第101話 無防備な彼女
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隣でスヤスヤと眠るたまみさん。
私と土井先生の間で本当に眠ってしまうとは…。
自分も布団に入り、部屋に微かに入る月明かりに彼女を眺めた。
枕に緩やかに広がる長い髪
柔らかそうな唇
仄かに香る石鹸のいいにおい
……襟元から微かに覗き見える口づけの赤い跡。
それは土井先生が残したものだとすぐに分かった。
私を牽制しているつもりだろうが、むしろそれは土井先生の焦りを表しているようだった。
そんなことをしなくても…と思う反面、いっそ対抗してその上に新しく跡を残してやろうかなんて考えが脳裏をよぎる。
そのまま強引にでも抱いてしまえば…彼女は私のことをもっと意識してくれるだろうか…それとも嫌われてしまうだろうか。
そんなことが許されないことも、自分にはできないことも分かっている。
でもしかし、無理矢理にでももしそんなことができたなら…。
「…………」
可愛らしすぎる寝顔を眺めていると、どうしてもそんな邪な考えが頭をかすめてしまった。
きっと私が隣でそんなことを考えているなど夢にも思わないのだろう、たまみさんは心地よさそうに寝息をたてて深く眠っている。
…ちょっと警戒心が足りないのではないか。
すぐ隣で私という飢えた狼が狙っているというのに。
土井先生が同じ部屋で横にいるからといって、安心しきってそんな可愛い寝姿を私に晒すなんて。
私が悪人なら、どうにかして土井先生の目を盗んであなたに触れることだってできただろう。
私を…男を信頼しすぎている…。
もちろん傷つけるようなことはしたくないが…。
しかし、善人とそうでないものの違いなど、機会があるかないか程度の差しかない。
私に魔が差したらどうするんだ。
しかも。
彼女は布団に入るとすぐに眠りに落ちていた。
あまりにもあっさりと眠ってしまうものだから、もしや私は男として全く眼中にないのだろうかとすら思ってしまった。
…いや、たまみさんは疲れているのだ。
昼間の様子を見ても思ったが、彼女は真面目だから全力で仕事を頑張りすぎて夜には力尽きてしまうのだろう。
しかし、それにしても…こんな状況で即座に眠れるとはあまりにも安心しすぎではないか。
やはり、私を男としてみていないのか。
嫌がることはしないつもりだったが、言葉で伝えてもこんなに通じないのなら…未だに土井先生との仲を疑われてしまうくらいなら…やはり無理矢理にでも抱いてみようかとすら考えてしまう。
ふと、昨夜の夢にみたたまみさんを思い出した。
彼女の方からあからさまに誘われて、そのまま押し倒して…。
あんな夢をみるほどに自分が欲求不満である自覚はあった。
せめて夢でだけでも、この腕に抱くことができたらいいのに…どうしてあのまま眠っていなかったのだろう。
「………ン…」
悶々としていると、たまみさんが小さく声を出した。
布団からはみ出ている小さなふっくらした手がぴくりと動く。
「…………」
すぐそこに、手を伸ばせば触れられるところに、たまみさんが寝ている。
その手に、頬に、唇に、その肌に触れたい。
………可愛い声を、聞きたい。
一晩中寝顔を眺めてみたいと思っていたが、これはあまりにも生殺しだ…。
目の前に美味しそうな獲物がいるのに待てを命じられている獣じゃないか。
見るだけでもいいと思っていたはずなのに、見たら見たで触れたくなる。
その唇は、身体は、どれほど気持ちいいのだろう。
抱けば、どんな声で啼くのだろう。
私だけを感じ、私だけを想い、私だけを映す瞳…彼女を私だけでいっぱいにできたら……!
