第114話 そんなあなたも好きだから
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「利吉くんっ!気をつけて!」
私は素早く装束を正すと、勢いよく押入れを飛び出した。
「土井先生!なぜ押入れから…」
「いいからこっちへ!」
利吉くんの背中を押して部屋の外へ向かわせる。
訝しげにこちらを伺う彼に、もっともらしく説明した。
「毒蛇のジュンコがまた脱走した。」
「ど、毒蛇!?」
「さっきそれらしき物音がしたんだけど、この部屋は押入れにも居なかった。」
咄嗟に思いついた嘘。
しかし毒蛇と聞けば、危機察知力の高い利吉くんなら反応してくれると思った。
案の定、すぐに周囲を探る様子を見せる。
だが一瞬、部屋を出る瞬間に彼が押入れをちらりと一瞥した。
……たまみの気配に気づかれた…!?
まだ、押入れの中にはたまみが居る。
顔を拭ってやることも出来なかったが、とりあえず縛っていた縄は切って手拭いを渡してきた。
私が利吉くんをひきつけている間にうまく出てくれたらいいのだが…。
「やみくもに探すよりエサでおびき寄せてみよう。食堂で何かエサになるものを…」
「エサって、ネズミとかじゃないんですか。」
「食堂で何か代わりになるようなものをもらおう。」
話しながら利吉くんの背中をさりげなく押して部屋の障子を閉めた。
とりあえず、この場から利吉くんを遠ざけなければ。
すると、廊下に出た利吉くんはきょろきょろと周囲を見渡した。
「そういえば利吉くん、乱太郎に何か用事かい?」
「いえ、私じゃなくて保健委員の生徒達が探していたので。私は父に用があって来たのですが、ついでに見つけたら声をかけようかと。」
そのとき、背後の廊下から伊作の声がした。
「乱太郎〜、いるかい?」
乱太郎の部屋を開けようとする伊作。
ま、まずい!
たまみがまだどんな状態か分からない!!
「待て、伊作っ!!」
慌てて振り向き、障子を開けようとした伊作の手を掴む。
「土井先生?どうされたのですか?」
「乱太郎はここにはいない。さっき食堂に向かっていた。」
「そうでしたか。委員会の集まりにまだ来ないので呼びに来たんです。」
「そ、そうか…。それはすまないな。」
「いえ、では食堂を探してきます。」
伊作は私と利吉くんに軽く頭を下げ、食堂へ向かった。
冷や汗をかきながらその背を見送っていると、利吉くんから視線を感じた。
「一緒に毒蛇を探してもらった方がいいんじゃありませんか?」
「えっ!あ、ああ…」
ど、どうする…。
あまり事が大きくなると後で面倒なことになる。
ガサガサッ
「「ん?」」
そのとき、中庭の草の茂みから物音がした。
え…
ま、まさか……!?
利吉くんと頷きあい、気配を消してそっと茂みに忍び寄った。
もしかして、本当に…!?
期待をこめて覗き込んだ瞬間、茂みの中から何かが飛んできた。
咄嗟に身を翻して避け、次に突き出されてきた苦無も反射的にかわす。
「くそっ、虫獣遁の術も失敗か…!」
そこに立っていたのは諸泉尊奈門くんだった。
「今日こそは土井に一泡ふかせてやるつもりだったのに…!」
「一泡って…ちょっと今いろいろ忙しいから後にしてくれるかな。」
苦笑しながら、耳に残る言葉を反芻した。
ん…虫獣遁の術…?
「土井先生、探していたのはこれですか。」
振り向くと、利吉くんが大きな毒蛇…ジュンコを両手に持っていた。
「なっ…!?」
「少し拝借して利用してみたが…これなら練り物を投げた方が効果的…」
「尊奈門くん、ありがとうっっ!!」
「は!?」
私は尊奈門くんの手を握ってぶんぶんと握手した。
嘘から出た誠!!
これで何とか利吉くんをごまかせる!!
「さあ利吉くん、そのまま返しに行こう!」
私は満面の笑みでにこやかに利吉くんの背を押した。
「おいっ、ちょっと待て!勝負はまだ…!!」
「あー、そうだねぇ…。」
このまま無視してもよかったが、結果として助けてくれたお礼をしておくか。
そしてそれとは別に、勝手にうちの生き物を取ったことも反省してもらわなくては。
「利吉くん、悪いけど少し待ってて。」
私は尊奈門くんをあっさりと出席簿で打ちのめすと、利吉くんとともに蛇を生物委員会の飼育場所へ返した。
「では、私は父に用がありますので。」
「ああ、付き合わせてすまなかったね。山田先生なら明日の準備で渓谷に行ってるけど、そろそろ戻ると思うから。」
「分かりました、では食堂で少し待ってます。」
そう言うやいなやスタスタと歩いていく利吉くん。
何とか押入れの一件を誤魔化せたようでよかった。
「…あ」
食堂という言葉におつかいを頼まれていたことを思い出した。
色々ありすぎて危うく忘れるところだった。
買う物を書いた紙を手にしようと懐に右手を入れた。
…あれ、ない!?
パタパタと自分の衣を確認してみたが、紙がない。
まさか、押入れに落とした…!?
