第104話 言葉の真意
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その夜。
昼間外出していた為、やはり今日期限の書類の作成に追われていた。
山田先生が手伝おうかと声をかけてくれたりもしたが、悪いので結局先に寝てもらうことにした。
…それにしても。
ふと昼間のことを思い出した。
帰り道、たまみは何か言いたそうにしていた。
そのときは気づかなかったが、もしかして…八方斎とのやりとりを聞かれていたのだろうか。
それならば店主達の微妙な空気も納得がいく。
「うーん…」
しまったなぁ。
たまみに絡む輩を排除したい一心で、私としたことが厨房からの視線に気づかなかったのだろうか。
もしそうだとしたら…たまみはどう思っているのだろう。
勝手にそんなことを言って…と思うのか。
それとももしかすると…私の言葉を待ってくれていたりして…いやいやそれは都合の良すぎる期待だろうか…いやだがしかし……。
急ぐはずの書類の手が止まってしまったとき、職員室の障子が少し開いた。
「夜分に失礼します…土井先生、まだ起きてるんですか?」
「!」
今しがた考えていた相手であるたまみが、障子の隙間から少し顔を出した。
「すみません、お昼一緒に行ってもらったから…。あの、何かできることがあるなら手伝います…!」
「もうすぐ終わるから大丈夫だよ。もう遅いしたまみは気にせず寝てて。」
「そうですか…?じゃあお夜食用意したのですぐ持ってきますね。」
「ありがとう、じゃあ食堂まで一緒に行こう。」
「あ、いえ…実は一緒に食べながら手伝おうと思って、私の部屋に全部用意してあるんです。」
てへへと笑うたまみ。
「…じゃあ、せっかくだから…そっちで頂こうかな。」
たまみが嬉しそうに頷いた。
私の人指し指をきゅっと握り、一緒に行こうと甘えてくる。
お夜食だけでなくきみも頂戴してしまおうか、なんて考えが一瞬浮かび、慌てて打ち消す。
彼女の部屋に入ると、小さな巻き寿司と熱いお茶があった。
促されるまま座布団に座る。
「本当は、お蕎麦を作りたかったんですけど…」
「お蕎麦?」
「はい。また今度覚えて作りますね。」
「……もしかして、お蕎麦の作り方を習いたくて今日のアルバイトを?」
「そうなんです、職人さんがどんなお蕎麦を作るのか見てみたくて…。」
そうだったのか。
ああ、それで配膳担当になるのを残念そうにしていたんだな…。
「たまみは料理が好きなんだな。」
すると、彼女は少し曖昧に首を振った。
「んー、作るのが好きというか…半助さんに喜んで欲しくて。」
「私に?」
予想外の答えにじっと見つめると、たまみは微笑んで頷いた。
「半助さんに美味しいものを作ってあげたくて…喜んでもらいたくて、頑張って覚えてるんです。いつも、これを作ったら半助さんどんな顔するかな~って考えてるんですよ。」
嬉しそうに頬を染め、「とくにお休みで一緒に居るときは…」と私にぴたりと寄り添ってくるたまみ。
「半助さんのために作るんだーって思うと、献立を考えて買い出しをしてるときも作ってるときも、ドキドキして楽しくなるんです。」
なんて可愛いことを…!