…だめだ。
これ以上考えていたら止まれなくなる。
目を閉じて気持ちを落ち着かせようと深呼吸した。
………それにしても。
「土井先生、いいかげん殺気とばすのやめてくれませんか?」
先ほどからずっと半端ない殺気がビシビシととんできている。
たまみさんを挟んで向こう側に横たわる土井先生。
非常に不機嫌極まりない顔でこちらを睨みチョークを構えている。
「利吉くんこそ、いいかげんたまみの寝顔を見るのはやめてくれ。」
「見るくらいいいじゃないですか。」
「よくない。何かよからぬことを考えているだろう。」
「いいえ。…ただ可愛らしいなと眺めていただけです。」
「いーや!その顔、やっぱり不埒な妄想を…」
「してません。」
しれっと誤魔化すと、土井先生は苦々しくチョークで壁を指した。
「壁を向いて寝るんだ。」
土井先生が少し大きな声を出した、そのとき。
「…んん~……」
「「!」」
うるさかったのか、たまみさんが寝がえりをうった。
私の方に半身だけ転がり、掛布団を抱きしめるように腕と足で挟んでいる。
「!」
横向きになるとよく分かる身体の曲線。
くびれた腰に、魅力的なお尻のライン…。
布団を挟む足が夜着の裾をはだけさせ、白い脚が見えていた。
思わず唾を飲み込むと、土井先生が慌ててたまみさんに自分の布団を被せた。
「見るんじゃない!」
「そう言われましても目につくものは…。」
「あっちの壁を見てなさい。」
「どちらを向いて寝ようが私の勝手です。」
「…仕方ない。それじゃあ最後の手段だ。」
「………それは何ですか。」
「目隠しと縄。」
「……土井先生にそんな趣味があったとは。」
「へ?」
「たまみさんに目隠しをして縛り上げて…」
「ちがーう!!きみだよ!!」
「私?」
「そう!利吉くんがたまみを見れないように目隠しして、手を出せないように縄で縛るんだ。」
「…そんなもの簡単に」
「簡単に縄ぬけできないようにしてあげよう。」
土井先生が縄を持ちじりじりとにじり寄ってきた。
…本気か?
冗談ではない気配を感じて私も臨戦態勢に入る。
「…たまみさんが起きてしまいますよ?」
「じゃあ大人しくお縄につくんだな。なるべく痛くないようにするから。」
土井先生の目がスッと鋭くなった。
瞬間、足元に何かが飛んできて反射的に飛び退いた。
その動きを予想していたかのように、避けた先へと縄が飛んでくる。
「っ!」
咄嗟に半身をずらすも、腕に縄が巻き付いてしまった。
土井先生がニヤリと笑う。
「これでもう逃げられない。諦めて大人しく…」
「甘い!」
隠し持っていた苦無で縄を切る。
「忍具はいかなるときも常備が基本でしょう。」
「…そうだね。では今度は両腕とも封じてあげよう。」
土井先生が勢いよく布団を私に投げてきた。
視界が遮られ、私は咄嗟に近くの机を倒して盾にした。
大きな物音が響いたがそれどころではない。
こんな狭い部屋で土井先生とやり合うには本気でいかねば。
こうなったら意地でも土井先生を逆に縛り上げてたまみさんの寝顔を一晩中堪能してやる…!
私と土井先生の譲れない争いでドタバタと大きな物音が響く。
しかしたまみさんは一向に起きる気配がなかった。
「これでどうだ…!」
「そっちこそ…!」
互いに最後の一撃といわんばかりの勢いで畳を蹴った瞬間。
「ええ~い、うるさいっ!!夜中に何をしとるんじゃあっ!!」
「「学園長!?」」
突然学園長の声がして、障子から煙玉が投げ入れられた。
白い煙を吸い込んでしまったとたん、体に力が入らなくなる。
「しまった…これは……っ!!」
筋弛緩系の睡眠作用のある煙玉だ!
