第4話 新学期のあいさつ
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翌朝。
同室の山田先生が起きた気配で目が覚めた。
いつものように鳥のさえずりを聞きながら、私はふと壁を見た。
…昨日の信じがたい一連の出来事は、夢ではない。
この壁の向こうに…隣の部屋に、彼女が居るはずだ。
真っ先に思い浮かんだのは、声も出さずに泣いていたたまみさんの小さな背中だった。
昨夜、彼女は不安がために一人泣いていた。
頼れる身寄りも知り合いもおらず、これまでの記憶もなにもない……その身一つで突然このような状況におかれて心細いことこのうえないだろう。
震える背中を目の前に見ると、ひどくいたたまれない気持ちになった。
幼い生徒であればよしよしと抱きしめて慰めていただろうが、さすがに出会ったばかりの女性にそのようなことをするのも憚られ…しかしかける言葉もうまく見つからず、結局は「大丈夫」と頭を撫でてやるくらいしか出来なかった。
…あれから眠れただろうか。
隣の部屋の気配を探ってみるも何の音もしない。
…まだ寝ているのだろうか。
山田先生は私の肩をポンとたたくと「水場の案内とか、諸々頼んだぞ。」と部屋を出ていった。
そうだ、日常の動きを案内しなければ。
私は廊下から遠慮がちに声をかけることにした。
「…たまみさん?」
…返事がない。
まだ寝ているのだろうか。
もう少し寝かせておいてあげたいが、もう起きる時間なので仕方なく障子を少しあけてみる。
「たまみさん、朝ですよ。」
………全く反応がない。
深く眠っているのか…いや、まさか具合でも悪くなったのでは…。
「すみません、失礼します。」
断って部屋に入る。
たまみさんは布団を抱くようにして寝ていた。
そっと覗き込むと、彼女は穏やかな寝顔でスヤスヤと規則正しい呼吸をしていた。
ただ眠っているだけのようで、安心してホッと胸を撫で下ろす。
……可愛らしい寝顔だな…
じゃなくて!
起こさなければと意を決して手を伸ばす。
そしてふと、なぜか気配を消していた自分に気がついた。
なんだか悪いことをしている気がして苦笑いしてしまう。
「……たまみさん、起きてくださ……」
!!
彼女の肩に触れる直前、伸ばした手が止まった。
はだけた寝巻きの裾から、白い太股が見えていて思わず目がとまってしまったのだ。
………綺麗な脚だな……
って、いやいや、そうじゃない!
邪念を振り払い、再び声をかける。
「たまみさん、起きてください。」
「ん…」
寝ぼけ眼のたまみさんは、布団に横たわったままボーッと私を眺めた。
どう対応すべきか迷い、私はオホンと咳払いをしてとりあえず挨拶をしてみた。
「おはようございます。」
「…おは…よ、ござ……土井先生!?」
びっくりして飛び起きたたまみさんに、私もびっくりしてのけぞった。
「あ、勝手に入ってすみません!外から声をかけても起きなかったので…!」
「いえっ、あ、私、寝坊…!?すみません!」
慌てて布団をどけて立ち上がろうとするたまみさん。
そんなに慌てなくて大丈夫だと落ち着かせるつもりが、彼女の姿を見て言葉がとまった。
「すぐに仕度します!えっと、水場はあっちでしたっけ?!」
「あー、いえ!そっちですが急がなくて大丈夫というか、その……寝巻きが…!!」
視線を外して気まずくそう言うと、たまみさんは聞き取れなかったようできょとんとして私を見た。
着なれない衣だからか、寝相がよくない方なのか…私は己の胸元を指でとんとんと叩いて咳払いした。
すると彼女も自分の格好に気づいたようで、「あっ!」と声をあげて大きくはだけた衿元を直した。
「す、すみません…!」
「いえ…こ、こちらこそ寝起きに失礼しました。…案内しますので、整ったら声をかけてください。」
努めて平静を装い、何事もなかったように部屋を出た。
廊下に出て、目を閉じ大きく息をつく。
「……………えー、そうそう、今日の予定は……。」
煩悩を消そうと仕事のことを考えてみる。
