第66話 西瓜
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もうすぐ実技の授業が終わろうかという頃。
私は食堂を出て一年は組のみんなが横歩きの練習をしている校庭に向かった。
みんなの練習を見ていた土井先生がいち早く私に気付いて声をかけてくれる。
「たまみさん、どうしましたか?」
不思議そうにする土井先生に私は微笑んで言った。
「土井先生、授業が終わったらみんなで食堂へ来てくれますか?」
「食堂へ?」
「はい。さっき、いつも野菜を持ってきてくれる農家の方がスイカをくれたんです。たくさん収穫できたからと学園にもいっぱい分けてくれて。一年は組のみんなも授業が終わったらスイカをおやつに出」
「スイカ!?」
言い終わる前に突然しんべヱくんが飛んできた。
「こらっ、しんべヱ!勝手に授業を抜けるんじゃない!」
山田先生がしんべヱくんの首根っこをつかんで持ち上げた。
そんなことなど全く意に介さず、しんべヱくんの目はスイカになっていた。
「スイカ割りしましょー!」
「割るとみんなで分けにくいからちゃんと切ってあげるね。」
「あげるぅ!?」
今度はきりちゃんが食いついてきた。
他の子たちもぞろぞろとやってくる。
「スイカ割りしたいなぁ~面白そう!」
「でもあれ中々当たらないんだよねぇ!」
「思いきり地面叩いて手が痛くなるよね!」
みんなの会話を聞いていた山田先生がふと何かをひらめいたようにニヤリと笑った。
「では今からスイカ割りの練習をするか?」
みんなの注目が山田先生に集まった。
「三人一組の班になって、一人がスイカ役、一人が目隠しをしてそれをつかまえる役、もう一人が横から声をかけて方角を教えてやる役だ。叩くんじゃなくて触れるかつかまえるだけでいい。」
みんなが目を合わせてきょとんとする。
「いいか、この目的は目隠しをした状態で相手の気配を察知してつかまえることにある。出来た者からスイカを食べに行きなさい。」
「えっ、じゃあできなかったら…」
「スイカはナシだ。」
「「「ええええー!!!」」」
「気配を感じるのが目的だから、補助として横から方角を教える者は極力手助けしないように。はい、じゃあ班になって!」
山田先生が手を叩くと、みんながしぶしぶ三人組に別れて誰がどの役をするか話し出した。
「僕ら二人だからたまみさん一緒にやりましょう~。」
喜三太くんと金吾くんが私の手をとって連れていった。
土井先生を見るとにこりと頷いたので、そのまま一緒に参加することになった。
山田先生がみんなに目隠しを配り、地面にスタートラインとスイカ役の立ち位置を書いた。
「目隠しをしたらその場で5回ほど回って元の方角が分からないようにしなさい。用意が出来たところから始めていいぞ。」
「「「「はーい」」」」
私はスイカ役になった。
金吾くんが横で指示を出し、喜三太くんが両手を前に出してふらふらと歩いてくる。
「もっと右だよ!」
「こ、こっちかな?」
「それは行き過ぎ!戻って!」
私はスイカ役だから動けないけれど、むしろ私が手を伸ばして喜三太くんを捕まえたくなってくる。
周りを見ると、みんな気配を感じるのは難しいみたいであちこちに進んでいる。
半ば予想通りの展開に山田先生がため息をついた。
「うーむ、土井先生、見本を見せてやってくれんかね?」
「ええっ、私がですか?」
「これじゃいつまで経っても終わらないだろう。」
「それはそうですが…。」
「全員注目~!今から土井先生がお手本を見せてくれるから一旦やめなさい。たまみくん、こっちへ。」
「はい?」
「今から土井先生が目隠ししてたまみくんをつかまえるから、気配の感じ方をよく観察しなさい。」
「えっ!」
驚いて土井先生を見ると苦笑して頬をかいていた。
土井先生は目隠しを受けとり、スタートラインに立って目隠しをしながら説明した。
「いいかお前たち、相手の気配を察知するには、音や空気の流れをよく感じとるんだ。心を静かにして波一つない水面をイメージし、周りの気配を感じとる…。」
土井先生はその場で数回くるくると回ると、ピタリと私の方を向いて足を止めた。
そのまま、迷うことなく私の方へ歩いてくる。
「………」
足音もなく、気配も感じさせず…
目隠しをした土井先生がゆっくり近付いてきて…
その腕が私に伸びてきて…
ぽんっ
頭の上に優しく手が乗せられた。
「つかまえた。」
「…!」
耳元で、そんな優しい声でそんな台詞を言われたら…!
