第111話 私だけを見つめて
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「ごめ、なさぃ…」
目を潤ませて謝るたまみ。
シュンと俯く彼女の背中をゆっくり撫でた。
「…無事なら、いいんだ……。」
しかしもう二度と一人で出歩かないで欲しい…。
子どもじゃないのだからという理屈は分かる。
私が束縛しすぎているのかもしれない。
だが…しかし現にたまみは誘拐されたり危険な目に何度もあっているのだ。
私が一緒に居て未然に防いだこともあるし、あながち心配しすぎとは言えないと思う。
もしたまみに何かあったら…。
考えたくもない…いや考えられない。
きっと自分は平静でいられない。
常日頃から忍としても教師としても理性的、論理的であるように努めているが…彼女のこととなるとどうしても感情的になってしまう。
学園長先生御用達の饅頭屋にたまみの姿が無かったときは焦った。
どこかですれ違ったのかと。
しかし、店主からたまみが代金を払うときに何か思い出したような顔をしていたと聞き、もしやと思いここまで来てみた。
そろそろ大家さんから督促の手紙が来る頃だったから、たまみならそれを心配して声をかけに行くかもしれないと思った。
結果、予想通り家の前で彼女の姿を見つけた。
無事で本当によかった…。
「……でも、嬉しかったです。」
「え?」
無意識にきつく抱きしめていた腕のなか。
たまみが小さな声で、私の胸に頬を寄せながら呟いた。
「半助さんが追いかけて来てくれて…。」
彼女の指が私の小袖をぎゅっと掴んだ。
「心のどこかで、半助さんに来て欲しいと……願っていたかもしれません…。」
たまみは悲しげに自嘲するような笑みを浮かべた。
「ダメですね…こんな我が儘で…。あ、でも決して気を引こうとかそういう気持ちで出てきたわけじゃ…」
「うん」
慌てて説明する彼女を再びぎゅっと抱きしめた。
「………寂しい思いをさせてごめん。」
そう言って優しく頭を撫でると、たまみが腕のなかでスンスン泣き出してしまった。
「お、おいおい……」
そんなに寂しかったのだろうか。
そうだ、たまみはとても寂しがり屋で泣き虫で…。
こんなにも想っているのに、また泣かせてしまったという罪悪感。
そして、そんなに想ってくれているのかと嬉しいような気持ち。
複雑な気分のまま、私はただひたすら彼女の頭を慈しむように撫で続けた。
しかし…。
もとはといえば、私があまりにも忙しくしすぎていたのがそもそもの原因ではないか。
もっとたまみの声に耳を傾けていれば、こんなことには…。
昨夜見た白紙の紙を思い出した。
そうだ、たまみは何かを伝えようとしていたのでは…。
「…そういえば、机の上に置いていた紙。あれは何を書こうとしてたんだい?」
たまみは暫くキョトンと私の目を見つめた。
静かに答えを待つと、やがて何のことかわかったのか驚いた顔をした。
「紙って、私の机のですか?」
「うん。昨日はたまみの部屋に行くのが遅くなってしまって…もう寝てたから起こさなかったんだけど、白紙の紙が…ちょっと気になって。」
あれは涙の跡だったのか。
するとたまみは微妙な表情をしながら曖昧に答えた。
「来てたのですね…起こしてくれたらよかったのに…。」
「ぐっすり眠ってたから…。」
「……あの紙は、ですね…。ちょっと紙に書きだして心の整理をしようかと…。」
「心の整理?」
「…はい。」
「何かあったの?」
たまみが私の目をじーっと見つめた。
何か探るようなその目に、何故か居心地の悪さを感じた。
「………半助さんが、」
「…私が?」
「…他の女性に、綺麗だと言ってたから…。」
「!??」
他の女性?
綺麗って…何のことだ??
