第115話 ぬくもり
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「いいかい、ここから出ちゃだめだよ。今日は特に寒いから。」
土井先生が私の頭を優しく撫でた。
ここは職員室。
もうすぐ教科の授業が始まるのだけれど、風邪をひいた私はここで宿題のプリント作りを頼まれていた。
食堂のお手伝いもしなくていいよう土井先生が話をしてきてくれたらしい。
「少し咳が出るだけですよ…?」
職員室の中にはこたつや温石、薬を煎じた温かい飲み物等が並べられ、私は土井先生の大きな半纏に身をくるんでいた。
心配してくれるのはとても嬉しいけれど、熱もないのに大袈裟だと目で抗議してみる。
すると土井先生は「やれやれ」といった顔で腰を曲げて私と目の高さをあわせた。
「甘い。風邪は万病のもとと言うだろう。」
大きな掌が私の額にぴたりと当てられた。
本当に熱がないことを確認して土井先生が軽く頷く。
「寒空のなかで延々洗濯したりするから身体が冷えたんだ。しばらくは温かい部屋で身体を休めるように。」
言い聞かせるようにぽんぽんと頭を撫でる土井先生。
「だって雨が続いて洗濯物がたまってたから…」
「うん、ありがとう。次は私も一緒にするから、お湯をたして洗おう。」
「はぁい。」
「よし、じゃあそろそろ授業に行ってくる。」
土井先生が職員室の障子に手をかけようとしたとき。
私はその黒い忍び装束の袖をきゅっと握った。
振り返った彼の瞳が一瞬見開かれ、すぐにフッと優しく細められた。
「…すぐ戻るよ。」
片手で頭を引き寄せられ、おでこに彼の唇が優しく触れた。
「……いいこで待ってて。」
諭すように甘く優しく目線をあわされて、私は答えるより先に頷いていた。
「行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
名残惜しそうにする私に土井先生は苦笑しつつ教室へ向かった。
そうして一人残された私は、言われた通り温かくするべくこたつに入った。
座ってしまうと眠気が襲ってきて焦る。
私は頼まれた仕事をきちんとしようと墨と筆の用意をした。
そして、机の上には大量の…文字通り大量の紙。
………土井先生、本当にこんな量を宿題にするのかな。
嫌がる一年は組のよいこ達の顔が思い浮かぶ。
宿題をさせられるのも嫌だろうけれど、それを作る側もかなり大変だ。
もしかすると私がこたつを出られないようにわざと机仕事をたくさん用意して…?
無理せずできるところまでと言われたけど…あ、期限聞いてないから数日分の宿題なのかも…よし、ボチボチやるかぁ。
やがてしばらくすると、墨を乾かすために並べた紙で部屋がうめつくされてしまった。
それでも何とか隙間を作り出して乾かしていく。
「…できた!」
最後の一枚を書くと、私は大きく伸びをした。
あとは墨が乾くのを待って重ねるだけ。
私は筆を硯に置いて目を閉じてみた。
冷たい風の音に障子が揺れ、寒ざむしい音がしている。
こたつでぬくぬくと仕事をさせて貰えていることに、申し訳無さと大切にされているのだという嬉しさを感じた。
「もうすぐ年末…今年も色んなことがあったなぁ…」
振り返ると大小様々な出来事があった。
その都度周りにお世話になったなぁとしみじみ思う。
ふと、予備の白紙が目に入った。
「そうだ、みんなにお礼のお手紙を書こう。今年もありがとうって感謝の気持ちを伝えよう…!」
私は再び筆をとり、お世話になった先生方や食堂のおばちゃん、は組の生徒達に手紙を書き始めた。
封筒として包む宛名の書いた紙と、手紙本体が対になるようきちんと横に並べて乾かしていく。
書き始めるとどこまで手紙を渡そうか迷い始め、結局また大量の手紙で部屋を埋め尽くしてしまった。
「ヘム~!」
突然廊下から声がしてヘムヘムが障子を開けた。
「ヘム!ヘム~。」
「んん?学園長先生が私を呼んでるの?」
「ヘム!」
学園長先生の呼び出しならすぐに行かなくては。
でも職員室の中はまだ墨を乾かしている手紙だらけ…。
誰かが入って読まれたりしたらちょっと恥ずかしい。
私は少し迷ったあげく、「立入禁止。少しお待ちください」と職員室の障子に張り付けてヘムヘムのあとについていくことにした。
結局、学園長先生からは簡単なお願いをされただけだった。
「今夜行われる今年最後の職員会議で、お歳暮として頂いたお茶とお饅頭を先生方にも出してほしい」とのことで、私はそれを受け取り食堂のおばちゃんにも伝えた。
食堂のおばちゃんには急に風邪で休んでしまったことを謝ったけれど、おばちゃんはにこりと微笑んで「お昼ごはんは玉子粥を作ってあげるから。早く治しなさいね。」と優しい言葉をかけてくれた。
頑張って治さねば…!
身体が冷えてきたので急いで職員室に戻ると、部屋の中には職員会議用の資料が置かれていた。
あれっ、立入禁止って書いていたのに…小松田さん…?
