第47話 奪還
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「大丈夫か!?」
土井先生の声。
こちらを振り返らずに短く尋ねる後ろ姿。
涙で掠れそうな声で、私は「はい…!」と答えた。
「彼女は返してもらう!」
土井先生の低く冷たい声が響いた。
雑渡さんは右目をにやりと細めてこちらを見た。
「やっぱり来たね…土井先生。」
雑渡さんが苦無を構える。
土井先生も私を背に庇いながら苦無を構えた。
そのまま、二人が同時に距離をつめて苦無を交わした。
鋭い金属音が鳴り響き、その合間で時折投げられる手裏剣が床や壁に突き刺さる。
深く刺さったそれが、その力強さを示していた。
二人とも、一呼吸もおくことなく流れるように素早く攻撃をしかけ、互いに最小限の動きでかわし続ける。
私はその迫力に圧倒され、廊下から部屋の中に後ずさった。
その瞬間。
「!?」
周りが白い煙に包まれた。
胴体に強い衝撃。
ぐんっ、と重力を感じ、次の瞬間、ひゅっと風を切る音がして逆に重力を感じなくなった。
落下、している!?
暗い視界で何が起きているか分からないまま、恐怖で身を固くすると、
「つかまって!」
土井先生!
耳元で土井先生の声がした。
私を抱きかかえる土井先生に、腕を伸ばして強くしがみつく。
次の瞬間、がっと体に強い重力を感じ、衝撃とともに地面にごろごろと転がり落ちた。
土井先生が私の背中と頭を抱えて、私は着地の衝撃をあまり受けずにすんだ。
「大丈夫?」
「…は…はぃ……」
よろよろと立ち上がろうとすると、土井先生が手を引いてくれた。
その腕にしがみつくように掴まる。
すぐ闇に目がなれてきて、土井先生を見上げた。
土井先生は木に引っかけていた鉤縄を強く引っ張り回収していた。
これで着地の衝撃を緩衝したのか。
上空を見上げる。
あんな高い窓から飛び降りたのかと身震いした。
すると、土井先生が口に指をくわえてピーッと音を出す。
「行くよ。」
土井先生は私を横抱きに抱え、木に登ると城の塀を越えて外の林に出た。
地面を驚くほど静かに走っていく。
するとどこからか手裏剣が飛んできて、横の木に刺さった。
土井先生は次々と飛んでくるそれを苦無で弾き返し、自らも何かを投げた。
そのまま物凄い勢いで走り続け、やがて暫くすると古い井戸のそばに来た。
土井先生を見上げると、汗が首を伝い落ちている。
「…ここまで来れば大丈夫。陽動作戦で敵をひきつけてくれた皆もじきここに集まるはずだ。」
土井先生が私をゆっくりと地面に降ろす。
月明かりに照らされた土井先生の真剣な顔。
そのまま、ぎゅっと強く抱き寄せられた。
「心配、させないでくれ…!」
土井先生の腕が苦しいほど強く締め付けた。
「怪我は?何も、されてないか…?」
土井先生はバッと私の頭を両手に挟み、真剣な眼差しで探るように見つめた。
「はい、大丈夫です。」
心配させてはいけないとはっきり頷くと、土井先生は私の頭を胸に強く抱いた。
「よかった…!」
土井先生の鼓動は早かった。
それは先程まで凄い勢いで走っていたからというだけではなさそうで…。
腕の強さ、真剣な眼差し、切羽詰まった声。
彼の全身から私を本気で心配してくれていたことが伝わってきた。
「ごめんなさい…」
安堵からか、私は土井先生にしがみつくように抱きついて涙した。
