配させたくなくて、言えなかった…。」
「それは…でも、それって…危ないんじゃ…!」
「大丈夫。城内の地図は利吉くんが詳細に調べてくれたし。」
「利吉さんが?」
「ああ。黙っていてほしいと頼まれたんだけど……。時間をかけて、タソガレドキ城内を事細かに調査してくれてたんだよ。」
「……な…なんでそんな危険なことを……」
「…たまみが、タソガレドキの脅威にさらされなくなるように…そのために役立つだろう…って。」
「!!」
知らなかった。
利吉さんが…私のために、そんな危険をおかしてくれていたなんて。
そんなそぶり、全くなかったのに…!
「それに、今回は石川も一緒に行ってくれることになった。」
「石川さんが?」
「ああ、あいつは…天下の大泥棒だから、こういうのは得意分野だ。」
天下の大泥棒!?
獲物って言ってたからもしや狩人かとも思っていたけれど、そういう意味の獲物…!?
「でも、もし怪我したり捕まったりしたら…!」
「大丈夫、心配しないで。」
「ぃ…いや、だめです!そんな、危ない目に…!」
すると、半助さんは目を細めて私の頭を撫でた。
「たまみのためだけじゃない。」
「え…?」
「私が安心したいんだ。…たまみが、万が一にも、元々いた世界に帰るきっかけになってしまうかもしれないモノを…そのままにしておきたくない。」
元々いた世界に帰るきっかけ…。
その言葉にぞくりとした。
あの、巻物を見た瞬間の感覚。
確かに、あれは、本物だと感じた。
「で…でも、このまま何もしなければ、何も起きないかもしれないし…そんな危険をおかさなくても…!」
半助さんは私をなだめるように優しく背を撫でた。
「だって、さ。これから、もし…」
彼の大きな手が私のお腹に触れた。
「もし、将来…私達の子ができたら…?身重の身体…それとも赤ん坊を抱えて、タソガレドキから守りきれるかい?」
「…!」
「ずっと忍術学園にいられるかどうかも分からない。私が常に守りきれるとも限らない。だから…今のうちに。私達、家族のためにも…たまみが安心して暮らせるようにしておきたいんだ。巻物さえなければ、たまみが狙われることもない。」
「…っ……でも…!」
「ずっと、考えていた。そして…これが、私の出した答えだ。…きみとずっと一緒に居るために。」
「………!!」
私も、本当は全く考えなかった訳ではない。
半助さんが今話してくれた、あり得る未来とその可能性。
でも、しかし、いくら未来のためとはいえ、愛する人を失うかもしれない危険など…絶対にとりたくなかった……!
泣きそうになる私を、彼はまたぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫。必ずきみのもとに帰るから…心配しないで。」
「…で、でも…!」
「それに、たまみにも頑張ってもらわないといけないかもしれない。」
「私も…?」
「うん。私が潜入したら、タソガレドキは侵入者が入ったと大義名分を得て…先に手を出したのは忍術学園だと、ここに来るかもしれない。たまみを誘拐するために。」
「!」
私を誘拐するために忍術学園にまで?
「じゃあ、私はどこかに隠れて…いえ、それじゃあ私をかばって誰かが怪我をするかも…!?」
でも私が捕まってしまっては半助さん達が危険をおかして潜入する意味が…!
「たまみ」
半助さんが私の頬に手を添え優しく口づけた。
触れる唇の温かさ。
「…大丈夫、落ち着いて。ちゃんと考えてある。」
耳元で優しく囁かれる声。
「だから私を信じて……ね?」
諭すように落ち着いた声音に、私の気持ちも自然と落ち着いた。
ゆっくり頷くと、半助さんが私の頭をいいこいいこと撫でた。
「…………」
大好きな、温かくて大きな手。
私は半助さんの胸にしがみついた。
「……信じてます。」
「うん。…ありがとう。」
固くつないだ手のぬくもり。
…このとき、私にはこの選択がどんな結果をもたらすのか想像もできなかった……。
「たまみ、一緒に寝てもいいかな?」
「えっ?」
土井先生…もとい、この時間は先生じゃなくて私の半助さん…が、私の部屋に来るなり急にそう言った。
「一緒に…って、私は嬉しいというか大歓迎ですけど…?」
小首を傾げて何かあったのか尋ねてみると、彼は苦笑して頭をかいた。
「いや、石川を泊めることになったんだけど、あいてる部屋と布団がなくて。私の分を貸すことになったんだ。」
「じゃあ、石川さんは山田先生と寝るんですか?」
「ああ、隣の部屋に居るよ。」
「…じゃあ、半助さんは朝までここに?」
「うん」
嬉しい!と喜びかけた瞬間、頷く半助さんの表情がどこか固いことに気づいた。
よく考えると、お客さんが山田先生と寝るのも不思議だし…。
半助さんがこうして朝まで一緒に居ようと言ってくれるのは…私が危険な目にあった晩のようだと思った。
私の不安な眼差しに気づいたのか、彼は私をぎゅっと抱き寄せそのまま布団に横たわった。
大きくて温かくて安心できる腕の中。
私はぎゅっと抱きしめ返して小さく聞いた。
「…何か、あったのですか?」
「………たまみ……」
半助さんは私の額にゆっくり口づけた。
「………」
静かな部屋に、虫の鳴き声が遠く響く。
…なんだろう。
どうしたのだろう。
問いたい気持ちを抑えて次の言葉を待つと、やがて彼がゆっくり言った。
「……近いうちに…」
「はい」
「タソガレドキ城に、あの巻物を奪いに行こうと思う。」
「………え?」
タソガレドキ?
