第103話 新雪
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新年。
また新しい年をたまみときり丸と共に穏やかに迎えられたことを嬉しく思う。
今年も一年、健康に心穏やかに過ごせますように…。
「土井先生ー!こっちもお願いしまーす!」
「あのなぁきり丸、新年早々アルバイトをとってくるんじゃない!!少しはゆっくりさせてくれ…!!」
私ときり丸は大きな鋤を手に持ち雪かきのアルバイトをしていた。
年末からひどく吹雪き、急遽依頼が入ったらしい。
ご近所周りの雪かきは勿論助け合いとして手伝ったが、せめて正月くらいはたまみとこたつでゆっくり過ごしたい。
「ピンチの裏には儲け話ありです!いやぁ、今年は正月からお金儲けができていい一年になりそうですね!」
目を小銭に変えたきり丸があひゃあひゃと嬉しそうに笑った。
仕方ない、早く終わらせよう。
私はため息をつくと、たまみの待つ家に早く帰るべく鋤で雪をかき続けた。
「おかえりなさい…二人とも大丈夫ですか?」
くたくたになって家に帰ると、たまみが心配そうに出迎えてくれた。
雪で冷たくなったきり丸の手を、たまみが両手で挟んで温める。
「こんなに冷たく赤くなって…鼻も赤いし。」
「うぅ~、寒かったです。こたつこたつ…!」
きり丸が早々とこたつに入り身体を温める。
「半助さんもこんなに冷たくなって…」
たまみが私の手をとって自分の頬に当てた。
寒いとすぐ手足の冷える彼女だが、その頬は温かかった。
「たまみだって手、冷たいじゃないか。ゆっくり温かくしててくれたらよかったのに。」
「いまお雑煮を作ってて…。はい、これ温いですよ。」
たまみが私ときり丸にお湯で温めた手ぬぐいをくれたので、それを手と顔に当てて暖をとる。
熱いお茶を一口飲んでホッと一息つくと、やっと落ち着いた心持ちになった。
追加で水を汲みに行こうとするたまみ。
その腕をそっと掴む。
「私が行こう。雪も深いし。」
「じゃあ一緒に行ってもいいですか?私も雪を触りたいです。」
「え、雪を?…そうか、じゃあ…。」
たまみが転ばぬよう手を握り、新雪の上をぎゅっぎゅっと歩いていく。
彼女はとても寒がりだが、雪で遊ぶのは嫌いではないらしい。
先程まで嫌というほど埋もれていた雪なのに、たまみが嬉しそうに踏みしめる姿を見ていると雪のなかにいるのも楽しくなってきた。
「二人の回りだけ雪が溶けちゃうんじゃないですか~。」
きり丸がニヤニヤとからかってくるので雪玉を投げてやろうかと思ったが、ふと気づくと隣のおばちゃんやご近所さんたちもこちらを見てウンウンと頷いていた。
「たまみ、冷えて風邪をひいたらいけないしそろそろ中に入ろう。」
そそくさと汲んだ水を持ち、たまみの手を引きながら家に入る。
「お雑煮を食べたら、あとで雪だるまでも作ってみるかい?」
「はい!」
半分冗談で聞いてみたが、嬉しそうに微笑むたまみに私も心温かくなり自然と顔がほころんでいた。
「お雑煮美味しい~!おかわりしてもいいですかっ?」
「うん、たくさん作ったからいっぱい食べてね。」
「たまみ、私も。」
「はぁい。」
あ~ほんと美味しい。
癒される…。
ほくほくした気持ちで食べていると、たまみがふと思い出したように聞いてきた。
「初夢、覚えてますか?」
「うーん、何だったかな…何だか猫がいたような…。たまみは覚えてるのかい?」
聞き返すと、たまみは楽しそうに笑った。
「はい。…あれ、そういえば私も白猫と黒猫がいたような…」
「へぇ。同じ夢だったりして。」
「同じ初夢とか…夢でまで繋がってるみたいでいいですね。」
するとたまみは何かを思い出したようにクスクスと笑った。
「あともう一つあるんです。忍術学園の職員室にいて…」
「うん」
「赤ちゃんを抱いてたんです。」
「夢でまできり丸のバイトを?」
「それが、半助さんが赤ちゃんになってるんです。」
「え?」
「すっごく可愛くて、つい頬っぺたをつんつんしたら泣いちゃって。でももうホントにめちゃくちゃ可愛くて…あんまり可愛いすぎて目が覚めても覚えてました。」
たまみが私の頬をつんつんとしながら嬉しそうに話す。
「たまみさん、何でその赤ん坊が土井先生だと思ったんですか?」
きり丸が手を止めて不思議そうに聞いた。
「だって、半助さんそっくりだったから。」
「それ、子どもの土井先生じゃなくて土井先生の子どもだったりして。」
キョトンとするたまみに、きり丸が笑って言った。
「だから、土井先生とたまみさんの子ども。」
「!」
「正夢になるといいですねー!」
たまみが少し間をおいて赤くなった。
「きり丸、からかうんじゃない!」
きり丸の手前どんな顔をすればいいか分からず、私は俯いてもぐもぐと咀嚼し続けた。
…いや、正直私もそう思ったが。
それが初夢で…もし私とたまみの子どもだったとして…正夢になればどれほど……。
いやしかし、今年中に正夢とするなら、とつきとおかを遡って計算すると…もうすぐの話なのでは。
…え、むしろもしかしてもう既に…とか!?
