第102話 分かってはいても
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日の午後。
実技の授業をする頃に雨がふりだし、ぐっと気温も下がった。
せっかくなので、雨のなか罠を仕掛けたり敵をやり過ごして待機する訓練をすることにした。
「…いいかみんな、雨のときには今日練習したことを思い出すんだぞ。」
「「「「「は…はーい…!」」」」」」
雨と寒さで全員が震えていた。
まだ小さな体にはこれぐらいが限界か…。
「学園に戻ったらすぐにお風呂に入れるようにたまみさんがお湯を沸かしてくれてる。さあ、急いで帰ろう。」
さっきまで元気のなかった生徒達の表情が急に明るくなった。
「やったぁっ!!早く温まろう!!」
全員いそいそと帰る支度をする。
「今日はたまみさん一緒に入ってくれないかなぁ。」
喜三太がのんきな声でしんべヱに話しかけた。
「また洗ってもらいたいねぇ。」
!?
まさか、たまみさんはこいつらの風呂の世話までしているのか…!?
「あ、利吉さんびっくしてるー!」
あまりの驚きについ顔に出ていたようだ。
「利吉さんはダメですよ~!」
「あ、当たり前だ!というか、まさか…全員たまみさんに洗ってもらったことがあるのか?」
「「「「「ありまーすっ」」」」」」
「なっ…!」
泥だらけの顔で全員が元気に手を上げた。
「えーと、…みんな今何歳だ?」
「10歳かなぁ。」
庄左ヱ門の言葉に全員が頷いた。
10歳…。
いいのか、それは!?
「土井先生も知ってるのか?」
「土井先生も一緒に入りました!」
「はァ!?」
なっ、なんだって…!?
「土井先生は夜中にもたまみさんと二人でお風呂に入ってるみたいですよ~。」
「しんべヱ!それは話しちゃいけない約束だろ。」
「あ、そうだった!」
あははと笑うしんべヱときり丸。
あまりの驚きに私は固まってしまった。
ま、まさかあの土井先生が忍術学園のなかでそんなことを…しかも公然と?!
いや待て、そういえばたまみさんを混浴温泉に連れ込んでいたこともあったし、土井先生の家できり丸の着物を着せていたこともあったな…。
……ということはつまり…
土井先生…!
奥手な爽やか青年をよそおっておきながら、実はとんだ助平じゃないか…!!
そんなことを野放しにしておくなんて、父上は一体何をしてるんだ…!
「1年は組のお父さんとお母さんとみんなでお風呂に入ったって自慢したらみんな驚いてたよね!」
それはそうだろう…。
「でも楽しかったよねー!」
「ねー!」
「……そ、それはよかったな……。」
自慢気に話されても、私としてはどう返したらいいか迷ってしまった。
「でもね、みんなを洗うには急がないといけないから、僕達手ぬぐいで自分の体を洗ってる間にたまみさんが手で背中を洗ってくれたりしたんだよね。」
「手で?」
「はい。」
「…直接?」
「はい、お母さんみたいでくすぐったくて…って、あれ、利吉さん顔が赤いですよ?」
「あー、なんかやらしいこと考えてる~。」
「か、考えてないっ!!全員忍術学園まで走らせるぞっ!?」
一瞬浮かびかけた妄想を打ち消すように大声で怒ると、みんな慌てて忍術学園の方に歩きだした。
…ちょっと情報を整理して落ち着こう。
そう思った瞬間。
「わぁっ…!!」
乱太郎のすぐ隣に大きな影が現れた。
「危ない…っ!!!!」
乱太郎をかばい、咄嗟に抱えて横へ飛び退いた。
熊だ。
足元にはドングリが落ちていて、どうやらそれを目当てにこんなところまで降りてきていたようだ。
「乱太郎、怪我はないか。」
「は、はい!」
「では全員学園まで走るんだ。」
そう言って乱太郎達に背を向け熊と向かい合い苦無を手にした。
「利吉さんは…!?」
「後から行く。君達を守りながらではやりにくい、早く行け!」
「で、でも…!」
「早く!」
「…!」
みんなが心配そうな顔をしながら駆け出した。
それを追いかけようとする熊の足元に苦無を投げつけ止める。
熊がこちらを振り返り、私はそれをニヤリと睨み付けた。
「山奥育ちをなめるなよ。」
一人なら、なんとでもできる。
ちらりと左手を見た。
先ほど乱太郎をかばったときにできた傷から血が流れ、手の甲を伝い地面に落ちる。
雨でよかった。
地面に落ちた血のあともすぐになくなる…。
熊と対峙するのも初めてではない。
私は一呼吸吐き、心を静め、目の前の大きな熊を睨み付けた…。
実技の授業をする頃に雨がふりだし、ぐっと気温も下がった。
せっかくなので、雨のなか罠を仕掛けたり敵をやり過ごして待機する訓練をすることにした。
「…いいかみんな、雨のときには今日練習したことを思い出すんだぞ。」
「「「「「は…はーい…!」」」」」」
雨と寒さで全員が震えていた。
まだ小さな体にはこれぐらいが限界か…。
「学園に戻ったらすぐにお風呂に入れるようにたまみさんがお湯を沸かしてくれてる。さあ、急いで帰ろう。」
さっきまで元気のなかった生徒達の表情が急に明るくなった。
「やったぁっ!!早く温まろう!!」
全員いそいそと帰る支度をする。
「今日はたまみさん一緒に入ってくれないかなぁ。」
喜三太がのんきな声でしんべヱに話しかけた。
「また洗ってもらいたいねぇ。」
!?
