第77話 紅葉
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土井先生と二人で歩き他愛もない会話を楽しんでいるうちに、山の麓の茶店に到着した。
先客はおらず、二人並んで椅子に腰掛ける。
注文したお茶とお団子を受け取るとき、土井先生が店員のおばあさんに話しかけた。
「最近、この山に鬼が出るという噂を聞いたのですが…」
するとおばあさんは「そうなのよ」と眉をひそめて話し出した。
「なんでも美しい鬼女が出るらしいの。山に入る男に声をかけて、気に入らなければ妖術で呪い殺すって。」
「呪いですか。」
「そうそう、身体中に血を塗りつけられて恐ろしいことになるそうだよ。こわいこわい。」
「村人も被害に?」
「いや~、今のところ地元の村の人が襲われたってのは聞いたことないねぇ。男だけで入らないようにしてるし。」
「女性を連れていると鬼は出ないのですか?」
「そうそう、狙われるのは余所者の男だけの奴らさ。お客さんは可愛い奥さん連れてるから大丈夫じゃないかねぇ。」
おばあさんが私を見てくしゃりと笑った。
奥さん…!
間違われるのは初めてではなかったけれど、嬉しくて恥ずかしくて赤くなってしまった。
土井先生もあははと頭をかきながら照れ笑いをしている。
「鬼はもみじ…紅葉という名で、琴をひいて男を惹き付けるらしい。気ぃつけてな。」
おばあさんが店の奥に戻ると、土井先生はお団子を食べながら何か考えているようだった。
そんな横顔も凛々しい…。
「紅葉伝説…」
「もみじでんせつ?」
「私も詳しくはないけど、紅葉という鬼女が悪さして武士に退治されるって話だ。琴が上手だとか妖術だとか…何だかそれに似てるなと思って。」
「鬼って本当にいるんですか?」
「私は見たことないな。」
土井先生は平然とお団子をもぐもぐ食べ始めた。
私も一緒にお団子を頬張る。
鬼、かぁ…。
架空の生き物だとは思う。
でも、私がこの世界に居ること自体が不思議なことでもあるし…もしかしたら鬼も出るかもしれない…。
「男性だけを狙うって何ででしょうね…。あ、もしかしてお婿さんを探してるとか?気に入るかどうかの基準もイケメンかどうかだったりして。」
「イケメンって…。」
「もしそうだったら…土井先生絶対気に入られちゃいそうですよね…!」
「そ、そう?」
「やっぱり私ついてきてよかったかも…。土井先生が鬼のお婿さんになるなんて…!」
そんなことをぶつぶつと言っていると、土井先生がクスクスと笑いだした。
「たまみはホントに想像力豊かだなぁ。」
「わ、笑わないでください…!」
「だって、私が鬼のお婿さん?」
面白そうに笑う土井先生。
「結構真面目に考えてるんですけど…。」
「だから面白いんだよ。」
「でも、妖術を使う鬼なら、土井先生だってこうフラフラ~って操られちゃうかもしれないじゃないですか!」
「うんうん、そうだね。」
土井先生は笑いを堪えきれずに肩を震わせた。
もう、そんなに余裕そうに構えて…!
うっかり妖術にかかってしまってもしりませんよ…!
だけどもし土井先生が目の前で美しい鬼の元へ行ってしまったら私はどうしたらいいのだろう。
そんなことになったらやだなぁ…。
「たまみ、たまみ。」
「?」
「大丈夫、私を信じて。」
土井先生がまだ目にうっすら涙を浮かべながら私の頭にぽんと手を置いた。
「さぁ、食べたら綺麗な景色を見に行こう。」
優しい笑顔に不安が薄らいだ。
うん、きっと土井先生なら何とかしてくれる。
私は甘いお団子をゆっくり堪能し、温かいお茶を飲み干した。
土井先生に手をひかれながら、山道を道なりに登っていく。
思ったより坂道が急で、体力のない私はすぐに息があがってしまった。
「大丈夫かい?」
土井先生が心配そうに歩をゆるめてくれる。
私は膝に手をついて肩で息をした。
「すみません、ちょっと、息が…!」
「やっぱり私が背負って…」
「いえいえ、私、重たいのに、こんな山道で、お世話になるわけには…!」
「でもほら、ここからもっと坂が急になるし。」
「え」
見上げると、目の前にはかなり急な坂道が続いていた。
私が固まっているのを見かねて、土井先生が私の前にしゃがみこむ。
「この道は急勾配だから、途中でたまみを背負っていこうと最初から思ってたんだよ。ほら、乗って。」
「う…すみません…早速足手まといに…。」
「そんなことないさ。もう少し先に、たまみに見せたい景色があるから…そこまで飛ばしていくよ。」
そう言うと土井先生は私を背負ったまま軽々と斜面を駆け上がり、どんどん道を進んでいった。
「スゴい…!」
ひょいひょいと力強く登っていく土井先生。
申し訳なく思う反面、そのカッコよさにドキドキしてしまった。
「ほら、着いた。」
「!!」
土井先生がゆっくりと私を地に降ろす。
「綺麗…!」
見渡す限りの美しい紅葉。
紅く色づいた紅葉に囲まれて、微かに葉の香りがする。
風とともに紅葉が舞い落ち、赤い絨毯の上にひらひらと重なっていく。
誘われるようにその景色のなかに踏み込むと、サクッと地面を踏みしめる音がした。
「ここで少し休憩しようか。」
優しい微笑みに私は大きく頷いて、辺り一面の紅葉を見渡した。
先客はおらず、二人並んで椅子に腰掛ける。
注文したお茶とお団子を受け取るとき、土井先生が店員のおばあさんに話しかけた。
「最近、この山に鬼が出るという噂を聞いたのですが…」
するとおばあさんは「そうなのよ」と眉をひそめて話し出した。
「なんでも美しい鬼女が出るらしいの。山に入る男に声をかけて、気に入らなければ妖術で呪い殺すって。」
「呪いですか。」
「そうそう、身体中に血を塗りつけられて恐ろしいことになるそうだよ。こわいこわい。」
「村人も被害に?」
「いや~、今のところ地元の村の人が襲われたってのは聞いたことないねぇ。男だけで入らないようにしてるし。」
「女性を連れていると鬼は出ないのですか?」
「そうそう、狙われるのは余所者の男だけの奴らさ。お客さんは可愛い奥さん連れてるから大丈夫じゃないかねぇ。」
おばあさんが私を見てくしゃりと笑った。
奥さん…!