慌てて踵を返し、乱太郎の部屋に入った。
押入れを開けると、そこにはもうたまみの姿はなく紙も落ちていなかった。
…落とすとしたら押入れの可能性が一番高いが……たまみが拾って持っているのだろうか。
「…まったく……私は何をやっているんだか…。」
ひとつ大きくため息をつきたまみを探す。
しかしこんなときに限って生徒達が色々と騒ぎを起こして前に進めない。
もどかしい気持ちのまま、私は心中焦りながらたまみを探していた。
私は素早く装束を正すと、勢いよく押入れを飛び出した。
「土井先生!なぜ押入れから…」
「いいからこっちへ!」
利吉くんの背中を押して部屋の外へ向かわせる。
訝しげにこちらを伺う彼に、もっともらしく説明した。
「毒蛇のジュンコがまた脱走した。」
「ど、毒蛇!?」
「さっきそれらしき物音がしたんだけど、この部屋は押入れにも居なかった。」
咄嗟に思いついた嘘。
しかし毒蛇と聞けば、危機察知力の高い利吉くんなら反応してくれると思った。
案の定、すぐに周囲を探る様子を見せる。
だが一瞬、部屋を出る瞬間に彼が押入れをちらりと一瞥した。
……たまみの気配に気づかれた…!?
まだ、押入れの中にはたまみが居る。
顔を拭ってやることも出来なかったが、とりあえず縛っていた縄は切って手拭いを渡してきた。
私が利吉くんをひきつけている間にうまく出てくれたらいいのだが…。
「やみくもに探すよりエサでおびき寄せてみよう。食堂で何かエサになるものを…」
「エサって、ネズミとかじゃないんですか。」
「食堂で何か代わりになるようなものをもらおう。」
話しながら利吉くんの背中をさりげなく押して部屋の障子を閉めた。
とりあえず、この場から利吉くんを遠ざけなければ。
すると、廊下に出た利吉くんはきょろきょろと周囲を見渡した。
「そういえば利吉くん、乱太郎に何か用事かい?」
「いえ、私じゃなくて保健委員の生徒達が探していたので。私は父に用があって来たのですが、ついでに見つけたら声をかけようかと。」
そのとき、背後の廊下から伊作の声がした。
「乱太郎〜、いるかい?」
乱太郎の部屋を開けようとする伊作。
ま、まずい!
たまみがまだどんな状態か分からない!!
「待て、伊作っ!!」
慌てて振り向き、障子を開けようとした伊作の手を掴む。
「土井先生?どうされたのですか?」
「乱太郎はここにはいない。さっき食堂に向かっていた。」
「そうでしたか。委員会の集まりにまだ来ないので呼びに来たんです。」
「そ、そうか…。それはすまないな。」
「いえ、では食堂を探してきます。」
伊作は私と利吉くんに軽く頭を下げ、食堂へ向かった。
冷や汗をかきながらその背を見送っていると、利吉くんから視線を感じた。
「一緒に毒蛇を探してもらった方がいいんじゃありませんか?」
「えっ!あ、ああ…」
ど、どうする…。
あまり事が大きくなると後で面倒なことになる。
ガサガサッ
「「ん?」」
そのとき、中庭の草の茂みから物音がした。
え…
ま、まさか……!?
利吉くんと頷きあい、気配を消してそっと茂みに忍び寄った。
もしかして、本当に…!?
期待をこめて覗き込んだ瞬間、茂みの中から何かが飛んできた。
咄嗟に身を翻して避け、次に突き出されてきた苦無も反射的にかわす。
「くそっ、虫獣遁の術も失敗か…!」
そこに立っていたのは諸泉尊奈門くんだった。
「今日こそは土井に一泡ふかせてやるつもりだったのに…!」
「一泡って…ちょっと今いろいろ忙しいから後にしてくれるかな。」
苦笑しながら、耳に残る言葉を反芻した。
ん…虫獣遁の術…?
「土井先生、探していたのはこれですか。」
振り向くと、利吉くんが大きな毒蛇…ジュンコを両手に持っていた。
「なっ…!?」
「少し拝借して利用してみたが…これなら練り物を投げた方が効果的…」
「尊奈門くん、ありがとうっっ!!」
「は!?」
私は尊奈門くんの手を握ってぶんぶんと握手した。
嘘から出た誠!!
これで何とか利吉くんをごまかせる!!
「さあ利吉くん、そのまま返しに行こう!」
私は満面の笑みでにこやかに利吉くんの背を押した。
「おいっ、ちょっと待て!勝負はまだ…!!」
「あー、そうだねぇ…。」
このまま無視してもよかったが、結果として助けてくれたお礼をしておくか。
そしてそれとは別に、勝手にうちの生き物を取ったことも反省してもらわなくては。
「利吉くん、悪いけど少し待ってて。」
私は尊奈門くんをあっさりと出席簿で打ちのめすと、利吉くんとともに蛇を生物委員会の飼育場所へ返した。
「では、私は父に用がありますので。」
「ああ、付き合わせてすまなかったね。山田先生なら明日の準備で渓谷に行ってるけど、そろそろ戻ると思うから。」
「分かりました、では食堂で少し待ってます。」
そう言うやいなやスタスタと歩いていく利吉くん。
何とか押入れの一件を誤魔化せたようでよかった。
「…あ」
食堂という言葉におつかいを頼まれていたことを思い出した。
色々ありすぎて危うく忘れるところだった。
買う物を書いた紙を手にしようと懐に右手を入れた。
…あれ、ない!?
パタパタと自分の衣を確認してみたが、紙がない。
まさか、押入れに落とした…!?
慌てて踵を返し、乱太郎の部屋に入った。
押入れを開けると、そこにはもうたまみの姿はなく紙も落ちていなかった。
…落とすとしたら押入れの可能性が一番高いが……たまみが拾って持っているのだろうか。
「…まったく……私は何をやっているんだか…。」
ひとつ大きくため息をつきたまみを探す。
しかしこんなときに限って生徒達が色々と騒ぎを起こして前に進めない。
もどかしい気持ちのまま、私は心中焦りながらたまみを探していた。