第27話 用具委員会
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明日の授業の準備をしながら、先程のしんべヱの言葉を思い出した。
その話は本当なのか。
本当であれば彼女はどうするのか。
気にはなるのだが、なんと聞くべきか言葉が思い浮かばない。
私は大きなため息をついた。
「失礼します。土井先生、明日の職員会議の資料もらってきました。」
たまみさんが職員室に入ってきた。
いつものことなのに私は妙に緊張した。
「土井先生、いまお時間いいですか?」
「!…はい、なんでしょう。」
「実は今日食満くんに」
「……」
「用具委員会に入らないかと誘われまして」
「えっ?」
用具委員会?
「ちょっと前から他にも幾つか委員会に誘われていて、ずっと迷ってるんですけど…」
幾つか誘われて…それも初耳だ。
一体誰が声をかけてるんだ。
たまみさんは真面目な顔で真っ直ぐこちらを見ていた。
「最初は、土井先生と同じ火薬委員会に入ってお手伝いしようかなって思ってたんですけど、同じことをしていても土井先生のお役には立てないんじゃないかなと思いまして…。」
同じことをしていても役に立てない?
どういう意味だ?
「色々考えたのですが、例えば薬草の知識をつけるとか、ちょっと違うことを学んだ方が後々一年は組の…土井先生のお役に立てることもあるんじゃないかなぁと思いまして…。」
一年は組の補佐としてなすべきことをそこまで考えてくれていたとは。
嬉しいような申し訳ないような気持ちになった。
「…ありがとうございます。でも、たまみさんはもう十分に助けてくれているので…もし興味のあるものがあるなら、役に立つとかそういうのではなくても取り組んでいけばいいと思いますよ。」
彼女は少し沈黙し、
「いえ、私は…土井先生の役に立ちたいんです。」
とはっきり言った。
それは…私のために?
…それとも一年は組のために?
「ただ、まだ今は文字の練習もあるしバイトもしないといけないので、正式に委員会に入る余裕はないと思うんです。なので、例えば乱太郎くんが保健委員の当番のときに一緒に手伝うとか、それくらいにしとこうかなって…。」
「そうですね、また詰め込みすぎて無理したりはしないでください。」
「はい。…これで、いいと思いますか?」
「私がいいとかよくないとかいう立場ではありませんが…いいと思いますよ。」
「よかった。じゃあ食満くんには、ちょっと考えさせてと伝えてあるので、特に忙しいときとか困ることがあれば呼んでねってお答えしておきます。」
「!…『ちょっと考えさせて』と言ったんですか?」
「はい。」
聞き覚えのあるフレーズだ。
…もしかして。
「さっき、二人が用具倉庫にいるのを見たと生徒から聞いたんですが」
「ああ、上に置いてある箱を落としてしまって、食満くんが直すのを手伝ってくれたんです。」
「…それだけ?」
「あとは、用具倉庫の中のもの…忍具とかの説明をしてくれました。」
その表情から、それ以上のことは本当に何もなさそうだった。
…忍具。
倉庫にはそれ以外にも色々置いてあったな。
「…もしかして、農具の説明も?」
「はい、何でわかったんですか?」
「…鍬とか鋤とか。」
「そうです、クワとスキの違いとか、丁寧に教えてくれました。」
「…なるほど。」
つまり、こうか。
「鋤です」と言ったのをしんべヱは「好きです」と勘違いしたということか…!
そして、委員会の勧誘に対して「ちょっと考えさせて」と答えたのを、告白に対する返事だと思ったと…。
私はまた大きなため息をついて頭をかかえた。
忍たまなら、もう少し情報を正確にだな…!
「土井先生?」
「いえ、ははは…何でもありません。」
不思議そうに見つめるたまみさんに苦笑いを返して、無駄に思い悩んだ胃がまたきりきりと痛むのを感じた。
その話は本当なのか。
本当であれば彼女はどうするのか。
気にはなるのだが、なんと聞くべきか言葉が思い浮かばない。
私は大きなため息をついた。
「失礼します。土井先生、明日の職員会議の資料もらってきました。」
たまみさんが職員室に入ってきた。
いつものことなのに私は妙に緊張した。
「土井先生、いまお時間いいですか?」
「!…はい、なんでしょう。」
「実は今日食満くんに」
「……」
「用具委員会に入らないかと誘われまして」
「えっ?」
用具委員会?
「ちょっと前から他にも幾つか委員会に誘われていて、ずっと迷ってるんですけど…」
幾つか誘われて…それも初耳だ。
一体誰が声をかけてるんだ。
たまみさんは真面目な顔で真っ直ぐこちらを見ていた。
「最初は、土井先生と同じ火薬委員会に入ってお手伝いしようかなって思ってたんですけど、同じことをしていても土井先生のお役には立てないんじゃないかなと思いまして…。」
同じことをしていても役に立てない?
どういう意味だ?
「色々考えたのですが、例えば薬草の知識をつけるとか、ちょっと違うことを学んだ方が後々一年は組の…土井先生のお役に立てることもあるんじゃないかなぁと思いまして…。」
一年は組の補佐としてなすべきことをそこまで考えてくれていたとは。
嬉しいような申し訳ないような気持ちになった。
「…ありがとうございます。でも、たまみさんはもう十分に助けてくれているので…もし興味のあるものがあるなら、役に立つとかそういうのではなくても取り組んでいけばいいと思いますよ。」
彼女は少し沈黙し、
「いえ、私は…土井先生の役に立ちたいんです。」
とはっきり言った。
それは…私のために?
…それとも一年は組のために?
「ただ、まだ今は文字の練習もあるしバイトもしないといけないので、正式に委員会に入る余裕はないと思うんです。なので、例えば乱太郎くんが保健委員の当番のときに一緒に手伝うとか、それくらいにしとこうかなって…。」
「そうですね、また詰め込みすぎて無理したりはしないでください。」
「はい。…これで、いいと思いますか?」
「私がいいとかよくないとかいう立場ではありませんが…いいと思いますよ。」
「よかった。じゃあ食満くんには、ちょっと考えさせてと伝えてあるので、特に忙しいときとか困ることがあれば呼んでねってお答えしておきます。」
「!…『ちょっと考えさせて』と言ったんですか?」
「はい。」
聞き覚えのあるフレーズだ。
…もしかして。
「さっき、二人が用具倉庫にいるのを見たと生徒から聞いたんですが」
「ああ、上に置いてある箱を落としてしまって、食満くんが直すのを手伝ってくれたんです。」
「…それだけ?」
「あとは、用具倉庫の中のもの…忍具とかの説明をしてくれました。」
その表情から、それ以上のことは本当に何もなさそうだった。
…忍具。
倉庫にはそれ以外にも色々置いてあったな。
「…もしかして、農具の説明も?」
「はい、何でわかったんですか?」
「…鍬とか鋤とか。」
「そうです、クワとスキの違いとか、丁寧に教えてくれました。」
「…なるほど。」
つまり、こうか。
「鋤です」と言ったのをしんべヱは「好きです」と勘違いしたということか…!
そして、委員会の勧誘に対して「ちょっと考えさせて」と答えたのを、告白に対する返事だと思ったと…。
私はまた大きなため息をついて頭をかかえた。
忍たまなら、もう少し情報を正確にだな…!
「土井先生?」
「いえ、ははは…何でもありません。」
不思議そうに見つめるたまみさんに苦笑いを返して、無駄に思い悩んだ胃がまたきりきりと痛むのを感じた。