第96話 大事なもの
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「土井先生、私は変装してくノ一教室の生徒から情報を集めます。噂好きな女子の方が何か知っているかもしれませんから。」
「わかった。では私はたまみの周辺の様子を探ろう。」
利吉くんは頷いてすぐに部屋を出た。
味方になると非常に頼もしい…。
「さて、では私は食堂に…。」
天井裏から食堂の上に回ると、たまみが食堂のおばちゃんと何やら話しながら調理をしていた。
そして鍋の横の材料を見て私はおののいた。
…あ、あれはまぎれもなくおでん…!!
「潰したジャガイモに刻んだ練り物を混ぜてみたらどうかしら。」
「それはいいかもしれませんね…」
私に練り物を食べさせる作戦か…!?
偶然にも不穏な話を耳にしてしまった。
今夜はしんべヱの近くに座ろう…。
暫く二人の姿を眺めていると、ときおり野菜や米を運んでくる業者の男が来ていた。
たまみは丁寧に対応し、その笑顔にへらへらとする男共が気にくわなかったが、手を出そうとする気配は感じられなかった。
上級生もちらほらと食堂に現れては彼女に声をかけていくが、特段目立った動きもない。
やがておばちゃんがその場を離れ、たまみが一人で洗い物をしていると突然出入口から聞き覚えのある声がした。
「どこんじょー!誰かいるかぁ?」
「あ、大木先生お疲れ様です。」
大木先生?!
嫌な予感がして思わず下を覗き込んだ。
勿論気配を完全に消して気づかれないように。
「おお、たまみか。この前頼まれたネギを持ってきてやったぞ!」
大木先生は彼女の前にかご一杯のネギを置いた。
馴れ馴れしく名前を呼ぶんじゃない…!
「わぁ、こんなにたくさん!ありがとうございます!」
「何を作ってるんだ?」
「えっと、おでんとお味噌汁と…あ、そのおネギは早速お味噌汁に入れますね!」
「取れたてだから風味もよく出るじゃろう。」
「よければ食べて行きます?」
「お、じゃあ久しぶりにたまみの飯を食わせてもらおうかな。」
!!
大木先生の手がスッとたまみの腰に伸ばされた。
気づかない彼女にその手が触れそうになった瞬間…
「たまみに触らないでください。」
ガシッ!
考えるより先に私は下に降り大木先生の腕を掴んでいた。
「ど、土井先生っ!?」
突然現れた私にたまみが驚いている。
大木先生はさほど驚いた様子もなく、私に掴まれた腕をスッと外した。
「土井先生、久しぶりじゃの。」
「…お久しぶりです。」
私はたまみを庇うように割り込み大木先生を睨んだ。
大木先生は私と彼女を交互に見やった。
「…ほお。やっぱりお主らそういう仲なのか?」
私は肯定も否定もしなかった。
大木先生の目線がちらりと櫛を見た。
その眼差しから、これは彼が贈ったものではないと確信した。
…まあ、大木先生なら「内緒にしてくれ」などと彼女に頼んだりしないだろうが。
大木先生は暫し私と睨みあった後、にやりと笑みを浮かべた。
「たまみ、忍術学園教師の妻なんかやめておけ。忙しすぎて放ったらかしにされるぞ。」
「なっ…!」
反論したかったが忙しいのは確かなのですぐに言葉が出なかった。
さすが元教師…痛いところをついてくる。
大木先生は腕を組んで自信満々に続けた。
「それよりわしのとこに来ないか。農業は大変なときもあるがやりがいもあるぞ。」
その瞬間、どこからともなく鋭い殺気がとんできた。
大木先生の目線がそちらに向けられる。
「教師の妻も農家の妻も大変ですよ。」
「利吉さん!?」
食堂の出入口に、不快極まりないといった表情の利吉くんが立っていた。
その目は大木先生をじろりと睨みつけている。
「大木先生、了承もなくいきなり女性に触ろうとするなんて如何なものかと思いますが。」
全くもってその通りだが、きみがそれを言うのか。
「山田利吉か、若造が何を偉そうに。噂ではお主も…」
「私は彼女が嫌がるようなことはしていないのでいいんです。」
いいわけないだろう…!
