第110話 演技指導
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演技の設定は、
忍務中に仲間が敵城内で捕まり、それを助け出す…
というもの。
細かな脚本は無く、実践形式の演技指導。
『捕まった捕虜』はしんべヱくん、喜三太くん、金吾くん、団蔵くん。
『城兵に変装して城に潜り込む捕虜救出役』はきりちゃんと乱太郎くんと庄左ヱ門くん。
『敵の城兵』は伊助くん、兵太夫くん、三治郎くん、虎若くん。
『敵の城主』は土井先生。
教室の机を端に寄せ、山田先生と私は机の横に立っていた。
準備ができたのを確認し、山田先生がみんなに声をかけた。
「いいか。変装しても相手に見抜かれないよう、役になりきることが大切だぞ。それぞれ自分がどう動くべきか考えて演じなさい。では、はじめ!」
台本なしだなんて一年生には難しいのではないかと思ったけれど、実際には台本なしで動ける必要があるからとのことだった。
スタートは、救出役のきりちゃん、乱太郎くん、庄左ヱ門くんが城に潜入しているところから。
そこに城主である土井先生が現れ、三人が見つかってしまうシーン。
「……………」
いつもと違う緊張感。
教室内の舞台に乱太郎くん達が緊張した面持ちで並び立っている。
ガラリ
教室の戸が開けられた。
ギシッ…
『敵の城主』である土井先生が一歩教室に入る。
!!
土井先生の、雰囲気が違う…!
ゾクリとするような冷たく鋭い目。
いつもの忍装束のままなのに、まるで別人のよう。
…ど……土井先生…!?
いつもの温かい眼差しとは真逆の、なにも感情を映さない冷ややかな目に一瞬でみんなが固まった。
既に舞台に立っている救出役のきりちゃん、乱太郎くん、庄左ヱ門くんの三人は、目を見開いて土井先生を見つめた。
『城主』である土井先生が三人を視認し目を細める。
それでも、侵入者であるはずの三人は動けずにその場に静止していた。
「…こうべをたれてつくばえ。」
!!!???
ビリッと空気が凍った。
土井先生のものとは思えない冷たく高圧的な口調、言葉。
舞台の外から見ていた他のみんなも息を飲んだ。
「平伏せよ。」
土井先生が重ねて言う。
難しい言葉にきりちゃんと乱太郎くんが戸惑った。
けれど庄左ヱ門くんが青ざめてサッと頭を下げひざまずくと、二人も慌ててそれにならった。
「も、申し訳ありません。我々、先日こちらに配属されたばかりで城主様だと気づくのが遅れてしまいました。」
さすが学級委員の庄左ヱ門くん。
土井先生の雰囲気に飲まれず演技を進めた。
しかしその顔は本当に『城主』を畏怖しているようだった。
「どこの隊の者だ?こんなところで何をしている?」
物凄い威圧感。
当然予想される質問に対し、庄左ヱ門くん達も嘘の答えを用意していたはず。
なのに、三人ははっきりと言葉も出せず下を見つめて固まっていた。
「なんだ、言ってみろ。」
土井先生がゆっくりと間合いをつめる。
その手が静かに庄左ヱ門くんに伸ばされた。
無言の重圧。
反射的に、庄左ヱ門くんが後ろに飛び退いてあとずさった。
つられて、きりちゃんと乱太郎くんも逃げ出そうと後ずさる。
そんな風に振る舞えば侵入者だとばれてしまうのでは…
そう思った瞬間、きりちゃんが思わず「まずい…」と小さく呟いた。
土井先生が当然それを聞き逃すことはなくて。
「何がまずい。…言ってみろ。」
怒気をはらんだ声。
あまりの迫力で三人がついに背を向け逃げる態勢をとった。
その瞬間。
『敵の城兵』…つまり土井先生の配下である虎若くんが舞台に駆け込んだ。
「殿!お、恐れながら申し上げます!侵入者を捕らえました!」
虎若くんが勇気を振り絞るようにそう言うと、同じく『敵の城兵』役の伊助くん、兵太夫くん、三治郎くんがハッとした。
三人は『捕虜』であるしんべヱくん、喜三太くん、金吾くん、団蔵くんの背中を押して『城主』の前につきだした。
「こ、この者達です…!」
土井先生が冷たい目で捕虜役の四人を見下ろした。
捕虜役だけでなく城兵役の子達まで青ざめて固まる。
「誰のさしがねだ。」
何の感情も映さず問いただす土井先生。
すると『捕虜』の金吾くんが勇気を振り絞って答えた。
「それは言えません!」
土井先生の片眉がぴくりと上がる。
静かに金吾くんの前に立ち、その顔を見下ろした。
とても冷たい目。
「そうか。では…何か言い残すことは?」
いつもの明るい爽やかな声と違い、低く感情をもたないような声。
その手が金吾くんに迫る。
だめ…!やめて…!