思わずぎゅっと腕のなかに抱きしめた。
「…じゃあ、お蕎麦は私が作ろう。」
「え?」
「私かたまみか、どちらか一人が作れたら大丈夫だろう?……ずっと一緒なんだから。」
「…!」
「たまみがお蕎麦を食べたいときは、私が作るよ。」
「…嬉しい…」
たまみが抱きついて私の背に腕を回した。
じっと見つめてくる瞳。
彼女の柔らかい頬に手を当て、ゆっくりと顔を近づける。
私の前髪が彼女の額に触れた。
「たまみ…愛してる。」
そっと優しく唇を重ねた。
…今は、まだこのくらいで……。
この先の言葉は、まだもう少し………。
「あ……お茶が冷めてしまうね。先に食べようか?」
あまりイチャイチャしていると、止まれなくなってしまいそうだ。
たまみは微笑んで頷き、私の隣にぴたりとくっついてお皿を持った。
「はい、あーん。」
ごくごく自然な感じで食べさてもらう。
生徒にこんな姿は見せられないな…。
「美味しいですか?」
「うん」
もぐもぐと食べながら、「福は内…うちの福の神はここにあり…だな。」などと心のなかで思ったのだった。
昼間外出していた為、やはり今日期限の書類の作成に追われていた。
山田先生が手伝おうかと声をかけてくれたりもしたが、悪いので結局先に寝てもらうことにした。
…それにしても。
ふと昼間のことを思い出した。
帰り道、たまみは何か言いたそうにしていた。
そのときは気づかなかったが、もしかして…八方斎とのやりとりを聞かれていたのだろうか。
それならば店主達の微妙な空気も納得がいく。
「うーん…」
しまったなぁ。
たまみに絡む輩を排除したい一心で、私としたことが厨房からの視線に気づかなかったのだろうか。
もしそうだとしたら…たまみはどう思っているのだろう。
勝手にそんなことを言って…と思うのか。
それとももしかすると…私の言葉を待ってくれていたりして…いやいやそれは都合の良すぎる期待だろうか…いやだがしかし……。
急ぐはずの書類の手が止まってしまったとき、職員室の障子が少し開いた。
「夜分に失礼します…土井先生、まだ起きてるんですか?」
「!」
今しがた考えていた相手であるたまみが、障子の隙間から少し顔を出した。
「すみません、お昼一緒に行ってもらったから…。あの、何かできることがあるなら手伝います…!」
「もうすぐ終わるから大丈夫だよ。もう遅いしたまみは気にせず寝てて。」
「そうですか…?じゃあお夜食用意したのですぐ持ってきますね。」
「ありがとう、じゃあ食堂まで一緒に行こう。」
「あ、いえ…実は一緒に食べながら手伝おうと思って、私の部屋に全部用意してあるんです。」
てへへと笑うたまみ。
「…じゃあ、せっかくだから…そっちで頂こうかな。」
たまみが嬉しそうに頷いた。
私の人指し指をきゅっと握り、一緒に行こうと甘えてくる。
お夜食だけでなくきみも頂戴してしまおうか、なんて考えが一瞬浮かび、慌てて打ち消す。
彼女の部屋に入ると、小さな巻き寿司と熱いお茶があった。
促されるまま座布団に座る。
「本当は、お蕎麦を作りたかったんですけど…」
「お蕎麦?」
「はい。また今度覚えて作りますね。」
「……もしかして、お蕎麦の作り方を習いたくて今日のアルバイトを?」
「そうなんです、職人さんがどんなお蕎麦を作るのか見てみたくて…。」
そうだったのか。
ああ、それで配膳担当になるのを残念そうにしていたんだな…。
「たまみは料理が好きなんだな。」
すると、彼女は少し曖昧に首を振った。
「んー、作るのが好きというか…半助さんに喜んで欲しくて。」
「私に?」
予想外の答えにじっと見つめると、たまみは微笑んで頷いた。
「半助さんに美味しいものを作ってあげたくて…喜んでもらいたくて、頑張って覚えてるんです。いつも、これを作ったら半助さんどんな顔するかな~って考えてるんですよ。」
嬉しそうに頬を染め、「とくにお休みで一緒に居るときは…」と私にぴたりと寄り添ってくるたまみ。
「半助さんのために作るんだーって思うと、献立を考えて買い出しをしてるときも作ってるときも、ドキドキして楽しくなるんです。」
なんて可愛いことを…!
思わずぎゅっと腕のなかに抱きしめた。
「…じゃあ、お蕎麦は私が作ろう。」
「え?」
「私かたまみか、どちらか一人が作れたら大丈夫だろう?……ずっと一緒なんだから。」
「…!」
「たまみがお蕎麦を食べたいときは、私が作るよ。」
「…嬉しい…」
たまみが抱きついて私の背に腕を回した。
じっと見つめてくる瞳。
彼女の柔らかい頬に手を当て、ゆっくりと顔を近づける。
私の前髪が彼女の額に触れた。
「たまみ…愛してる。」
そっと優しく唇を重ねた。
…今は、まだこのくらいで……。
この先の言葉は、まだもう少し………。
「あ……お茶が冷めてしまうね。先に食べようか?」
あまりイチャイチャしていると、止まれなくなってしまいそうだ。
たまみは微笑んで頷き、私の隣にぴたりとくっついてお皿を持った。
「はい、あーん。」
ごくごく自然な感じで食べさてもらう。
生徒にこんな姿は見せられないな…。
「美味しいですか?」
「うん」
もぐもぐと食べながら、「福は内…うちの福の神はここにあり…だな。」などと心のなかで思ったのだった。