どういうことか分からずたまみの顔を伺い見ると、彼女は少し怒っているようだった。
「…お心当たりは?」
「ない。」
「よーーく思い出してください。」
「…いやいや、本当にないって。全くない!」
「じゃあ、綺麗だとか…記憶に残らないくらい誰にでも言っちゃうんですね?」
「!??……そんなわけ…」
「シナ先生に『綺麗だ』って言ってるの、聞こえました。」
「!?」
山本シナ先生?
「私が?シナ先生に?」
「はい。…私と逢う時間がない程忙しいなかで、シナ先生のことを綺麗だなんて…しかも一番、綺麗だとか言ってたから…ショックで……」
「いやいやいや!ちょっ、ちょっと待て!そんなことは一度も…!」
「でも、私たしかに聞きました。」
「どこで!?」
「廊下の角で。…楽しそうに。」
「廊下?」
シナ先生と…廊下で……?
「あ!」
もしかして、あれのことか!?
たまみの冷ややかな目線が突き刺さる。
「待て待て、あれは違う!あれは文字の話だ!」
「文字…?」
「ああ。火薬だけでなく書道も全学年に必要だという話が出てて。その指導役に山本シナ先生が選ばれたんだけど、『土井先生も達筆ですよね』とか言って私に仕事を押し付けようとしてきてだな…。」
「確かに土井先生の文字は綺麗ですけど…。」
「それで、これ以上仕事を増やされちゃかなわんから、シナ先生の文字が一番綺麗だと言ったんだよ。」
「……でも、私が聞いたときは『文字が』綺麗とは言ってなかったです。」
「細かい言い回しは覚えてないけど、会話の流れはそういうことだったんだよ!しかもあれは楽しそうだったんじゃなくて作り笑いで牽制しあっていただけだ!」
じとーっとした眼差しで私を見つめるたまみ。
まだ、誤解は解けないのか…!?
「私がたまみ以外にそんなこと言うわけないだろう?」
「…………」
まだ疑わしげな顔。
ど、どうしたらいいんだ…!?
正解が分からず、私は大きく咳払いをしてたまみをぎゅっと抱きしめた。
「……私にとっては…きみが、一番可愛い。」
「…………」
「私が心動くのはきみだけだよ…。」
どうすればこの気持ちが伝わるのか。
苦しいほどに愛しているこの想いが…。
柔らかい頬にそっと指を触れた。
少し怒ったその顔ですら可愛いと思う。
彼女の潤んだ瞳がためらいがちにこちらを見上げた。
「…私だけ……?」
「ああ。」
「………ほんとに…?」
たまみの口調が和らいで私を見つめた。
「本当だ。これほど誰かを可愛いと…愛しいと思ったことはない。」
彼女の目がじっと私を見つめる。
もっと、とねだるような目線。
「その真っ直ぐなところも…何にでも一生懸命なところも…全部好きだ……。」
知れば知るほど、色んな一面をみるほどに好きになる。
私にしか見せない弱さも、甘えも、すべて…。
「…私にはきみだけだ。」
両手で彼女の頬を優しく包み込んだ。
触れるだけで、更に愛しさが込み上げてくる。
「……愛してる…」
気持ちがあふれて自然と言葉になった。
たまみの愛らしい目にみるみる涙があふれる。
頬を伝い落ちるしずく。
そっと指で拭う。
「泣くな…」
目元に優しく口づけた。
彼女の濡れた長い睫毛が、ゆっくりと伏せられる。
惹きこまれるように、そのままそっと唇を重ねた。
柔らかい唇を何度もゆっくり食み、愛情を伝える。
「…ん……ぅ……」
彼女が私をぎゅっと抱きしめた。
「………も…っと……」
この上なく甘くねだられて胸がアツくなる。
煽られるがままに深く口づけ、その場にゆっくりと押し倒す。
切なそうに揺れる瞳に熱を感じたのは己がそうだからか、それともたまみも……。
「半助さん、すき……」
甘く蠱惑的な声が耳元で囁かれる。
柔らかい唇が私の耳を優しく咥え、ゆっくりと頬に口づけた。
鼻をくすぐる甘い香り。
小さく柔らかい身体の感触に理性がぐらつく。
「…だいすき……」
「……っ」
消え入りそうな、極甘の声。
私を誘う潤んだ眼差し。
ああ、もう可愛すぎる…!