ちらりとたまみの表情を伺い見ると、彼女はお椀の中を見つめて固まっていた。
「…イヤでしたか?」
しゅんとして俯いているたまみ。
「え?」
「だって、からかうなって…何だか怒ってるのかなって。」
「えっ!?い、いや、違う…そうじゃなくて…!」
何故かしょんぼりしているたまみに慌てて手を振って否定した。
「怒ってなんかない!私だって今すぐきみと子ども作りたいんだから…っ!!」
しーん。
びっくりして私を見つめるたまみ。
…あれ、何か言い方を間違えたような。
「えーと…、土井先生、僕ちょっと用事を思い出して……」
「え?…あ、ちがうちがう!!そういう意味じゃ…というか子どもが変に気を回すんじゃない!」
焦りすぎてお椀を落としそうになった。
そんな私の余裕のない姿が面白かったのか、たまみがクスクスと笑いだす。
それを見てきり丸も笑いだし…そんな二人を見て私も笑ってしまった。
また新しい年をたまみときり丸と共に穏やかに迎えられたことを嬉しく思う。
今年も一年、健康に心穏やかに過ごせますように…。
「土井先生ー!こっちもお願いしまーす!」
「あのなぁきり丸、新年早々アルバイトをとってくるんじゃない!!少しはゆっくりさせてくれ…!!」
私ときり丸は大きな鋤を手に持ち雪かきのアルバイトをしていた。
年末からひどく吹雪き、急遽依頼が入ったらしい。
ご近所周りの雪かきは勿論助け合いとして手伝ったが、せめて正月くらいはたまみとこたつでゆっくり過ごしたい。
「ピンチの裏には儲け話ありです!いやぁ、今年は正月からお金儲けができていい一年になりそうですね!」
目を小銭に変えたきり丸があひゃあひゃと嬉しそうに笑った。
仕方ない、早く終わらせよう。
私はため息をつくと、たまみの待つ家に早く帰るべく鋤で雪をかき続けた。
「おかえりなさい…二人とも大丈夫ですか?」
くたくたになって家に帰ると、たまみが心配そうに出迎えてくれた。
雪で冷たくなったきり丸の手を、たまみが両手で挟んで温める。
「こんなに冷たく赤くなって…鼻も赤いし。」
「うぅ~、寒かったです。こたつこたつ…!」
きり丸が早々とこたつに入り身体を温める。
「半助さんもこんなに冷たくなって…」
たまみが私の手をとって自分の頬に当てた。
寒いとすぐ手足の冷える彼女だが、その頬は温かかった。
「たまみだって手、冷たいじゃないか。ゆっくり温かくしててくれたらよかったのに。」
「いまお雑煮を作ってて…。はい、これ温いですよ。」
たまみが私ときり丸にお湯で温めた手ぬぐいをくれたので、それを手と顔に当てて暖をとる。
熱いお茶を一口飲んでホッと一息つくと、やっと落ち着いた心持ちになった。
追加で水を汲みに行こうとするたまみ。
その腕をそっと掴む。
「私が行こう。雪も深いし。」
「じゃあ一緒に行ってもいいですか?私も雪を触りたいです。」
「え、雪を?…そうか、じゃあ…。」
たまみが転ばぬよう手を握り、新雪の上をぎゅっぎゅっと歩いていく。
彼女はとても寒がりだが、雪で遊ぶのは嫌いではないらしい。
先程まで嫌というほど埋もれていた雪なのに、たまみが嬉しそうに踏みしめる姿を見ていると雪のなかにいるのも楽しくなってきた。
「二人の回りだけ雪が溶けちゃうんじゃないですか~。」
きり丸がニヤニヤとからかってくるので雪玉を投げてやろうかと思ったが、ふと気づくと隣のおばちゃんやご近所さんたちもこちらを見てウンウンと頷いていた。
