第82話 年の瀬
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半助とたまみくんが出ていくと、山本シナ先生が楽しそうに笑った。
「山田先生、さっきの『抱っこ』って聞きました?!もう土井先生も焦ってキョロキョロするし、笑ってしまいそうで…!聞こえてないフリするのに苦労しましたわ!」
「ははは、そうですなぁ。まったくあいつらは…。それにしてもシナ先生…甘酒に他の酒でも混ぜましたな?」
「あら、バレちゃいましたか。たまみちゃんがこれ以上先生方に絡まれるのも可哀想ですし、いっそ眠って退出させてあげた方がいいかなと思いまして。」
すると赤い顔をした野村先生がよろよろとこちらにやって来た。
「雅之助と私を一緒にせんでください。私は土井先生をからかってやっただけですよ。」
そう言うと野村先生は眼鏡をくいっとあげてにやりと笑った。
「土井先生、幸せそうな顔でたまみさんとよく並んで歩いてるでしょう。あんなの見せつけられてたら、からかってやりたくもなりますよ。」
「野村先生があんまりたまみちゃんに近寄って話してるから、土井先生ったら不機嫌そうにチラチラ見てましたわよ。」
「ふふふ、あの程度で顔に出るとは土井先生もまだまだ若い。」
「ほほほ、焼きもちなんて焼いてもらえるうちが華ですけど、それにしても土井先生分かりやすいですわねぇ。」
二人に言われたい放題の半助。
苦笑して聞いていると、野村先生が部屋の隅で豪快に寝ている大木先生を指差した。
「シナ先生、あれにも大分飲ませたでしょう。」
「あら、そんなには飲ませてないと思いますけど?」
「飲み比べで勝負しようと思ったら、早々にギブアップしよりましたよ。たまみさんが絡まれないように早々に潰そうとしたんじゃありませんか。」
「ふふふ、大木先生はちょっと強引ですからねぇ。まぁ多少速いペースでは飲んでもらったかもしれません。」
そういえば学園長も早々にリタイヤしていたし、恐るべしシナ先生…。
「山田先生、それで、土井先生とたまみちゃんはどうなんですか?」
シナ先生が目を輝かせて聞いてくる。
「ど、どうとは…?」
「私、二人はもうお付き合いしてると思ってたんですけど、利吉くんもたまみちゃんと仲がいいそうじゃないですか。」
すると食堂のおばちゃんが横から頷いて加わってきた。
「そうそう、利吉くんたらすごく楽しそうにたまみちゃんと話してるのよ。食堂には前から時々来てたけど回数も増えたしねぇ。」
「土井先生と利吉くんか。近くにいる土井先生の方が圧倒的に有利だが利吉くんも手強そうですからなぁ。」
三人が楽しそうに噂していると、新野先生も近づいてきた。
「たまみさんが来てから土井先生の胃痛、心労も減ったようですし、このまま上手くいけばと思ってたんですけどねぇ。」
そういえば確かに最近、胃が痛むことがかなり少なくなったようだ。
すると安堂先生もひょいとやってきて。
「教師たるものが色恋にうつつをぬかして、しかも自分の補佐に手を出すとはもってのほか。…しかし、彼女が来てから一年は組の成績もほーんの少しマシになったそうですね。記憶喪失を装った間者ではないかと最初こそ疑いましたが、図書室で勉強している姿も見ますし真面目な頑張り屋さんのようです。…まぁこのまま土井先生がふぬけて一年は組の成績がさらに落ち込むようなことがなければ、認めてあげてもいいんじゃないですか。」
ぺらぺらと話す安堂先生の横に、吉野先生もやってきて。
「最初は文字も分からないようでしたがなかなか頑張ってますよね。土井先生があんまり幸せそうだから、さっきわざとたまみさんを事務員の手伝いにかえてほしいと言ってみたら焦って断ってましたよ、ははは。」
「あらあら、みんな土井先生をからかっちゃってお人が悪いですわねぇ。」
「そういうシナ先生こそ一番楽しんで話してるんじゃないですか。」
「そりゃあこんな楽しい話、くいつかないわけありませんわ。でも私は土井先生を応援してるんですよ?」
「我々だってそうですよ。」
その場の皆が生温かい目でうんうんと頷いて笑った。
やれやれ、あいつらは皆に隠しているつもりだろうが、とっくの昔にお見通しだぞ…。
忍の世界は決して安心して日々を過ごせるものではない。
命の危機とも隣り合わせであることもある。
あえて伴侶を持たぬ者もいる。
三禁という戒めもある。
それでもこうして、あの二人は皆に笑って見守ってもらえている…。
願わくばあの二人にはこのまま道に迷わず進んでいってほしいと思わずにはいられなかった。