土井先生に全神経を集中させていたために不覚にも息を止めるのが遅れて吸い込んでしまった。
畳に膝と手をつくと、土井先生が険しい顔で障子を全開にして煙玉を外に投げているのが見えた。
冷たい外気が体に触れるも、眠気に意識が朦朧としてくる。
「…たまみ、さん………」
未だ眠ったままの彼女に手を伸ばした。
土井先生が何か言っているような気がする。
しかし結局眠気に負けてしまい、私はそのまま眠りに落ちてしまった。
私と土井先生の間で本当に眠ってしまうとは…。
自分も布団に入り、部屋に微かに入る月明かりに彼女を眺めた。
枕に緩やかに広がる長い髪
柔らかそうな唇
仄かに香る石鹸のいいにおい
……襟元から微かに覗き見える口づけの赤い跡。
それは土井先生が残したものだとすぐに分かった。
私を牽制しているつもりだろうが、むしろそれは土井先生の焦りを表しているようだった。
そんなことをしなくても…と思う反面、いっそ対抗してその上に新しく跡を残してやろうかなんて考えが脳裏をよぎる。
そのまま強引にでも抱いてしまえば…彼女は私のことをもっと意識してくれるだろうか…それとも嫌われてしまうだろうか。
そんなことが許されないことも、自分にはできないことも分かっている。
でもしかし、無理矢理にでももしそんなことができたなら…。
「…………」
可愛らしすぎる寝顔を眺めていると、どうしてもそんな邪な考えが頭をかすめてしまった。
きっと私が隣でそんなことを考えているなど夢にも思わないのだろう、たまみさんは心地よさそうに寝息をたてて深く眠っている。
…ちょっと警戒心が足りないのではないか。
すぐ隣で私という飢えた狼が狙っているというのに。
土井先生が同じ部屋で横にいるからといって、安心しきってそんな可愛い寝姿を私に晒すなんて。
私が悪人なら、どうにかして土井先生の目を盗んであなたに触れることだってできただろう。
私を…男を信頼しすぎている…。
もちろん傷つけるようなことはしたくないが…。
しかし、善人とそうでないものの違いなど、機会があるかないか程度の差しかない。
私に魔が差したらどうするんだ。
しかも。
彼女は布団に入るとすぐに眠りに落ちていた。
あまりにもあっさりと眠ってしまうものだから、もしや私は男として全く眼中にないのだろうかとすら思ってしまった。
…いや、たまみさんは疲れているのだ。
昼間の様子を見ても思ったが、彼女は真面目だから全力で仕事を頑張りすぎて夜には力尽きてしまうのだろう。
しかし、それにしても…こんな状況で即座に眠れるとはあまりにも安心しすぎではないか。
やはり、私を男としてみていないのか。
嫌がることはしないつもりだったが、言葉で伝えてもこんなに通じないのなら…未だに土井先生との仲を疑われてしまうくらいなら…やはり無理矢理にでも抱いてみようかとすら考えてしまう。
ふと、昨夜の夢にみたたまみさんを思い出した。
彼女の方からあからさまに誘われて、そのまま押し倒して…。
あんな夢をみるほどに自分が欲求不満である自覚はあった。
せめて夢でだけでも、この腕に抱くことができたらいいのに…どうしてあのまま眠っていなかったのだろう。
「………ン…」
悶々としていると、たまみさんが小さく声を出した。
布団からはみ出ている小さなふっくらした手がぴくりと動く。
「…………」
すぐそこに、手を伸ばせば触れられるところに、たまみさんが寝ている。
その手に、頬に、唇に、その肌に触れたい。
………可愛い声を、聞きたい。
一晩中寝顔を眺めてみたいと思っていたが、これはあまりにも生殺しだ…。
目の前に美味しそうな獲物がいるのに待てを命じられている獣じゃないか。
見るだけでもいいと思っていたはずなのに、見たら見たで触れたくなる。
その唇は、身体は、どれほど気持ちいいのだろう。
抱けば、どんな声で啼くのだろう。
私だけを感じ、私だけを想い、私だけを映す瞳…彼女を私だけでいっぱいにできたら……!
