第47話 奪還
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翌日。
私は昨日の一件などなかったかのように、いつも通り仕事をこなした。
しかし、心のなかでは焦っていた。
あの少女との約束をどうしようかと。
私がお米を用意してあげられたらいいんだけれど、給料日前で手持ちが足りない。
いっそ土井先生に借りようかな…きっと待っているから今日の午後にでも行かなくては… 。
土井先生と職員室で仕事をしながらそんなことを考えていると、突然土井先生が天井を見上げた。
「どうしましたか?」
「…さがって。」
土井先生が私を背に隠すと、天井から人影が降りてきた。
「諸泉さん…!」
諸泉さんはバツの悪そうな顔をして大きな風呂敷を差し出した。
「昨日は…、殿の命令とはいえ怖い思いをさせたな。受付担当から聞いたが、きみは米が欲しかったんだろ…?」
私は驚いて目をしばたたいた。
「参加賞の1週間分だ。」
受けとると、風呂敷のなかには米の包みが入っていた。
「尊奈門くん、こんなことをしてきみは大丈夫なのかい…?」
「お前に心配されるほど落ちぶれてはいない!誰にも分からないように来たから安心しろ。」
「諸泉さん…助かります!!ありがとうございます!」
喜んでお礼を言うと、諸泉さんは赤くなって腕をくみ横を向いた。
「べ、別に、それは本来貰ってしかるべきものなんだから、礼を言われるすじあいもない…。」
優しいなぁと思い微笑むと、諸泉さんは「じゃあな。」と帰ろうとした。
「あ、風呂敷はお返しします…!」
お米だけ頂いて風呂敷を返そうとしたとき、その端に私の笛がくくりつけられていることに気づいた。
「この笛は…!」
「ん、何だそれは。」
諸泉さんが不思議そうに見た。
「これは、雑渡さんに没収されてた私の笛です…。」
その言葉に、諸泉さんの表情が凍りつく。
土井先生がくすくすと笑った。
「どうやらここに来ることはバレていたようだね。」
「組頭…!」
諸泉さんがハッと思い出したように言った。
「そういえば出てくるときに『着物は売ればいい』と言っていたな…!何のことかと思っていたが、きみが昨日着て帰った着物のことか!」
「雑渡さん…。」
正直、あの豪華な着物は着る機会もないしどうやって返そうかと悩んでいた。
「そう言われた時点で自分の行動が読まれていると気付くべきだろう…。」
土井先生が少し呆れ気味に言うと、諸泉さんは「う、うるさい!」と顔を赤くした。
「とにかく、これで私の用事は済んだ。…しかし、殿はまだ諦めていないようだから注意するんだな。」
「…忠告ありがとう。」
土井先生が眉をハの字にして微笑むと、諸泉さんはそのまま姿を消してしまった。
私は『殿はまだ諦めていない』という言葉がひっかかって、手にしていたお米をぎゅっと握った。
まだ、追いかけてくるのだろうか。
じっと俯いていると、土井先生がポンと肩を叩いた。
「…大丈夫。私がついてるから。」
「土井先生…。」
不思議と、土井先生が大丈夫と言ってくれると本当に大丈夫な気がした。
私は「ありがとうございます」と微笑んで頷いた。
その日の夕方。
私はきり丸くんに案内してもらいながら、土井先生と一緒に昨日の女の子の家に来た。
諸泉さんから貰ったお米と、着物を売ったお金で買った野菜やお米を持って。
女の子の父親は出稼ぎに出ているらしく、母親は体が弱っていて、私達にとても驚いた。
私は野菜を入れて栄養たっぷりのお粥を作り、きり丸くんが赤ちゃんのお世話をしている間に土井先生が飴湯を作った。
弱っていた母親は涙を流して喜んでくれて、女の子にもやっと笑顔が見られた。
よかった。
色々あったけれど、その笑顔を見たときに、これでよかったのだと思った。