このままここで…っ!!
熱いため息をつき、耳元で「私もだよ…」と囁き返す。
「…こんなに心惹かれることがあるなんて…夢にも思わなかった。」
細い首筋に口づけると、彼女がくすぐったそうに身をよじった。
「この私が全部捨て置いて出てきてしまうなんて…。」
そう呟いた瞬間。
たまみがハッと私を見つめた。
「捨て置く…って、そういえば授業は?」
「………自習にしてきた。」
「えぇっ!?」
たまみが驚いてガバッと起き上がった。
「そ、それは…大丈夫なんですか!?」
「…ははは…………、大丈夫、じゃない、な…。」
「!?…な、なんでそんな……!?」
「たまみに何かあってからでは遅いから一刻を争うと思って…引き継ぎもせずそのまま飛び出してきてしまった……。」
「!!!……すみません、私のせいで…!」
たまみが申し訳なさそうにオロオロしだした。
その様子に、私も冷静になって起き上がる。
「たまみのせいじゃない、私が勝手にそうしただけだ。…しかし、そうだな、…早く戻らなくちゃいけないな。」
行き場のなくなってしまった気持ちを無理矢理抑え込み、たまみの頭をぽんと撫でた。
「…今夜は、必ず部屋に行くから…起きて待っていて…?」
そう囁くと、たまみは恥ずかしそうに…嬉しそうに、しかし力強く「はい!」と頷いた。
何だかその返事が妙に部屋に響いて可笑しくて。
もう一度だけ唇を重ねると、二人見つめあって微笑んだ。
そうして名残惜しくも家を後にして学園へと戻った。
目を潤ませて謝るたまみ。
シュンと俯く彼女の背中をゆっくり撫でた。
「…無事なら、いいんだ……。」
しかしもう二度と一人で出歩かないで欲しい…。
子どもじゃないのだからという理屈は分かる。
私が束縛しすぎているのかもしれない。
だが…しかし現にたまみは誘拐されたり危険な目に何度もあっているのだ。
私が一緒に居て未然に防いだこともあるし、あながち心配しすぎとは言えないと思う。
もしたまみに何かあったら…。
考えたくもない…いや考えられない。
きっと自分は平静でいられない。
常日頃から忍としても教師としても理性的、論理的であるように努めているが…彼女のこととなるとどうしても感情的になってしまう。
学園長先生御用達の饅頭屋にたまみの姿が無かったときは焦った。
どこかですれ違ったのかと。
しかし、店主からたまみが代金を払うときに何か思い出したような顔をしていたと聞き、もしやと思いここまで来てみた。
そろそろ大家さんから督促の手紙が来る頃だったから、たまみならそれを心配して声をかけに行くかもしれないと思った。
結果、予想通り家の前で彼女の姿を見つけた。
無事で本当によかった…。
「……でも、嬉しかったです。」
「え?」
無意識にきつく抱きしめていた腕のなか。
たまみが小さな声で、私の胸に頬を寄せながら呟いた。
「半助さんが追いかけて来てくれて…。」
彼女の指が私の小袖をぎゅっと掴んだ。
「心のどこかで、半助さんに来て欲しいと……願っていたかもしれません…。」
たまみは悲しげに自嘲するような笑みを浮かべた。
「ダメですね…こんな我が儘で…。あ、でも決して気を引こうとかそういう気持ちで出てきたわけじゃ…」
「うん」
慌てて説明する彼女を再びぎゅっと抱きしめた。
「………寂しい思いをさせてごめん。」
そう言って優しく頭を撫でると、たまみが腕のなかでスンスン泣き出してしまった。
「お、おいおい……」
そんなに寂しかったのだろうか。