みんなの前だというのに頬を染めて下を向いてしまった。
一年は組のみんなが感嘆の声をあげる。
「すごいなぁ!土井先生実は見えてるんじゃないの!?」
「見えてないっ!何なら、このまま全員にチョークを当てることだってできるぞ。」
ちょっと得意気な土井先生。
すると庄左ヱ門くんが「はい!」と手をあげた。
「どうした庄左ヱ門?」
山田先生が聞くと、庄左ヱ門くんはとある提案をした。
「山田先生、僕たちこのまま気配を察知する練習をしても全員合格するのは難しいと思うんです。」
「ふむ…。だからなんだ?」
「誰かがスイカを食べられないなんて可哀想なので、ここはルールを変更して頂きたいなと…!」
「ルールを変更?」
「はい。目隠しをした土井先生をみんなで捕まえるというのはどうでしょうか?」
「はぁ!?」
土井先生が庄左ヱ門くんの方を向いた。
「誰か一人が土井先生にタッチできたらみんなスイカが食べられるということで。」
「あのなぁ、何で私が目隠ししてお前たちと鬼ごっこを…。」
「ふむ、気配を察知する練習じゃなくて気配を消す練習というわけか。わしは構わんが土井先生を捕まえるのは至難の技だぞ。」
「や、山田先生…!」
「みんなでやれば何とかなると思います!な、みんな!?」
庄左ヱ門くんがみんなの方を振り向いた。
が、みんな微妙な顔をしている…。
「僕たちに土井先生が捕まえられるかなぁ…。」
「さっきの課題の方が何とかなりそうじゃない?」
「でも、ちょっと面白そうだよなぁ。」
「土井先生と鬼ごっこなんて滅多にできないよね…!」
「しかも目隠ししてるってハンデまであるし。」
「…面白そうだよねぇ。」
「…うん、面白いかも…。」
「…面白いね!」
「「「「「やりまぁーす!」」」」」」
「おまえたち…!!」
土井先生は全力で止めようとしたが、面白そうだと目をキラキラさせたみんなを止める術はなくて。
結局、押しきられる形で鬼ごっこが始まった…。
私は食堂を出て一年は組のみんなが横歩きの練習をしている校庭に向かった。
みんなの練習を見ていた土井先生がいち早く私に気付いて声をかけてくれる。
「たまみさん、どうしましたか?」
不思議そうにする土井先生に私は微笑んで言った。
「土井先生、授業が終わったらみんなで食堂へ来てくれますか?」
「食堂へ?」
「はい。さっき、いつも野菜を持ってきてくれる農家の方がスイカをくれたんです。たくさん収穫できたからと学園にもいっぱい分けてくれて。一年は組のみんなも授業が終わったらスイカをおやつに出」
「スイカ!?」
言い終わる前に突然しんべヱくんが飛んできた。
「こらっ、しんべヱ!勝手に授業を抜けるんじゃない!」
山田先生がしんべヱくんの首根っこをつかんで持ち上げた。
そんなことなど全く意に介さず、しんべヱくんの目はスイカになっていた。
「スイカ割りしましょー!」
「割るとみんなで分けにくいからちゃんと切ってあげるね。」
「あげるぅ!?」
今度はきりちゃんが食いついてきた。
他の子たちもぞろぞろとやってくる。
「スイカ割りしたいなぁ~面白そう!」
「でもあれ中々当たらないんだよねぇ!」
「思いきり地面叩いて手が痛くなるよね!」
みんなの会話を聞いていた山田先生がふと何かをひらめいたようにニヤリと笑った。
「では今からスイカ割りの練習をするか?」
みんなの注目が山田先生に集まった。
「三人一組の班になって、一人がスイカ役、一人が目隠しをしてそれをつかまえる役、もう一人が横から声をかけて方角を教えてやる役だ。叩くんじゃなくて触れるかつかまえるだけでいい。」
みんなが目を合わせてきょとんとする。
「いいか、この目的は目隠しをした状態で相手の気配を察知してつかまえることにある。出来た者からスイカを食べに行きなさい。」
「えっ、じゃあできなかったら…」
「スイカはナシだ。」
「「「ええええー!!!」」」
「気配を感じるのが目的だから、補助として横から方角を教える者は極力手助けしないように。はい、じゃあ班になって!」
山田先生が手を叩くと、みんながしぶしぶ三人組に別れて誰がどの役をするか話し出した。
