第80話 核心
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タソガレドキ忍軍の報告書に目を通していると、部下から侵入者の報告を受けた。
タソガレドキ領内におかしな男女が侵入したとの報告に、何となく興味をそそられ自ら確認に来てみた。
男は変装しているが花房牧之介だろう。
もう一人は忍術学園一年は組補佐の…黄昏甚兵衛様が捕まえようとした娘だった。
暫く様子を見ていると、どうやら花房牧之介は彼女をおとりに戸部先生を呼び出すつもりらしい。
わざわざこんなところまで迷い込んでそのようなことを…この男、ここがタソガレドキ領だと分かっていないようだ。
頃合いを見て部屋に入り、縛り上げられた彼女に声をかけてみた。
「大丈夫?」
「!!…タソガレドキの…!?」
「雑渡昆奈門だ。」
「な…なぜ、ここに…!?」
「なぜって、ここはタソガレドキ領だよ?」
「えっ!」
「きみ、今人質にされてるの?」
「………はい…。」
「助けてあげようか?」
「!」
右手に苦無を持ってしゃがみ、顔を覗き込むように尋ねてみた。
彼女は複雑な顔をして目を背けた。
「…また私をタソガレドキ城へ連れていくのですか?」
怯えた瞳。
…ふむ、連れ帰るのも一興か……?
だが、殿には悪いが夢のお告げなど信じていない私としては、忍術学園と不要な争いを起こすのが憚られた。
しかし、怯えた子犬のような目で見つめられると、つい意地悪を言いたくなってしまった。
「んー、どうしようかな?」
試すように表情を伺う。
すると、彼女は少し沈黙した後、ゆっくり瞬きをして真っ直ぐに私を見つめた。
「前に黄昏甚兵衛さんにお会いしたとき、私と巻物を手に入れたら繁栄をもたらすと仰っていましたが…。」
さっきまで怯えていたその目が、半ば私を睨むかのように強い眼差しではっきり言った。
「私の心はお殿様のものにはなりません。…私を手に入れるのは無理だと、諦めてください。」
おや。
案外意志の固そうなところもあるんだな。
これまで戸惑っているような姿ばかり見てきたので…まぁ忍術学園に侵入したときとうちに拐ってきたときぐらいしか会ってないから当然だが…何だか意外に感じた。
「へぇ、君の心ね。…じゃあ逆に、土井先生が巻物を手に入れたら繁栄するってことかな?」
「?」
彼女は一瞬意味がわからなかったようできょとんとしたが、すぐに頬を赤らめて「いえ、そんなことは…」とか何とかごにょごにょ言いながら目をそらした。
ふーん、この反応。
思わずにやりと笑ってしまった。
「そう。土井先生は強いし優しいからねぇ?」
からかうように言うと、ますます赤くなって言葉に困っている。
これはこれは。
どうやら面白いものを見つけたようだ。
「それで、土井先生のお嫁さんになるから殿の嫁にはなれないって?」
「そっ!そ、それは…!!」
ふーん…そこは断言しないのか。
恋仲だが将来の話はしてないといったところか。
さすが土井先生、奥手そうに見えておさえるとこはちゃんとおさえてるじゃないか。
そしてこの彼女…、隠そうとしてるつもりかもしれないけど、情報が駄々漏れだよ。
「たまみちゃん、だよね?君、面白いねぇ。」
素直で真面目な反応が面白くもあり可愛らしかった。
なるほど確かに土井先生が入れ込むのも分からなくない…子どもたちにも好かれそうだ。
そういえば尊奈門もこの子に興味があるようだったな。
尊奈門、またしても土井先生に完敗か…いやそこまでの気持ちがあったのかも知らないけど。