彼はずっと私の頭と背を強く抱きしめていた。
「一人で恐かっただろう…。」
「…はい…でも、土井先生が助けに来てくれると…信じていました。」
「当たり前だ…。たまみさんの為なら地の果てだろうと助けにいく。」
土井先生の親指が私の目尻を拭う。
その手にそっと手を重ねた。
「笛の音が聞こえて場所が分かったよ。渡しておいてよかった。」
その言葉にハッと思い出した。
「あ、それが…すぐ雑渡さんに取られてしまって…。」
「そうか、じゃあまた作るよ。今度こそ、使わないにこしたことはないけど。…ん?」
雑渡さんという言葉に、私は思い出した。
無意識に土井先生の腕をつかむ。
「…どうした?」
土井先生が心配そうに顔を覗きこんだ。
「土井先生…さっき、」
「うん?」
「…あの巻物が…私がこの世界に来たときに見た巻物が、あったんです…!」
「!」
「城主の黄昏甚兵衛は、巻物と私を手に入れたら城が栄えるという夢のお告げがあって、私を妻にしようとしたらしいんです…。」
土井先生の表情が曇った。
「そんなわけあるはずないのに…!でも、あの巻物は本物でした…。私、私…!」
言いしれぬ恐怖に襲われ、私は土井先生にしがみついた。
土井先生が私の頭をぎゅうっと抱きしめる。
「きみをあんなやつに渡すものか…。」
「土井先生…!」
「そんなことは、私が絶対にさせない…!」
力強い言葉にざわつく心が凪いだ。
それでも、まだ恐怖は拭いきれなくて、私は土井先生にしがみついた。
「…もし…もし、その巻物のせいで…何かのはずみで…元の世界に戻ってしまったら……」
「……たまみさん…」
土井先生が私の震える肩をそっと抱いた。
「…帰さない。どこまででも迎えに行くよ…。」
二人とも、そんなことが出来るのかなんて分からなかった。
それでも、私は土井先生のその言葉を信じて顔をあげた。
「約束…してくれますか?」
「ああ、約束だ。」
土井先生が優しい目で微笑んでくれたとき、少し離れたところから声が聞こえた。
「たまみさん!」
山田先生と六年生のみんながこちらに向かって走ってくる。
「無事か?」
「はい!山田先生、すみません…!みんなもありがとう…!」
怪我人もいないようで、私は心から安心した。
「さぁ…帰ろう。」
土井先生の優しい笑顔に頷いて、私は皆とともに学園に向かった。
土井先生の声。
こちらを振り返らずに短く尋ねる後ろ姿。
涙で掠れそうな声で、私は「はい…!」と答えた。
「彼女は返してもらう!」
土井先生の低く冷たい声が響いた。
雑渡さんは右目をにやりと細めてこちらを見た。
「やっぱり来たね…土井先生。」
雑渡さんが苦無を構える。
土井先生も私を背に庇いながら苦無を構えた。
そのまま、二人が同時に距離をつめて苦無を交わした。
鋭い金属音が鳴り響き、その合間で時折投げられる手裏剣が床や壁に突き刺さる。
深く刺さったそれが、その力強さを示していた。
二人とも、一呼吸もおくことなく流れるように素早く攻撃をしかけ、互いに最小限の動きでかわし続ける。
私はその迫力に圧倒され、廊下から部屋の中に後ずさった。
その瞬間。
「!?」
周りが白い煙に包まれた。
胴体に強い衝撃。
ぐんっ、と重力を感じ、次の瞬間、ひゅっと風を切る音がして逆に重力を感じなくなった。
落下、している!?
暗い視界で何が起きているか分からないまま、恐怖で身を固くすると、
「つかまって!」
土井先生!