まさか、たまみさんはこいつらの風呂の世話までしているのか…!?
「あ、利吉さんびっくしてるー!」
あまりの驚きについ顔に出ていたようだ。
「利吉さんはダメですよ~!」
「あ、当たり前だ!というか、まさか…全員たまみさんに洗ってもらったことがあるのか?」
「「「「「ありまーすっ」」」」」」
「なっ…!」
泥だらけの顔で全員が元気に手を上げた。
「えーと、…みんな今何歳だ?」
「10歳かなぁ。」
庄左ヱ門の言葉に全員が頷いた。
10歳…。
いいのか、それは!?
「土井先生も知ってるのか?」
「土井先生も一緒に入りました!」
「はァ!?」
なっ、なんだって…!?
「土井先生は夜中にもたまみさんと二人でお風呂に入ってるみたいですよ~。」
「しんべヱ!それは話しちゃいけない約束だろ。」
「あ、そうだった!」
あははと笑うしんべヱときり丸。
あまりの驚きに私は固まってしまった。
ま、まさかあの土井先生が忍術学園のなかでそんなことを…しかも公然と?!
いや待て、そういえばたまみさんを混浴温泉に連れ込んでいたこともあったし、土井先生の家できり丸の着物を着せていたこともあったな…。
……ということはつまり…
土井先生…!
奥手な爽やか青年をよそおっておきながら、実はとんだ助平じゃないか…!!
そんなことを野放しにしておくなんて、父上は一体何をしてるんだ…!
「1年は組のお父さんとお母さんとみんなでお風呂に入ったって自慢したらみんな驚いてたよね!」
それはそうだろう…。
「でも楽しかったよねー!」
「ねー!」
「……そ、それはよかったな……。」
自慢気に話されても、私としてはどう返したらいいか迷ってしまった。
「でもね、みんなを洗うには急がないといけないから、僕達手ぬぐいで自分の体を洗ってる間にたまみさんが手で背中を洗ってくれたりしたんだよね。」
「手で?」
「はい。」
「…直接?」
「はい、お母さんみたいでくすぐったくて…って、あれ、利吉さん顔が赤いですよ?」
「あー、なんかやらしいこと考えてる~。」
「か、考えてないっ!!全員忍術学園まで走らせるぞっ!?」
一瞬浮かびかけた妄想を打ち消すように大声で怒ると、みんな慌てて忍術学園の方に歩きだした。
…ちょっと情報を整理して落ち着こう。
そう思った瞬間。
「わぁっ…!!」
乱太郎のすぐ隣に大きな影が現れた。
「危ない…っ!!!!」
乱太郎をかばい、咄嗟に抱えて横へ飛び退いた。
熊だ。
足元にはドングリが落ちていて、どうやらそれを目当てにこんなところまで降りてきていたようだ。
「乱太郎、怪我はないか。」
「は、はい!」
「では全員学園まで走るんだ。」
そう言って乱太郎達に背を向け熊と向かい合い苦無を手にした。
「利吉さんは…!?」
「後から行く。君達を守りながらではやりにくい、早く行け!」
「で、でも…!」
「早く!」
「…!」
みんなが心配そうな顔をしながら駆け出した。
それを追いかけようとする熊の足元に苦無を投げつけ止める。
熊がこちらを振り返り、私はそれをニヤリと睨み付けた。
「山奥育ちをなめるなよ。」
一人なら、なんとでもできる。
ちらりと左手を見た。
先ほど乱太郎をかばったときにできた傷から血が流れ、手の甲を伝い地面に落ちる。
雨でよかった。
地面に落ちた血のあともすぐになくなる…。
熊と対峙するのも初めてではない。
私は一呼吸吐き、心を静め、目の前の大きな熊を睨み付けた…。