第107話 湿布
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今日も一年は組のテストの結果は散々だった…。
ため息をつきながら、いつもの胃薬を貰いに医務室に来てみると。
「あっ、そこ……!」
中から聞こえる声に、戸を開ける手がピタリと止まった。
…今のは……
私が彼女の声を聞き間違えるはずがない。
まさか…!?
「んぅッ…」
ガラッ!!
ザッと血の気が引き、反射的に勢いよく戸を開けた。
瞬時に部屋の中を見渡す。
するとそこには、たまみが布団の上でうつ伏せになっていて…。
「伊作…?」
伊作はたまみの横に膝立ちして、彼女の背中を掌で押していた。
私が勢いよく戸を開けたことに驚いてキョトンとしていたが、伊作は私と目が合うとぺこりと会釈した。
うつぶせていたたまみもこちらに顔を向ける。
「あ、土井先生。」
可愛らしいのんきな声。
「っ…たまみ、ここで、なにを……」
言葉がつかえた。
一瞬、誰かが彼女によからぬことをしているのではないかと気が動転した。
「肩と背中と腰が痛くて、今診てもらってたんです。」
「肩と背中と腰…?」
「たまみさん、だいぶ体が凝ってるみたいで。ほぐしてから湿布をしようとしてるとこなんです。土井先生はどうされましたか?」
「あ…いや、私は……」
ちょっとあの声はどうなんだと思いつつも、あらぬことを疑ってしまった自分に恥ずかしくなった。
同時に、たまみの体調が心配になった。
「私はいつもの薬を。それより、背中というのは病ではなく凝りが原因なのか…?」
「そうですね。他に所見もありませんし、凝りがかなりひどい…このままではいつぎっくり腰になってもおかしくない状態です。」
「ぎっくり腰?」
「今朝は本当にピキッと痛くて焦りました。でも湿布してくれるそうなので、これで安心して…」
「安心して無理をしてはダメですよ。」
「あ、はい…。」
私はたまみと伊作が苦笑しあうのを腹ただしい気持ちで見ていた。
なぜそこまでなるほど無理をしてしまうのか…。
そしてなぜ私にもっと早く言ってくれなかったのか…。
いや、ちょっと前から肩が凝ると言っていたので揉んでやったことはあったが、そこまでひどいのだとなぜ気づいてやれなかったのか…。
彼女の身体が心配なだけでなく、その背を他の男が揉んであのような声を出している…というのも気にくわなかった。
しかも、湿布ということは直接肌を見せるわけで…。
肩から、腰まで…?
「伊作、私が代わろう。」
「えっ?」
「揉みほぐしてから、そこの薬を湿布として塗ればいいんだね?」
ちらりと薬を見ると、伊作は少し考える素振りをみせたあと頷いた。
「はい。ではお願いします。湿布をするときはこの包帯と布を使ってください。私はちょっと倉庫に包帯の在庫確認へ行ってきます。」
にこりと微笑む伊作。
やがて医務室を出た彼の足音がしなくなった頃、私はたまみの横にしゃがみこんで不機嫌に言った。
「どうして言ってくれなかったんだ。」
「今朝急にひどくなったんです。仕事に支障はないかなって思ってたんですけど…すみません。」
「仕事がどうとかじゃなくて、きみの身体が心配なんだ…。昨夜だってそんなこと一言も…。」
「だって…土井先生が部屋に来たら、嬉しくて痛いのとか忘れちゃうんです……。」
「忘れるってそんなわけ…」
「それに土井先生もお疲れなんだし、むしろ私が癒してあげたいなぁって…」
たまみがしゅんとして呟いた。
またそんな可愛いことを…。
一瞬、ごまかされそうになりオホンと咳払いをした。
「とにかく、これからはまず私に…何事も早目に教えてくれるかい。」
「ちょっと凝っただけで大袈裟ですよ…?」
「一事が万事というだろう。」
「はぁい」と苦笑いしながら腕につっぷするたまみ。
私は彼女の背に手を置き、ぐっと指に力を込めた……。
ため息をつきながら、いつもの胃薬を貰いに医務室に来てみると。
「あっ、そこ……!」
中から聞こえる声に、戸を開ける手がピタリと止まった。
…今のは……
私が彼女の声を聞き間違えるはずがない。
まさか…!?
