第86話 バレンタイン
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バレンタイン当日。
何を作ろうか迷ったけれど、私はビスカウトという南蛮のお菓子をみんなに作ることにした。
「はい、みんなよかったら食べてねー!」
一年は組の教科の授業後、良い子達にビスカウトをたくさん配って渡すとみんな嬉しそうにポリポリと食べてくれた。
初挑戦のお菓子でちょっと苦労したけれど、みんなの笑顔を見ていると頑張って作ってよかったなぁと癒された。
「こらこらお前達、机の上を粉だらけにするんじゃないぞ。」
「あれ、土井先生の分はないんですかー?」
「きっと俺達よりすごいの貰うんだぜー。」
無邪気な子ども達が口々にそんなことを話しだす。
半助さんにはあとでゆっくり渡そうと思っていたけれど、そんなにハードルをあげられたら…!
私は焦りながら何とかうやむやにその場をごまかした。
そのまま半助さんと職員室に戻るとすぐ、くノたまちゃん達がお菓子を持ってやってきた。
「土井先生!いつもありがとうございます!私達からのお礼の気持ちです!」
「はは、ありがとう…。またあとで食べさせてもらうよ。」
可愛らしい少女達はにこやかに「はーい!」と返事をした。
半助さんは笑顔で頭をかいている。
…ふぅーん。
予想通りとはいえ。
何だか非常にとっても面白くない光景だった。
すると、一人が私に可愛い包みを差し出した。
「たまみさんにもどうぞ。是非食べてみてください!」
「えっ、いいの?」
驚いて聞くと、みんなにこやかに笑いながら「土井先生と“お二人で”召し上がってくださいね~!」と職員室を去っていった。
何故かやけに“二人で”と強調されたような…?
半助さんを見上げると目が合い、彼はすぐにお菓子の匂いを嗅いで苦笑した。
「まったく…。研究熱心なのはいいことだがこれはいかんなぁ。」
「何がですか?」
「このお菓子、ちょっと仕込まれてる。」
「えっ!?」
半助さんは私が受け取ったお菓子も没収したけれど、何の薬が入っていたのかは言葉を濁して教えてくれなかった。
何だったのだろう…。
その後、一人でお菓子を渡しに来る女の子も…と、思いきや。
予想外に、誰も職員室にやって来なかった。
もしかして半助さん、くノたまちゃん達に人気がない…?
それはそれで安心だけど、こんなに素敵すぎる先生なのに…不思議すぎる。
すると突然、半助さんが天井に向かってチョークを投げつけた。
「どうしたんですか?」
「いや、ちょっとネズミが…いや、悪いネコがいたから。」
「猫、ですか…?」
全然気づかなかった。
そうして半助さんは何事もなかったかのようにまた机に向かい、私もまた同じように作業に戻った。
…ん?
何だか、半助さんがソワソワしている。
時折こちらをチラリと見たり…。
目が合うと、わざとらしくオホンと咳をしてまた机に向かう。
…もしかして。
「半助さん」
「!な、なんだい?」
「あの、私からもお渡ししたいものが…」
「えっ!」
机の引出しに隠していた包みを取り出すと、半助さんがぱあぁっと嬉しそうな顔をした。
ワクワクした顔で包みを見つめる顔の可愛いこと…!!
なんだか、尻尾を振って喜んでいるワンコみたい!
可愛い…!!
私から貰えるのを実はそんなに期待してくれていたのかと嬉しくなった。
半助さんが「いやー、たまみも忙しいのに」とか言いながら照れて嬉しそうに頭をかいている。
「お口にあえばいいんですけど…」
半助さんがニコニコと包みをあける。
「おおっ、これは…!」
それは、大きなハートの形に作ったカステラ。
シンプルだけど、実はこの形をきれいに作るのに本当に苦労した…。
「すごく美味しそうだね!」
「えへへ、久しぶりに焼いたので火加減が難しかったです。」
「ありがとう…!じゃあ早速頂こうかな。」
半助さんがカステラを一口頬張った。
嬉しそうにモグモグと食べながら頷く。
「美味しいよ。たまみも一緒に食べる?」
そう言うと半助さんはカステラを一口分ちぎって私の前に差し出した。
甘えて口を少し開けて「あーん」と言ってみると、半助さんが笑いながら食べさせてくれた。
「あはは、雛鳥みたいだな。」
頭をよしよしと撫でられ心地よかった。
私も少しカステラをちぎって半助さんの前に差し出す。
「あーん?」
半助さんは苦笑しながらも口をあけ、そのままパクリと食べてくれた。
二人してニコニコと微笑みあう。
「では、ささやかながら私からも…」
「半助さんから、私に?」
「うん。今日は大事な人に贈り物をする日なんだろう?」
確かに、くノたまちゃん達が盛り上がっていたから何となく女の子がお菓子を渡す日なのかと思っていたけど、しんべヱくんの話では男女どちらからというものでもなかったような。
「目、閉じて。」
悪戯っぽく微笑む半助さん。
言われるがままに目を閉じると、耳に手が触れる感触がして、ほんの少しいい香りがした。
これは…?
