第23話 子守り
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俺は一人で原っぱに寝転がり、先日のことを思い出していた。
「ねぇ、きり丸。どうして急に川に遊びに行こうとか言い出したの?」
しんべヱが不思議そうに聞いてくる。
「…土井先生とたまみさんが二人で家に行く機会を作ろうと思ってさ。」
俺は山道を歩く足を止めずに言葉を続けた。
「俺…、土井先生には幸せになってほしいんだ。」
土井先生に幸せになってほしい。
その気持ちに嘘はない。
だけど、俺にとって土井先生は単なる担任の先生ではなくて、俺が危ないことをしようとしたら駆けつけて止めてくれたり、叱ってくれたり、一緒に笑ってくれたり…家族を失った俺にとってはいつのまにか唯一家族のように心を許せる存在になっていた。
その土井先生がもし結婚することになったら…いやまだ付き合ってもいないと思うんだけど…俺はどうしたらいいんだろう。
ずっと、考えていた。
俺は土井先生のところにいていいのだろうか。
そりゃあ土井先生はいいと言ってくれるだろうけど…その優しさに甘えてしまってもいいのかな……。
「俺は…もしも俺の居場所がなくなったとしても……土井先生に幸せになってほしいんだ…。」
「きりちゃん…土井先生はそんなこと、」
「出ていけとは言わないだろうな。でも…、俺は、いつまでも甘えてちゃダメなんじゃないかって思うんだ。」
「なんで?土井先生も、きり丸のことが大事だから一緒にいてるのに!」
「だってさ、俺がいると色々…邪魔なんじゃないかなって」
「土井先生はそんな風に思わないよ。」
「俺が気にするんだよ。…いつか、出ていかなければいけないときが来るなら、自分から先に出ていく方がいい。」
「…きりちゃん………そんなことにはならないと思うけど…、でも、もし、もし本当に行き先に迷うようなことがあればうちにおいでよ!父ちゃんも母ちゃんもきりちゃんなら喜んでくれるよ!」
「うちもパパ大歓迎してくれるだろうから、いつでもおいでよ!」
「…ありがとな、二人とも。」
俺はいい友達を持ったと思う。
でも、胸に残るこの不安や焦燥感は消えることはなかった。
その日の夕方。
「きり丸!お前大家さんと会ったとか嘘をついたな!」
「土井先生!…戻ってくるの遅かったですね?」
「えっ!?いや、まぁ、その…それはおいといてだな。子どもが変な気を回さなくていいんだ!もう嘘をつくんじゃないぞ。」
「俺…土井先生には幸せを逃がしてほしくないんです。」
「…そんなことは自分でちゃんとするから、お前は心配しなくていい。」
「………」
土井先生は俺の頭をわしわしと撫でるとそれ以上何も言わず歩いていった。
俺は、その背中が見えなくなるまで無言で眺めていた。
「ねぇ、きり丸。どうして急に川に遊びに行こうとか言い出したの?」
しんべヱが不思議そうに聞いてくる。
「…土井先生とたまみさんが二人で家に行く機会を作ろうと思ってさ。」
俺は山道を歩く足を止めずに言葉を続けた。
「俺…、土井先生には幸せになってほしいんだ。」
土井先生に幸せになってほしい。
その気持ちに嘘はない。
だけど、俺にとって土井先生は単なる担任の先生ではなくて、俺が危ないことをしようとしたら駆けつけて止めてくれたり、叱ってくれたり、一緒に笑ってくれたり…家族を失った俺にとってはいつのまにか唯一家族のように心を許せる存在になっていた。
その土井先生がもし結婚することになったら…いやまだ付き合ってもいないと思うんだけど…俺はどうしたらいいんだろう。
ずっと、考えていた。
俺は土井先生のところにいていいのだろうか。
そりゃあ土井先生はいいと言ってくれるだろうけど…その優しさに甘えてしまってもいいのかな……。
「俺は…もしも俺の居場所がなくなったとしても……土井先生に幸せになってほしいんだ…。」
「きりちゃん…土井先生はそんなこと、」
「出ていけとは言わないだろうな。でも…、俺は、いつまでも甘えてちゃダメなんじゃないかって思うんだ。」
「なんで?土井先生も、きり丸のことが大事だから一緒にいてるのに!」
「だってさ、俺がいると色々…邪魔なんじゃないかなって」
「土井先生はそんな風に思わないよ。」
「俺が気にするんだよ。…いつか、出ていかなければいけないときが来るなら、自分から先に出ていく方がいい。」
「…きりちゃん………そんなことにはならないと思うけど…、でも、もし、もし本当に行き先に迷うようなことがあればうちにおいでよ!父ちゃんも母ちゃんもきりちゃんなら喜んでくれるよ!」
「うちもパパ大歓迎してくれるだろうから、いつでもおいでよ!」
「…ありがとな、二人とも。」
俺はいい友達を持ったと思う。
でも、胸に残るこの不安や焦燥感は消えることはなかった。
その日の夕方。
「きり丸!お前大家さんと会ったとか嘘をついたな!」
「土井先生!…戻ってくるの遅かったですね?」
「えっ!?いや、まぁ、その…それはおいといてだな。子どもが変な気を回さなくていいんだ!もう嘘をつくんじゃないぞ。」
「俺…土井先生には幸せを逃がしてほしくないんです。」
「…そんなことは自分でちゃんとするから、お前は心配しなくていい。」
「………」
土井先生は俺の頭をわしわしと撫でるとそれ以上何も言わず歩いていった。
俺は、その背中が見えなくなるまで無言で眺めていた。