間違われるのは初めてではなかったけれど、嬉しくて恥ずかしくて赤くなってしまった。
土井先生もあははと頭をかきながら照れ笑いをしている。
「鬼はもみじ…紅葉という名で、琴をひいて男を惹き付けるらしい。気ぃつけてな。」
おばあさんが店の奥に戻ると、土井先生はお団子を食べながら何か考えているようだった。
そんな横顔も凛々しい…。
「紅葉伝説…」
「もみじでんせつ?」
「私も詳しくはないけど、紅葉という鬼女が悪さして武士に退治されるって話だ。琴が上手だとか妖術だとか…何だかそれに似てるなと思って。」
「鬼って本当にいるんですか?」
「私は見たことないな。」
土井先生は平然とお団子をもぐもぐ食べ始めた。
私も一緒にお団子を頬張る。
鬼、かぁ…。
架空の生き物だとは思う。
でも、私がこの世界に居ること自体が不思議なことでもあるし…もしかしたら鬼も出るかもしれない…。
「男性だけを狙うって何ででしょうね…。あ、もしかしてお婿さんを探してるとか?気に入るかどうかの基準もイケメンかどうかだったりして。」
「イケメンって…。」
「もしそうだったら…土井先生絶対気に入られちゃいそうですよね…!」
「そ、そう?」
「やっぱり私ついてきてよかったかも…。土井先生が鬼のお婿さんになるなんて…!」
そんなことをぶつぶつと言っていると、土井先生がクスクスと笑いだした。
「たまみはホントに想像力豊かだなぁ。」
「わ、笑わないでください…!」
「だって、私が鬼のお婿さん?」
面白そうに笑う土井先生。
「結構真面目に考えてるんですけど…。」
「だから面白いんだよ。」
「でも、妖術を使う鬼なら、土井先生だってこうフラフラ~って操られちゃうかもしれないじゃないですか!」
「うんうん、そうだね。」
土井先生は笑いを堪えきれずに肩を震わせた。
もう、そんなに余裕そうに構えて…!
うっかり妖術にかかってしまってもしりませんよ…!
だけどもし土井先生が目の前で美しい鬼の元へ行ってしまったら私はどうしたらいいのだろう。
そんなことになったらやだなぁ…。
「たまみ、たまみ。」
「?」
「大丈夫、私を信じて。」
土井先生がまだ目にうっすら涙を浮かべながら私の頭にぽんと手を置いた。
「さぁ、食べたら綺麗な景色を見に行こう。」
優しい笑顔に不安が薄らいだ。
うん、きっと土井先生なら何とかしてくれる。
私は甘いお団子をゆっくり堪能し、温かいお茶を飲み干した。
土井先生に手をひかれながら、山道を道なりに登っていく。
思ったより坂道が急で、体力のない私はすぐに息があがってしまった。
「大丈夫かい?」
土井先生が心配そうに歩をゆるめてくれる。
私は膝に手をついて肩で息をした。
「すみません、ちょっと、息が…!」
「やっぱり私が背負って…」
「いえいえ、私、重たいのに、こんな山道で、お世話になるわけには…!」
「でもほら、ここからもっと坂が急になるし。」
「え」
見上げると、目の前にはかなり急な坂道が続いていた。
私が固まっているのを見かねて、土井先生が私の前にしゃがみこむ。
「この道は急勾配だから、途中でたまみを背負っていこうと最初から思ってたんだよ。ほら、乗って。」
「う…すみません…早速足手まといに…。」
「そんなことないさ。もう少し先に、たまみに見せたい景色があるから…そこまで飛ばしていくよ。」
そう言うと土井先生は私を背負ったまま軽々と斜面を駆け上がり、どんどん道を進んでいった。
「スゴい…!」
ひょいひょいと力強く登っていく土井先生。
申し訳なく思う反面、そのカッコよさにドキドキしてしまった。
「ほら、着いた。」
「!!」
土井先生がゆっくりと私を地に降ろす。
「綺麗…!」
見渡す限りの美しい紅葉。
紅く色づいた紅葉に囲まれて、微かに葉の香りがする。
風とともに紅葉が舞い落ち、赤い絨毯の上にひらひらと重なっていく。
誘われるようにその景色のなかに踏み込むと、サクッと地面を踏みしめる音がした。
「ここで少し休憩しようか。」
優しい微笑みに私は大きく頷いて、辺り一面の紅葉を見渡した。