耳元で土井先生の声がした。
私を抱きかかえる土井先生に、腕を伸ばして強くしがみつく。
次の瞬間、がっと体に強い重力を感じ、衝撃とともに地面にごろごろと転がり落ちた。
土井先生が私の背中と頭を抱えて、私は着地の衝撃をあまり受けずにすんだ。
「大丈夫?」
「…は…はぃ……」
よろよろと立ち上がろうとすると、土井先生が手を引いてくれた。
その腕にしがみつくように掴まる。
すぐ闇に目がなれてきて、土井先生を見上げた。
土井先生は木に引っかけていた鉤縄を強く引っ張り回収していた。
これで着地の衝撃を緩衝したのか。
上空を見上げる。
あんな高い窓から飛び降りたのかと身震いした。
すると、土井先生が口に指をくわえてピーッと音を出す。
「行くよ。」
土井先生は私を横抱きに抱え、木に登ると城の塀を越えて外の林に出た。
地面を驚くほど静かに走っていく。
するとどこからか手裏剣が飛んできて、横の木に刺さった。
土井先生は次々と飛んでくるそれを苦無で弾き返し、自らも何かを投げた。
そのまま物凄い勢いで走り続け、やがて暫くすると古い井戸のそばに来た。
土井先生を見上げると、汗が首を伝い落ちている。
「…ここまで来れば大丈夫。陽動作戦で敵をひきつけてくれた皆もじきここに集まるはずだ。」
土井先生が私をゆっくりと地面に降ろす。
月明かりに照らされた土井先生の真剣な顔。
そのまま、ぎゅっと強く抱き寄せられた。
「心配、させないでくれ…!」
土井先生の腕が苦しいほど強く締め付けた。
「怪我は?何も、されてないか…?」
土井先生はバッと私の頭を両手に挟み、真剣な眼差しで探るように見つめた。
「はい、大丈夫です。」
心配させてはいけないとはっきり頷くと、土井先生は私の頭を胸に強く抱いた。
「よかった…!」
土井先生の鼓動は早かった。
それは先程まで凄い勢いで走っていたからというだけではなさそうで…。
腕の強さ、真剣な眼差し、切羽詰まった声。
彼の全身から私を本気で心配してくれていたことが伝わってきた。
「ごめんなさい…」
安堵からか、私は土井先生にしがみつくように抱きついて涙した。
彼はずっと私の頭と背を強く抱きしめていた。
「一人で恐かっただろう…。」
「…はい…でも、土井先生が助けに来てくれると…信じていました。」
「当たり前だ…。たまみさんの為なら地の果てだろうと助けにいく。」
土井先生の親指が私の目尻を拭う。
その手にそっと手を重ねた。
「笛の音が聞こえて場所が分かったよ。渡しておいてよかった。」
その言葉にハッと思い出した。
「あ、それが…すぐ雑渡さんに取られてしまって…。」
「そうか、じゃあまた作るよ。今度こそ、使わないにこしたことはないけど。…ん?」
雑渡さんという言葉に、私は思い出した。
無意識に土井先生の腕をつかむ。
「…どうした?」
土井先生が心配そうに顔を覗きこんだ。
「土井先生…さっき、」
「うん?」
「…あの巻物が…私がこの世界に来たときに見た巻物が、あったんです…!」
「!」
「城主の黄昏甚兵衛は、巻物と私を手に入れたら城が栄えるという夢のお告げがあって、私を妻にしようとしたらしいんです…。」
土井先生の表情が曇った。
「そんなわけあるはずないのに…!でも、あの巻物は本物でした…。私、私…!」
言いしれぬ恐怖に襲われ、私は土井先生にしがみついた。
土井先生が私の頭をぎゅうっと抱きしめる。
「きみをあんなやつに渡すものか…。」
「土井先生…!」
「そんなことは、私が絶対にさせない…!」
力強い言葉にざわつく心が凪いだ。
それでも、まだ恐怖は拭いきれなくて、私は土井先生にしがみついた。
「…もし…もし、その巻物のせいで…何かのはずみで…元の世界に戻ってしまったら……」
「……たまみさん…」
土井先生が私の震える肩をそっと抱いた。
「…帰さない。どこまででも迎えに行くよ…。」
二人とも、そんなことが出来るのかなんて分からなかった。
それでも、私は土井先生のその言葉を信じて顔をあげた。
「約束…してくれますか?」
「ああ、約束だ。」
土井先生が優しい目で微笑んでくれたとき、少し離れたところから声が聞こえた。
「たまみさん!」
山田先生と六年生のみんながこちらに向かって走ってくる。
「無事か?」
「はい!山田先生、すみません…!みんなもありがとう…!」
怪我人もいないようで、私は心から安心した。
「さぁ…帰ろう。」
土井先生の優しい笑顔に頷いて、私は皆とともに学園に向かった。