「んぅッ…」
ガラッ!!
ザッと血の気が引き、反射的に勢いよく戸を開けた。
瞬時に部屋の中を見渡す。
するとそこには、たまみが布団の上でうつ伏せになっていて…。
「伊作…?」
伊作はたまみの横に膝立ちして、彼女の背中を掌で押していた。
私が勢いよく戸を開けたことに驚いてキョトンとしていたが、伊作は私と目が合うとぺこりと会釈した。
うつぶせていたたまみもこちらに顔を向ける。
「あ、土井先生。」
可愛らしいのんきな声。
「っ…たまみ、ここで、なにを……」
言葉がつかえた。
一瞬、誰かが彼女によからぬことをしているのではないかと気が動転した。
「肩と背中と腰が痛くて、今診てもらってたんです。」
「肩と背中と腰…?」
「たまみさん、だいぶ体が凝ってるみたいで。ほぐしてから湿布をしようとしてるとこなんです。土井先生はどうされましたか?」
「あ…いや、私は……」
ちょっとあの声はどうなんだと思いつつも、あらぬことを疑ってしまった自分に恥ずかしくなった。
同時に、たまみの体調が心配になった。
「私はいつもの薬を。それより、背中というのは病ではなく凝りが原因なのか…?」
「そうですね。他に所見もありませんし、凝りがかなりひどい…このままではいつぎっくり腰になってもおかしくない状態です。」
「ぎっくり腰?」
「今朝は本当にピキッと痛くて焦りました。でも湿布してくれるそうなので、これで安心して…」
「安心して無理をしてはダメですよ。」
「あ、はい…。」
私はたまみと伊作が苦笑しあうのを腹ただしい気持ちで見ていた。
なぜそこまでなるほど無理をしてしまうのか…。
そしてなぜ私にもっと早く言ってくれなかったのか…。
いや、ちょっと前から肩が凝ると言っていたので揉んでやったことはあったが、そこまでひどいのだとなぜ気づいてやれなかったのか…。
彼女の身体が心配なだけでなく、その背を他の男が揉んであのような声を出している…というのも気にくわなかった。
しかも、湿布ということは直接肌を見せるわけで…。
肩から、腰まで…?
「伊作、私が代わろう。」
「えっ?」
「揉みほぐしてから、そこの薬を湿布として塗ればいいんだね?」
ちらりと薬を見ると、伊作は少し考える素振りをみせたあと頷いた。
「はい。ではお願いします。湿布をするときはこの包帯と布を使ってください。私はちょっと倉庫に包帯の在庫確認へ行ってきます。」
にこりと微笑む伊作。
やがて医務室を出た彼の足音がしなくなった頃、私はたまみの横にしゃがみこんで不機嫌に言った。
「どうして言ってくれなかったんだ。」
「今朝急にひどくなったんです。仕事に支障はないかなって思ってたんですけど…すみません。」
「仕事がどうとかじゃなくて、きみの身体が心配なんだ…。昨夜だってそんなこと一言も…。」
「だって…土井先生が部屋に来たら、嬉しくて痛いのとか忘れちゃうんです……。」
「忘れるってそんなわけ…」
「それに土井先生もお疲れなんだし、むしろ私が癒してあげたいなぁって…」
たまみがしゅんとして呟いた。
またそんな可愛いことを…。
一瞬、ごまかされそうになりオホンと咳払いをした。
「とにかく、これからはまず私に…何事も早目に教えてくれるかい。」
「ちょっと凝っただけで大袈裟ですよ…?」
「一事が万事というだろう。」
「はぁい」と苦笑いしながら腕につっぷするたまみ。
私は彼女の背に手を置き、ぐっと指に力を込めた……。