第92話 差しのべられた手
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今日のドクタケの晩ご飯は魚の煮付けと大根のお味噌汁と粉ふきいも。
忍術学園の食事より幾分質素な気もしたけれど、どうやら炊事担当の人が足りなくて負担を減らしているらしい。
今ここにいるのは調理担当の年上の女性が一人と、その補佐をしている若い女性が一人いるだけ。
募集をかけているもののドクタケの悪名になかなか人材が集まらないのだとか。
調理場を手伝いながら耳をすましていると、どうやらそんな事情があるらしい。
お殿様の食事はもっと豪華なメニューらしく、どんな食事を作るのだろうと興味津々でちらちら見ていたとき。
何だか、年配の女性の様子がおかしい。
突然、お腹をおさえてじっと動かなくなった。
「あの、大丈夫ですか?」
思わず声をかけると、女性は額に脂汗をかいて苦しそうに声を出した。
「ちょっと胃が痛くてね…。大丈夫、少し休めばマシになるから…。」
すると補佐の女性が心配そうに彼女の背をさすった。
「昨日もそう仰ってたじゃないですか。無理されずに部屋で横になられては…。」
年配の女性は「でも…」と言いながら苦痛に顔を歪め、やがて諦めたように頷いた。
「すまないね、ちょっと、休んでこようかな…。忙しいときなのに、申し訳ない…。」
「いいんですよ。それよりちゃんとお医者様に診て貰ってくださいね。」
「そうだね。じゃああとは…殿の分。献立と簡単な作り方は、そこに書いてあるから。」
そうして調理担当の女性は出ていき、後には私と若い補佐の女性が残された。
彼女は作り方が書いてあるというメモをじっと見つめ、やがて私の方を見た。
「今日来たばかりの方にお願いするのは申し訳ないのですが…。」
「いえいえ、困ったときはお互い様です。何をしたらいいですか?」
「実は、私、補佐しかしたことなくて…。その、このメモだけでは作れる自信が…。」
女性は私にメモを渡した。
そこには筑前煮、ひじきと豆の煮物、貝のお味噌汁、魚の香草焼き等の簡単な作り方が記されていた。
…どれも忍術学園で食堂のおばちゃんに教えて貰ったことがあるものだ。
「殿にお出しするものなのに…私ったら先輩の体調が心配で見栄をはってできもしないことを引き受けてしまったかも…どうしよう…。」
涙ぐむ心優しい女性を見ると、何だかとても気の毒になってきた。
本来なら敵対するところに所属する私がお殿様の食事なんて作るべきではないのだろうけれど。
私はほんの少し迷った後、覚悟を決めた。
「…よければ私が作りましょうか?」
彼女は驚いた顔をしたあと、とても嬉しそうに私に感謝して頭を下げた。
「お殿様のお口にあうものが作れるかどうかは分かりませんが…。」
食堂のおばちゃんの言葉を思い出しつつ、補佐の女性に手伝ってもらいながら私は懸命に料理を作った。
忍術学園の食事より幾分質素な気もしたけれど、どうやら炊事担当の人が足りなくて負担を減らしているらしい。
今ここにいるのは調理担当の年上の女性が一人と、その補佐をしている若い女性が一人いるだけ。
募集をかけているもののドクタケの悪名になかなか人材が集まらないのだとか。
調理場を手伝いながら耳をすましていると、どうやらそんな事情があるらしい。
お殿様の食事はもっと豪華なメニューらしく、どんな食事を作るのだろうと興味津々でちらちら見ていたとき。
何だか、年配の女性の様子がおかしい。
突然、お腹をおさえてじっと動かなくなった。
「あの、大丈夫ですか?」
思わず声をかけると、女性は額に脂汗をかいて苦しそうに声を出した。
「ちょっと胃が痛くてね…。大丈夫、少し休めばマシになるから…。」
すると補佐の女性が心配そうに彼女の背をさすった。
「昨日もそう仰ってたじゃないですか。無理されずに部屋で横になられては…。」
年配の女性は「でも…」と言いながら苦痛に顔を歪め、やがて諦めたように頷いた。
「すまないね、ちょっと、休んでこようかな…。忙しいときなのに、申し訳ない…。」
「いいんですよ。それよりちゃんとお医者様に診て貰ってくださいね。」
「そうだね。じゃああとは…殿の分。献立と簡単な作り方は、そこに書いてあるから。」
そうして調理担当の女性は出ていき、後には私と若い補佐の女性が残された。
彼女は作り方が書いてあるというメモをじっと見つめ、やがて私の方を見た。
「今日来たばかりの方にお願いするのは申し訳ないのですが…。」
「いえいえ、困ったときはお互い様です。何をしたらいいですか?」
「実は、私、補佐しかしたことなくて…。その、このメモだけでは作れる自信が…。」
女性は私にメモを渡した。
そこには筑前煮、ひじきと豆の煮物、貝のお味噌汁、魚の香草焼き等の簡単な作り方が記されていた。
…どれも忍術学園で食堂のおばちゃんに教えて貰ったことがあるものだ。
「殿にお出しするものなのに…私ったら先輩の体調が心配で見栄をはってできもしないことを引き受けてしまったかも…どうしよう…。」
涙ぐむ心優しい女性を見ると、何だかとても気の毒になってきた。
本来なら敵対するところに所属する私がお殿様の食事なんて作るべきではないのだろうけれど。
私はほんの少し迷った後、覚悟を決めた。
「…よければ私が作りましょうか?」
彼女は驚いた顔をしたあと、とても嬉しそうに私に感謝して頭を下げた。
「お殿様のお口にあうものが作れるかどうかは分かりませんが…。」
食堂のおばちゃんの言葉を思い出しつつ、補佐の女性に手伝ってもらいながら私は懸命に料理を作った。