第74話 過去
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数日後。
午後、部屋で授業の資料を作っていると聞き慣れた声とともに障子が開けられた。
「失礼します。」
「!…利吉くん。」
「こんにちは、土井先生。」
利吉くんは真っ直ぐにこちらを見て挨拶した。
「…山田先生なら今学園長のところに」
「いえ、今日は土井先生と話しに来たのです。」
そういうと、彼は障子を閉めて私の前に正座した。
「…そうか、私も利吉くんに言っておきたいことがあるんだ。」
「何でしょうか。」
「もうたまみを勝手に連れ出さないでくれないか。」
怒りを隠さずにはっきりそう告げると、利吉くんは臆することもなく真っ直ぐに見返してきた。
「夜分に外出させたことについては謝ります。しかし土井先生、お言葉ですがたまみさんは夜中に廊下で一人泣いていたんですよ。」
利吉くんが鋭い目でこちらを睨んでくる。
「土井先生だから…あなただからと、彼女を諦めて気持ちの整理をつけようかと思いかけていたのに…こんなことでは彼女を安心して任せられません。」
「…今回の件についてはちゃんと誤解も解けたしもう大丈夫だから」
「花房牧之介ですね。もう調査してウラもとりましたので。」
「調査って…。」
「まぁそんなところだろうとは思っていました。しかし土井先生、問題はあなたです。」
そう言うと利吉くんはさらに口調をキツくしてすごんだ。
「あんな風にたまみさんを泣かせるなら、私が彼女を貰います。私なら、もっと上手くやってあんな涙を流させるようなことはしませんっ…!」
「………っ」
返す言葉もなかった。
今回は色々重なったからとはいえ、私が言葉足らずだったばかりに誤解をまねいたと自ら反省していた…。
「私が言いたかったのは以上です。では…。」
利吉くんがぺこりと頭をさげて立ち上がり、障子に手をかけた。
「あ、もし父上が戻ってきたら食堂に居ると伝えてください。」
「食堂?」
「はい。まだ昼食をとってないので…前に、たまみさんが時間外でも私だけの為にご飯を用意すると言ってくれましたから。」
「!…あー、そういえば私もお茶をいれに行こうと思っていたところだったんだ。」
とってつけたようにそんなことを言い立ち上がると、利吉くんが露骨に嫌そうな顔をした。
「利吉くん、私が行くと何か問題でも?」
「…いいえ、別に。」
結局、あーだこーだ言いながら二人で廊下を歩いていく。
食堂ではたまみと食堂のおばちゃんが晩御飯の下準備をしていた。
手前にいたたまみがこちらにすぐ気づき駆け寄ってくる。
「たまみさん、こんにちは。」
「利吉さん!この前は、あの、すみませんでした…!」
「いえいえ、もう話は聞きましたので。」
さっきまで怒っていたとは思えない爽やかな笑顔をたまみに向ける利吉くん。
すると彼はおもむろに懐から包みを取り出してたまみに渡した。
「もしたまみさんの元気がなければこれをお渡ししようかなと思っていたのですが…もう必要なさそうですね?」
たまみが箱の文字を見て目を見開く。
「これは…前に話していた噂の羊羹…!?」
「はい。食べてみたいと仰っていたので。」
たまみの目がキラキラと輝き嬉しそうな笑顔をみせた。
「食べてみたいです…!これ、頂いてもいいんですか!?」
「あはは、そう言うと思ってました。どうぞ好きなだけ食べてください。」
「ありがとうございます…!!じゃあ一緒に…って、あ、利吉さん今日はご飯ちゃんと食べましたか?」
「それがまだお昼ご飯を食べてなくて。」
「じゃあすぐに作りますね!ちょっと待っててください!」
たまみが満面の笑みで食堂のなかに入っていき、利吉くんも嬉しそうにそれを眺めていた。
…何だかとても、非常にすごく面白くない。
「では土井先生、私はここで食べていきますので。父上に伝言よろしくお願いします。」
「いやー、利吉くんとゆっくり話す機会もそうそうないし、ここでお茶を飲んでいくよ。」
「私はたまみさんと話すためにここに来たのです。邪魔しないでください。」
「…彼女は私のものだから。手を出すのはやめてくれ。」
「ただ話をするだけですよ。」
「なら私がここにいても問題ないよね?」
「むむ…」
「むむむ…」
食堂の椅子に座ってそんなやりとりをしばらく続けていると、たまみがうどんと栗ごはんを持ってきた。
「はい、お待たせしました。たくさん栗を頂いたので、今日は栗ご飯です。」
「美味しそうですね!いただきます…!」
にこにこと微笑みあう二人。
なんだなんだこの空気は…!