今度これをネタにからかってみるか…。
「…人の顔を見ながらニヤニヤしないでください…!」
「おっと失礼。」
ついニヤニヤしながら考え込んでしまった。
「とりあえず、花房牧之介が戻ってくる前にここから離れようか。」
「…お城には行きません。きっと戸部先生が助けてくれるのでここにいます。」
「美味しいおしるこ食べたくない?」
「え?」
「お汁粉。甘いのは好きかな?」
目は口ほどにものを言うというが、彼女の目は無意識に…でも確実に一瞬興味をひかれていた。
「よし、じゃあ行こうか。」
「えっ、ちょっ…!」
抵抗する彼女の縄を切ってひょいと担ぐと、私はその場を後にした。
タソガレドキ領内には情報収集や情報交換の場として使っている自軍経営の茶屋が幾つかある。
公には普通の茶屋として営んでいるが、ここならばさほど気兼ねすることなく過ごせるだろう。
彼女を担いだまま天井裏から奥の部屋に入る。
するとすぐに店の主人…彼も私の部下なのだが…が顔を出した。
「組頭!今日はどうされましたか。」
「ちょっとね。お汁粉を二人分頼む。」
「は…すぐにご用意します。」
彼は私が担いでいる女性が何者かと一瞥したが、すぐに奥へと下がった。
「あの、ここは…?」
床に降ろしてやると、彼女はきょろきょろと周りを見渡した。
「ただのお茶屋さんだよ。」
「そうは見えませんでしたが…。」
「まぁ座って。話が済んだらちゃんと学園まで帰してあげるから心配しなくていい。」
「話?」
「そう、君にいくつか聞きたいことがあったんだ。」
そのとき、部下が先程頼んだお汁粉を持って入ってきた。
「まぁゆっくり食べながら話そうじゃないか。毒なんて入ってないから安心しなさい。」
彼女に差し出したお汁粉を一匙すくって飲んでみせた。
すると安心したのか、彼女も一口すくって食べ始めた。
「美味しい…!!」
「そうだろう。好きなだけ食べるといい。」
先程までの警戒していた表情が一転し、嬉しそうに頬張る姿にこちらも和む心地がした。
よほど甘いものが好きなようだ。
緊張がとけたのか少し笑顔が見られ、これで話しやすくなったなと私もお汁粉をストローですすった。
「これは私の興味本意で聞くのだがね。」
「はい?」
素直に返事をしてくれるようになったな…。
「君は何で一年は組の補佐をしてるの?」
私がそう言うと、彼女はぴたりと固まった。
これは、やはり何かあるな…。
秘密のにおいがして、私はじっと彼女の目を見つめた。
タソガレドキ領内におかしな男女が侵入したとの報告に、何となく興味をそそられ自ら確認に来てみた。
男は変装しているが花房牧之介だろう。
もう一人は忍術学園一年は組補佐の…黄昏甚兵衛様が捕まえようとした娘だった。
暫く様子を見ていると、どうやら花房牧之介は彼女をおとりに戸部先生を呼び出すつもりらしい。
わざわざこんなところまで迷い込んでそのようなことを…この男、ここがタソガレドキ領だと分かっていないようだ。
頃合いを見て部屋に入り、縛り上げられた彼女に声をかけてみた。
「大丈夫?」
「!!…タソガレドキの…!?」
「雑渡昆奈門だ。」
「な…なぜ、ここに…!?」
「なぜって、ここはタソガレドキ領だよ?」
「えっ!」
「きみ、今人質にされてるの?」
「………はい…。」
「助けてあげようか?」
「!」
右手に苦無を持ってしゃがみ、顔を覗き込むように尋ねてみた。
彼女は複雑な顔をして目を背けた。
「…また私をタソガレドキ城へ連れていくのですか?」
怯えた瞳。
…ふむ、連れ帰るのも一興か……?