二人とも私にとっては同じようなものだ…!
しかし大木先生と利吉くんは一歩も引かずに近距離で睨みあった。
「たまみ…行こう。」
彼女の腕を引き立ち去ろうとした瞬間、大木先生が一際大きな声で彼女を呼んだ。
「たまみ!辛くなったらいつでも杭瀬村に来い。お前さん他に頼る宛もないんじゃろ?わしには気兼ねしなくていいからな。」
するとたまみは苦笑しながら頭を下げた。
「優しいお気遣いありがとうございます。」
いやいや違う、これは気遣いではなく下心だし、優しいのではなく油断がならないというんだ…!
すると、私が口を開くより先に利吉くんが怒りを露にした。
「たまみさん、騙されちゃいけませんよ。助けるふりをして見返りを求めてくることも…」
「そんなわけあるか!私はただ善意でだなぁ…!」
「信じられませんね。」
「ほう…。売れっ子忍者だか知らぬが、いささか調子にのりすぎではないか?」
バチバチと火花が散りだした。
「…たまみ、巻き込まれたら面倒だ。行こう。」
オロオロするたまみの背中を押し、私はたまみとともに食堂を出た。
途中、野村先生を見つけたので大木先生が来ていることを伝える。
とりあえずこれで大木先生はなんとかなるだろう。
やがて大木先生と野村先生が校庭でいつもの乱闘を始め、たまみは食堂に戻った。
天井裏からまた彼女の様子を伺っていると、利吉くんが来て調査結果を報告してくれた。
「くノ一教室の生徒達は何も知りませんでした。というよりも、あの櫛は土井先生からのものだという噂になってますよ。」
「そ、そうなのか…。こちらも特段あやしい人物の気配はなかったよ。」
利吉くんと二人でどうしたものかと考えているとき、たまみが食堂から走り出た。
何事かと視線で追うと、その先にはきり丸がいた。
「きりちゃん、今ちょっといい?」
「どうしたんすか?」
「ちょっと部屋まで来てもらってもいい?」
「はい…?」
たまみは訝しげな表情を浮かべるきり丸の腕を引いて早足に歩いた。
何かありそうだと感じた私と利吉くんは、目を見合わせて頷いた。
「わかった。では私はたまみの周辺の様子を探ろう。」
利吉くんは頷いてすぐに部屋を出た。
味方になると非常に頼もしい…。
「さて、では私は食堂に…。」
天井裏から食堂の上に回ると、たまみが食堂のおばちゃんと何やら話しながら調理をしていた。
そして鍋の横の材料を見て私はおののいた。
…あ、あれはまぎれもなくおでん…!!
「潰したジャガイモに刻んだ練り物を混ぜてみたらどうかしら。」
「それはいいかもしれませんね…」
私に練り物を食べさせる作戦か…!?
偶然にも不穏な話を耳にしてしまった。
今夜はしんべヱの近くに座ろう…。
暫く二人の姿を眺めていると、ときおり野菜や米を運んでくる業者の男が来ていた。
たまみは丁寧に対応し、その笑顔にへらへらとする男共が気にくわなかったが、手を出そうとする気配は感じられなかった。
上級生もちらほらと食堂に現れては彼女に声をかけていくが、特段目立った動きもない。
やがておばちゃんがその場を離れ、たまみが一人で洗い物をしていると突然出入口から聞き覚えのある声がした。
「どこんじょー!誰かいるかぁ?」
「あ、大木先生お疲れ様です。」
大木先生?!
嫌な予感がして思わず下を覗き込んだ。
勿論気配を完全に消して気づかれないように。
「おお、たまみか。この前頼まれたネギを持ってきてやったぞ!」
大木先生は彼女の前にかご一杯のネギを置いた。
馴れ馴れしく名前を呼ぶんじゃない…!
「わぁ、こんなにたくさん!ありがとうございます!」
「何を作ってるんだ?」
「えっと、おでんとお味噌汁と…あ、そのおネギは早速お味噌汁に入れますね!」
「取れたてだから風味もよく出るじゃろう。」
「よければ食べて行きます?」
「お、じゃあ久しぶりにたまみの飯を食わせてもらおうかな。」
!!
