第86話 バレンタイン
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「これは何の祭りですか?また学園長先生の思いつきか何かですか…?」
畳の上に片膝をつき、困惑した顔で周囲の様子を探る利吉くん。
「今日はバレンタインデーなんです。」
「バレンタインデー?」
「しんべヱくんが教えてくれた南蛮の行事なんです。大事な人とかお世話になった人に、お菓子とか贈り物をする日なんですって。」
「みんな利吉くんにお菓子を渡そうとしてただけだよ。」
「そうなんですか?すごい勢いで追いかけてくるので…つい逃げてしまいました。」
「ははは、モテる男は大変だねぇ。」
そうからかって笑うと、利吉くんにジト目で睨まれた。
「土井先生に言われると嫌味にしか聞こえませんが。」
「そんなことないさ。私なんかあの子達に薬入りのお菓子を渡されたし。」
「えぇっ!?」
「利吉くんには普通のお菓子だと思うけど。」
「土井先生に薬を盛ろうとするとは…。」
「はは、末恐ろしいというか何というか…。」
まったく。
私とたまみに媚薬入りのお菓子を食べさせようだなんて。
それだけならまだしも、天井裏に忍び込んでこちらの様子を覗き見しようとしていたのがよくない。
おおかた薬の効き目を試したかったのだろうが…山本シナ先生からお説教してもらおうか。
いや、あの先生なら「次は相手にバレないようにしなさい」とかなんとか指導しそうだな…。
そんなことを考えていると、たまみが引出しから小さな包みを取り出してきた。
「利吉さん、いつもお世話になってるので…これ、よかったら食べてください。」
「えっ!」
あからさまに嬉しそうな顔をする利吉くん。
さっきまでとは随分違うじゃないか…。
「いつ来られるのか分からなかったので日保ちのするものにしようと思って…ビスカウトというお菓子なんです。」
ああ、だから一年は組の子達にもこれをあげていたんだな…珍しいものを作ると思った。
利吉くんはしげしげと眺めたあと、ポリポリと食べて嬉しそうに笑った。
「とても美味しいです、ありがとうございます!」
「これなら忍務の合間に食べるのにもいいかなと思いまして。」
「そこまで考えてくださったんですね…。大事に食べます。」
「ふふふ、お口にあったならよかったです。」
二人で微笑み合っているのが気に食わず、私はオホンと咳払いをして割って入った。
「利吉くんには、うちのたまみが色々手間をかけてるからね。私からもなにか」
「けっこーです。」
彼氏面しないでくださいという目で睨まれたので、彼氏なんですけどなにかという目で睨み返してやった。
「利吉さん発見ーっ!!」
「のわぁぁっ!」
突然障子が開けられて、くノたま達が雪崩れ込んできた。
利吉くんが慌てて部屋を飛び出し、一同が黄色い声をあげながらそれを追いかけていく。
「あ~あ~、落ち着いてちゃんと渡せばいいのに。」
「利吉さんってホントくノたまちゃん達にモテモテですねぇ。」
「そりゃあ、実力も人気もあるフリー忍者で収入もあるだろうし、見た目も格好いいし気も利いて話題も豊富そうだし…女の子なら放っておかないんじゃないか。」
う…。
自分で言いながら少しへこんでしまった。
たまみが不思議そうに私を見ている。
「……たまみは、私なんかで本当によかったの?」
たまみが驚いたように目をパチクリとさせ、次いで可笑しそうに微笑んだ。
「私は、利吉くんのように若くはないし収入だってそんなにあるわけでもないし…」
「私は半助さんがいいんです。」
たまみが私に腕を絡めて優しく笑った。
「私が愛してるのは半助さんだけ…。」
「…たまみ」
まだ少し開いていた障子を後ろ手に閉めて、たまみをきつく抱きしめた。
本当に、何から何まで愛しい…!