そうだ、たまみはとても寂しがり屋で泣き虫で…。
こんなにも想っているのに、また泣かせてしまったという罪悪感。
そして、そんなに想ってくれているのかと嬉しいような気持ち。
複雑な気分のまま、私はただひたすら彼女の頭を慈しむように撫で続けた。
しかし…。
もとはといえば、私があまりにも忙しくしすぎていたのがそもそもの原因ではないか。
もっとたまみの声に耳を傾けていれば、こんなことには…。
昨夜見た白紙の紙を思い出した。
そうだ、たまみは何かを伝えようとしていたのでは…。
「…そういえば、机の上に置いていた紙。あれは何を書こうとしてたんだい?」
たまみは暫くキョトンと私の目を見つめた。
静かに答えを待つと、やがて何のことかわかったのか驚いた顔をした。
「紙って、私の机のですか?」
「うん。昨日はたまみの部屋に行くのが遅くなってしまって…もう寝てたから起こさなかったんだけど、白紙の紙が…ちょっと気になって。」
あれは涙の跡だったのか。
するとたまみは微妙な表情をしながら曖昧に答えた。
「来てたのですね…起こしてくれたらよかったのに…。」
「ぐっすり眠ってたから…。」
「……あの紙は、ですね…。ちょっと紙に書きだして心の整理をしようかと…。」
「心の整理?」
「…はい。」
「何かあったの?」
たまみが私の目をじーっと見つめた。
何か探るようなその目に、何故か居心地の悪さを感じた。
「………半助さんが、」
「…私が?」
「…他の女性に、綺麗だと言ってたから…。」
「!??」
他の女性?
綺麗って…何のことだ??
どういうことか分からずたまみの顔を伺い見ると、彼女は少し怒っているようだった。
「…お心当たりは?」
「ない。」
「よーーく思い出してください。」
「…いやいや、本当にないって。全くない!」
「じゃあ、綺麗だとか…記憶に残らないくらい誰にでも言っちゃうんですね?」
「!??……そんなわけ…」
「シナ先生に『綺麗だ』って言ってるの、聞こえました。」
「!?」
山本シナ先生?
「私が?シナ先生に?」
「はい。…私と逢う時間がない程忙しいなかで、シナ先生のことを綺麗だなんて…しかも一番、綺麗だとか言ってたから…ショックで……」
「いやいやいや!ちょっ、ちょっと待て!そんなことは一度も…!」
「でも、私たしかに聞きました。」
「どこで!?」
「廊下の角で。…楽しそうに。」
「廊下?」
シナ先生と…廊下で……?
「あ!」
もしかして、あれのことか!?
たまみの冷ややかな目線が突き刺さる。
「待て待て、あれは違う!あれは文字の話だ!」
「文字…?」
「ああ。火薬だけでなく書道も全学年に必要だという話が出てて。その指導役に山本シナ先生が選ばれたんだけど、『土井先生も達筆ですよね』とか言って私に仕事を押し付けようとしてきてだな…。」
「確かに土井先生の文字は綺麗ですけど…。」
「それで、これ以上仕事を増やされちゃかなわんから、シナ先生の文字が一番綺麗だと言ったんだよ。」
「……でも、私が聞いたときは『文字が』綺麗とは言ってなかったです。」
「細かい言い回しは覚えてないけど、会話の流れはそういうことだったんだよ!しかもあれは楽しそうだったんじゃなくて作り笑いで牽制しあっていただけだ!」
じとーっとした眼差しで私を見つめるたまみ。
まだ、誤解は解けないのか…!?
「私がたまみ以外にそんなこと言うわけないだろう?」
「…………」
まだ疑わしげな顔。
ど、どうしたらいいんだ…!?