これはお芝居なのに。
土井先生がひどいことをするはずがないのに。
あまりの殺気に、本当に金吾くんがやられてしまうような気がして。
私は咄嗟に足を踏み出した。
その瞬間、山田先生が私の腕を掴んで止めた。
「もう少し見ていなさい。」
山田先生の真剣な眼差しにハッとした。
そうだ、これは…授業なのだ。
「やめろーっ!」
乱太郎くんが土井先生の腕にしがみついた。
次いで、きりちゃん、庄左ヱ門くんも土井先生の足にしがみつく。
すると、他の捕虜のしんべヱくんや伊助くん、三治郎くん、喜三太くん達も次々と土井先生につかみかかった。
…あれ。
城主の配下役の虎若くん達まで何故か土井先生につかみかかっていた。
「「「「「金吾に手を出すなー!」」」」」
生徒全員が。
役設定を完全に無視して。
土井先生を取り押さえようと一丸となった。
まるで敵に群がる蜜蜂のように、周囲を囲み手足にしがみつく。
「えぇっ!?ちょっ、お前達…!」
土井先生がついにいつもの調子に戻って狼狽えた。
みんなはそんなことに構わず土井先生を引っ張って押し倒す。
「こらっ!芝居はどうした芝居は…!」
土井先生が大きな声でいうと、みんなは急に動きを止めて「あっ」と言った。
「そうだ…僕たち」
「お芝居してたんだった…」
「土井先生が金吾に手をかけると思ってつい止めにはいっちゃった…!」
「ほんとだねー!」
あはははと笑い出す一年は組のよい子達。
土井先生はあっけにとられて少し呆然としたあと…大きな溜め息をついた。
忍務中に仲間が敵城内で捕まり、それを助け出す…
というもの。
細かな脚本は無く、実践形式の演技指導。
『捕まった捕虜』はしんべヱくん、喜三太くん、金吾くん、団蔵くん。
『城兵に変装して城に潜り込む捕虜救出役』はきりちゃんと乱太郎くんと庄左ヱ門くん。
『敵の城兵』は伊助くん、兵太夫くん、三治郎くん、虎若くん。
『敵の城主』は土井先生。
教室の机を端に寄せ、山田先生と私は机の横に立っていた。
準備ができたのを確認し、山田先生がみんなに声をかけた。
「いいか。変装しても相手に見抜かれないよう、役になりきることが大切だぞ。それぞれ自分がどう動くべきか考えて演じなさい。では、はじめ!」
台本なしだなんて一年生には難しいのではないかと思ったけれど、実際には台本なしで動ける必要があるからとのことだった。
スタートは、救出役のきりちゃん、乱太郎くん、庄左ヱ門くんが城に潜入しているところから。
そこに城主である土井先生が現れ、三人が見つかってしまうシーン。
「……………」
いつもと違う緊張感。
教室内の舞台に乱太郎くん達が緊張した面持ちで並び立っている。
ガラリ
教室の戸が開けられた。
ギシッ…
『敵の城主』である土井先生が一歩教室に入る。
!!
土井先生の、雰囲気が違う…!
ゾクリとするような冷たく鋭い目。
いつもの忍装束のままなのに、まるで別人のよう。
…ど……土井先生…!?
いつもの温かい眼差しとは真逆の、なにも感情を映さない冷ややかな目に一瞬でみんなが固まった。
既に舞台に立っている救出役のきりちゃん、乱太郎くん、庄左ヱ門くんの三人は、目を見開いて土井先生を見つめた。
『城主』である土井先生が三人を視認し目を細める。
それでも、侵入者であるはずの三人は動けずにその場に静止していた。
「…こうべをたれてつくばえ。」
!!!???
