第4話 新学期のあいさつ
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ッああああ!!
この世界にきて初めての朝っぱらから、なんて恥ずかしいことを…!
寝坊して起こされて、だらしない格好をさらして…!!
土井先生はフツーな顔をしていたけど、だらしない人だって呆れていたらどうしよう…。
あああ、穴があったら入りたい…!!
あまりにもあんまりすぎて、朝からものすごい勢いで凹んでしまった。
けれど、起きてしまったことはどうしようもない。
ここから挽回できるように頑張るしかないと気持ちを落ち着けて前を向くことにした。
頭を切り替えて身支度をし、土井先生と朝食を頂く。
食堂にはまだ誰もいなくて私はキョロキョロと周りを見渡しながら食べていた。
すると、土井先生は「そんなに緊張しないで。私もいるから大丈夫ですよ。」と苦笑した。
土井先生は怒っているわけでも呆れているわけでもなさそうで、昨日と変わらず優しい表情に私はとりあえずホッと胸を撫で下ろした。
その後、全校生徒の集まる朝礼が開かれるというので私も連れていかれた。
学園長先生は私を自分の遠い親戚で新しい教員補佐になると皆に紹介してくれた。
事前に教えてもらっていた通りに簡単な挨拶すると、たくさんの生徒と先生がじっとこちらを見ていたので焦ってしまった。
何か変なことを言って疑われてしまったのかと心配になったけれど、壇上から降りると山田先生と土井先生がにこりと微笑んでくれたので、多分大丈夫ということだろう。
私はお二人のそばを離れないようにくっついて歩くことにした。
その後職員室に戻ると、山田先生と土井先生が何やらもめだした。
「今学期は、教科を強化するということで!」
「それはつまり、実技の授業を減らして、教科の授業を増やすということですか?よくまぁそんなことを私の前ではっきりと言えたもんだ!」
……ただならぬ空気。
白熱した議論からは教育への強い気持ちが見受けられ、私は一歩も譲らないお二人を呆然と眺めていた。
そうして結局は教科も実技も両方力を入れていくということで落ち着き、私は山田先生と土井先生と共に1年は組の教室に向かった。
お二人の新学期のあいさつが終わったあと、名前を呼ばれて教室に入る。
可愛い11人の瞳が一斉にこちらを見た。
「朝礼でも話した通り、今日から授業を補佐してもらうたまみさんだ。」
「よろしくお願いし」
「何歳ですか?!」「ナメクジは好きですか?!」「掃除は好きですか?!」「どこに住んでるんですか?!」「くノ一なんですか?!」「絵は好きですか?!」「お給料はいくらですか?!」「馬は乗れますか?!」「好きな食べ物はなんですか?!」「からくりは好きですか?!」「鉄砲は好きですか?!」
私が挨拶を言い終える前に、勢いよく全員一斉に質問をしてきた。
その元気な迫力に面食らって私は一瞬たじろいだ。
すかさず土井先生が手を叩いて生徒達を落ち着かせる。
「こらこら!質問はあとで休憩時間になってからひとりずつにしなさいっ!」
「「「「は~い!!!」」」」」」
子ども達はとっても元気で、新しく来た私に興味津々といった感じだった。
質問はあとでと土井先生が言ってくれたので、私はその答えを考える時間ができて少し安心した。
記憶がないので好きなものや経歴など即答が難しいこともあり、先に基本的なことは答えを用意しておきたい…さっき何を質問されたっけ…。
そんなことを考えつつ、私は今日は授業を見学することになっていたので教室の後ろに立って皆の様子をうかがっていた。
すると一番後ろの席の男の子が振り向いて話しかけてきた。
「あのね、ぼく喜三太。ナメクジは好きですか?」
「ナメクジ?んー、嫌いではないけど、…もしかしてその中に…?」
「うん、ナメさん達にもご挨拶する?」
「あ、あとにしとこうかな…。ほら、先生のお話聞こうよ。」
「うん、じゃあまたあとでね。」
のびのびした素直な子達だなと思ったのも束の間、授業はすぐ脱線させられたり中々進まず、土井先生はとても大変そうだった。
これは…土井先生、疲れるだろうな…。
それにしても綺麗な板書…知的で凛々しい感じ…説明も分かりやすいし声も聞き心地がいいし、こんな先生だったら………
「…本日の授業はここまで!」
「ありがとうございました!」
ハッ!
ぼんやりしている間に終わってしまった!
みんなきちんと挨拶をしていてえらいなぁと思った。
私も土井先生に続いて教室を出ようとすると、ふいに後ろから手を掴まれた。
「「「あとでお昼ご飯、一緒に行きませんか~!」」」
か、可愛い…!!
