第106話 これからは
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いつもの補習授業も何とか無事終え、私はたまみときり丸と三人で春休みを過ごしていた。
休みとはいえアルバイトや諸々の用事で毎日忙しい日々だが、当たり前のようになった三人での時間がとても心地よかった。
もうすぐたまみがここに来て2年。
2度目となる彼女の「誕生日」に何を贈ろうかと迷っていた。
去年初めての誕生日にはエプロンを送り、ちょっと勘違いされたりもしたが喜んでもらえた。
今年は何にしようか…。
「土井先生、ぼーっとしてどうしたんですか?」
いつの間にか内職の造花作りの手が止まっていて、きり丸に怪訝な顔をされてしまった。
「ああ、いや…ちょっと考え事を…」
「考え事とかいって、たまみさんのことでしょう。」
「なっ…!」
図星をつかれてつい顔に出てしまった。
きり丸は「やっぱり。」とニヤニヤ笑っている。
「土井先生、実は明日のバイトがキャンセルされてしまって。この造花を作り終えたら明後日までアルバイトがないんです。」
「珍しいな。この造花の納期は?」
「明日の夕方です。」
「それはよかった。この量を今日中に作るのは大変だと思っていたから、それならゆっくり作れそ…」
「いえ、それはそれで今日中に仕上げてください。」
「何かあるのか?」
「せっかくなんで、明日は乱太郎の家に久しぶりに遊びに行こうかと思いまして。」
「乱太郎のところに?」
「はい。なので、土井先生もたまみさんと出掛けてきたらどうですか。たまにはちゃんとしとかないと、誰かさんに取られちゃいますよ?」
「よ、余計なお世話だ…!」
「あはは!ま、というわけで僕は今から犬の散歩に行ってくるんで造花は土井先生とたまみさんでよろしくお願いしまーす!」
「あっ、こらきり丸…!」
きり丸は言いたいことだけ言い残してそそくさと家を出てしまった。
しかもさりげなく仕事を押しつけていったな…!
「明日…。」
急な話だが、確かにたまみとゆっくり出掛ける時間というのはなかなかとれない。
そうだ、一緒に町に行って彼女が欲しいと思うものを買ってあげるのもいいかもしれないな…。
たまみはいま井戸で洗濯をしてくれている。
私は明日どんな1日にしようかと考えながら、せっせと造花作りの速度を上げた。
夜、きり丸が眠ったあとにたまみと過ごす時間。
お茶を飲みながら私にぴたりと寄り添ってくる彼女が可愛くてしょうがない。
私は湯飲みを置くと、たまみをぎゅっと抱きしめた。
「たまみ」
「はい?」
「明日…二人で出掛けようか。」
「えっ?」
驚いて私を見上げる彼女。
可愛いその頭をそっと撫でると私は微笑んだ。
「明日のアルバイトがキャンセルになって、きり丸は乱太郎の家に遊びに行くらしい。」
「じゃあ丸1日あいてるってことですか?」
「そうだね、どこか行きたいところはある?」
たまみは目を輝かせて唇に指を当てた。
行き先を真剣に考えているようだ。
「もうすぐきみの誕生日だから、欲しいものがあるなら一緒に買いに行こう。」
すると、たまみは期待に満ちた目で私を見つめた。
その瞳があまりにもキラキラしているので、何が欲しいのかと…私に用意できる範囲のものかと一瞬不安になってしまった。
「じゃあ…モノじゃなくて、丸1日デートしてください。」
物ではなくデート?
どういうことかよく分からずに首を傾げると、たまみが私の手をキュッと握りしめた。
「私だけのために…半助さんの1日をください。」
「私の1日?…そんなのでいいの?」
「だって、半助さんいつも忙しいから…私のためにまるまる1日過ごしてくれたら嬉しいなって。」
なんと可愛らしいお願いをしてくるのだろう。
私は彼女の手を力強く握り返した。
「わかった、じゃあ絶対にその日は何も邪魔が入らないようにしよう。約束だ。」
「ほんとですか!?嬉しい!!」
たまみが笑顔で抱きついてきた。
なんとしてもその日1日は誰の邪魔も入らないようにしなければ…!