それからしばらく、私ときり丸くんはときどきその家に立ち寄って赤ちゃんのお世話をしたりご飯を作ってあげたりしたのだった。
私は昨日の一件などなかったかのように、いつも通り仕事をこなした。
しかし、心のなかでは焦っていた。
あの少女との約束をどうしようかと。
私がお米を用意してあげられたらいいんだけれど、給料日前で手持ちが足りない。
いっそ土井先生に借りようかな…きっと待っているから今日の午後にでも行かなくては… 。
土井先生と職員室で仕事をしながらそんなことを考えていると、突然土井先生が天井を見上げた。
「どうしましたか?」
「…さがって。」
土井先生が私を背に隠すと、天井から人影が降りてきた。
「諸泉さん…!」
諸泉さんはバツの悪そうな顔をして大きな風呂敷を差し出した。
「昨日は…、殿の命令とはいえ怖い思いをさせたな。受付担当から聞いたが、きみは米が欲しかったんだろ…?」
私は驚いて目をしばたたいた。
「参加賞の1週間分だ。」
受けとると、風呂敷のなかには米の包みが入っていた。
「尊奈門くん、こんなことをしてきみは大丈夫なのかい…?」
「お前に心配されるほど落ちぶれてはいない!誰にも分からないように来たから安心しろ。」
「諸泉さん…助かります!!ありがとうございます!」
喜んでお礼を言うと、諸泉さんは赤くなって腕をくみ横を向いた。
「べ、別に、それは本来貰ってしかるべきものなんだから、礼を言われるすじあいもない…。」
優しいなぁと思い微笑むと、諸泉さんは「じゃあな。」と帰ろうとした。
「あ、風呂敷はお返しします…!」
お米だけ頂いて風呂敷を返そうとしたとき、その端に私の笛がくくりつけられていることに気づいた。
「この笛は…!」
「ん、何だそれは。」
諸泉さんが不思議そうに見た。
「これは、雑渡さんに没収されてた私の笛です…。」
その言葉に、諸泉さんの表情が凍りつく。
土井先生がくすくすと笑った。
「どうやらここに来ることはバレていたようだね。」
「組頭…!」
諸泉さんがハッと思い出したように言った。
「そういえば出てくるときに『着物は売ればいい』と言っていたな…!何のことかと思っていたが、きみが昨日着て帰った着物のことか!」
「雑渡さん…。」
正直、あの豪華な着物は着る機会もないしどうやって返そうかと悩んでいた。
「そう言われた時点で自分の行動が読まれていると気付くべきだろう…。」
土井先生が少し呆れ気味に言うと、諸泉さんは「う、うるさい!」と顔を赤くした。
「とにかく、これで私の用事は済んだ。…しかし、殿はまだ諦めていないようだから注意するんだな。」
「…忠告ありがとう。」
土井先生が眉をハの字にして微笑むと、諸泉さんはそのまま姿を消してしまった。
私は『殿はまだ諦めていない』という言葉がひっかかって、手にしていたお米をぎゅっと握った。
まだ、追いかけてくるのだろうか。
じっと俯いていると、土井先生がポンと肩を叩いた。
「…大丈夫。私がついてるから。」
「土井先生…。」
不思議と、土井先生が大丈夫と言ってくれると本当に大丈夫な気がした。
私は「ありがとうございます」と微笑んで頷いた。
その日の夕方。
私はきり丸くんに案内してもらいながら、土井先生と一緒に昨日の女の子の家に来た。
諸泉さんから貰ったお米と、着物を売ったお金で買った野菜やお米を持って。
女の子の父親は出稼ぎに出ているらしく、母親は体が弱っていて、私達にとても驚いた。
私は野菜を入れて栄養たっぷりのお粥を作り、きり丸くんが赤ちゃんのお世話をしている間に土井先生が飴湯を作った。
弱っていた母親は涙を流して喜んでくれて、女の子にもやっと笑顔が見られた。
よかった。
色々あったけれど、その笑顔を見たときに、これでよかったのだと思った。
それからしばらく、私ときり丸くんはときどきその家に立ち寄って赤ちゃんのお世話をしたりご飯を作ってあげたりしたのだった。