純粋無垢な笑顔達。
嬉しい申し出に土井先生を見ると「行っておいで」と言われたので私も笑顔で「うん、一緒に食べよう」と頷いた。
お昼の時間になるとみんなが誘いに来てくれたので、連れられるがままみんなと食堂へ向かった。
途中、廊下で皆が名前を教えてくれ、食べながら質問の嵐が続いた。
色々聞かれ脱線してまた質問されて…正直何を答えたかよく覚えていないけど、うまく答えられていたのかな。
あっという間に時間が過ぎて、午後の授業の予備鈴が鳴る。
みんなは「またあとでねー」と手を振りながら走っていった。
…うん、嵐のようだ。
とにかく素直で元気な子達だなと思いながら手を振ると、いつの間にか土井先生が私の横に立ってクックッと笑っていた。
「たまみさん、色々質問されてましたけど、ちゃんと食べられましたか?」
「はい、元気ないい子達ですね。」
「はは、そうでしょう。」
土井先生は嬉しそうに笑った。
その笑顔に、彼は生徒達のことを本当に大切に思っているのだと感じた。
「まぁ、ご覧の通り授業は進まなくて大変なんですけどね…。」
急にため息をついてげんなりした顔になる。
表情がコロコロ変わって面白いなぁ…でもあの自由奔放さは確かに大変そうではある。
そしてふと、今朝の山田先生と土井先生のやりとりが思い出された。
「土井先生は生徒想いなんですねぇ。」
「え?」
「朝も山田先生とぶつかったり、一生懸命に考えてもらって…一年は組の子達は幸せですね。」
「ははは、そうでしょうか…それがちゃんと伝わっていたらいいんですけどね…」
「きっと伝わってますよ。それにしてもちょっと見ただけですけど、土井先生はよくあれだけ目を配って授業を進めていけますねぇ。みんな自由だから…」
「でしょう!ほんとにあいつらときたらいつもいつも話の腰をおるわ昨日説明した内容も覚えてないわで…!あぁ、思い出すだけでも胃が…。」
「だ、大丈夫ですか!?」
「ははは、いつもの神経性胃炎なので気にしないでください…。」
「…いつもの神経性胃炎……」
これはだいぶお疲れの様子…。
私は早く補佐できるようになって、少しでも土井先生の助けになりたいと強く思った。
この世界にきて初めての朝っぱらから、なんて恥ずかしいことを…!
寝坊して起こされて、だらしない格好をさらして…!!
土井先生はフツーな顔をしていたけど、だらしない人だって呆れていたらどうしよう…。
あああ、穴があったら入りたい…!!
あまりにもあんまりすぎて、朝からものすごい勢いで凹んでしまった。
けれど、起きてしまったことはどうしようもない。
ここから挽回できるように頑張るしかないと気持ちを落ち着けて前を向くことにした。
頭を切り替えて身支度をし、土井先生と朝食を頂く。
食堂にはまだ誰もいなくて私はキョロキョロと周りを見渡しながら食べていた。
すると、土井先生は「そんなに緊張しないで。私もいるから大丈夫ですよ。」と苦笑した。
土井先生は怒っているわけでも呆れているわけでもなさそうで、昨日と変わらず優しい表情に私はとりあえずホッと胸を撫で下ろした。
その後、全校生徒の集まる朝礼が開かれるというので私も連れていかれた。
学園長先生は私を自分の遠い親戚で新しい教員補佐になると皆に紹介してくれた。
事前に教えてもらっていた通りに簡単な挨拶すると、たくさんの生徒と先生がじっとこちらを見ていたので焦ってしまった。
何か変なことを言って疑われてしまったのかと心配になったけれど、壇上から降りると山田先生と土井先生がにこりと微笑んでくれたので、多分大丈夫ということだろう。
私はお二人のそばを離れないようにくっついて歩くことにした。
その後職員室に戻ると、山田先生と土井先生が何やらもめだした。
「今学期は、教科を強化するということで!」
「それはつまり、実技の授業を減らして、教科の授業を増やすということですか?よくまぁそんなことを私の前ではっきりと言えたもんだ!」
……ただならぬ空気。
白熱した議論からは教育への強い気持ちが見受けられ、私は一歩も譲らないお二人を呆然と眺めていた。
そうして結局は教科も実技も両方力を入れていくということで落ち着き、私は山田先生と土井先生と共に1年は組の教室に向かった。
お二人の新学期のあいさつが終わったあと、名前を呼ばれて教室に入る。
可愛い11人の瞳が一斉にこちらを見た。
「朝礼でも話した通り、今日から授業を補佐してもらうたまみさんだ。」
