暗く寒い地下牢の中。
私は焦りながら静かに走っていた。
自分の鼓動が大きく聞こえ、足の裏に固い石の感触が冷たく残る。

どこだ、どこにいる！？

「助けて…っ！！」

遠くから彼女の声がした。
私は慌ててそちらを振り返り………


「たまみっっっ！！」

自分の声で目が覚めた。
ここ、は…

「ゆ、夢か…。」

周りを見渡し、自分が自室の布団の中で眠っていたことを理解した。
半身を起こした背中に冷や汗が伝う。

「どうした…悪い夢でも見たのか。」

近くに眠る山田先生を起こしてしまった。
暗くて見えてはいないだろうが、私は曖昧に笑ってごまかした。

「はい、起こしてすみません…。少し…水でも飲んできます。」

夢だと分かっても動悸がおさまらず、私は静かに部屋を出た。
さっきの夢は何だったのか…。
やけに現実的な感触に、さっきまで本当に地下を走っていたのではないかという錯覚に陥る。

たまみは…ちゃんと居るだろうか。

どうしても心配になり、深夜にも関わらず私は周りに誰もいないことを確認してから彼女の部屋に忍び込んだ。


布団の中から聞こえる規則正しい寝息。
たまみはスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。
何事もなかったようでホッと一安心する。
傍に座り込み、じっとその顔を眺めた。
その頭をゆっくり撫でると、たまみが口元を緩め嬉しそうに微笑んだ。

「……っ」

何の危機感もない安心しきった寝顔。
愛しく思うと同時に、私が守るのだと改めて強く思う。

「…私がいるから。安心してゆっくりお休み…。」

結局、先程の夢がどうしても気になった私は明け方まで彼女の寝顔を眺めながらその場に座っていた。