「あけていいよ。」
「…!」
目を開けると、そこには鏡があって。
自分の耳の上あたりに、一輪の梅が挿してあった。
「わ…!」
驚いて見ると、半助さんがにこりと微笑んだ。
「今日は一輪だけだけど…次の休み、一緒に梅を見に行こう。」
「!!」
「お饅頭の美味しいお店も近くにあるらしいし。」
「嬉しい…!!」
ここが職員室であることを忘れて思いきり抱きついた。
半助さんは座ったままよろめくこともなく私を受けとめてくれる。
「半助さん、大好き…!!」
耳元でそう囁くと、半助さんは優しく微笑んで私の頬に手を添えた。
そのまま顔が近づき、鼻先が触れ…。
スパァァンッ
突然職員室の障子があけられて、凄い勢いで誰かが入ってきた。
「「!?」」
咄嗟に半助さんから離れて後ろを振り返ったけれど、障子は既に閉まっていてそこには誰も居なかった。
カタン。
天井の板が微かに音をたてた気がした。
バッと上を見上げてみたけれど、そこにはやはり誰も居なかった。
「…?」
不思議に思って半助さんを見ると、彼はいつの間にかカステラを見えないようにしまっていて『いつもの土井先生』になっていた。
「「「失礼しますっっ!!」」」
突然響く女の子達の声。
勢いよく障子が開けられると、そこにはくノたまちゃん達が息をきらせて立っていた。
「土井先生、利吉さん見ませんでしたか!?」
「いや、見てないよ。学園に来てるのかい?」
「そうなんです!今日という日に出会えるなんて!!是非、利吉さんにお菓子を渡したいんですー!」
キャアキャア言いながら盛り上がる女の子達。
すっかり恋する乙女の顔になり、可愛らしいなぁと思った。
のも束の間。
誰が受け取って貰えるか勝負しようと話しだし、彼女達はまた勢いよく職員室を出ていった。
「す、すごい勢いですね…。」
ぽつりと呟くと、土井先生が天井を見上げて苦笑した。
「逃げずに受け取ってあげたらいいのに、利吉くん。」
すると、天井板がスッと動いて利吉さんが部屋に降り立った。
何を作ろうか迷ったけれど、私はビスカウトという南蛮のお菓子をみんなに作ることにした。
「はい、みんなよかったら食べてねー!」
一年は組の教科の授業後、良い子達にビスカウトをたくさん配って渡すとみんな嬉しそうにポリポリと食べてくれた。
初挑戦のお菓子でちょっと苦労したけれど、みんなの笑顔を見ていると頑張って作ってよかったなぁと癒された。
「こらこらお前達、机の上を粉だらけにするんじゃないぞ。」
「あれ、土井先生の分はないんですかー?」
「きっと俺達よりすごいの貰うんだぜー。」
無邪気な子ども達が口々にそんなことを話しだす。
半助さんにはあとでゆっくり渡そうと思っていたけれど、そんなにハードルをあげられたら…!
私は焦りながら何とかうやむやにその場をごまかした。
そのまま半助さんと職員室に戻るとすぐ、くノたまちゃん達がお菓子を持ってやってきた。
「土井先生!いつもありがとうございます!私達からのお礼の気持ちです!」
「はは、ありがとう…。またあとで食べさせてもらうよ。」
可愛らしい少女達はにこやかに「はーい!」と返事をした。
半助さんは笑顔で頭をかいている。
…ふぅーん。
予想通りとはいえ。
何だか非常にとっても面白くない光景だった。
すると、一人が私に可愛い包みを差し出した。
「たまみさんにもどうぞ。是非食べてみてください!」
「えっ、いいの?」
驚いて聞くと、みんなにこやかに笑いながら「土井先生と“お二人で”召し上がってくださいね~!」と職員室を去っていった。
何故かやけに“二人で”と強調されたような…?
半助さんを見上げると目が合い、彼はすぐにお菓子の匂いを嗅いで苦笑した。
「まったく…。研究熱心なのはいいことだがこれはいかんなぁ。」
「何がですか?」
「このお菓子、ちょっと仕込まれてる。」
「えっ!?」
半助さんは私が受け取ったお菓子も没収したけれど、何の薬が入っていたのかは言葉を濁して教えてくれなかった。
何だったのだろう…。
その後、一人でお菓子を渡しに来る女の子も…と、思いきや。
予想外に、誰も職員室にやって来なかった。
もしかして半助さん、くノたまちゃん達に人気がない…?