だが、白く柔らかそうな胸元と太股が脳裏に焼きついて離れず……私は手で顔をおさえて大きく溜め息をついたのだった。
同室の山田先生が起きた気配で目が覚めた。
いつものように鳥のさえずりを聞きながら、私はふと壁を見た。
…昨日の信じがたい一連の出来事は、夢ではない。
この壁の向こうに…隣の部屋に、彼女が居るはずだ。
真っ先に思い浮かんだのは、声も出さずに泣いていたたまみさんの小さな背中だった。
昨夜、彼女は不安がために一人泣いていた。
頼れる身寄りも知り合いもおらず、これまでの記憶もなにもない……その身一つで突然このような状況におかれて心細いことこのうえないだろう。
震える背中を目の前に見ると、ひどくいたたまれない気持ちになった。
幼い生徒であればよしよしと抱きしめて慰めていただろうが、さすがに出会ったばかりの女性にそのようなことをするのも憚られ…しかしかける言葉もうまく見つからず、結局は「大丈夫」と頭を撫でてやるくらいしか出来なかった。
…あれから眠れただろうか。
隣の部屋の気配を探ってみるも何の音もしない。
…まだ寝ているのだろうか。
山田先生は私の肩をポンとたたくと「水場の案内とか、諸々頼んだぞ。」と部屋を出ていった。
そうだ、日常の動きを案内しなければ。
私は廊下から遠慮がちに声をかけることにした。
「…たまみさん?」
…返事がない。
まだ寝ているのだろうか。
もう少し寝かせておいてあげたいが、もう起きる時間なので仕方なく障子を少しあけてみる。
「たまみさん、朝ですよ。」
………全く反応がない。
深く眠っているのか…いや、まさか具合でも悪くなったのでは…。
「すみません、失礼します。」
断って部屋に入る。
たまみさんは布団を抱くようにして寝ていた。
そっと覗き込むと、彼女は穏やかな寝顔でスヤスヤと規則正しい呼吸をしていた。
ただ眠っているだけのようで、安心してホッと胸を撫で下ろす。
……可愛らしい寝顔だな…
じゃなくて!
起こさなければと意を決して手を伸ばす。
そしてふと、なぜか気配を消していた自分に気がついた。
なんだか悪いことをしている気がして苦笑いしてしまう。
「……たまみさん、起きてくださ……」
!!
彼女の肩に触れる直前、伸ばした手が止まった。
はだけた寝巻きの裾から、白い太股が見えていて思わず目がとまってしまったのだ。
………綺麗な脚だな……
って、いやいや、そうじゃない!
邪念を振り払い、再び声をかける。
「たまみさん、起きてください。」
「ん…」
寝ぼけ眼のたまみさんは、布団に横たわったままボーッと私を眺めた。
どう対応すべきか迷い、私はオホンと咳払いをしてとりあえず挨拶をしてみた。
「おはようございます。」
「…おは…よ、ござ……土井先生!?」
びっくりして飛び起きたたまみさんに、私もびっくりしてのけぞった。
「あ、勝手に入ってすみません!外から声をかけても起きなかったので…!」
「いえっ、あ、私、寝坊…!?すみません!」
慌てて布団をどけて立ち上がろうとするたまみさん。
そんなに慌てなくて大丈夫だと落ち着かせるつもりが、彼女の姿を見て言葉がとまった。
「すぐに仕度します!えっと、水場はあっちでしたっけ?!」
「あー、いえ!そっちですが急がなくて大丈夫というか、その……寝巻きが…!!」
視線を外して気まずくそう言うと、たまみさんは聞き取れなかったようできょとんとして私を見た。
着なれない衣だからか、寝相がよくない方なのか…私は己の胸元を指でとんとんと叩いて咳払いした。
すると彼女も自分の格好に気づいたようで、「あっ!」と声をあげて大きくはだけた衿元を直した。
「す、すみません…!」
「いえ…こ、こちらこそ寝起きに失礼しました。…案内しますので、整ったら声をかけてください。」
努めて平静を装い、何事もなかったように部屋を出た。
廊下に出て、目を閉じ大きく息をつく。
「……………えー、そうそう、今日の予定は……。」
煩悩を消そうと仕事のことを考えてみる。
だが、白く柔らかそうな胸元と太股が脳裏に焼きついて離れず……私は手で顔をおさえて大きく溜め息をついたのだった。