手紙、見られてしまったかな…別に見られてまずいことはかいてないとは思うけど…。
私はこれ以上人目につかないよう大急ぎで手紙をたたんで宛名を書いた紙で包んだ。
土井先生が私の頭を優しく撫でた。
ここは職員室。
もうすぐ教科の授業が始まるのだけれど、風邪をひいた私はここで宿題のプリント作りを頼まれていた。
食堂のお手伝いもしなくていいよう土井先生が話をしてきてくれたらしい。
「少し咳が出るだけですよ…?」
職員室の中にはこたつや温石、薬を煎じた温かい飲み物等が並べられ、私は土井先生の大きな半纏に身をくるんでいた。
心配してくれるのはとても嬉しいけれど、熱もないのに大袈裟だと目で抗議してみる。
すると土井先生は「やれやれ」といった顔で腰を曲げて私と目の高さをあわせた。
「甘い。風邪は万病のもとと言うだろう。」
大きな掌が私の額にぴたりと当てられた。
本当に熱がないことを確認して土井先生が軽く頷く。
「寒空のなかで延々洗濯したりするから身体が冷えたんだ。しばらくは温かい部屋で身体を休めるように。」
言い聞かせるようにぽんぽんと頭を撫でる土井先生。
「だって雨が続いて洗濯物がたまってたから…」
「うん、ありがとう。次は私も一緒にするから、お湯をたして洗おう。」
「はぁい。」
「よし、じゃあそろそろ授業に行ってくる。」
土井先生が職員室の障子に手をかけようとしたとき。
私はその黒い忍び装束の袖をきゅっと握った。
振り返った彼の瞳が一瞬見開かれ、すぐにフッと優しく細められた。
「…すぐ戻るよ。」
片手で頭を引き寄せられ、おでこに彼の唇が優しく触れた。
「……いいこで待ってて。」
諭すように甘く優しく目線をあわされて、私は答えるより先に頷いていた。
「行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
名残惜しそうにする私に土井先生は苦笑しつつ教室へ向かった。
そうして一人残された私は、言われた通り温かくするべくこたつに入った。
座ってしまうと眠気が襲ってきて焦る。
私は頼まれた仕事をきちんとしようと墨と筆の用意をした。
そして、机の上には大量の…文字通り大量の紙。
………土井先生、本当にこんな量を宿題にするのかな。
嫌がる一年は組のよいこ達の顔が思い浮かぶ。
宿題をさせられるのも嫌だろうけれど、それを作る側もかなり大変だ。
もしかすると私がこたつを出られないようにわざと机仕事をたくさん用意して…?
無理せずできるところまでと言われたけど…あ、期限聞いてないから数日分の宿題なのかも…よし、ボチボチやるかぁ。
やがてしばらくすると、墨を乾かすために並べた紙で部屋がうめつくされてしまった。
それでも何とか隙間を作り出して乾かしていく。
「…できた!」
最後の一枚を書くと、私は大きく伸びをした。
あとは墨が乾くのを待って重ねるだけ。
私は筆を硯に置いて目を閉じてみた。
冷たい風の音に障子が揺れ、寒ざむしい音がしている。
こたつでぬくぬくと仕事をさせて貰えていることに、申し訳無さと大切にされているのだという嬉しさを感じた。
「もうすぐ年末…今年も色んなことがあったなぁ…」
振り返ると大小様々な出来事があった。
その都度周りにお世話になったなぁとしみじみ思う。
ふと、予備の白紙が目に入った。
「そうだ、みんなにお礼のお手紙を書こう。今年もありがとうって感謝の気持ちを伝えよう…!」
私は再び筆をとり、お世話になった先生方や食堂のおばちゃん、は組の生徒達に手紙を書き始めた。
封筒として包む宛名の書いた紙と、手紙本体が対になるようきちんと横に並べて乾かしていく。
書き始めるとどこまで手紙を渡そうか迷い始め、結局また大量の手紙で部屋を埋め尽くしてしまった。
「ヘム~!」
突然廊下から声がしてヘムヘムが障子を開けた。
「ヘム!ヘム~。」
「んん?学園長先生が私を呼んでるの?」
「ヘム!」
学園長先生の呼び出しならすぐに行かなくては。
でも職員室の中はまだ墨を乾かしている手紙だらけ…。
誰かが入って読まれたりしたらちょっと恥ずかしい。
私は少し迷ったあげく、「立入禁止。少しお待ちください」と職員室の障子に張り付けてヘムヘムのあとについていくことにした。
結局、学園長先生からは簡単なお願いをされただけだった。
「今夜行われる今年最後の職員会議で、お歳暮として頂いたお茶とお饅頭を先生方にも出してほしい」とのことで、私はそれを受け取り食堂のおばちゃんにも伝えた。
食堂のおばちゃんには急に風邪で休んでしまったことを謝ったけれど、おばちゃんはにこりと微笑んで「お昼ごはんは玉子粥を作ってあげるから。早く治しなさいね。」と優しい言葉をかけてくれた。
頑張って治さねば…!
身体が冷えてきたので急いで職員室に戻ると、部屋の中には職員会議用の資料が置かれていた。
あれっ、立入禁止って書いていたのに…小松田さん…?
手紙、見られてしまったかな…別に見られてまずいことはかいてないとは思うけど…。
私はこれ以上人目につかないよう大急ぎで手紙をたたんで宛名を書いた紙で包んだ。