第73話 疑惑
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夕食の時間になっても土井先生は食堂に現れなかった。
外食することなんて滅多にないのに…。
…もしかして、家でお嫁さんと一緒に食べてるとか。
いやいや、そんなわけない。
見知らぬ女性の手料理を嬉しそうに食べる土井先生を想像して私は頭をブンブンと振った。
私ときりちゃんと土井先生の三人で仲よく囲炉裏を囲って食事をした日々を思いだし、私の居た場所に見知らぬ女性が座っている想像をして、私は目をぎゅっと閉じた。
…そうだ、きりちゃんに聞いてみようか。
きりちゃんなら何か知っているかもしれない。
食堂の片付けが終わったら聞いてみようと思う一方で、もしも本当にお嫁さんが来ているのなら、きりちゃんはどう感じているのかなと考えた。
そして聡い子だから、もし何か知っていても、私に気をつかって本当のことを話さないかもしれない。
…やっぱり、ここは直接土井先生に聞いてみるべきだ。
そんなことを考えていると、山田先生が遅れて晩御飯を食べに食堂へ来た。
「山田先生!あの、土井先生は…」
「ああ、土井先生なら外で食べてくると言ってたな…何も聞いてないのかね?」
「はい、聞いてません…。」
「そうか、まぁそんなときもあるだろう。心配しなさんな。」
「そうですか…わかりました、ありがとうございます。」
私は笑顔を作って山田先生にいつも通りご飯を渡し、ため息をついた。
…せめてメモくらい残してくれたらいいのに…。
私は夜になって土井先生が部屋に来てくれるのを待つことにした。
その晩。
いつもの時間になっても土井先生は来なかった。
気になって度々廊下に出ていると、山田先生が苦笑しながら部屋から出てきて説明してくれた。
土井先生は学園長先生に頼まれ事をされて外に出たけど夜には戻るだろうと。
…なのに、まだ土井先生は帰ってこない。
…何かあったのかな…。
土井先生の安否が心配になる一方で、もしかしたら自分が避けられているのではないかという考えが頭をよぎる。
そんなことあるはずがないと頭では分かっていても、時間が経つにつれ不安が大きくなり、私はこぼれ落ちそうな涙を手で拭った。
少し風にあたって頭を冷やそう…。
私は廊下に座ってぼんやりと月を眺めた。
夜風が頬を掠めていく。
何度も土井先生と一緒に眺めた月に、また視界がぼやけていった。
土井先生、いまどこにいるのかな…。
何してるのかな…。
無事ならいいんだけど…何かトラブルが起きたのかな…。
ふと、小松田さんの言葉が思い出された。
『土井先生ならさっき、お嫁さんに会いに行くって血相を変えて家に帰りましたよ』
…もしかして、もう忍務は終わっていて、実は家に立ち寄ってその女性と会ってたりして…。
そんな風に疑うのはよくないと分かっていても、不安から更に色々な事を考えてしまって…。
土井先生は、過去の話をしたがらない。
きっと何かあったのだろうと、私は彼がいつか自分から話してくれるときを待つことにしていた。
もしかしたら、忍者として人には話したくないような忍務をしてきたのかもしれない…忍の仕事はきれいなものばかりではなく意に沿わぬことをしなければならないときがあると聞いた。
もしかしたら、大事な家族や周りの人を戦か何かで失ったのかもしれない…土井先生から家族の話を聞いたことがなかった。
私は、彼が私にしてくれたように、どのような過去があったとしても彼を愛していこうと思っていた。
けれど、もしお嫁さんがいるとなれば話は違ってくる。
土井先生は誠実な人だし、今までの二人の日々を思い返しても彼の気持ちに疑いをもつことはない。
あるとしたら、例えば、昔亡くなったと思っていた奥さんとか許嫁とか…そういう女性が実は生きていたとか……。
実は生き延びていたその女性が、年月をかけてやっと土井先生を探し出し訪ねてきたのだとすれば…。
…もしそうであれば、私はどうしたらいいのだろう。
土井先生は優しい人だし、きっと、その女性をそのままに私と歩いていくことなどできないだろう。
そもそも、私よりもその女性の方を愛していたのかもしれない。
…土井先生の気持ちを考えたら、私は、一人でも大丈夫だと、私の方から別れを告げた方がいいのかもしれない。
きっと、土井先生は優しいから、彼の方から私に別れてほしいとは言えないと思う…。
…私の方から、別れましょうと…。
そう考えて、私は涙が止まらなくなった。
声を押し殺して俯き、手で顔を覆う。
いやだ…土井先生を失いたくない…!
