第81話 心落ち着くところ
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たまみが無事でよかった。
学園長先生に報告し、戸部先生に花房牧之介を任せた後、たまみがいるはずの廃寺に行くも姿がなかった。
ここはタソガレドキ領。
尊奈門くんが前に言い残していた言葉が甦る…黄昏甚兵衛はまだたまみを諦めてはいない…と。
タソガレドキに連れ去られてしまった可能性を考え、鼓動が早くなる。
「…落ち着け。」
目を閉じて深呼吸し、感覚を研ぎ澄ませる。
連れ去るとしたらどこへ向かうか。
周囲を観察しながら走ると、手裏剣が木に刺さっているのを見つけた。
木の傷口がまだ新しい。
まさかたまみに関連することか…?
気配を消し、周囲を探りながら足を速めると、利吉くんがたまみを抱えて走る姿を見つけた。
なぜここに利吉くんが?
いや、それよりもそのずっと離れた後ろをタソガレドキの雑渡昆奈門が気配を消してつけているではないか。
利吉くんは奴の存在に気づいていないようだ。
しかしこの速度…これはただ走っているだけではない、逃げている。
雑渡昆奈門のずっと後ろには他のタソガレドキ忍者もいるが、ついていくのがやっとの様子…かなりの距離を走ってきたのか。
少し様子をみようと、私は気配を消して距離をおきながら並走した。
やがてタソガレドキ領を出て暫くたつと、利吉くんが足を止めた。
同時に雑渡昆奈門も足を止める。
他のタソガレドキ忍者はついてくることができなかったようで気配が感じられない。
利吉くんがたまみを降ろし、何やら話し始めた。
雑渡昆奈門が気配を消して近づいていく…二人の話を聞こうとしているようだ。
ここからでは会話の内容までは聞こえない。
私も周囲に注意しながらゆっくりと距離をつめていった。
利吉くんはたまみの肩をつかんで何やら真剣に話しているようだった。
何の話をしているんだ…?
疑問に思いながらそろりそろりと近づいていくと、利吉くんが唐突にたまみを抱き寄せた。
「!?」
なっ…!
何をしてるんだ…!!
たまみに手を出すなとあれほど言ったのに…!!
動揺のあまり、つい小枝をパキッと踏み鳴らしてしまった。
雑渡昆奈門の目がスッとこちらに向けられる。
しまった!と思うが否や、雑渡がこちらに静かに跳んできた。
「ちょっとちょっと土井先生、これはどういうことです?」
「な、何が?」
「いいんですかアレ?彼女、土井先生と恋仲なのでは…もしや山田利吉も彼女のことを…?」
面白いものを見るようにニヤニヤした眼差しでこちらを見てくる雑渡に思わずイラッとした。
「関係ないでしょう。」
「うちの殿が彼女をご所望なのでね…関係ないこともないんですよ。」
雑渡が腕を組みじっとこちらを見た。
「まぁたまみちゃん素直で可愛いし、からかいがいもありそうだし?ああいう子が殿の嫁になったら我々としても…」
「彼女に手を出すな!!」
雑渡の口調と目から明らかに面白がって挑発してきているとは分かったが、怒気をはらんで威嚇すると雑渡はわざと肩をすくめた。
「私も仕事なので悪く思わないでください。というか土井先生、あれいいんです?うかうかしてると山田利吉にとられちゃうんじゃないですか?」
雑渡がたまみ達の方を指差した。
利吉くんがまだ彼女を抱きしめている。
怒りがこみあげてきて、二人を引き離しに行こうかと思った瞬間。
キィンッ
苦無を手にした雑渡がこちらに攻撃をしかけてきた。
咄嗟に苦無をだして反射的に応戦する。
雑渡はにやりと目を細めた。
「さすが土井先生。先に退場してもらおうかと思ったけど、この程度じゃ隙はつけませんね。」
「退場するのはそちらの方だ!」
今の音で利吉くんが我々に気がついた。
たまみを背にかばいこちらを凝視している。
さらに、雑渡を追いかけてきたタソガレドキの忍者が何人か近づいてくる気配を感じた。
まずいな…。
ここでモタモタしていては多勢に無勢になる。
「利吉くん、早く逃げろ!」
大声でそう伝えると、雑渡が利吉くんに攻撃しにかかった。
苦無でそれを受け止める利吉くん。
「山田利吉…君になら話すかなと思って泳がせてみたが邪魔が入ったな。」
睨みあう二人の間に割って入る。
「お前の相手は私だ!」
雑渡がサッと飛び退き、利吉くんと並んで立ちたまみをかばう。
「利吉くん、囲まれる前にたまみを連れて逃げなさい。私がこいつらをひきつけておくから。」
「いえ、私が残ります。つけられている気配に気づかなかった私の不覚です。」
雑渡の合図にタソガレドキ忍者が次々と姿を現す。
「逃がしてあげるつもりだったんだけどね、ちょっとこちらも状況が変わったんだ。悪いけどたまみちゃんはいただくよ。」
敵が手裏剣を投げると同時にこちらに襲いかかってくる。
後ろにいるたまみに危害が及ばないよう、利吉くんと彼女をかばいながら応戦する。
さすが、利吉くんは危なげなく敵を倒していくがこちらは防戦一方だし多勢に無勢だ。
撤退するタイミングを…と思った矢先、不意に雑渡がたまみに襲いかかり利吉くんがそれを防いだ。
今だ!