「たまみ、冷えて風邪をひいたらいけないしそろそろ中に入ろう。」
そそくさと汲んだ水を持ち、たまみの手を引きながら家に入る。
「お雑煮を食べたら、あとで雪だるまでも作ってみるかい?」
「はい!」
半分冗談で聞いてみたが、嬉しそうに微笑むたまみに私も心温かくなり自然と顔がほころんでいた。
「お雑煮美味しい~!おかわりしてもいいですかっ?」
「うん、たくさん作ったからいっぱい食べてね。」
「たまみ、私も。」
「はぁい。」
あ~ほんと美味しい。
癒される…。
ほくほくした気持ちで食べていると、たまみがふと思い出したように聞いてきた。
「初夢、覚えてますか?」
「うーん、何だったかな…何だか猫がいたような…。たまみは覚えてるのかい?」
聞き返すと、たまみは楽しそうに笑った。
「はい。…あれ、そういえば私も白猫と黒猫がいたような…」
「へぇ。同じ夢だったりして。」
「同じ初夢とか…夢でまで繋がってるみたいでいいですね。」
するとたまみは何かを思い出したようにクスクスと笑った。
「あともう一つあるんです。忍術学園の職員室にいて…」
「うん」
「赤ちゃんを抱いてたんです。」
「夢でまできり丸のバイトを?」
「それが、半助さんが赤ちゃんになってるんです。」
「え?」
「すっごく可愛くて、つい頬っぺたをつんつんしたら泣いちゃって。でももうホントにめちゃくちゃ可愛くて…あんまり可愛いすぎて目が覚めても覚えてました。」
たまみが私の頬をつんつんとしながら嬉しそうに話す。
「たまみさん、何でその赤ん坊が土井先生だと思ったんですか?」
きり丸が手を止めて不思議そうに聞いた。
「だって、半助さんそっくりだったから。」
「それ、子どもの土井先生じゃなくて土井先生の子どもだったりして。」
キョトンとするたまみに、きり丸が笑って言った。
「だから、土井先生とたまみさんの子ども。」
「!」
「正夢になるといいですねー!」
たまみが少し間をおいて赤くなった。
「きり丸、からかうんじゃない!」
きり丸の手前どんな顔をすればいいか分からず、私は俯いてもぐもぐと咀嚼し続けた。
…いや、正直私もそう思ったが。
それが初夢で…もし私とたまみの子どもだったとして…正夢になればどれほど……。
いやしかし、今年中に正夢とするなら、とつきとおかを遡って計算すると…もうすぐの話なのでは。
…え、むしろもしかしてもう既に…とか!?
ちらりとたまみの表情を伺い見ると、彼女はお椀の中を見つめて固まっていた。
「…イヤでしたか?」
しゅんとして俯いているたまみ。
「え?」
「だって、からかうなって…何だか怒ってるのかなって。」
「えっ!?い、いや、違う…そうじゃなくて…!」
何故かしょんぼりしているたまみに慌てて手を振って否定した。
「怒ってなんかない!私だって今すぐきみと子ども作りたいんだから…っ!!」
しーん。
びっくりして私を見つめるたまみ。
…あれ、何か言い方を間違えたような。
「えーと…、土井先生、僕ちょっと用事を思い出して……」
「え?…あ、ちがうちがう!!そういう意味じゃ…というか子どもが変に気を回すんじゃない!」
焦りすぎてお椀を落としそうになった。
そんな私の余裕のない姿が面白かったのか、たまみがクスクスと笑いだす。
それを見てきり丸も笑いだし…そんな二人を見て私も笑ってしまった。