ビリッと空気が凍った。
土井先生のものとは思えない冷たく高圧的な口調、言葉。
舞台の外から見ていた他のみんなも息を飲んだ。
「平伏せよ。」
土井先生が重ねて言う。
難しい言葉にきりちゃんと乱太郎くんが戸惑った。
けれど庄左ヱ門くんが青ざめてサッと頭を下げひざまずくと、二人も慌ててそれにならった。
「も、申し訳ありません。我々、先日こちらに配属されたばかりで城主様だと気づくのが遅れてしまいました。」
さすが学級委員の庄左ヱ門くん。
土井先生の雰囲気に飲まれず演技を進めた。
しかしその顔は本当に『城主』を畏怖しているようだった。
「どこの隊の者だ?こんなところで何をしている?」
物凄い威圧感。
当然予想される質問に対し、庄左ヱ門くん達も嘘の答えを用意していたはず。
なのに、三人ははっきりと言葉も出せず下を見つめて固まっていた。
「なんだ、言ってみろ。」
土井先生がゆっくりと間合いをつめる。
その手が静かに庄左ヱ門くんに伸ばされた。
無言の重圧。
反射的に、庄左ヱ門くんが後ろに飛び退いてあとずさった。
つられて、きりちゃんと乱太郎くんも逃げ出そうと後ずさる。
そんな風に振る舞えば侵入者だとばれてしまうのでは…
そう思った瞬間、きりちゃんが思わず「まずい…」と小さく呟いた。
土井先生が当然それを聞き逃すことはなくて。
「何がまずい。…言ってみろ。」
怒気をはらんだ声。
あまりの迫力で三人がついに背を向け逃げる態勢をとった。
その瞬間。
『敵の城兵』…つまり土井先生の配下である虎若くんが舞台に駆け込んだ。
「殿!お、恐れながら申し上げます!侵入者を捕らえました!」
虎若くんが勇気を振り絞るようにそう言うと、同じく『敵の城兵』役の伊助くん、兵太夫くん、三治郎くんがハッとした。
三人は『捕虜』であるしんべヱくん、喜三太くん、金吾くん、団蔵くんの背中を押して『城主』の前につきだした。
「こ、この者達です…!」
土井先生が冷たい目で捕虜役の四人を見下ろした。
捕虜役だけでなく城兵役の子達まで青ざめて固まる。
「誰のさしがねだ。」
何の感情も映さず問いただす土井先生。
すると『捕虜』の金吾くんが勇気を振り絞って答えた。
「それは言えません!」
土井先生の片眉がぴくりと上がる。
静かに金吾くんの前に立ち、その顔を見下ろした。
とても冷たい目。
「そうか。では…何か言い残すことは?」
いつもの明るい爽やかな声と違い、低く感情をもたないような声。
その手が金吾くんに迫る。
だめ…!やめて…!
これはお芝居なのに。
土井先生がひどいことをするはずがないのに。
あまりの殺気に、本当に金吾くんがやられてしまうような気がして。
私は咄嗟に足を踏み出した。
その瞬間、山田先生が私の腕を掴んで止めた。
「もう少し見ていなさい。」
山田先生の真剣な眼差しにハッとした。
そうだ、これは…授業なのだ。
「やめろーっ!」
乱太郎くんが土井先生の腕にしがみついた。
次いで、きりちゃん、庄左ヱ門くんも土井先生の足にしがみつく。
すると、他の捕虜のしんべヱくんや伊助くん、三治郎くん、喜三太くん達も次々と土井先生につかみかかった。
…あれ。
城主の配下役の虎若くん達まで何故か土井先生につかみかかっていた。
「「「「「金吾に手を出すなー!」」」」」
生徒全員が。
役設定を完全に無視して。
土井先生を取り押さえようと一丸となった。
まるで敵に群がる蜜蜂のように、周囲を囲み手足にしがみつく。
「えぇっ!?ちょっ、お前達…!」
土井先生がついにいつもの調子に戻って狼狽えた。
みんなはそんなことに構わず土井先生を引っ張って押し倒す。
「こらっ!芝居はどうした芝居は…!」
土井先生が大きな声でいうと、みんなは急に動きを止めて「あっ」と言った。
「そうだ…僕たち」
「お芝居してたんだった…」
「土井先生が金吾に手をかけると思ってつい止めにはいっちゃった…!」
「ほんとだねー!」
あはははと笑い出す一年は組のよい子達。
土井先生はあっけにとられて少し呆然としたあと…大きな溜め息をついた。