懐に忍ばせていた煙玉を投げつけ、煙幕のなかでたまみを抱えて走り出した。
私がしんがりを務めるつもりだったが、利吉くんなら大丈夫だろう。
「土井先生!」
たまみがホッとしたように私にしがみついた。
「…利吉くんなら後を任せても大丈夫だ。このまま学園まで急ぐよ。」
そのまま振り返りもせず勢いよく走り出す。
手裏剣が飛んでくるのも避け、追跡しにくい道を選んで追っ手をまきながら、何とか忍術学園の前までたどり着いた。
「大丈夫か?怪我は?」
ゆっくりたまみを降ろすと、細い手首に縄の跡が残っていた。
可哀想に、恐かっただろう…。
そっとその手首を撫でると、たまみがホッとしたように「大丈夫です。」と微笑んだ。
「花房牧之介は戸部先生からきつくお仕置きしてるから。ひどい目にあったね。」
頷き私の袖をつかむたまみ。
やはり恐かったのだろう。
その小さな背をそっと撫でながら学園の中へ促す。
「ほら、今度はちゃんと先に門をくぐって入って。詳しいことは中で話そう。」
学園長先生と山田先生が心配されているはずだ。
私はたまみを伴って学園長先生の庵へと急いだ。
学園長先生に報告し、戸部先生に花房牧之介を任せた後、たまみがいるはずの廃寺に行くも姿がなかった。
ここはタソガレドキ領。
尊奈門くんが前に言い残していた言葉が甦る…黄昏甚兵衛はまだたまみを諦めてはいない…と。
タソガレドキに連れ去られてしまった可能性を考え、鼓動が早くなる。
「…落ち着け。」
目を閉じて深呼吸し、感覚を研ぎ澄ませる。
連れ去るとしたらどこへ向かうか。
周囲を観察しながら走ると、手裏剣が木に刺さっているのを見つけた。
木の傷口がまだ新しい。
まさかたまみに関連することか…?
気配を消し、周囲を探りながら足を速めると、利吉くんがたまみを抱えて走る姿を見つけた。
なぜここに利吉くんが?
いや、それよりもそのずっと離れた後ろをタソガレドキの雑渡昆奈門が気配を消してつけているではないか。
利吉くんは奴の存在に気づいていないようだ。
しかしこの速度…これはただ走っているだけではない、逃げている。
雑渡昆奈門のずっと後ろには他のタソガレドキ忍者もいるが、ついていくのがやっとの様子…かなりの距離を走ってきたのか。
少し様子をみようと、私は気配を消して距離をおきながら並走した。
やがてタソガレドキ領を出て暫くたつと、利吉くんが足を止めた。
同時に雑渡昆奈門も足を止める。
他のタソガレドキ忍者はついてくることができなかったようで気配が感じられない。
利吉くんがたまみを降ろし、何やら話し始めた。
雑渡昆奈門が気配を消して近づいていく…二人の話を聞こうとしているようだ。
ここからでは会話の内容までは聞こえない。
私も周囲に注意しながらゆっくりと距離をつめていった。
利吉くんはたまみの肩をつかんで何やら真剣に話しているようだった。
何の話をしているんだ…?
疑問に思いながらそろりそろりと近づいていくと、利吉くんが唐突にたまみを抱き寄せた。
「!?」
なっ…!
何をしてるんだ…!!
たまみに手を出すなとあれほど言ったのに…!!