…だめだ。
これ以上考えていたら止まれなくなる。
目を閉じて気持ちを落ち着かせようと深呼吸した。
………それにしても。
「土井先生、いいかげん殺気とばすのやめてくれませんか?」
先ほどからずっと半端ない殺気がビシビシととんできている。
たまみさんを挟んで向こう側に横たわる土井先生。
非常に不機嫌極まりない顔でこちらを睨みチョークを構えている。
「利吉くんこそ、いいかげんたまみの寝顔を見るのはやめてくれ。」
「見るくらいいいじゃないですか。」
「よくない。何かよからぬことを考えているだろう。」
「いいえ。…ただ可愛らしいなと眺めていただけです。」
「いーや!その顔、やっぱり不埒な妄想を…」
「してません。」
しれっと誤魔化すと、土井先生は苦々しくチョークで壁を指した。
「壁を向いて寝るんだ。」
土井先生が少し大きな声を出した、そのとき。
「…んん~……」
「「!」」
うるさかったのか、たまみさんが寝がえりをうった。
私の方に半身だけ転がり、掛布団を抱きしめるように腕と足で挟んでいる。
「!」
横向きになるとよく分かる身体の曲線。
くびれた腰に、魅力的なお尻のライン…。
布団を挟む足が夜着の裾をはだけさせ、白い脚が見えていた。
思わず唾を飲み込むと、土井先生が慌ててたまみさんに自分の布団を被せた。
「見るんじゃない!」
「そう言われましても目につくものは…。」
「あっちの壁を見てなさい。」
「どちらを向いて寝ようが私の勝手です。」
「…仕方ない。それじゃあ最後の手段だ。」
「………それは何ですか。」
「目隠しと縄。」
「……土井先生にそんな趣味があったとは。」
「へ?」
「たまみさんに目隠しをして縛り上げて…」
「ちがーう!!きみだよ!!」
「私?」
「そう!利吉くんがたまみを見れないように目隠しして、手を出せないように縄で縛るんだ。」
「…そんなもの簡単に」
「簡単に縄ぬけできないようにしてあげよう。」
土井先生が縄を持ちじりじりとにじり寄ってきた。
…本気か?
冗談ではない気配を感じて私も臨戦態勢に入る。
「…たまみさんが起きてしまいますよ?」
「じゃあ大人しくお縄につくんだな。なるべく痛くないようにするから。」
土井先生の目がスッと鋭くなった。
瞬間、足元に何かが飛んできて反射的に飛び退いた。
その動きを予想していたかのように、避けた先へと縄が飛んでくる。
「っ!」
咄嗟に半身をずらすも、腕に縄が巻き付いてしまった。
土井先生がニヤリと笑う。
「これでもう逃げられない。諦めて大人しく…」
「甘い!」
隠し持っていた苦無で縄を切る。
「忍具はいかなるときも常備が基本でしょう。」
「…そうだね。では今度は両腕とも封じてあげよう。」
土井先生が勢いよく布団を私に投げてきた。
視界が遮られ、私は咄嗟に近くの机を倒して盾にした。
大きな物音が響いたがそれどころではない。
こんな狭い部屋で土井先生とやり合うには本気でいかねば。
こうなったら意地でも土井先生を逆に縛り上げてたまみさんの寝顔を一晩中堪能してやる…!
私と土井先生の譲れない争いでドタバタと大きな物音が響く。
しかしたまみさんは一向に起きる気配がなかった。
「これでどうだ…!」
「そっちこそ…!」
互いに最後の一撃といわんばかりの勢いで畳を蹴った瞬間。
「ええ~い、うるさいっ!!夜中に何をしとるんじゃあっ!!」
「「学園長!?」」
突然学園長の声がして、障子から煙玉が投げ入れられた。
白い煙を吸い込んでしまったとたん、体に力が入らなくなる。
「しまった…これは……っ!!」
筋弛緩系の睡眠作用のある煙玉だ!
土井先生に全神経を集中させていたために不覚にも息を止めるのが遅れて吸い込んでしまった。
畳に膝と手をつくと、土井先生が険しい顔で障子を全開にして煙玉を外に投げているのが見えた。
冷たい外気が体に触れるも、眠気に意識が朦朧としてくる。
「…たまみ、さん………」
未だ眠ったままの彼女に手を伸ばした。
土井先生が何か言っているような気がする。
しかし結局眠気に負けてしまい、私はそのまま眠りに落ちてしまった。