「よろしくお願いし」
「何歳ですか?!」「ナメクジは好きですか?!」「掃除は好きですか?!」「どこに住んでるんですか?!」「くノ一なんですか?!」「絵は好きですか?!」「お給料はいくらですか?!」「馬は乗れますか?!」「好きな食べ物はなんですか?!」「からくりは好きですか?!」「鉄砲は好きですか?!」
私が挨拶を言い終える前に、勢いよく全員一斉に質問をしてきた。
その元気な迫力に面食らって私は一瞬たじろいだ。
すかさず土井先生が手を叩いて生徒達を落ち着かせる。
「こらこら!質問はあとで休憩時間になってからひとりずつにしなさいっ!」
「「「「は~い!!!」」」」」」
子ども達はとっても元気で、新しく来た私に興味津々といった感じだった。
質問はあとでと土井先生が言ってくれたので、私はその答えを考える時間ができて少し安心した。
記憶がないので好きなものや経歴など即答が難しいこともあり、先に基本的なことは答えを用意しておきたい…さっき何を質問されたっけ…。
そんなことを考えつつ、私は今日は授業を見学することになっていたので教室の後ろに立って皆の様子をうかがっていた。
すると一番後ろの席の男の子が振り向いて話しかけてきた。
「あのね、ぼく喜三太。ナメクジは好きですか?」
「ナメクジ?んー、嫌いではないけど、…もしかしてその中に…?」
「うん、ナメさん達にもご挨拶する?」
「あ、あとにしとこうかな…。ほら、先生のお話聞こうよ。」
「うん、じゃあまたあとでね。」
のびのびした素直な子達だなと思ったのも束の間、授業はすぐ脱線させられたり中々進まず、土井先生はとても大変そうだった。
これは…土井先生、疲れるだろうな…。
それにしても綺麗な板書…知的で凛々しい感じ…説明も分かりやすいし声も聞き心地がいいし、こんな先生だったら………
「…本日の授業はここまで!」
「ありがとうございました!」
ハッ!
ぼんやりしている間に終わってしまった!
みんなきちんと挨拶をしていてえらいなぁと思った。
私も土井先生に続いて教室を出ようとすると、ふいに後ろから手を掴まれた。
「「「あとでお昼ご飯、一緒に行きませんか~!」」」
か、可愛い…!!
純粋無垢な笑顔達。
嬉しい申し出に土井先生を見ると「行っておいで」と言われたので私も笑顔で「うん、一緒に食べよう」と頷いた。
お昼の時間になるとみんなが誘いに来てくれたので、連れられるがままみんなと食堂へ向かった。
途中、廊下で皆が名前を教えてくれ、食べながら質問の嵐が続いた。
色々聞かれ脱線してまた質問されて…正直何を答えたかよく覚えていないけど、うまく答えられていたのかな。
あっという間に時間が過ぎて、午後の授業の予備鈴が鳴る。
みんなは「またあとでねー」と手を振りながら走っていった。
…うん、嵐のようだ。
とにかく素直で元気な子達だなと思いながら手を振ると、いつの間にか土井先生が私の横に立ってクックッと笑っていた。
「たまみさん、色々質問されてましたけど、ちゃんと食べられましたか?」
「はい、元気ないい子達ですね。」
「はは、そうでしょう。」
土井先生は嬉しそうに笑った。
その笑顔に、彼は生徒達のことを本当に大切に思っているのだと感じた。
「まぁ、ご覧の通り授業は進まなくて大変なんですけどね…。」
急にため息をついてげんなりした顔になる。
表情がコロコロ変わって面白いなぁ…でもあの自由奔放さは確かに大変そうではある。
そしてふと、今朝の山田先生と土井先生のやりとりが思い出された。
「土井先生は生徒想いなんですねぇ。」
「え?」
「朝も山田先生とぶつかったり、一生懸命に考えてもらって…一年は組の子達は幸せですね。」
「ははは、そうでしょうか…それがちゃんと伝わっていたらいいんですけどね…」
「きっと伝わってますよ。それにしてもちょっと見ただけですけど、土井先生はよくあれだけ目を配って授業を進めていけますねぇ。みんな自由だから…」
「でしょう!ほんとにあいつらときたらいつもいつも話の腰をおるわ昨日説明した内容も覚えてないわで…!あぁ、思い出すだけでも胃が…。」
「だ、大丈夫ですか!?」
「ははは、いつもの神経性胃炎なので気にしないでください…。」
「…いつもの神経性胃炎……」
これはだいぶお疲れの様子…。
私は早く補佐できるようになって、少しでも土井先生の助けになりたいと強く思った。