だが、殿には悪いが夢のお告げなど信じていない私としては、忍術学園と不要な争いを起こすのが憚られた。
しかし、怯えた子犬のような目で見つめられると、つい意地悪を言いたくなってしまった。
「んー、どうしようかな?」
試すように表情を伺う。
すると、彼女は少し沈黙した後、ゆっくり瞬きをして真っ直ぐに私を見つめた。
「前に黄昏甚兵衛さんにお会いしたとき、私と巻物を手に入れたら繁栄をもたらすと仰っていましたが…。」
さっきまで怯えていたその目が、半ば私を睨むかのように強い眼差しではっきり言った。
「私の心はお殿様のものにはなりません。…私を手に入れるのは無理だと、諦めてください。」
おや。
案外意志の固そうなところもあるんだな。
これまで戸惑っているような姿ばかり見てきたので…まぁ忍術学園に侵入したときとうちに拐ってきたときぐらいしか会ってないから当然だが…何だか意外に感じた。
「へぇ、君の心ね。…じゃあ逆に、土井先生が巻物を手に入れたら繁栄するってことかな?」
「?」
彼女は一瞬意味がわからなかったようできょとんとしたが、すぐに頬を赤らめて「いえ、そんなことは…」とか何とかごにょごにょ言いながら目をそらした。
ふーん、この反応。
思わずにやりと笑ってしまった。
「そう。土井先生は強いし優しいからねぇ?」
からかうように言うと、ますます赤くなって言葉に困っている。
これはこれは。
どうやら面白いものを見つけたようだ。
「それで、土井先生のお嫁さんになるから殿の嫁にはなれないって?」
「そっ!そ、それは…!!」
ふーん…そこは断言しないのか。
恋仲だが将来の話はしてないといったところか。
さすが土井先生、奥手そうに見えておさえるとこはちゃんとおさえてるじゃないか。
そしてこの彼女…、隠そうとしてるつもりかもしれないけど、情報が駄々漏れだよ。
「たまみちゃん、だよね?君、面白いねぇ。」
素直で真面目な反応が面白くもあり可愛らしかった。
なるほど確かに土井先生が入れ込むのも分からなくない…子どもたちにも好かれそうだ。
そういえば尊奈門もこの子に興味があるようだったな。
尊奈門、またしても土井先生に完敗か…いやそこまでの気持ちがあったのかも知らないけど。
今度これをネタにからかってみるか…。
「…人の顔を見ながらニヤニヤしないでください…!」
「おっと失礼。」
ついニヤニヤしながら考え込んでしまった。
「とりあえず、花房牧之介が戻ってくる前にここから離れようか。」
「…お城には行きません。きっと戸部先生が助けてくれるのでここにいます。」
「美味しいおしるこ食べたくない?」
「え?」
「お汁粉。甘いのは好きかな?」
目は口ほどにものを言うというが、彼女の目は無意識に…でも確実に一瞬興味をひかれていた。
「よし、じゃあ行こうか。」
「えっ、ちょっ…!」
抵抗する彼女の縄を切ってひょいと担ぐと、私はその場を後にした。
タソガレドキ領内には情報収集や情報交換の場として使っている自軍経営の茶屋が幾つかある。
公には普通の茶屋として営んでいるが、ここならばさほど気兼ねすることなく過ごせるだろう。
彼女を担いだまま天井裏から奥の部屋に入る。
するとすぐに店の主人…彼も私の部下なのだが…が顔を出した。
「組頭!今日はどうされましたか。」
「ちょっとね。お汁粉を二人分頼む。」
「は…すぐにご用意します。」
彼は私が担いでいる女性が何者かと一瞥したが、すぐに奥へと下がった。
「あの、ここは…?」
床に降ろしてやると、彼女はきょろきょろと周りを見渡した。
「ただのお茶屋さんだよ。」
「そうは見えませんでしたが…。」
「まぁ座って。話が済んだらちゃんと学園まで帰してあげるから心配しなくていい。」
「話?」
「そう、君にいくつか聞きたいことがあったんだ。」
そのとき、部下が先程頼んだお汁粉を持って入ってきた。
「まぁゆっくり食べながら話そうじゃないか。毒なんて入ってないから安心しなさい。」
彼女に差し出したお汁粉を一匙すくって飲んでみせた。
すると安心したのか、彼女も一口すくって食べ始めた。
「美味しい…!!」
「そうだろう。好きなだけ食べるといい。」
先程までの警戒していた表情が一転し、嬉しそうに頬張る姿にこちらも和む心地がした。
よほど甘いものが好きなようだ。
緊張がとけたのか少し笑顔が見られ、これで話しやすくなったなと私もお汁粉をストローですすった。
「これは私の興味本意で聞くのだがね。」
「はい?」
素直に返事をしてくれるようになったな…。
「君は何で一年は組の補佐をしてるの?」
私がそう言うと、彼女はぴたりと固まった。
これは、やはり何かあるな…。
秘密のにおいがして、私はじっと彼女の目を見つめた。