第88話 気がつけば
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「お、いたいた。」
聞いていたお寺に着くと、食堂のおばちゃんが20人位の生徒に野菜の切り方を教えていた。
青空教室で、かまどは別の室内にあるようだった。
私は気配を消して木の上からたまみ達の様子を眺めた。
彼女はおっとりしている方だと思うが、野菜を配って回ったり補助を頑張っているようだった。
何となく保護者のような気持ちで、頑張れ…!と見守っていると。
「…ん?」
生徒が、やたらとたまみに話しかけている。
よく見たら三分の一位の生徒は男で…私より年上に見える輩もいるようだった。
これは…料理教室に来ている若い女性を狙いに来たおっさんじゃないのか!?
中には真面目に料理を勉強しようとしている男性もいたが、どう見ても野菜より女性を眺めているような奴もいる。
食堂のおばちゃんは各生徒の指導に忙しく、そこまで気づいていないようだった。
そして、たまみはそういう輩に逐一話しかけられ困っているようだ。
野菜の切り方を丁寧に説明しているが、質問してるはずの男はたまみの手元ではなく顔を至近距離で見ていた。
こいつ…!
そのいやらしい顔に怒りがこみ上げた。
「!!」
すると、男が何かを言いたまみの腰に腕を回した。
「痛ぇっ!!」
考えるより先に体が動いていた。
男が手の甲をさすり、地面に一本のチョークが転がった。
「土井先生、そんなところから見学していないで手伝ってくれますか?」
食堂のおばちゃんが呆れ顔でこちらに声をかけた。
たまみがびっくりして振り返る。
「あはは…気づかれましたか。」
「そんなに殺気だしてちゃバレバレですよ。」
食堂のおばちゃんは苦笑いして、手を痛そうに撫でている男の方に向かった。
「真面目に料理する気がないなら帰ってもらいますよ。」
「いえ、やりますやります!」
焦る男に脇目もふらず、たまみが私のもとへ駆け寄った。
「土井先生、どうしてここに?」
どうして?
きみの顔が見たかったから…
とは言えず。
「たまみがまた変なのに絡まれていないかと思って。」
そう言って先程の男を睨み付けると、食堂のおばちゃんに声をかけられた。
「土井先生も手伝ってくれます?お水を運んだり力仕事が結構あるんですよ。」
「いいですよ。」
しめた!と、にこやかに笑顔で返す。
うまいこと参加できることになった。
これでたまみに絡む奴等を一掃できる…かと思いきや。
私の周りに数人の女性が集まってきた。
「あの、貴方もお料理が得意でいらっしゃるんですか?」
「へ?私ですか?」
「色々手ほどきしてください!」
「いやいや、私は料理はそんな全然…」
「先生ってことは何か教えてらっしゃるんでしょう?是非一対一で私にも…」
「いやいやいや、その、私は…!」
はっ。
たまみがこちらをジト目で睨んでいる。
「土井先生、大人気でよかったですね。」
たまみはにこりと笑顔を作るとそのまま踵を返して他の生徒の方へ行ってしまった。
「ちょ、待っ…!!」
私の声に振り向こうともしないたまみ。
ち、違うんだ!
私はただ、きみを見に来ただけなのに…!
かたや他の男達から羨望の眼差しを浴び、かたやたまみからは冷ややかな視線を感じ、結局私は早々にかまどのある室内へ逃げ込み薪に火をつけるなどの裏方に徹したのだった。
勿論、不埒な輩には相応の圧をかけるのも忘れずに…。
聞いていたお寺に着くと、食堂のおばちゃんが20人位の生徒に野菜の切り方を教えていた。
青空教室で、かまどは別の室内にあるようだった。
私は気配を消して木の上からたまみ達の様子を眺めた。
彼女はおっとりしている方だと思うが、野菜を配って回ったり補助を頑張っているようだった。
何となく保護者のような気持ちで、頑張れ…!と見守っていると。
「…ん?」
生徒が、やたらとたまみに話しかけている。
よく見たら三分の一位の生徒は男で…私より年上に見える輩もいるようだった。
これは…料理教室に来ている若い女性を狙いに来たおっさんじゃないのか!?
中には真面目に料理を勉強しようとしている男性もいたが、どう見ても野菜より女性を眺めているような奴もいる。
食堂のおばちゃんは各生徒の指導に忙しく、そこまで気づいていないようだった。
そして、たまみはそういう輩に逐一話しかけられ困っているようだ。
野菜の切り方を丁寧に説明しているが、質問してるはずの男はたまみの手元ではなく顔を至近距離で見ていた。
こいつ…!
そのいやらしい顔に怒りがこみ上げた。
「!!」
すると、男が何かを言いたまみの腰に腕を回した。
「痛ぇっ!!」
考えるより先に体が動いていた。
男が手の甲をさすり、地面に一本のチョークが転がった。
「土井先生、そんなところから見学していないで手伝ってくれますか?」
食堂のおばちゃんが呆れ顔でこちらに声をかけた。
たまみがびっくりして振り返る。
「あはは…気づかれましたか。」
「そんなに殺気だしてちゃバレバレですよ。」
食堂のおばちゃんは苦笑いして、手を痛そうに撫でている男の方に向かった。
「真面目に料理する気がないなら帰ってもらいますよ。」
「いえ、やりますやります!」
焦る男に脇目もふらず、たまみが私のもとへ駆け寄った。
「土井先生、どうしてここに?」
どうして?
きみの顔が見たかったから…
とは言えず。
「たまみがまた変なのに絡まれていないかと思って。」
そう言って先程の男を睨み付けると、食堂のおばちゃんに声をかけられた。
「土井先生も手伝ってくれます?お水を運んだり力仕事が結構あるんですよ。」
「いいですよ。」
しめた!と、にこやかに笑顔で返す。
うまいこと参加できることになった。
これでたまみに絡む奴等を一掃できる…かと思いきや。
私の周りに数人の女性が集まってきた。
「あの、貴方もお料理が得意でいらっしゃるんですか?」
「へ?私ですか?」
「色々手ほどきしてください!」
「いやいや、私は料理はそんな全然…」
「先生ってことは何か教えてらっしゃるんでしょう?是非一対一で私にも…」
「いやいやいや、その、私は…!」
はっ。
たまみがこちらをジト目で睨んでいる。
「土井先生、大人気でよかったですね。」
たまみはにこりと笑顔を作るとそのまま踵を返して他の生徒の方へ行ってしまった。
「ちょ、待っ…!!」
私の声に振り向こうともしないたまみ。
ち、違うんだ!
私はただ、きみを見に来ただけなのに…!
かたや他の男達から羨望の眼差しを浴び、かたやたまみからは冷ややかな視線を感じ、結局私は早々にかまどのある室内へ逃げ込み薪に火をつけるなどの裏方に徹したのだった。
勿論、不埒な輩には相応の圧をかけるのも忘れずに…。