それはそれで安心だけど、こんなに素敵すぎる先生なのに…不思議すぎる。
すると突然、半助さんが天井に向かってチョークを投げつけた。
「どうしたんですか?」
「いや、ちょっとネズミが…いや、悪いネコがいたから。」
「猫、ですか…?」
全然気づかなかった。
そうして半助さんは何事もなかったかのようにまた机に向かい、私もまた同じように作業に戻った。
…ん?
何だか、半助さんがソワソワしている。
時折こちらをチラリと見たり…。
目が合うと、わざとらしくオホンと咳をしてまた机に向かう。
…もしかして。
「半助さん」
「!な、なんだい?」
「あの、私からもお渡ししたいものが…」
「えっ!」
机の引出しに隠していた包みを取り出すと、半助さんがぱあぁっと嬉しそうな顔をした。
ワクワクした顔で包みを見つめる顔の可愛いこと…!!
なんだか、尻尾を振って喜んでいるワンコみたい!
可愛い…!!
私から貰えるのを実はそんなに期待してくれていたのかと嬉しくなった。
半助さんが「いやー、たまみも忙しいのに」とか言いながら照れて嬉しそうに頭をかいている。
「お口にあえばいいんですけど…」
半助さんがニコニコと包みをあける。
「おおっ、これは…!」
それは、大きなハートの形に作ったカステラ。
シンプルだけど、実はこの形をきれいに作るのに本当に苦労した…。
「すごく美味しそうだね!」
「えへへ、久しぶりに焼いたので火加減が難しかったです。」
「ありがとう…!じゃあ早速頂こうかな。」
半助さんがカステラを一口頬張った。
嬉しそうにモグモグと食べながら頷く。
「美味しいよ。たまみも一緒に食べる?」
そう言うと半助さんはカステラを一口分ちぎって私の前に差し出した。
甘えて口を少し開けて「あーん」と言ってみると、半助さんが笑いながら食べさせてくれた。
「あはは、雛鳥みたいだな。」
頭をよしよしと撫でられ心地よかった。
私も少しカステラをちぎって半助さんの前に差し出す。
「あーん?」
半助さんは苦笑しながらも口をあけ、そのままパクリと食べてくれた。
二人してニコニコと微笑みあう。
「では、ささやかながら私からも…」
「半助さんから、私に?」
「うん。今日は大事な人に贈り物をする日なんだろう?」
確かに、くノたまちゃん達が盛り上がっていたから何となく女の子がお菓子を渡す日なのかと思っていたけど、しんべヱくんの話では男女どちらからというものでもなかったような。
「目、閉じて。」
悪戯っぽく微笑む半助さん。
言われるがままに目を閉じると、耳に手が触れる感触がして、ほんの少しいい香りがした。
これは…?
「あけていいよ。」
「…!」
目を開けると、そこには鏡があって。
自分の耳の上あたりに、一輪の梅が挿してあった。
「わ…!」
驚いて見ると、半助さんがにこりと微笑んだ。
「今日は一輪だけだけど…次の休み、一緒に梅を見に行こう。」
「!!」
「お饅頭の美味しいお店も近くにあるらしいし。」
「嬉しい…!!」
ここが職員室であることを忘れて思いきり抱きついた。
半助さんは座ったままよろめくこともなく私を受けとめてくれる。
「半助さん、大好き…!!」
耳元でそう囁くと、半助さんは優しく微笑んで私の頬に手を添えた。
そのまま顔が近づき、鼻先が触れ…。
スパァァンッ
突然職員室の障子があけられて、凄い勢いで誰かが入ってきた。
「「!?」」
咄嗟に半助さんから離れて後ろを振り返ったけれど、障子は既に閉まっていてそこには誰も居なかった。
カタン。
天井の板が微かに音をたてた気がした。
バッと上を見上げてみたけれど、そこにはやはり誰も居なかった。
「…?」
不思議に思って半助さんを見ると、彼はいつの間にかカステラを見えないようにしまっていて『いつもの土井先生』になっていた。
「「「失礼しますっっ!!」」」
突然響く女の子達の声。
勢いよく障子が開けられると、そこにはくノたまちゃん達が息をきらせて立っていた。
「土井先生、利吉さん見ませんでしたか!?」
「いや、見てないよ。学園に来てるのかい?」
「そうなんです!今日という日に出会えるなんて!!是非、利吉さんにお菓子を渡したいんですー!」
キャアキャア言いながら盛り上がる女の子達。
すっかり恋する乙女の顔になり、可愛らしいなぁと思った。
のも束の間。
誰が受け取って貰えるか勝負しようと話しだし、彼女達はまた勢いよく職員室を出ていった。
「す、すごい勢いですね…。」
ぽつりと呟くと、土井先生が天井を見上げて苦笑した。
「逃げずに受け取ってあげたらいいのに、利吉くん。」
すると、天井板がスッと動いて利吉さんが部屋に降り立った。