第119話 水面に落ちた雫
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久しぶりに会った石川は元気そうでよかった。
旧友の顔を見ることができて嬉しい。
…が、突然の訪問になぜか妙な胸騒ぎがした。
「…それで仕事とは……次の狙いは何なんだ?」
狙い。
そう、石川は天下の大泥棒。
何となく感じる雰囲気から、ただ私に会いに来たというよりも、きっと何か目的があってこちらに立ち寄ったのではないかと思ったがやはりそのようだ。
「あぁ。面白い噂を聞いたんだ。しかしもう少し正確な情報を集めておきたいと思ってな。」
「噂とは?」
「信じがたい話なんだが。」
石川は周りに他の気配がないか探ってから小声で話した。
「ある巻物と女を手にいれたら一攫千金が手に入るって噂だ。」
「!!」
驚きのあまり、一瞬固まってしまった。
巻物と女…?
それは、黄昏甚兵衛が夢のお告げとして主張していた内容ではないのか。
そのときは、一攫千金ではなく城が栄えると言っていたはずだが…。
「おっ、その顔。お前も聞いたことあるようだな。」
しまった、つい友人の前だからと油断して顔に出てしまった。
それにしても、なぜそんな噂が出回っているんだ。
黄昏甚兵衛は美人コンテストと銘打って女性を集めていただけで、巻物のことは公にはされなかったはずだ。
たまみを救助しに向かった忍術学園の皆も、「黄昏甚兵衛は夢のお告げを信じて嫁探しの為にコンテストを開き、たまみを見初めて誘拐した」と思っているはずだ。
『巻物とそれにゆかりある女性を手に入れれば城が栄える』というお告げの内容は…たまみの過去に繋がりそうな巻物の話はタソガレドキ城内でも公にされなかったと聞いている。
だから巻物のことを知っているのは、タソガレドキの一部の忍者と…たまみがここに来た経緯を知っている学園長先生、山田先生、利吉くん、私…のみのはず。
「その噂、どこから聞いたんだ?」
聞くと、石川は思い出すように顎を指で擦った。
「茶店で近くに座った侍二人が話してたんだ。」
「侍?」
あやしい。
………罠かもしれない。
タソガレドキがわざと噂を流している…?
何のために…?
「巻物はタソガレドキ城にあり、女を連れていけば一攫千金の分け前ってことで報酬金がもらえるらしい。」
「報奨金!?」
何だと…!?
報奨金ということは、たまみが不特定多数の者に狙われる…!!?
慎重に考えるあまり悠長に事を構えすぎたか…!
私は焦りを隠せず唇を噛んだ。
拳を握り俯く私を見て、石川が首を傾げる。
「どうした?」
「…いや、それで…?その侍は他に何と?」
「それだけだ。あやしい話だったから、その侍が何者か知りたくて後をつけたがまかれてしまった。」
「石川がまかれるとは…ただの侍じゃないな。」
「ああ。話自体も、女と巻物で一攫千金だなんて眉唾物だ……でもな。」
石川はニヤリと笑った。
「これが何かの罠だとしたら、きっと、何かしらの真実が隠れているとみた。」
「……根拠は?」
「勘だ。それに、火のない所に煙は立たん。巻物と女が必要だというなら……例えば、その巻物にはすごい火薬や武器や毒の作り方が、その女にしか読めない暗号で記されているとか…何かあるのかもしれん。」
「そんなわけないだろう…」
「え?」
「あ、いや、それで?」
「…連中はわざと俺に聞かせたのかもしれない。天下の大泥棒、石川五十ヱ門に、女を盗って連れてこいと。それとも逆に巻物を盗ってみろという挑発…挑戦状のような気もする。」
「何でお前に挑発など…何か狙われるようなことでもしたのか。」
「さあな。盗んだものは数知れず…誰に命を狙われてもおかしくはない。」
「石川…」
石川はまるで謎解きでもしているかのように楽しげに話を続けた。
どうする。
どうすべきだ。
考えろ、ここは誤ってはいけないところだ。
「まぁ、女を無理矢理連れて行くなんざ俺の趣味じゃないからな。報奨金に興味はないが…というかどうせ連れていったら用済で殺されるのがおちだろう。だから巻物を盗んで女に読ませてみる…ってのはどうかと思ってな。」
「…読ませてどうする。」
「さぁ。何か大発見でもあるならそれこそ一攫千金の種になるかもしれん。」
石川は巻物を盗んで読ませるつもりなのか。
しかし私は、たまみに巻物を読ませるという行為はしたくなかった。
あれは何が起きるか予想がつかない。
それこそ元の世界に帰ってしまうかもしれない。
私は…できるなら密かに巻物を奪い、たまみに接触しない形で巻物を地中に埋めようと考えていた。
しかし石川は巻物を盗ったなら、一攫千金といわれた理由を確認するべくたまみに読ませようとするはずだ。
それを止めることができるか…?