巻物?
突然の言葉に動揺した。
半助さんは私の頭をぎゅっと抱きながら落ち着いた声で話した。
「前にたまみがタソガレドキ城で見た巻物。…あれがある限り、またきみが狙われるかもしれない。」
「えっ、でも…奪いに行くって…え、何でそんな、急に…!?」
「ずっと考えていた。…そして今日、石川から聞いた話で…決心したんだ。」
彼は真っ直ぐに私を見つめ、私の頬にかかる髪を指ですくった。
「いつかはそうしなければと…ずっと機をうかがっていた。」
静かで落ち着いた声。
それは確固たる響きをもっていて…私は逆に不安にかられた。
「でも、そんなこと…今まで何も…」
「たまみを心配させたくなくて、言えなかった…。」
「それは…でも、それって…危ないんじゃ…!」
「大丈夫。城内の地図は利吉くんが詳細に調べてくれたし。」
「利吉さんが?」
「ああ。黙っていてほしいと頼まれたんだけど……。時間をかけて、タソガレドキ城内を事細かに調査してくれてたんだよ。」
「……な…なんでそんな危険なことを……」
「…たまみが、タソガレドキの脅威にさらされなくなるように…そのために役立つだろう…って。」
「!!」
知らなかった。
利吉さんが…私のために、そんな危険をおかしてくれていたなんて。
そんなそぶり、全くなかったのに…!
「それに、今回は石川も一緒に行ってくれることになった。」
「石川さんが?」
「ああ、あいつは…天下の大泥棒だから、こういうのは得意分野だ。」
天下の大泥棒!?
獲物って言ってたからもしや狩人かとも思っていたけれど、そういう意味の獲物…!?
「でも、もし怪我したり捕まったりしたら…!」
「大丈夫、心配しないで。」
「ぃ…いや、だめです!そんな、危ない目に…!」
すると、半助さんは目を細めて私の頭を撫でた。
「たまみのためだけじゃない。」
「え…?」
「私が安心したいんだ。…たまみが、万が一にも、元々いた世界に帰るきっかけになってしまうかもしれないモノを…そのままにしておきたくない。」
元々いた世界に帰るきっかけ…。
その言葉にぞくりとした。
あの、巻物を見た瞬間の感覚。
確かに、あれは、本物だと感じた。
「で…でも、このまま何もしなければ、何も起きないかもしれないし…そんな危険をおかさなくても…!」
半助さんは私をなだめるように優しく背を撫でた。
「だって、さ。これから、もし…」
彼の大きな手が私のお腹に触れた。
「もし、将来…私達の子ができたら…?身重の身体…それとも赤ん坊を抱えて、タソガレドキから守りきれるかい?」
「…!」
「ずっと忍術学園にいられるかどうかも分からない。私が常に守りきれるとも限らない。だから…今のうちに。私達、家族のためにも…たまみが安心して暮らせるようにしておきたいんだ。巻物さえなければ、たまみが狙われることもない。」
「…っ……でも…!」
「ずっと、考えていた。そして…これが、私の出した答えだ。…きみとずっと一緒に居るために。」
「………!!」
私も、本当は全く考えなかった訳ではない。
半助さんが今話してくれた、あり得る未来とその可能性。
でも、しかし、いくら未来のためとはいえ、愛する人を失うかもしれない危険など…絶対にとりたくなかった……!
泣きそうになる私を、彼はまたぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫。必ずきみのもとに帰るから…心配しないで。」
「…で、でも…!」
「それに、たまみにも頑張ってもらわないといけないかもしれない。」
「私も…?」
「うん。私が潜入したら、タソガレドキは侵入者が入ったと大義名分を得て…先に手を出したのは忍術学園だと、ここに来るかもしれない。たまみを誘拐するために。」
「!」
私を誘拐するために忍術学園にまで?
「じゃあ、私はどこかに隠れて…いえ、それじゃあ私をかばって誰かが怪我をするかも…!?」
でも私が捕まってしまっては半助さん達が危険をおかして潜入する意味が…!
「たまみ」
半助さんが私の頬に手を添え優しく口づけた。
触れる唇の温かさ。
「…大丈夫、落ち着いて。ちゃんと考えてある。」
耳元で優しく囁かれる声。
「だから私を信じて……ね?」
諭すように落ち着いた声音に、私の気持ちも自然と落ち着いた。
ゆっくり頷くと、半助さんが私の頭をいいこいいこと撫でた。
「…………」
大好きな、温かくて大きな手。
私は半助さんの胸にしがみついた。
「……信じてます。」
「うん。…ありがとう。」
固くつないだ手のぬくもり。
…このとき、私にはこの選択がどんな結果をもたらすのか想像もできなかった……。