動揺のあまり、つい小枝をパキッと踏み鳴らしてしまった。
雑渡昆奈門の目がスッとこちらに向けられる。
しまった!と思うが否や、雑渡がこちらに静かに跳んできた。
「ちょっとちょっと土井先生、これはどういうことです?」
「な、何が?」
「いいんですかアレ?彼女、土井先生と恋仲なのでは…もしや山田利吉も彼女のことを…?」
面白いものを見るようにニヤニヤした眼差しでこちらを見てくる雑渡に思わずイラッとした。
「関係ないでしょう。」
「うちの殿が彼女をご所望なのでね…関係ないこともないんですよ。」
雑渡が腕を組みじっとこちらを見た。
「まぁたまみちゃん素直で可愛いし、からかいがいもありそうだし?ああいう子が殿の嫁になったら我々としても…」
「彼女に手を出すな!!」
雑渡の口調と目から明らかに面白がって挑発してきているとは分かったが、怒気をはらんで威嚇すると雑渡はわざと肩をすくめた。
「私も仕事なので悪く思わないでください。というか土井先生、あれいいんです?うかうかしてると山田利吉にとられちゃうんじゃないですか?」
雑渡がたまみ達の方を指差した。
利吉くんがまだ彼女を抱きしめている。
怒りがこみあげてきて、二人を引き離しに行こうかと思った瞬間。
キィンッ
苦無を手にした雑渡がこちらに攻撃をしかけてきた。
咄嗟に苦無をだして反射的に応戦する。
雑渡はにやりと目を細めた。
「さすが土井先生。先に退場してもらおうかと思ったけど、この程度じゃ隙はつけませんね。」
「退場するのはそちらの方だ!」
今の音で利吉くんが我々に気がついた。
たまみを背にかばいこちらを凝視している。
さらに、雑渡を追いかけてきたタソガレドキの忍者が何人か近づいてくる気配を感じた。
まずいな…。
ここでモタモタしていては多勢に無勢になる。
「利吉くん、早く逃げろ!」
大声でそう伝えると、雑渡が利吉くんに攻撃しにかかった。
苦無でそれを受け止める利吉くん。
「山田利吉…君になら話すかなと思って泳がせてみたが邪魔が入ったな。」
睨みあう二人の間に割って入る。
「お前の相手は私だ!」
雑渡がサッと飛び退き、利吉くんと並んで立ちたまみをかばう。
「利吉くん、囲まれる前にたまみを連れて逃げなさい。私がこいつらをひきつけておくから。」
「いえ、私が残ります。つけられている気配に気づかなかった私の不覚です。」
雑渡の合図にタソガレドキ忍者が次々と姿を現す。
「逃がしてあげるつもりだったんだけどね、ちょっとこちらも状況が変わったんだ。悪いけどたまみちゃんはいただくよ。」
敵が手裏剣を投げると同時にこちらに襲いかかってくる。
後ろにいるたまみに危害が及ばないよう、利吉くんと彼女をかばいながら応戦する。
さすが、利吉くんは危なげなく敵を倒していくがこちらは防戦一方だし多勢に無勢だ。
撤退するタイミングを…と思った矢先、不意に雑渡がたまみに襲いかかり利吉くんがそれを防いだ。
今だ!
懐に忍ばせていた煙玉を投げつけ、煙幕のなかでたまみを抱えて走り出した。
私がしんがりを務めるつもりだったが、利吉くんなら大丈夫だろう。
「土井先生!」
たまみがホッとしたように私にしがみついた。
「…利吉くんなら後を任せても大丈夫だ。このまま学園まで急ぐよ。」
そのまま振り返りもせず勢いよく走り出す。
手裏剣が飛んでくるのも避け、追跡しにくい道を選んで追っ手をまきながら、何とか忍術学園の前までたどり着いた。
「大丈夫か?怪我は?」
ゆっくりたまみを降ろすと、細い手首に縄の跡が残っていた。
可哀想に、恐かっただろう…。
そっとその手首を撫でると、たまみがホッとしたように「大丈夫です。」と微笑んだ。
「花房牧之介は戸部先生からきつくお仕置きしてるから。ひどい目にあったね。」
頷き私の袖をつかむたまみ。
やはり恐かったのだろう。
その小さな背をそっと撫でながら学園の中へ促す。
「ほら、今度はちゃんと先に門をくぐって入って。詳しいことは中で話そう。」
学園長先生と山田先生が心配されているはずだ。
私はたまみを伴って学園長先生の庵へと急いだ。