それともいっそ、彼女が異世界から来たと全ての経緯を説明して…いや、そこまで話してもよいものだろうか。
利吉くんによると巻物はかなり厳重に保管されているようだし、今回は罠かもしれない。
しかし、天下の大泥棒、石川五十ヱ門。
石川なら本当に一人でもあのタソガレドキ城から巻物を盗めるかもしれない。
こちら側の味方になってくれたら非常に心強い限りだが、どこまでの真実を話すべきか…。
「……土井、お前なにか隠しているな?」
石川は鋭い目で私を見た。
どうする。
どうやって石川を納得させる?
…このまま私が黙っていても、石川ならきっといつかは黄昏甚兵衛の狙いがたまみであること……つまり、巻物とたまみを手に入れれば一攫千金を入手できるという噂に辿り着くだろう。
石川が彼女に危害を加えることはないと思うが、タソガレドキが何か一計を案じている可能性もある。
ならば、やはりいっそ私から概ね事情を話して石川をこちら側の見方に引き入れるべきか。
「石川、実はな…」
「さっきの嬢ちゃんなのか?その巻物の女って。」
「!」
「え。」
ずばり言い当てられて私の反応が一瞬遅れた。
その一瞬の隙を、石川は是と受け取り驚いて口をあけた。
「おいおい、本当かよ…冗談で言ったのに。え、本当に?さっきの彼女がその噂の女なのか?」
「……そうだと言ったら?」
じっと見据えて様子を伺うと、石川は片膝を手でポンとたたいて笑った。
「そりゃあいい!あとは巻物を手に入れるだけで一攫千金ってわけだ。」
「なに?」
「女はもういるんだから、巻物さえ盗ってきたらいいって話だろ?」
「いや、そうじゃないんだ…!」
「何が違うんだ?」
「まずその噂。黄昏甚兵衛が『巻物とそれにゆかりある女性を手に入れれば城が栄える』というお告げの夢を見たと世迷言を言って、彼女を嫁にと追いかけているだけなんだ。」
「嫁に?さっきの嬢ちゃんを?」
「そうだ。ただ夢を見たというだけで。」
「お告げ…って、そのタソガレドキの殿さんは神職にでもついてるのか?」
「いや、僧侶でもなんでもない。夢のお告げとやらを真に受けた殿様が周りを振り回しているだけだ。」
「それが真実なら、相当迷惑な話だな。」
「そうなんだ。………石川。」
私は彼の手を取り真っ直ぐに目を見た。
「手を組まないか。」
「ほう?」
「巻物を奪うのに協力してほしい。」
「なぜ巻物が欲しいんだ?ただの夢の話なんだろ?」
「巻物がなくなれば、たまみが狙われることもなくなる。私はずっと、彼女のために巻物を奪う機会をうかがっていたんだ。」
「ふむ…」
石川は腕を組んで考えた。
それはそうだ。
石川にとっては危険こそあれ利益はなく、私の都合でしかない。
しかしもし協力してもらえたら非常に心強い。
「まぁ、面白そうな話ではあるな。」
石川は眼鏡を外してニヤリと笑った。
「お前の頼みとあれば断れんよ。」
「石川…!」
私は座ったまま勢いよく頭を下げた。
旧友の顔を見ることができて嬉しい。
…が、突然の訪問になぜか妙な胸騒ぎがした。
「…それで仕事とは……次の狙いは何なんだ?」
狙い。
そう、石川は天下の大泥棒。
何となく感じる雰囲気から、ただ私に会いに来たというよりも、きっと何か目的があってこちらに立ち寄ったのではないかと思ったがやはりそのようだ。
「あぁ。面白い噂を聞いたんだ。しかしもう少し正確な情報を集めておきたいと思ってな。」
「噂とは?」
「信じがたい話なんだが。」
石川は周りに他の気配がないか探ってから小声で話した。
「ある巻物と女を手にいれたら一攫千金が手に入るって噂だ。」
「!!」
驚きのあまり、一瞬固まってしまった。
巻物と女…?
