「もうそろそろ機嫌をなおしておくれよ。」

料理教室は無事に終了し、片付けも終わったあと私は何だかんだと理由をつけて家にたまみを連れてきた。
しかし機嫌は悪いままで、つーんとそっぽを向いている。

…焼きもちをやいて拗ねているたまみも可愛いな。

そんなことを思ってしまうから、謝ってみてもどこか誠意が足りないのかたまみはずっと怒ったままだった。

「…何でお料理教室に来たんですか？若い女性が多くてこうなるのは目にみえていたから、半助さんには来てほしくなかったのに…。」

たまみが不機嫌そうに小さく呟く。

一人で家にいたらたまみに会いたくなった…など、言えるわけがない。

「…たまみがまた変なのに絡まれてないかなって心配になって。」

「それは、助けて頂いてありがとうございます…。」

たまみが三角座りをして膝を抱え俯いた。

…せっかくここに一緒にいるのに、こうして時間が過ぎるのが勿体なく感じてきた。
もうすぐ学園に戻らねばならない時間なのに…。
私は思いきってたまみを背後からぎゅっと抱きしめて耳元で囁いた。

「ほんとは……」

「……」

「…きみの顔が、見たくなったんだ…。」

「…！」

たまみがちらりとこちらを見た。

「うそ…そんなこと言ってごまかそうとしてます。」

「嘘じゃない。…家に一人で居たら…何だかたまみに会いたくなったんだよ。」

彼女の華奢な肩を後ろからぎゅっと抱きしめる。
たまみの手が私の腕に重ねられた。

「…もしかして、寂しくなったんですか？」

「……………。」

答えずに抱きしめたままじっとしていると、たまみがやっと微笑んだ。

「半助さん、可愛い。」

「…うるさい」

無理矢理こちらを向かせて口づけた。
この歳で寂しくなったなんて馬鹿げている。
しかし、たまみといるとそんなことすらもどうでもよくなってくる…。

「あ、お湯が沸きましたよ。」

いつの間にかお湯が沸いて蒸気が出ていた。
たまみが二人分のお茶をいれてくれる。

「熱いので気をつけてくださいね。」

「うん、ありがとう。」

いつものこのやりとりに、ほっと安心した。
先ほどよりもずっと美味しく感じるお茶をゆっくりと味わう。

「…やっぱり、たまみにいれてもらうのが一番だ。」

そう言って笑うと、たまみもまた嬉しそうに微笑んだ。