じと目で眺めていると、たまみがくるりとこちらを向いた。
「土井先生は温かいお茶ですよね?利吉さんのくれた羊羹と一緒にすぐ持ってきます。」
「ああ、ありがとう…。」
するとたまみが私と利吉くんを交互にみて笑った。
「お二人ってほんと仲良しですね。」
「「えっ」」
仲良しというか言い争っていたのだが…。
食堂の奥でおばちゃんが笑いを堪えているのが見えた。
私と利吉くんは目をあわせ、鼻歌を歌いながら羊羹を切ろうとするのんきな彼女に苦笑したのだった。
午後、部屋で授業の資料を作っていると聞き慣れた声とともに障子が開けられた。
「失礼します。」
「!…利吉くん。」
「こんにちは、土井先生。」
利吉くんは真っ直ぐにこちらを見て挨拶した。
「…山田先生なら今学園長のところに」
「いえ、今日は土井先生と話しに来たのです。」
そういうと、彼は障子を閉めて私の前に正座した。
「…そうか、私も利吉くんに言っておきたいことがあるんだ。」
「何でしょうか。」
「もうたまみを勝手に連れ出さないでくれないか。」
怒りを隠さずにはっきりそう告げると、利吉くんは臆することもなく真っ直ぐに見返してきた。
「夜分に外出させたことについては謝ります。しかし土井先生、お言葉ですがたまみさんは夜中に廊下で一人泣いていたんですよ。」
利吉くんが鋭い目でこちらを睨んでくる。
「土井先生だから…あなただからと、彼女を諦めて気持ちの整理をつけようかと思いかけていたのに…こんなことでは彼女を安心して任せられません。」
「…今回の件についてはちゃんと誤解も解けたしもう大丈夫だから」
「花房牧之介ですね。もう調査してウラもとりましたので。」
「調査って…。」
「まぁそんなところだろうとは思っていました。しかし土井先生、問題はあなたです。」
そう言うと利吉くんはさらに口調をキツくしてすごんだ。
「あんな風にたまみさんを泣かせるなら、私が彼女を貰います。私なら、もっと上手くやってあんな涙を流させるようなことはしませんっ…!」
「………っ」
返す言葉もなかった。
今回は色々重なったからとはいえ、私が言葉足らずだったばかりに誤解をまねいたと自ら反省していた…。
「私が言いたかったのは以上です。では…。」
利吉くんがぺこりと頭をさげて立ち上がり、障子に手をかけた。
「あ、もし父上が戻ってきたら食堂に居ると伝えてください。」
「食堂?」
「はい。まだ昼食をとってないので…前に、たまみさんが時間外でも私だけの為にご飯を用意すると言ってくれましたから。」
「!…あー、そういえば私もお茶をいれに行こうと思っていたところだったんだ。」
とってつけたようにそんなことを言い立ち上がると、利吉くんが露骨に嫌そうな顔をした。
「利吉くん、私が行くと何か問題でも?」
「…いいえ、別に。」
結局、あーだこーだ言いながら二人で廊下を歩いていく。
食堂ではたまみと食堂のおばちゃんが晩御飯の下準備をしていた。
手前にいたたまみがこちらにすぐ気づき駆け寄ってくる。
「たまみさん、こんにちは。」
「利吉さん!この前は、あの、すみませんでした…!」
「いえいえ、もう話は聞きましたので。」
さっきまで怒っていたとは思えない爽やかな笑顔をたまみに向ける利吉くん。
すると彼はおもむろに懐から包みを取り出してたまみに渡した。
「もしたまみさんの元気がなければこれをお渡ししようかなと思っていたのですが…もう必要なさそうですね?」
たまみが箱の文字を見て目を見開く。
「これは…前に話していた噂の羊羹…!?」
「はい。食べてみたいと仰っていたので。」
たまみの目がキラキラと輝き嬉しそうな笑顔をみせた。
「食べてみたいです…!これ、頂いてもいいんですか!?」
「あはは、そう言うと思ってました。どうぞ好きなだけ食べてください。」
「ありがとうございます…!!じゃあ一緒に…って、あ、利吉さん今日はご飯ちゃんと食べましたか?」
「それがまだお昼ご飯を食べてなくて。」
「じゃあすぐに作りますね!ちょっと待っててください!」
たまみが満面の笑みで食堂のなかに入っていき、利吉くんも嬉しそうにそれを眺めていた。
…何だかとても、非常にすごく面白くない。
「では土井先生、私はここで食べていきますので。父上に伝言よろしくお願いします。」
「いやー、利吉くんとゆっくり話す機会もそうそうないし、ここでお茶を飲んでいくよ。」
「私はたまみさんと話すためにここに来たのです。邪魔しないでください。」
「…彼女は私のものだから。手を出すのはやめてくれ。」
「ただ話をするだけですよ。」
「なら私がここにいても問題ないよね?」
「むむ…」
「むむむ…」
食堂の椅子に座ってそんなやりとりをしばらく続けていると、たまみがうどんと栗ごはんを持ってきた。
「はい、お待たせしました。たくさん栗を頂いたので、今日は栗ご飯です。」
「美味しそうですね!いただきます…!」
にこにこと微笑みあう二人。
なんだなんだこの空気は…!
じと目で眺めていると、たまみがくるりとこちらを向いた。
「土井先生は温かいお茶ですよね?利吉さんのくれた羊羹と一緒にすぐ持ってきます。」
「ああ、ありがとう…。」
するとたまみが私と利吉くんを交互にみて笑った。
「お二人ってほんと仲良しですね。」
「「えっ」」
仲良しというか言い争っていたのだが…。
食堂の奥でおばちゃんが笑いを堪えているのが見えた。
私と利吉くんは目をあわせ、鼻歌を歌いながら羊羹を切ろうとするのんきな彼女に苦笑したのだった。