改めて、彼の存在が自分のなかでどれだけ大きくなっているかを思い知った。
それは、世界の全ての色を失なうかのような喪失感…絶望感だった。
「…土井先生……」
堪えきれず微かに名前を呼んだ、そのとき。
「たまみさん?」
驚いて振り向いたその先には、忍装束を着た…
「り、きち、さん…」
利吉さんが驚いてこちらを見ていた。
外食することなんて滅多にないのに…。
…もしかして、家でお嫁さんと一緒に食べてるとか。
いやいや、そんなわけない。
見知らぬ女性の手料理を嬉しそうに食べる土井先生を想像して私は頭をブンブンと振った。
私ときりちゃんと土井先生の三人で仲よく囲炉裏を囲って食事をした日々を思いだし、私の居た場所に見知らぬ女性が座っている想像をして、私は目をぎゅっと閉じた。
…そうだ、きりちゃんに聞いてみようか。
きりちゃんなら何か知っているかもしれない。
食堂の片付けが終わったら聞いてみようと思う一方で、もしも本当にお嫁さんが来ているのなら、きりちゃんはどう感じているのかなと考えた。
そして聡い子だから、もし何か知っていても、私に気をつかって本当のことを話さないかもしれない。
…やっぱり、ここは直接土井先生に聞いてみるべきだ。
そんなことを考えていると、山田先生が遅れて晩御飯を食べに食堂へ来た。
「山田先生!あの、土井先生は…」
「ああ、土井先生なら外で食べてくると言ってたな…何も聞いてないのかね?」
「はい、聞いてません…。」
「そうか、まぁそんなときもあるだろう。心配しなさんな。」
「そうですか…わかりました、ありがとうございます。」
私は笑顔を作って山田先生にいつも通りご飯を渡し、ため息をついた。
…せめてメモくらい残してくれたらいいのに…。
私は夜になって土井先生が部屋に来てくれるのを待つことにした。
その晩。
いつもの時間になっても土井先生は来なかった。
気になって度々廊下に出ていると、山田先生が苦笑しながら部屋から出てきて説明してくれた。
土井先生は学園長先生に頼まれ事をされて外に出たけど夜には戻るだろうと。
…なのに、まだ土井先生は帰ってこない。
…何かあったのかな…。
土井先生の安否が心配になる一方で、もしかしたら自分が避けられているのではないかという考えが頭をよぎる。
そんなことあるはずがないと頭では分かっていても、時間が経つにつれ不安が大きくなり、私はこぼれ落ちそうな涙を手で拭った。
少し風にあたって頭を冷やそう…。
私は廊下に座ってぼんやりと月を眺めた。
夜風が頬を掠めていく。
何度も土井先生と一緒に眺めた月に、また視界がぼやけていった。
土井先生、いまどこにいるのかな…。
何してるのかな…。
無事ならいいんだけど…何かトラブルが起きたのかな…。
ふと、小松田さんの言葉が思い出された。
『土井先生ならさっき、お嫁さんに会いに行くって血相を変えて家に帰りましたよ』
…もしかして、もう忍務は終わっていて、実は家に立ち寄ってその女性と会ってたりして…。
そんな風に疑うのはよくないと分かっていても、不安から更に色々な事を考えてしまって…。
土井先生は、過去の話をしたがらない。
きっと何かあったのだろうと、私は彼がいつか自分から話してくれるときを待つことにしていた。
もしかしたら、忍者として人には話したくないような忍務をしてきたのかもしれない…忍の仕事はきれいなものばかりではなく意に沿わぬことをしなければならないときがあると聞いた。
もしかしたら、大事な家族や周りの人を戦か何かで失ったのかもしれない…土井先生から家族の話を聞いたことがなかった。
私は、彼が私にしてくれたように、どのような過去があったとしても彼を愛していこうと思っていた。
けれど、もしお嫁さんがいるとなれば話は違ってくる。
土井先生は誠実な人だし、今までの二人の日々を思い返しても彼の気持ちに疑いをもつことはない。
あるとしたら、例えば、昔亡くなったと思っていた奥さんとか許嫁とか…そういう女性が実は生きていたとか……。
実は生き延びていたその女性が、年月をかけてやっと土井先生を探し出し訪ねてきたのだとすれば…。
…もしそうであれば、私はどうしたらいいのだろう。
土井先生は優しい人だし、きっと、その女性をそのままに私と歩いていくことなどできないだろう。
そもそも、私よりもその女性の方を愛していたのかもしれない。
…土井先生の気持ちを考えたら、私は、一人でも大丈夫だと、私の方から別れを告げた方がいいのかもしれない。
きっと、土井先生は優しいから、彼の方から私に別れてほしいとは言えないと思う…。
…私の方から、別れましょうと…。
そう考えて、私は涙が止まらなくなった。
声を押し殺して俯き、手で顔を覆う。
いやだ…土井先生を失いたくない…!
改めて、彼の存在が自分のなかでどれだけ大きくなっているかを思い知った。
それは、世界の全ての色を失なうかのような喪失感…絶望感だった。
「…土井先生……」
堪えきれず微かに名前を呼んだ、そのとき。
「たまみさん?」
驚いて振り向いたその先には、忍装束を着た…
「り、きち、さん…」
利吉さんが驚いてこちらを見ていた。