「僕ら二人だからたまみさん一緒にやりましょう~。」
喜三太くんと金吾くんが私の手をとって連れていった。
土井先生を見るとにこりと頷いたので、そのまま一緒に参加することになった。
山田先生がみんなに目隠しを配り、地面にスタートラインとスイカ役の立ち位置を書いた。
「目隠しをしたらその場で5回ほど回って元の方角が分からないようにしなさい。用意が出来たところから始めていいぞ。」
「「「「はーい」」」」
私はスイカ役になった。
金吾くんが横で指示を出し、喜三太くんが両手を前に出してふらふらと歩いてくる。
「もっと右だよ!」
「こ、こっちかな?」
「それは行き過ぎ!戻って!」
私はスイカ役だから動けないけれど、むしろ私が手を伸ばして喜三太くんを捕まえたくなってくる。
周りを見ると、みんな気配を感じるのは難しいみたいであちこちに進んでいる。
半ば予想通りの展開に山田先生がため息をついた。
「うーむ、土井先生、見本を見せてやってくれんかね?」
「ええっ、私がですか?」
「これじゃいつまで経っても終わらないだろう。」
「それはそうですが…。」
「全員注目~!今から土井先生がお手本を見せてくれるから一旦やめなさい。たまみくん、こっちへ。」
「はい?」
「今から土井先生が目隠ししてたまみくんをつかまえるから、気配の感じ方をよく観察しなさい。」
「えっ!」
驚いて土井先生を見ると苦笑して頬をかいていた。
土井先生は目隠しを受けとり、スタートラインに立って目隠しをしながら説明した。
「いいかお前たち、相手の気配を察知するには、音や空気の流れをよく感じとるんだ。心を静かにして波一つない水面をイメージし、周りの気配を感じとる…。」
土井先生はその場で数回くるくると回ると、ピタリと私の方を向いて足を止めた。
そのまま、迷うことなく私の方へ歩いてくる。
「………」
足音もなく、気配も感じさせず…
目隠しをした土井先生がゆっくり近付いてきて…
その腕が私に伸びてきて…
ぽんっ
頭の上に優しく手が乗せられた。
「つかまえた。」
「…!」
耳元で、そんな優しい声でそんな台詞を言われたら…!
みんなの前だというのに頬を染めて下を向いてしまった。
一年は組のみんなが感嘆の声をあげる。
「すごいなぁ!土井先生実は見えてるんじゃないの!?」
「見えてないっ!何なら、このまま全員にチョークを当てることだってできるぞ。」
ちょっと得意気な土井先生。
すると庄左ヱ門くんが「はい!」と手をあげた。
「どうした庄左ヱ門?」
山田先生が聞くと、庄左ヱ門くんはとある提案をした。
「山田先生、僕たちこのまま気配を察知する練習をしても全員合格するのは難しいと思うんです。」
「ふむ…。だからなんだ?」
「誰かがスイカを食べられないなんて可哀想なので、ここはルールを変更して頂きたいなと…!」
「ルールを変更?」
「はい。目隠しをした土井先生をみんなで捕まえるというのはどうでしょうか?」
「はぁ!?」
土井先生が庄左ヱ門くんの方を向いた。
「誰か一人が土井先生にタッチできたらみんなスイカが食べられるということで。」
「あのなぁ、何で私が目隠ししてお前たちと鬼ごっこを…。」
「ふむ、気配を察知する練習じゃなくて気配を消す練習というわけか。わしは構わんが土井先生を捕まえるのは至難の技だぞ。」
「や、山田先生…!」
「みんなでやれば何とかなると思います!な、みんな!?」
庄左ヱ門くんがみんなの方を振り向いた。
が、みんな微妙な顔をしている…。
「僕たちに土井先生が捕まえられるかなぁ…。」
「さっきの課題の方が何とかなりそうじゃない?」
「でも、ちょっと面白そうだよなぁ。」
「土井先生と鬼ごっこなんて滅多にできないよね…!」
「しかも目隠ししてるってハンデまであるし。」
「…面白そうだよねぇ。」
「…うん、面白いかも…。」
「…面白いね!」
「「「「「やりまぁーす!」」」」」」
「おまえたち…!!」
土井先生は全力で止めようとしたが、面白そうだと目をキラキラさせたみんなを止める術はなくて。
結局、押しきられる形で鬼ごっこが始まった…。