第69話 いつか ~夏休み編③~
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
蝉の大合唱が響き渡る昼下がり。
予想通りきり丸は毎日いくつかアルバイトを引き受けては私とたまみに手伝わせていた。
私は造花作りの内職をしながら、背中に赤ん坊を背負ってあやす。
「しかしきり丸…どうして連日子守りのバイトを受けてくるんだ。」
毎日おんぶしながら他のバイトもしていると、肩が凝ってしょうがなかった。
「こんなに暑いと赤ちゃんを背負って畑仕事することもできないし、畑に置いて置くのも暑すぎますからね…代わりに赤ちゃんの面倒をみてほしいってお客さんが増えるんですよ。」
きり丸は造花を作る手を止めずに答えた。
なるほど、確かに最近は晴天も続きとても暑くなった。
必ずしも近所に赤子を預けられる訳でもないし、これはこれで人助けになっているのかもしれない。
だが………
「しかし、夕方赤ちゃんを返すとき、たまみがすごく寂しそうな顔をしているからなぁ…。」
「土井先生も寂しそうな顔してますよね。」
「私が?」
ばかな。
確かに寂しく思う気持ちはあるが、顔には出していないはず…。
「二人とも同じように寂しそうな顔をしてますよ。」
そう言うと、きり丸は花を作る手をとめて苦笑した。
「………」
そ…そうだったのか。
きり丸の表情は嘘をついているものではなかった。
まさか、自分がたまみと同じような顔をしていたとは…。
私はため息をつきながら、作った花を下に置いた。
「…だったら。尚更、他のバイトを選んできてくれてもいいだろう。」
するときり丸がニヤリと笑った。
「予行演習になるかと思いまして。」
「予行演習?」
きょとんとする私に向かって、きり丸は平然と答えた。
「もし土井先生とたまみさんの子どもができたらこんな感じなのかなって…予習になるでしょう?」
「なっ…!」
悪びれる様子もなくサラリとそんなことを口にするきり丸に開いた口が塞がらない。
「それに…」
きり丸がニッと笑って私を見た。
「夕方赤ちゃんを返すのが寂しいなら、返さなくてもいいように自分の子どもを作ればいいじゃないですか。」
「んなっ…!?」
驚きのあまり口をぱくぱくさせていると、きり丸は当然のことのように話し続ける。
「他にもたまみさんを狙ってる人はいますし、早目にお嫁さんにしちゃえばいいじゃないですか。」
「い、いや、それは…!」
「土井先生ももういい歳ですし。」
そのとき、背後から気配が近づいてきた。
慌ててきり丸を止めようと立ち上がる。
「待て、きりま…」
「たまみさんだってもういい歳だし…」
ガタッ!
段差にけつまずいてよろめくような音がした。
「…私が年増って?」
背後から、迫力のある声が響いた。
きり丸を止めるのが間に合わなかった…!
きり丸と共に恐る恐る後ろを振り返ると、そこには顔をひきつらせたたまみが立っている。
「二人して何を話してたんですか?」
「あー…、いや、違うんだ、これはだな…!」
「たまみさんを年増だなんて言ってないですよ!ただもうそろそろ」
「きり丸!余計なことを言うんじゃない!」
「…余計なことって、一体何を話してたんですか?」
「いや!だから、違うんだ…!」
「…違うって何がですか?」
「あー…その、話せば長いのだが…」
「別に長くないですよ。」
「き、きり丸!」
「…半助さん、そんなに言いにくいことを話してたんですか?…私の年齢のことですか?」
まずい。
たまみが拗ねだしてしまった。
「いや、違うんだ。毎日子守のバイトでおんぶばかりしていると肩が凝ると話していて…」
全くの嘘ではない。
『たまみももういい歳だし嫁に貰えばいい』ときり丸に言われた…などとは…色んな意味で言えるはずもなく、私は何とかごまかそうとした。
たまみの年齢は、本人の記憶もないのではっきりとは分からないが、確かに彼女くらいの年になれば嫁いでいる女性が多い。
しかし、年齢とかそういう理由で急いで将来を決めてほしくはなかった。
ましてや子どもの話など…そもそも嫁に来てくれるかどうかもはっきり約束したわけではないのに…変に意識させてしまうと彼女が困るだろう。
変なプレッシャーをかけたくはなかった。
私の言葉にたまみが少し驚いて肩を見る。
「ずっとおんぶしてもらってすみません。あとで肩揉みしましょうか…?」
たまみが背中の赤ん坊を見て優しい目になった。
よしよし、これでごまかせたかな…。
「ありがとう。それより、洗濯は大丈夫だったかい?」
今日は洗濯のアルバイトも引き受けていて、たまみには洗濯を頼んでいた。
「それが、中々汚れが落ちないものがあって…半助さんに一回お願いしようと思ってこっちに来たんです。」
「そうか、時間が経って落ちにくくなってるとかかな。」
笑顔を作りながら共同井戸の方へ向かう。
