第96話 大事なもの
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まったく、父上に用事があって来てみたら…たまみさんが誰かにもらった櫛をつけているなど土井先生も悠長に構えすぎているのではないか。
たまみさんがきり丸と自室に入っていった。
土井先生と目があったので、私は躊躇わずに頷いた。
自室のなかを覗くのは悪いと思ったが、たまみさんにもし悪い虫が寄り付いているなら大変だ。
何か手がかりが得られるならば、多少手段を厭わないのも致し方ない。
土井先生は気が進まないようだったが、私は土井先生と共に彼女の部屋の天井裏に身を潜めた。
「たまみさん、俺図書委員に行かなくちゃいけないんすけど…」
「ごめん、すぐ終わるから!」
下から二人の声が聞こえてくる。
土井先生とじっと耳をすました。
「あのね、半助さんがこの櫛を誰にもらったのかってすごく気にしちゃって…。きりちゃんにもらったって言っていい?」
!?
きり丸に、もらった…!?
あのドケチのきり丸がたまみさんに…!?
「ダメです!!」
「なんで?」
「だって、恥ずかしいじゃないですか…ドケチの俺がまさか人に物をあ…あ、あげる、なんて…!」
「そんなことないよ、私はすごく嬉しかったし半助さんも喜ぶと思うんだけどなぁ。」
「土井先生が喜ぶ?」
「うん」
「何で?土井先生は関係ないのに…?」
「…半助さんもきりちゃんのことを大切に想ってるから。」
「……?」
「…だから、きりちゃんが、誰かのために大切なお金を使おうと思ってくれたこと、半助さんも嬉しく思うと思う。」
「……別に、それはバイト代の代わりにもらっただけで俺が買ったわけじゃ…。本当はもらった櫛をそのまま売ろうと思ったんだ。でも、乱太郎が『母ちゃん喜ぶかな』って言ったのを聞いて…何となく……」
「……きりちゃん…」
「でも土井先生が気にするなら、やっぱり止めといた方がよかったかな。」
「そんなことないよ!!私はすごく嬉しかった!」
「たまみさん…」
「きりちゃんにもらった櫛、ずっと大切にする。」
「…やっぱダメです。」
「え?」
「やっぱり恥ずかしいから、俺があげたってことは内緒にしといてくださいっ!」
「きりちゃん…」
「土井先生には、俺からうまくごまかしておくんで…!」
「…そっか、わかった。じゃあこれは二人だけの秘密にしとこうね。」
「…はい!」
………。
これは、聞いてはいけない話を聞いてしまったのでは。
気まずくなり隣の土井先生をちらりと見てみると。
「!?」
土井先生は目頭を押さえ俯いて肩を震わせていた。
な、泣いている…!!?
ぎょっと驚くと、土井先生は私に向かって片手の掌を向けた。
ちょっと待てということか。
「……よかったですね。」
私は目を細めて小声で呟いた。
土井先生は目頭を押さえたまま頷き、やがて顔をあげると涙目のまま嬉しそうに眉をハの字にして笑った。
「すまない、戻ろうか。」
「はい。」
予想外の結果ではあったが、何も見聞きしなかったことにしておこう。
私は土井先生と職員室に戻ると、本来の目的であった父を探すことにした。
たまみさんがきり丸と自室に入っていった。
土井先生と目があったので、私は躊躇わずに頷いた。
自室のなかを覗くのは悪いと思ったが、たまみさんにもし悪い虫が寄り付いているなら大変だ。
何か手がかりが得られるならば、多少手段を厭わないのも致し方ない。
土井先生は気が進まないようだったが、私は土井先生と共に彼女の部屋の天井裏に身を潜めた。
「たまみさん、俺図書委員に行かなくちゃいけないんすけど…」
「ごめん、すぐ終わるから!」
下から二人の声が聞こえてくる。
土井先生とじっと耳をすました。
「あのね、半助さんがこの櫛を誰にもらったのかってすごく気にしちゃって…。きりちゃんにもらったって言っていい?」
!?
きり丸に、もらった…!?
あのドケチのきり丸がたまみさんに…!?
「ダメです!!」
「なんで?」
「だって、恥ずかしいじゃないですか…ドケチの俺がまさか人に物をあ…あ、あげる、なんて…!」
「そんなことないよ、私はすごく嬉しかったし半助さんも喜ぶと思うんだけどなぁ。」
「土井先生が喜ぶ?」
「うん」
「何で?土井先生は関係ないのに…?」
「…半助さんもきりちゃんのことを大切に想ってるから。」
「……?」
「…だから、きりちゃんが、誰かのために大切なお金を使おうと思ってくれたこと、半助さんも嬉しく思うと思う。」
「……別に、それはバイト代の代わりにもらっただけで俺が買ったわけじゃ…。本当はもらった櫛をそのまま売ろうと思ったんだ。でも、乱太郎が『母ちゃん喜ぶかな』って言ったのを聞いて…何となく……」
「……きりちゃん…」
「でも土井先生が気にするなら、やっぱり止めといた方がよかったかな。」
「そんなことないよ!!私はすごく嬉しかった!」
「たまみさん…」
「きりちゃんにもらった櫛、ずっと大切にする。」
「…やっぱダメです。」
「え?」
「やっぱり恥ずかしいから、俺があげたってことは内緒にしといてくださいっ!」
「きりちゃん…」
「土井先生には、俺からうまくごまかしておくんで…!」
「…そっか、わかった。じゃあこれは二人だけの秘密にしとこうね。」
「…はい!」
………。
これは、聞いてはいけない話を聞いてしまったのでは。
気まずくなり隣の土井先生をちらりと見てみると。
「!?」
土井先生は目頭を押さえ俯いて肩を震わせていた。
な、泣いている…!!?
ぎょっと驚くと、土井先生は私に向かって片手の掌を向けた。
ちょっと待てということか。
「……よかったですね。」
私は目を細めて小声で呟いた。
土井先生は目頭を押さえたまま頷き、やがて顔をあげると涙目のまま嬉しそうに眉をハの字にして笑った。
「すまない、戻ろうか。」
「はい。」
予想外の結果ではあったが、何も見聞きしなかったことにしておこう。
私は土井先生と職員室に戻ると、本来の目的であった父を探すことにした。