第111話 私だけを見つめて
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最近、火薬委員会の顧問ということで土井先生が一年は組以外に火薬の授業をすることが増えた。
ただでさえも忙しいのに、それぞれに合わせた資料も準備したり生徒が質問にくることが増えて多忙を極めた。
「…どいせんせ……」
私は大きなため息をついて洗濯物を干した。
学園の中では夜しか半助さんと呼べず、うっかり声にしてしまわぬよう心のなかでも「半助さん」ではなく「土井先生」と考えるようにしているのだけれど…。
なんだか私の「半助さん」は姿を消して、ずっとみんなの「土井先生」となってしまった気がした。
「…会いたい……」
毎日顔は合わせている。
けれど、毎晩部屋に来てくれてもおやすみの挨拶だけしてすぐに仕事が残っているからと戻ってしまう。
手伝おうとしても、火薬にかかる資料は難しく本当に簡単なことしか手伝うことができなかった。
私には、他に何がしてあげられるだろう…。
自問自答を続けたけれど、結局あとはこうして代わりに洗濯をしたり身の回りのお手伝いをするくらいで…。
ポトポトと雫を落とす黒い忍装束を眺める。
私がこの装束だったら、土井先生とずっと一緒に居られるのに…なんておかしなことまで考えてしまう。
土井先生は知識も豊富だし生徒想いで教師としても忍者としても人としても素敵な人だから…。
みんなから引っ張りだこになっても仕方がない。
…でも。
くノ一教室で授業をしてから女の子が質問に来ることも増えた。
頭では、分かっている。
彼女達は生徒で、土井先生は教師。
熱心に勉強して質問をよせることはいいことだ。
でも、でも…!
私のなかのやきもちが……どうしても抑えられなかった。
仕事だから仕方ない、むしろ気にする方がいけないことなのだと思うように努めた。
でも、心は全く理屈で思うように動いてくれなくて…。
こんなことではいけない…!
土井先生のことばかり考えてしまうからこんなに苦しいんだ。
もっと他にこう、私も何か忙しくしていたらこんな気持ちも忘れられるのではないか。
こんな恋愛感情に主軸をおいた日々は苦しいし、相手にも重たく感じられるかもしれない…。
そう思い、少しでも土井先生の負担を減らすようにと、時間があれば一年は組の宿題や復習をみてあげたりするようにした。
そんなある日。
自室を出て食堂に向かう途中の廊下で土井先生を見かけた。
曲がり角の向こうから微かに背中だけ見える愛しい黒い姿。
思わず声をかけようとした瞬間。
「いやいや、山本シナ先生が一番お綺麗ですから…。」
ピタッ
足が…身体全体が動きを止めた。
「あら、喜車の術なんてかかりませんわよ?」
「いえ、お世辞ではなく本当に。」
曲がり角の先から…姿は見えないけれど土井先生とシナ先生の楽しげな声が聞こえてくる。
私はくるりと踵を返し、いま来た道を戻った。
「………っ…!」
涙が滲んできた。
一番綺麗…?
そりゃ、間違いなくシナ先生が一番綺麗だと私も思うけど…!
土井先生の…半助さんの気持ちを疑っているわけではない。
シナ先生も私達の仲を取り持ってくれたぐらいだし…二人の仲を疑うわけではない…うん、そのはずだ。
でも…でも、私がこんなに寂しい気持ちを我慢しているのに。
当の本人は他の女の人にあんな褒めそやすようなことを言って笑っているだなんて…!
一番綺麗、って…!
「もう、知らない…!」
私は自室に戻り机に突っ伏した。
ただでさえも忙しいのに、それぞれに合わせた資料も準備したり生徒が質問にくることが増えて多忙を極めた。
「…どいせんせ……」
私は大きなため息をついて洗濯物を干した。
学園の中では夜しか半助さんと呼べず、うっかり声にしてしまわぬよう心のなかでも「半助さん」ではなく「土井先生」と考えるようにしているのだけれど…。
なんだか私の「半助さん」は姿を消して、ずっとみんなの「土井先生」となってしまった気がした。
「…会いたい……」
毎日顔は合わせている。
けれど、毎晩部屋に来てくれてもおやすみの挨拶だけしてすぐに仕事が残っているからと戻ってしまう。
手伝おうとしても、火薬にかかる資料は難しく本当に簡単なことしか手伝うことができなかった。
私には、他に何がしてあげられるだろう…。
自問自答を続けたけれど、結局あとはこうして代わりに洗濯をしたり身の回りのお手伝いをするくらいで…。
ポトポトと雫を落とす黒い忍装束を眺める。
私がこの装束だったら、土井先生とずっと一緒に居られるのに…なんておかしなことまで考えてしまう。
土井先生は知識も豊富だし生徒想いで教師としても忍者としても人としても素敵な人だから…。
みんなから引っ張りだこになっても仕方がない。
…でも。
くノ一教室で授業をしてから女の子が質問に来ることも増えた。
頭では、分かっている。
彼女達は生徒で、土井先生は教師。
熱心に勉強して質問をよせることはいいことだ。
でも、でも…!
私のなかのやきもちが……どうしても抑えられなかった。
仕事だから仕方ない、むしろ気にする方がいけないことなのだと思うように努めた。
でも、心は全く理屈で思うように動いてくれなくて…。
こんなことではいけない…!
土井先生のことばかり考えてしまうからこんなに苦しいんだ。
もっと他にこう、私も何か忙しくしていたらこんな気持ちも忘れられるのではないか。
こんな恋愛感情に主軸をおいた日々は苦しいし、相手にも重たく感じられるかもしれない…。
そう思い、少しでも土井先生の負担を減らすようにと、時間があれば一年は組の宿題や復習をみてあげたりするようにした。
そんなある日。
自室を出て食堂に向かう途中の廊下で土井先生を見かけた。
曲がり角の向こうから微かに背中だけ見える愛しい黒い姿。
思わず声をかけようとした瞬間。
「いやいや、山本シナ先生が一番お綺麗ですから…。」
ピタッ
足が…身体全体が動きを止めた。
「あら、喜車の術なんてかかりませんわよ?」
「いえ、お世辞ではなく本当に。」
曲がり角の先から…姿は見えないけれど土井先生とシナ先生の楽しげな声が聞こえてくる。
私はくるりと踵を返し、いま来た道を戻った。
「………っ…!」
涙が滲んできた。
一番綺麗…?
そりゃ、間違いなくシナ先生が一番綺麗だと私も思うけど…!
土井先生の…半助さんの気持ちを疑っているわけではない。
シナ先生も私達の仲を取り持ってくれたぐらいだし…二人の仲を疑うわけではない…うん、そのはずだ。
でも…でも、私がこんなに寂しい気持ちを我慢しているのに。
当の本人は他の女の人にあんな褒めそやすようなことを言って笑っているだなんて…!
一番綺麗、って…!
「もう、知らない…!」
私は自室に戻り机に突っ伏した。