大木先生の手がスッとたまみの腰に伸ばされた。
気づかない彼女にその手が触れそうになった瞬間…
「たまみに触らないでください。」
ガシッ!
考えるより先に私は下に降り大木先生の腕を掴んでいた。
「ど、土井先生っ!?」
突然現れた私にたまみが驚いている。
大木先生はさほど驚いた様子もなく、私に掴まれた腕をスッと外した。
「土井先生、久しぶりじゃの。」
「…お久しぶりです。」
私はたまみを庇うように割り込み大木先生を睨んだ。
大木先生は私と彼女を交互に見やった。
「…ほお。やっぱりお主らそういう仲なのか?」
私は肯定も否定もしなかった。
大木先生の目線がちらりと櫛を見た。
その眼差しから、これは彼が贈ったものではないと確信した。
…まあ、大木先生なら「内緒にしてくれ」などと彼女に頼んだりしないだろうが。
大木先生は暫し私と睨みあった後、にやりと笑みを浮かべた。
「たまみ、忍術学園教師の妻なんかやめておけ。忙しすぎて放ったらかしにされるぞ。」
「なっ…!」
反論したかったが忙しいのは確かなのですぐに言葉が出なかった。
さすが元教師…痛いところをついてくる。
大木先生は腕を組んで自信満々に続けた。
「それよりわしのとこに来ないか。農業は大変なときもあるがやりがいもあるぞ。」
その瞬間、どこからともなく鋭い殺気がとんできた。
大木先生の目線がそちらに向けられる。
「教師の妻も農家の妻も大変ですよ。」
「利吉さん!?」
食堂の出入口に、不快極まりないといった表情の利吉くんが立っていた。
その目は大木先生をじろりと睨みつけている。
「大木先生、了承もなくいきなり女性に触ろうとするなんて如何なものかと思いますが。」
全くもってその通りだが、きみがそれを言うのか。
「山田利吉か、若造が何を偉そうに。噂ではお主も…」
「私は彼女が嫌がるようなことはしていないのでいいんです。」
いいわけないだろう…!
二人とも私にとっては同じようなものだ…!
しかし大木先生と利吉くんは一歩も引かずに近距離で睨みあった。
「たまみ…行こう。」
彼女の腕を引き立ち去ろうとした瞬間、大木先生が一際大きな声で彼女を呼んだ。
「たまみ!辛くなったらいつでも杭瀬村に来い。お前さん他に頼る宛もないんじゃろ?わしには気兼ねしなくていいからな。」
するとたまみは苦笑しながら頭を下げた。
「優しいお気遣いありがとうございます。」
いやいや違う、これは気遣いではなく下心だし、優しいのではなく油断がならないというんだ…!
すると、私が口を開くより先に利吉くんが怒りを露にした。
「たまみさん、騙されちゃいけませんよ。助けるふりをして見返りを求めてくることも…」
「そんなわけあるか!私はただ善意でだなぁ…!」
「信じられませんね。」
「ほう…。売れっ子忍者だか知らぬが、いささか調子にのりすぎではないか?」
バチバチと火花が散りだした。
「…たまみ、巻き込まれたら面倒だ。行こう。」
オロオロするたまみの背中を押し、私はたまみとともに食堂を出た。
途中、野村先生を見つけたので大木先生が来ていることを伝える。
とりあえずこれで大木先生はなんとかなるだろう。
やがて大木先生と野村先生が校庭でいつもの乱闘を始め、たまみは食堂に戻った。
天井裏からまた彼女の様子を伺っていると、利吉くんが来て調査結果を報告してくれた。
「くノ一教室の生徒達は何も知りませんでした。というよりも、あの櫛は土井先生からのものだという噂になってますよ。」
「そ、そうなのか…。こちらも特段あやしい人物の気配はなかったよ。」
利吉くんと二人でどうしたものかと考えているとき、たまみが食堂から走り出た。
何事かと視線で追うと、その先にはきり丸がいた。
「きりちゃん、今ちょっといい?」
「どうしたんすか?」
「ちょっと部屋まで来てもらってもいい?」
「はい…?」
たまみは訝しげな表情を浮かべるきり丸の腕を引いて早足に歩いた。
何かありそうだと感じた私と利吉くんは、目を見合わせて頷いた。