第5話 白布
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忍術学園で過ごすようになってはや数日。
まだ文字はよく分からないところもあるけれど、私は土井先生の作った問題用紙等を写して人数分用意したり、丸付け採点を手伝ったり、少しでも土井先生の負担が軽くなるように努めていた。
「たまみさんのおかげで助かります。」
職員室で隣にいる土井先生がお茶を飲みながら笑顔でそう言ってくれた。
「ほんとですか?でも、まだ文字が上手く書けなくて…土井先生はサラサラと綺麗に書くのに、難しいです…。」
「大丈夫、団蔵より全然上手に書けてますから。」
「団蔵くんって、土井先生しか文字読めないじゃないですか…!私そこまで…?」
「あはは、冗談ですよ。まだ慣れていないだけですから、ゆっくり練習していきましょう。」
土井先生の優しい笑顔。
こんな些細なやりとりが、そんな日常が嬉しかった。
「土井先生、全部終わりました。次は何をしますか?」
「うーん、そうですね。とりあえず準備作業は終わったので…。よかったら休憩してきてもらっても構いませんよ。」
私は横で文字の練習でもしようかと思ったけれど、ふと窓の外を見て手を叩いた。
「そうだ、洗濯しましょうか。」
「え?」
「いいお天気だし、土井先生も山田先生も洗濯する時間なさそうだから、代わりに洗っておきますよ!」
「山田先生は家に持って帰って奥さんが洗濯されるから大丈夫だと思いますよ。」
「そうなんですか。じゃあ土井先生の洗っておきましょうか。私も洗濯したいのでついでです。」
「いやぁ、そんなことをさせるわけには……」
土井先生は苦笑しながら遠慮したが、ふと思い出したように尋ねた。
「たまみさん、洗濯の仕方わかります?」
「え……あ、わかりません…。」
結局、土井先生に洗濯方法を教えてもらうことになってしまい、手伝うどころか手をとめてしまった。
「土井先生、お洗濯手慣れてますね。」
「いつもきり丸のアルバイトでやらされてますから…。」
「きり丸くんのアルバイトを手伝ってるんですか?」
「えぇ。…きり丸は戦で家族を亡くして私と一緒に住んでるんですけど…」
土井先生は洗濯する手を止めず、俯いたまま話した。
その表情は分からない。
「休みの日に一人ではさばけない量のアルバイトを引き受けてくるから私も手伝わされるんです。」
「そう、なんですか…。きり丸くん、全然そんな風に見えませんでした……」
教室で見かけたきり丸くんは友達と楽しそうに笑っていた。
あんな10歳という幼さで一人になって、あれほど元気に過ごせるとは…。
一人ぼっちの孤独。
不安で泣いていた自分と重なった。
記憶のない私よりも、失った家族との思い出がある方がもっと辛いのではなかろうか。
楽しそうに笑っていても、その心のうちは…
「きり丸には、今まで通り普通に接してやってくださいね。」
土井先生の声は優しかった。
あぁ、そうか。
きっと、土井先生がきり丸くんの心の支えになっているのだろう。
私が泣いた夜に土井先生が頭を撫でてくれたように、きっときり丸くんの孤独も土井先生の存在が癒しているのだろう。
…私なんかが気持ちを推し量るのもおこがましい気がしたけれど、そんなことを考えて私は口をつぐんだ。
まだ文字はよく分からないところもあるけれど、私は土井先生の作った問題用紙等を写して人数分用意したり、丸付け採点を手伝ったり、少しでも土井先生の負担が軽くなるように努めていた。
「たまみさんのおかげで助かります。」
職員室で隣にいる土井先生がお茶を飲みながら笑顔でそう言ってくれた。
「ほんとですか?でも、まだ文字が上手く書けなくて…土井先生はサラサラと綺麗に書くのに、難しいです…。」
「大丈夫、団蔵より全然上手に書けてますから。」
「団蔵くんって、土井先生しか文字読めないじゃないですか…!私そこまで…?」
「あはは、冗談ですよ。まだ慣れていないだけですから、ゆっくり練習していきましょう。」
土井先生の優しい笑顔。
こんな些細なやりとりが、そんな日常が嬉しかった。
「土井先生、全部終わりました。次は何をしますか?」
「うーん、そうですね。とりあえず準備作業は終わったので…。よかったら休憩してきてもらっても構いませんよ。」
私は横で文字の練習でもしようかと思ったけれど、ふと窓の外を見て手を叩いた。
「そうだ、洗濯しましょうか。」
「え?」
「いいお天気だし、土井先生も山田先生も洗濯する時間なさそうだから、代わりに洗っておきますよ!」
「山田先生は家に持って帰って奥さんが洗濯されるから大丈夫だと思いますよ。」
「そうなんですか。じゃあ土井先生の洗っておきましょうか。私も洗濯したいのでついでです。」
「いやぁ、そんなことをさせるわけには……」
土井先生は苦笑しながら遠慮したが、ふと思い出したように尋ねた。
「たまみさん、洗濯の仕方わかります?」
「え……あ、わかりません…。」
結局、土井先生に洗濯方法を教えてもらうことになってしまい、手伝うどころか手をとめてしまった。
「土井先生、お洗濯手慣れてますね。」
「いつもきり丸のアルバイトでやらされてますから…。」
「きり丸くんのアルバイトを手伝ってるんですか?」
「えぇ。…きり丸は戦で家族を亡くして私と一緒に住んでるんですけど…」
土井先生は洗濯する手を止めず、俯いたまま話した。
その表情は分からない。
「休みの日に一人ではさばけない量のアルバイトを引き受けてくるから私も手伝わされるんです。」
「そう、なんですか…。きり丸くん、全然そんな風に見えませんでした……」
教室で見かけたきり丸くんは友達と楽しそうに笑っていた。
あんな10歳という幼さで一人になって、あれほど元気に過ごせるとは…。
一人ぼっちの孤独。
不安で泣いていた自分と重なった。
記憶のない私よりも、失った家族との思い出がある方がもっと辛いのではなかろうか。
楽しそうに笑っていても、その心のうちは…
「きり丸には、今まで通り普通に接してやってくださいね。」
土井先生の声は優しかった。
あぁ、そうか。
きっと、土井先生がきり丸くんの心の支えになっているのだろう。
私が泣いた夜に土井先生が頭を撫でてくれたように、きっときり丸くんの孤独も土井先生の存在が癒しているのだろう。
…私なんかが気持ちを推し量るのもおこがましい気がしたけれど、そんなことを考えて私は口をつぐんだ。