正解が分からず、私は大きく咳払いをしてたまみをぎゅっと抱きしめた。
「……私にとっては…きみが、一番可愛い。」
「…………」
「私が心動くのはきみだけだよ…。」
どうすればこの気持ちが伝わるのか。
苦しいほどに愛しているこの想いが…。
柔らかい頬にそっと指を触れた。
少し怒ったその顔ですら可愛いと思う。
彼女の潤んだ瞳がためらいがちにこちらを見上げた。
「…私だけ……?」
「ああ。」
「………ほんとに…?」
たまみの口調が和らいで私を見つめた。
「本当だ。これほど誰かを可愛いと…愛しいと思ったことはない。」
彼女の目がじっと私を見つめる。
もっと、とねだるような目線。
「その真っ直ぐなところも…何にでも一生懸命なところも…全部好きだ……。」
知れば知るほど、色んな一面をみるほどに好きになる。
私にしか見せない弱さも、甘えも、すべて…。
「…私にはきみだけだ。」
両手で彼女の頬を優しく包み込んだ。
触れるだけで、更に愛しさが込み上げてくる。
「……愛してる…」
気持ちがあふれて自然と言葉になった。
たまみの愛らしい目にみるみる涙があふれる。
頬を伝い落ちるしずく。
そっと指で拭う。
「泣くな…」
目元に優しく口づけた。
彼女の濡れた長い睫毛が、ゆっくりと伏せられる。
惹きこまれるように、そのままそっと唇を重ねた。
柔らかい唇を何度もゆっくり食み、愛情を伝える。
「…ん……ぅ……」
彼女が私をぎゅっと抱きしめた。
「………も…っと……」
この上なく甘くねだられて胸がアツくなる。
煽られるがままに深く口づけ、その場にゆっくりと押し倒す。
切なそうに揺れる瞳に熱を感じたのは己がそうだからか、それともたまみも……。
「半助さん、すき……」
甘く蠱惑的な声が耳元で囁かれる。
柔らかい唇が私の耳を優しく咥え、ゆっくりと頬に口づけた。
鼻をくすぐる甘い香り。
小さく柔らかい身体の感触に理性がぐらつく。
「…だいすき……」
「……っ」
消え入りそうな、極甘の声。
私を誘う潤んだ眼差し。
ああ、もう可愛すぎる…!
このままここで…っ!!
熱いため息をつき、耳元で「私もだよ…」と囁き返す。
「…こんなに心惹かれることがあるなんて…夢にも思わなかった。」
細い首筋に口づけると、彼女がくすぐったそうに身をよじった。
「この私が全部捨て置いて出てきてしまうなんて…。」
そう呟いた瞬間。
たまみがハッと私を見つめた。
「捨て置く…って、そういえば授業は?」
「………自習にしてきた。」
「えぇっ!?」
たまみが驚いてガバッと起き上がった。
「そ、それは…大丈夫なんですか!?」
「…ははは…………、大丈夫、じゃない、な…。」
「!?…な、なんでそんな……!?」
「たまみに何かあってからでは遅いから一刻を争うと思って…引き継ぎもせずそのまま飛び出してきてしまった……。」
「!!!……すみません、私のせいで…!」
たまみが申し訳なさそうにオロオロしだした。
その様子に、私も冷静になって起き上がる。
「たまみのせいじゃない、私が勝手にそうしただけだ。…しかし、そうだな、…早く戻らなくちゃいけないな。」
行き場のなくなってしまった気持ちを無理矢理抑え込み、たまみの頭をぽんと撫でた。
「…今夜は、必ず部屋に行くから…起きて待っていて…?」
そう囁くと、たまみは恥ずかしそうに…嬉しそうに、しかし力強く「はい!」と頷いた。
何だかその返事が妙に部屋に響いて可笑しくて。
もう一度だけ唇を重ねると、二人見つめあって微笑んだ。
そうして名残惜しくも家を後にして学園へと戻った。