それは、黄昏甚兵衛が夢のお告げとして主張していた内容ではないのか。
そのときは、一攫千金ではなく城が栄えると言っていたはずだが…。
「おっ、その顔。お前も聞いたことあるようだな。」
しまった、つい友人の前だからと油断して顔に出てしまった。
それにしても、なぜそんな噂が出回っているんだ。
黄昏甚兵衛は美人コンテストと銘打って女性を集めていただけで、巻物のことは公にはされなかったはずだ。
たまみを救助しに向かった忍術学園の皆も、「黄昏甚兵衛は夢のお告げを信じて嫁探しの為にコンテストを開き、たまみを見初めて誘拐した」と思っているはずだ。
『巻物とそれにゆかりある女性を手に入れれば城が栄える』というお告げの内容は…たまみの過去に繋がりそうな巻物の話はタソガレドキ城内でも公にされなかったと聞いている。
だから巻物のことを知っているのは、タソガレドキの一部の忍者と…たまみがここに来た経緯を知っている学園長先生、山田先生、利吉くん、私…のみのはず。
「その噂、どこから聞いたんだ?」
聞くと、石川は思い出すように顎を指で擦った。
「茶店で近くに座った侍二人が話してたんだ。」
「侍?」
あやしい。
………罠かもしれない。
タソガレドキがわざと噂を流している…?
何のために…?
「巻物はタソガレドキ城にあり、女を連れていけば一攫千金の分け前ってことで報酬金がもらえるらしい。」
「報奨金!?」
何だと…!?
報奨金ということは、たまみが不特定多数の者に狙われる…!!?
慎重に考えるあまり悠長に事を構えすぎたか…!
私は焦りを隠せず唇を噛んだ。
拳を握り俯く私を見て、石川が首を傾げる。
「どうした?」
「…いや、それで…?その侍は他に何と?」
「それだけだ。あやしい話だったから、その侍が何者か知りたくて後をつけたがまかれてしまった。」
「石川がまかれるとは…ただの侍じゃないな。」
「ああ。話自体も、女と巻物で一攫千金だなんて眉唾物だ……でもな。」
石川はニヤリと笑った。
「これが何かの罠だとしたら、きっと、何かしらの真実が隠れているとみた。」
「……根拠は?」
「勘だ。それに、火のない所に煙は立たん。巻物と女が必要だというなら……例えば、その巻物にはすごい火薬や武器や毒の作り方が、その女にしか読めない暗号で記されているとか…何かあるのかもしれん。」
「そんなわけないだろう…」
「え?」
「あ、いや、それで?」
「…連中はわざと俺に聞かせたのかもしれない。天下の大泥棒、石川五十ヱ門に、女を盗って連れてこいと。それとも逆に巻物を盗ってみろという挑発…挑戦状のような気もする。」
「何でお前に挑発など…何か狙われるようなことでもしたのか。」
「さあな。盗んだものは数知れず…誰に命を狙われてもおかしくはない。」
「石川…」
石川はまるで謎解きでもしているかのように楽しげに話を続けた。
どうする。
どうすべきだ。
考えろ、ここは誤ってはいけないところだ。
「まぁ、女を無理矢理連れて行くなんざ俺の趣味じゃないからな。報奨金に興味はないが…というかどうせ連れていったら用済で殺されるのがおちだろう。だから巻物を盗んで女に読ませてみる…ってのはどうかと思ってな。」
「…読ませてどうする。」
「さぁ。何か大発見でもあるならそれこそ一攫千金の種になるかもしれん。」
石川は巻物を盗んで読ませるつもりなのか。
しかし私は、たまみに巻物を読ませるという行為はしたくなかった。
あれは何が起きるか予想がつかない。
それこそ元の世界に帰ってしまうかもしれない。
私は…できるなら密かに巻物を奪い、たまみに接触しない形で巻物を地中に埋めようと考えていた。
しかし石川は巻物を盗ったなら、一攫千金といわれた理由を確認するべくたまみに読ませようとするはずだ。
それを止めることができるか…?