うまく話題がそらせてよかった…。
私は前を歩く小さな彼女にほっと胸を撫で下ろした。
予想通りきり丸は毎日いくつかアルバイトを引き受けては私とたまみに手伝わせていた。
私は造花作りの内職をしながら、背中に赤ん坊を背負ってあやす。
「しかしきり丸…どうして連日子守りのバイトを受けてくるんだ。」
毎日おんぶしながら他のバイトもしていると、肩が凝ってしょうがなかった。
「こんなに暑いと赤ちゃんを背負って畑仕事することもできないし、畑に置いて置くのも暑すぎますからね…代わりに赤ちゃんの面倒をみてほしいってお客さんが増えるんですよ。」
きり丸は造花を作る手を止めずに答えた。
なるほど、確かに最近は晴天も続きとても暑くなった。
必ずしも近所に赤子を預けられる訳でもないし、これはこれで人助けになっているのかもしれない。
だが………
「しかし、夕方赤ちゃんを返すとき、たまみがすごく寂しそうな顔をしているからなぁ…。」
「土井先生も寂しそうな顔してますよね。」
「私が?」
ばかな。
確かに寂しく思う気持ちはあるが、顔には出していないはず…。
「二人とも同じように寂しそうな顔をしてますよ。」
そう言うと、きり丸は花を作る手をとめて苦笑した。
「………」
そ…そうだったのか。
きり丸の表情は嘘をついているものではなかった。
まさか、自分がたまみと同じような顔をしていたとは…。
私はため息をつきながら、作った花を下に置いた。
「…だったら。尚更、他のバイトを選んできてくれてもいいだろう。」
するときり丸がニヤリと笑った。
「予行演習になるかと思いまして。」
「予行演習?」
きょとんとする私に向かって、きり丸は平然と答えた。
「もし土井先生とたまみさんの子どもができたらこんな感じなのかなって…予習になるでしょう?」
「なっ…!」
悪びれる様子もなくサラリとそんなことを口にするきり丸に開いた口が塞がらない。
「それに…」
きり丸がニッと笑って私を見た。
「夕方赤ちゃんを返すのが寂しいなら、返さなくてもいいように自分の子どもを作ればいいじゃないですか。」
「んなっ…!?」
驚きのあまり口をぱくぱくさせていると、きり丸は当然のことのように話し続ける。
「他にもたまみさんを狙ってる人はいますし、早目にお嫁さんにしちゃえばいいじゃないですか。」
「い、いや、それは…!」
「土井先生ももういい歳ですし。」
そのとき、背後から気配が近づいてきた。
慌ててきり丸を止めようと立ち上がる。
「待て、きりま…」
「たまみさんだってもういい歳だし…」
ガタッ!
段差にけつまずいてよろめくような音がした。
「…私が年増って?」
背後から、迫力のある声が響いた。
きり丸を止めるのが間に合わなかった…!
きり丸と共に恐る恐る後ろを振り返ると、そこには顔をひきつらせたたまみが立っている。
「二人して何を話してたんですか?」
「あー…、いや、違うんだ、これはだな…!」
「たまみさんを年増だなんて言ってないですよ!ただもうそろそろ」
「きり丸!余計なことを言うんじゃない!」
「…余計なことって、一体何を話してたんですか?」
「いや!だから、違うんだ…!」
「…違うって何がですか?」
「あー…その、話せば長いのだが…」
「別に長くないですよ。」
「き、きり丸!」
「…半助さん、そんなに言いにくいことを話してたんですか?…私の年齢のことですか?」
まずい。
たまみが拗ねだしてしまった。
「いや、違うんだ。毎日子守のバイトでおんぶばかりしていると肩が凝ると話していて…」
全くの嘘ではない。
『たまみももういい歳だし嫁に貰えばいい』ときり丸に言われた…などとは…色んな意味で言えるはずもなく、私は何とかごまかそうとした。
たまみの年齢は、本人の記憶もないのではっきりとは分からないが、確かに彼女くらいの年になれば嫁いでいる女性が多い。
しかし、年齢とかそういう理由で急いで将来を決めてほしくはなかった。
ましてや子どもの話など…そもそも嫁に来てくれるかどうかもはっきり約束したわけではないのに…変に意識させてしまうと彼女が困るだろう。
変なプレッシャーをかけたくはなかった。
私の言葉にたまみが少し驚いて肩を見る。
「ずっとおんぶしてもらってすみません。あとで肩揉みしましょうか…?」
たまみが背中の赤ん坊を見て優しい目になった。
よしよし、これでごまかせたかな…。
「ありがとう。それより、洗濯は大丈夫だったかい?」
今日は洗濯のアルバイトも引き受けていて、たまみには洗濯を頼んでいた。
「それが、中々汚れが落ちないものがあって…半助さんに一回お願いしようと思ってこっちに来たんです。」
「そうか、時間が経って落ちにくくなってるとかかな。」
笑顔を作りながら共同井戸の方へ向かう。
うまく話題がそらせてよかった…。
私は前を歩く小さな彼女にほっと胸を撫で下ろした。