「それで、どこか行きたいところはある?」
「んー、あんみつが食べたいです。」
「うんうん、それから?」
「ん~…あとは半助さんのお任せコースで。」
お任せ。
うーん、最も難易度の高い課題かもしれない…。
しかも明日のことだから事前準備も何もない。
「期待に応えられるか分からないけど…じゃあ少し考えてみるよ。」
休みとはいえアルバイトや諸々の用事で毎日忙しい日々だが、当たり前のようになった三人での時間がとても心地よかった。
もうすぐたまみがここに来て2年。
2度目となる彼女の「誕生日」に何を贈ろうかと迷っていた。
去年初めての誕生日にはエプロンを送り、ちょっと勘違いされたりもしたが喜んでもらえた。
今年は何にしようか…。
「土井先生、ぼーっとしてどうしたんですか?」
いつの間にか内職の造花作りの手が止まっていて、きり丸に怪訝な顔をされてしまった。
「ああ、いや…ちょっと考え事を…」
「考え事とかいって、たまみさんのことでしょう。」
「なっ…!」
図星をつかれてつい顔に出てしまった。
きり丸は「やっぱり。」とニヤニヤ笑っている。
「土井先生、実は明日のバイトがキャンセルされてしまって。この造花を作り終えたら明後日までアルバイトがないんです。」
「珍しいな。この造花の納期は?」
「明日の夕方です。」
「それはよかった。この量を今日中に作るのは大変だと思っていたから、それならゆっくり作れそ…」
「いえ、それはそれで今日中に仕上げてください。」
「何かあるのか?」
「せっかくなんで、明日は乱太郎の家に久しぶりに遊びに行こうかと思いまして。」
「乱太郎のところに?」
「はい。なので、土井先生もたまみさんと出掛けてきたらどうですか。たまにはちゃんとしとかないと、誰かさんに取られちゃいますよ?」
「よ、余計なお世話だ…!」
「あはは!ま、というわけで僕は今から犬の散歩に行ってくるんで造花は土井先生とたまみさんでよろしくお願いしまーす!」
「あっ、こらきり丸…!」
きり丸は言いたいことだけ言い残してそそくさと家を出てしまった。
しかもさりげなく仕事を押しつけていったな…!
「明日…。」
急な話だが、確かにたまみとゆっくり出掛ける時間というのはなかなかとれない。
そうだ、一緒に町に行って彼女が欲しいと思うものを買ってあげるのもいいかもしれないな…。
たまみはいま井戸で洗濯をしてくれている。
私は明日どんな1日にしようかと考えながら、せっせと造花作りの速度を上げた。
夜、きり丸が眠ったあとにたまみと過ごす時間。
お茶を飲みながら私にぴたりと寄り添ってくる彼女が可愛くてしょうがない。
私は湯飲みを置くと、たまみをぎゅっと抱きしめた。
「たまみ」
「はい?」
「明日…二人で出掛けようか。」
「えっ?」
驚いて私を見上げる彼女。
可愛いその頭をそっと撫でると私は微笑んだ。
「明日のアルバイトがキャンセルになって、きり丸は乱太郎の家に遊びに行くらしい。」
「じゃあ丸1日あいてるってことですか?」
「そうだね、どこか行きたいところはある?」
たまみは目を輝かせて唇に指を当てた。
行き先を真剣に考えているようだ。
「もうすぐきみの誕生日だから、欲しいものがあるなら一緒に買いに行こう。」
すると、たまみは期待に満ちた目で私を見つめた。
その瞳があまりにもキラキラしているので、何が欲しいのかと…私に用意できる範囲のものかと一瞬不安になってしまった。
「じゃあ…モノじゃなくて、丸1日デートしてください。」
物ではなくデート?
どういうことかよく分からずに首を傾げると、たまみが私の手をキュッと握りしめた。
「私だけのために…半助さんの1日をください。」
「私の1日?…そんなのでいいの?」
「だって、半助さんいつも忙しいから…私のためにまるまる1日過ごしてくれたら嬉しいなって。」
なんと可愛らしいお願いをしてくるのだろう。
私は彼女の手を力強く握り返した。
「わかった、じゃあ絶対にその日は何も邪魔が入らないようにしよう。約束だ。」
「ほんとですか!?嬉しい!!」
たまみが笑顔で抱きついてきた。
なんとしてもその日1日は誰の邪魔も入らないようにしなければ…!
「それで、どこか行きたいところはある?」
「んー、あんみつが食べたいです。」
「うんうん、それから?」
「ん~…あとは半助さんのお任せコースで。」
お任せ。
うーん、最も難易度の高い課題かもしれない…。
しかも明日のことだから事前準備も何もない。
「期待に応えられるか分からないけど…じゃあ少し考えてみるよ。」