それともいっそ、彼女が異世界から来たと全ての経緯を説明して…いや、そこまで話してもよいものだろうか。
利吉くんによると巻物はかなり厳重に保管されているようだし、今回は罠かもしれない。
しかし、天下の大泥棒、石川五十ヱ門。
石川なら本当に一人でもあのタソガレドキ城から巻物を盗めるかもしれない。
こちら側の味方になってくれたら非常に心強い限りだが、どこまでの真実を話すべきか…。
「……土井、お前なにか隠しているな?」
石川は鋭い目で私を見た。
どうする。
どうやって石川を納得させる?
…このまま私が黙っていても、石川ならきっといつかは黄昏甚兵衛の狙いがたまみであること……つまり、巻物とたまみを手に入れれば一攫千金を入手できるという噂に辿り着くだろう。
石川が彼女に危害を加えることはないと思うが、タソガレドキが何か一計を案じている可能性もある。
ならば、やはりいっそ私から概ね事情を話して石川をこちら側の見方に引き入れるべきか。
「石川、実はな…」
「さっきの嬢ちゃんなのか?その巻物の女って。」
「!」
「え。」
ずばり言い当てられて私の反応が一瞬遅れた。
その一瞬の隙を、石川は是と受け取り驚いて口をあけた。
「おいおい、本当かよ…冗談で言ったのに。え、本当に?さっきの彼女がその噂の女なのか?」
「……そうだと言ったら?」
じっと見据えて様子を伺うと、石川は片膝を手でポンとたたいて笑った。
「そりゃあいい!あとは巻物を手に入れるだけで一攫千金ってわけだ。」
「なに?」
「女はもういるんだから、巻物さえ盗ってきたらいいって話だろ?」
「いや、そうじゃないんだ…!」
「何が違うんだ?」
「まずその噂。黄昏甚兵衛が『巻物とそれにゆかりある女性を手に入れれば城が栄える』というお告げの夢を見たと世迷言を言って、彼女を嫁にと追いかけているだけなんだ。」
「嫁に?さっきの嬢ちゃんを?」
「そうだ。ただ夢を見たというだけで。」
「お告げ…って、そのタソガレドキの殿さんは神職にでもついてるのか?」
「いや、僧侶でもなんでもない。夢のお告げとやらを真に受けた殿様が周りを振り回しているだけだ。」
「それが真実なら、相当迷惑な話だな。」
「そうなんだ。………石川。」
私は彼の手を取り真っ直ぐに目を見た。
「手を組まないか。」
「ほう?」
「巻物を奪うのに協力してほしい。」
「なぜ巻物が欲しいんだ?ただの夢の話なんだろ?」
「巻物がなくなれば、たまみが狙われることもなくなる。私はずっと、彼女のために巻物を奪う機会をうかがっていたんだ。」
「ふむ…」
石川は腕を組んで考えた。
それはそうだ。
石川にとっては危険こそあれ利益はなく、私の都合でしかない。
しかしもし協力してもらえたら非常に心強い。
「まぁ、面白そうな話ではあるな。」
石川は眼鏡を外してニヤリと笑った。
「お前の頼みとあれば断れんよ。」
「石川…!」
私は座ったまま勢いよく頭を下げた。