親のような気持ちで、私は手元の酒を一気に飲み干した。
「山田先生、さっきの『抱っこ』って聞きました?!もう土井先生も焦ってキョロキョロするし、笑ってしまいそうで…!聞こえてないフリするのに苦労しましたわ!」
「ははは、そうですなぁ。まったくあいつらは…。それにしてもシナ先生…甘酒に他の酒でも混ぜましたな?」
「あら、バレちゃいましたか。たまみちゃんがこれ以上先生方に絡まれるのも可哀想ですし、いっそ眠って退出させてあげた方がいいかなと思いまして。」
すると赤い顔をした野村先生がよろよろとこちらにやって来た。
「雅之助と私を一緒にせんでください。私は土井先生をからかってやっただけですよ。」
そう言うと野村先生は眼鏡をくいっとあげてにやりと笑った。
「土井先生、幸せそうな顔でたまみさんとよく並んで歩いてるでしょう。あんなの見せつけられてたら、からかってやりたくもなりますよ。」
「野村先生があんまりたまみちゃんに近寄って話してるから、土井先生ったら不機嫌そうにチラチラ見てましたわよ。」
「ふふふ、あの程度で顔に出るとは土井先生もまだまだ若い。」
「ほほほ、焼きもちなんて焼いてもらえるうちが華ですけど、それにしても土井先生分かりやすいですわねぇ。」
二人に言われたい放題の半助。
苦笑して聞いていると、野村先生が部屋の隅で豪快に寝ている大木先生を指差した。
「シナ先生、あれにも大分飲ませたでしょう。」
「あら、そんなには飲ませてないと思いますけど?」
「飲み比べで勝負しようと思ったら、早々にギブアップしよりましたよ。たまみさんが絡まれないように早々に潰そうとしたんじゃありませんか。」
「ふふふ、大木先生はちょっと強引ですからねぇ。まぁ多少速いペースでは飲んでもらったかもしれません。」
そういえば学園長も早々にリタイヤしていたし、恐るべしシナ先生…。
「山田先生、それで、土井先生とたまみちゃんはどうなんですか?」
シナ先生が目を輝かせて聞いてくる。
「ど、どうとは…?」
「私、二人はもうお付き合いしてると思ってたんですけど、利吉くんもたまみちゃんと仲がいいそうじゃないですか。」
すると食堂のおばちゃんが横から頷いて加わってきた。
「そうそう、利吉くんたらすごく楽しそうにたまみちゃんと話してるのよ。食堂には前から時々来てたけど回数も増えたしねぇ。」
「土井先生と利吉くんか。近くにいる土井先生の方が圧倒的に有利だが利吉くんも手強そうですからなぁ。」
三人が楽しそうに噂していると、新野先生も近づいてきた。
「たまみさんが来てから土井先生の胃痛、心労も減ったようですし、このまま上手くいけばと思ってたんですけどねぇ。」
そういえば確かに最近、胃が痛むことがかなり少なくなったようだ。
すると安堂先生もひょいとやってきて。
「教師たるものが色恋にうつつをぬかして、しかも自分の補佐に手を出すとはもってのほか。…しかし、彼女が来てから一年は組の成績もほーんの少しマシになったそうですね。記憶喪失を装った間者ではないかと最初こそ疑いましたが、図書室で勉強している姿も見ますし真面目な頑張り屋さんのようです。…まぁこのまま土井先生がふぬけて一年は組の成績がさらに落ち込むようなことがなければ、認めてあげてもいいんじゃないですか。」
ぺらぺらと話す安堂先生の横に、吉野先生もやってきて。
「最初は文字も分からないようでしたがなかなか頑張ってますよね。土井先生があんまり幸せそうだから、さっきわざとたまみさんを事務員の手伝いにかえてほしいと言ってみたら焦って断ってましたよ、ははは。」
「あらあら、みんな土井先生をからかっちゃってお人が悪いですわねぇ。」
「そういうシナ先生こそ一番楽しんで話してるんじゃないですか。」
「そりゃあこんな楽しい話、くいつかないわけありませんわ。でも私は土井先生を応援してるんですよ?」
「我々だってそうですよ。」
その場の皆が生温かい目でうんうんと頷いて笑った。
やれやれ、あいつらは皆に隠しているつもりだろうが、とっくの昔にお見通しだぞ…。
忍の世界は決して安心して日々を過ごせるものではない。
命の危機とも隣り合わせであることもある。
あえて伴侶を持たぬ者もいる。
三禁という戒めもある。
それでもこうして、あの二人は皆に笑って見守ってもらえている…。
願わくばあの二人にはこのまま道に迷わず進んでいってほしいと思わずにはいられなかった。
親のような気持ちで、私は手元の酒を一気に飲み干した。