「半助さんは?」
少し甘えた可愛らしい声。
答えなど、聞かなくても分かっているだろうに…。
「私も…きみだけを、愛してる…」
他の誰にも聞こえないように。
私は彼女の耳元でそっと甘く囁いた…。
畳の上に片膝をつき、困惑した顔で周囲の様子を探る利吉くん。
「今日はバレンタインデーなんです。」
「バレンタインデー?」
「しんべヱくんが教えてくれた南蛮の行事なんです。大事な人とかお世話になった人に、お菓子とか贈り物をする日なんですって。」
「みんな利吉くんにお菓子を渡そうとしてただけだよ。」
「そうなんですか?すごい勢いで追いかけてくるので…つい逃げてしまいました。」
「ははは、モテる男は大変だねぇ。」
そうからかって笑うと、利吉くんにジト目で睨まれた。
「土井先生に言われると嫌味にしか聞こえませんが。」
「そんなことないさ。私なんかあの子達に薬入りのお菓子を渡されたし。」
「えぇっ!?」
「利吉くんには普通のお菓子だと思うけど。」
「土井先生に薬を盛ろうとするとは…。」
「はは、末恐ろしいというか何というか…。」
まったく。
私とたまみに媚薬入りのお菓子を食べさせようだなんて。
それだけならまだしも、天井裏に忍び込んでこちらの様子を覗き見しようとしていたのがよくない。
おおかた薬の効き目を試したかったのだろうが…山本シナ先生からお説教してもらおうか。
いや、あの先生なら「次は相手にバレないようにしなさい」とかなんとか指導しそうだな…。
そんなことを考えていると、たまみが引出しから小さな包みを取り出してきた。
「利吉さん、いつもお世話になってるので…これ、よかったら食べてください。」
「えっ!」
あからさまに嬉しそうな顔をする利吉くん。
さっきまでとは随分違うじゃないか…。
「いつ来られるのか分からなかったので日保ちのするものにしようと思って…ビスカウトというお菓子なんです。」
ああ、だから一年は組の子達にもこれをあげていたんだな…珍しいものを作ると思った。
利吉くんはしげしげと眺めたあと、ポリポリと食べて嬉しそうに笑った。
「とても美味しいです、ありがとうございます!」
「これなら忍務の合間に食べるのにもいいかなと思いまして。」
「そこまで考えてくださったんですね…。大事に食べます。」
「ふふふ、お口にあったならよかったです。」
二人で微笑み合っているのが気に食わず、私はオホンと咳払いをして割って入った。
「利吉くんには、うちのたまみが色々手間をかけてるからね。私からもなにか」
「けっこーです。」
彼氏面しないでくださいという目で睨まれたので、彼氏なんですけどなにかという目で睨み返してやった。
「利吉さん発見ーっ!!」
「のわぁぁっ!」
突然障子が開けられて、くノたま達が雪崩れ込んできた。
利吉くんが慌てて部屋を飛び出し、一同が黄色い声をあげながらそれを追いかけていく。
「あ~あ~、落ち着いてちゃんと渡せばいいのに。」
「利吉さんってホントくノたまちゃん達にモテモテですねぇ。」
「そりゃあ、実力も人気もあるフリー忍者で収入もあるだろうし、見た目も格好いいし気も利いて話題も豊富そうだし…女の子なら放っておかないんじゃないか。」
う…。
自分で言いながら少しへこんでしまった。
たまみが不思議そうに私を見ている。
「……たまみは、私なんかで本当によかったの?」
たまみが驚いたように目をパチクリとさせ、次いで可笑しそうに微笑んだ。
「私は、利吉くんのように若くはないし収入だってそんなにあるわけでもないし…」
「私は半助さんがいいんです。」
たまみが私に腕を絡めて優しく笑った。
「私が愛してるのは半助さんだけ…。」
「…たまみ」
まだ少し開いていた障子を後ろ手に閉めて、たまみをきつく抱きしめた。
本当に、何から何まで愛しい…!
「半助さんは?」
少し甘えた可愛らしい声。
答えなど、聞かなくても分かっているだろうに…。
「私も…きみだけを、愛してる…」
他の誰にも聞こえないように。
私は彼女の耳元でそっと甘く囁いた…。